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箱舟 第17話

丹羽「・・・?・・・?・・・・???・・・!・・・・♪・・・!!!!」

皇「こんな所でヤニの補充ですか?」

丹羽「脅かすなよ!・・・お前かぁ、お前も暇だなぁ。」

皇「暇っちゃ訳じゃないんですけど、・・・公共施設内で喫煙は禁止されたんじゃなかったでしたっけ?」

丹羽「あのなぁ、お前、これ、タバコに見えるけど、タバコじゃないの。タバコじゃなかったら喫煙にならないでしょ?」

皇「・・・仮に、タバコ草以外のものを紙に巻いて、煙を吸っている方が、相当、危険だと思うんですけど。法律的にも体的にも。」

丹羽「ああ、あああ。はいはい。・・・くっそ。せっかくの俺の休憩タイムが。でぇ?なんだぁ?用があって来たんだろ?」

皇「刑事課に行ったら、丹羽さんは外で、休憩しているって言うんで。たぶん、ここだろう、と。小学生じゃないんだから、便所裏でタバコ、吸わなくても。」

丹羽「・・・お前には分からないのよ。公務員の大変さが。上からは言われるし、市民からは通報されるし。・・・ようやく見つけたの。ここが俺のオアシスなの。それなのにお前みたいのが来るから。ああ、ああああ。もう。」

皇「事件から3か月過ぎましたが、やっぱり、本体は見つからないんですか?」

丹羽「スメラギぃ、お前が主張する、超能力者の本体とかいう奴。誰も相手にしてないからな、そんなヨタ話ぃ。ハナっから捜索なんかしてねぇよ。」

皇「丹羽さんが捜査してくれているんじゃないんですか。」

丹羽「俺も忙しいの。お前の妄想話に付き合う程、警察は暇じゃねぇの。・・・仮に、同じ事件がまた起これば別だけどな。」

皇「また同じ事件ですか。・・・二度と御免被りたい話ですけどね。」

丹羽「この事件を警察庁案件に格上げ。特異的地域無差別テロ事件として認定。特別捜査本部、付けになったんだよ。・・・もう、俺の手ぇから離れた事件だ。俺に捜査権はねぇし、第一、上の連中は、無差別テロ事件にしか関心なくて、俺が追っていた婦女連続殺人事件の方は、無いのと同じ。被疑者が捕まったんだからそれでいいだろ?だとよ。まったくいい加減が過ぎるぜ。」

皇「丹羽さんは、あの、テレビでやっていたエイリアン特別犯罪顆みたいな所の隊員になってないんですか?ウルトラ警備隊みたいですよね。」

丹羽「ああ、あれだろ?『無差別破壊衝動人間対策課』」

皇「通称、イデア。・・・くくくくく。どこの中学生が考えた名前なんですか?」

丹羽「俺が知るか。そんなもん。・・・ああ、お前。ああ、残念だけど俺は無差別破壊衝動人間の担当じゃないからな。」

皇「イデアじゃないんですか?」

丹羽「あのな、いくら中学生が考えた名前だからと言ってだな、そこに配属になるのは、日本のエリートだけなの。所轄のチンピラ風情が採用になるほど甘くはないの。まぁ、いいとこ、弁当配りが関の山だな。刑事部長とか、一生懸命、弁当の配布やってるよ。いくら管理職でもあれは見てらんねぇ。警察庁本部が偉いとは言え、あそこまでヘーコラする必要はないと思うけどね。俺は。」

皇「無差別破壊衝動人間っていうのも、言い得て妙ですね。」

丹羽「科学的に捜査が入って、ウィルス、病原菌の類で、狂暴化する訳じゃない事が分かったからな。」

皇「だから最初からそう言ってたのに。」

丹羽「あのなぁ。お前、あれがミミズの親玉が人間に化けてた、とか言ってみろ?俺はそのまま病院送りだ。定年まで待たずに年金暮らしにされちまう。」

皇「・・・でも、丹羽さん。言ったんでしょ?」

丹羽「だぁかぁらぁ俺は、宇宙人とか地底人とか、そういう未確認生命体の類じゃなけりゃ、大勢の人間をおかしくさせるなんて事は出来ないって言っただけ。遠回しに言ったんだよ。人間の出来る仕業じゃねぇって事をな。そしたら、その場で、つまみ出されてお払い箱よ。誰も信じやしえね。・・・良かったよ。ミミズが化けてたなんて言わなくて。宇宙人って言ってバカだと思われた方が、まだ、信憑性があるからな。」

皇「結局、警察庁本部は何と、結論を出したんですか。」

丹羽「超能力だ。・・・超、能力だぞ。エスパーって意味じゃなくて、アビリティな。スーパーアビリティだ。結論的に、非現実的な能力を持っている催眠術者って事になった。集団の人間を、催眠術を使って、狂暴化させる、特殊技術をもった犯罪者。」

皇「それだけを聞くなら、あながち遠くはない答えですけどね。イエスマンは、人間の持つ、感覚神経を使って、遠隔から、人間を制御するだけですから、催眠術と言っても間違いではありませんね。催眠術と違って、神経を直接、支配されてしまうので、強制的にイエスマンの制御下に入ってしまう訳ですが。」

