箱舟 第15話
警察官「感染者、意識回復」
丹羽「ようスメラギぃ、生きてか?」
皇「あ?あああ、ああああ?」
丹羽「無理すんな、まだ、寝てろ。」
皇「ぃえぁ?」
丹羽「悪いな、お前の手ぇ足ぃ、縛ってるんだ。」
皇「う゛ぅ!」
丹羽「趣味じゃねぇぞ?俺はそんな趣味、ねぇからな。第一、縛り方、知らねぇし。・・・やっぱこういう時の為に、団先生に、そういう縛り方、教わっておけばよかったなぁ。」
皇「うぅうぅ! う゛あ゛え゛ぇ」
丹羽「まぁ、聞け、スメラギぃ」
皇「グェヲ」
丹羽「お前が今、正常か判断できねぇ。他の奴も、拘束を解いた途端、また暴れた奴もいる。