丹羽「・・・それがさ、お前が理路整然に言っている、そのこと、1ミリも理解してないからな、俺は。」

皇「捕まったイエスマンは、その後、同じ能力を使って、人を狂暴化させているんですか?・・・やっぱり出来ないでしょう?」

丹羽「お前の言う通り。・・・玉ねぎとかキノコとか使ったけどな、化学的な火傷と裂傷はほぼ治った。あのなぁ、いくら玉ねぎの汁って言ったって、目に入ったら、失明することもあるんだぞ?キノコだってそうだよ、考えてやれよ、まったく。」

皇「・・・あ、そうですよね。私、知りませんけど。」

丹羽「まあ別にいいよ。それは。別に。・・・だけどな。ここはまかり間違っても法治国家だ。罰を与えるのは国だ。個人じゃねぇ。私刑なんて前時代的なものをやってる国じゃねぇんだよ。・・・スメラギぃゆめゆめ忘れるなよ。場合によっちゃあ、俺だってタダで済ませられねぇ話だってあるんだからな。警察署の便所の裏でタバコ吸ってて、許されないのが法治国家なんだよ。」

皇「法治国家もなかなか堅気なんですね。」

丹羽「だが、俺は法を破る。・・・何故なら、俺はタバコを吸いたいからだ。ニコチンが不足していると、体が訴えかけているからだ。」

皇「・・・自由な法律でようござんした。」

丹羽「あ、そう。それで、その、あいつ。ブタ箱で、喚き散らしているらしいんだが、ちっとも、超能力を発揮しねぇんだとよ。口では、お前等、全員、

お前等っていうのは、イデアの捜査員な。捜査員に向かって、俺のしもべになって暴れまわれ、とか、お前等みんな俺の奴隷だ、とか宣っているんだが、一向に人間を操る事は出来ないらしい。・・・一番、しょげているのはあいつなんじゃないか?」

皇「神経を支配する能力を、失ったか、奪われたか、持ち逃げされたのか、つまり、イエスマン自体も消耗品だったって事ですよね。かわいそうに。」

丹羽「そうだったとしても、全知全能の神にでもなったつもりでいたんだろ?全能感っていうのかなぁ。たぶん、それがあいつのアイデンティティだったんだ、いくら人を殺したりして犯罪に使ったとしてもだ。自分のアイデンティティを失ったんだ、その喪失感は、計れるものじゃねぇと思う。気持ちは分かるが、理解できる話じゃねぇ。」

皇「自暴自棄になっているって事ですか?」

丹羽「いや、そのずっと手前だ。ただのガキ。もらった玩具を取り上げられたんだ。ガキが玩具を取り上げられて、泣いて喚くのと同じ。ギャーギャー騒ぐだけで何の解決にもならないし、話にもならない。ガキの子守をするエリート官僚様がお気の毒でたまらないわ。」

皇「それもお仕事だから仕方がないんじゃないんですか。その、なんでしたっけ?悪魔超人犯罪顆でしたっけ?そこに、国家予算で何億って予算をつけたんでしょ?お金を貰った以上、働かないと、国民から苦情が来ますから。ガキのお世話をしながら、能力の解明をしていかなければなりませんからね。」

丹羽「オッサンのお世話するのも大変だぜ?・・・しかも、スメラギぃ。黒幕が他にいるんだろ?」

皇「ええ。こんな簡単に捕まるような奴ではないはずです。やろうと思えば、あんな小さな風俗街だけで済む話ではないはずです。もっと大規模に、人間を支配下に置けるはずです。それをしない、という事は、黒幕が他にいて、今回、たまたま私達の町で、暴れただけと考えた方が合理的だと思うんです。たぶん、実験的に。もしくは、既に同様の事件が起きていて、それは、薬物中毒だったり精神性の疾患だったり、別の理由を与えれてしまっているけど、衝動的に狂暴化した。」

丹羽「そりゃそうだろう。ミミズにそそのかされて狂暴化した、なんて、誰も信じないだろう?」

皇「今回だけじゃなく、同じ、事例が日本中、世界中にあるかも知れませんね。私達が知らないだけで。そういうの調べるのが、正義超人の皆さんの仕事なんじゃないんですか?」

丹羽「だからさ、お前ね、何時の間にか、キン肉マンになってるから。無差別破壊衝動人間、対策課。・・・衝動的に狂暴化して破壊行動とる事案なんて、言っちゃ悪いけど、腐る程、あるからな。その中に、どれくらいのパーセンテージで、ミミズ人間が関わっていると思う?」

皇「知りませんけど。それを調べるのが警察の仕事でしょ?」

丹羽「そうなんだけど。・・・ま、俺達が出来るのは、そのエリートの皆さんの弁当を手配したり、コピー用紙を裁断したりするのが仕事なのよ。」

皇「でも、だいたい事情は分かりました。あれだけ暴れたイエスマンでさえ、捨て駒。・・・ミミズの世界もシビアなんでしょうね。」

丹羽「シビアなのは人間も同じだ。・・・おんなじ弁当じゃ飽きちゃうから、違う弁当を頼んだりしてな。」

皇「・・・大変ですね。」

丹羽「・・・大変どころじゃねぇよ。」


※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。

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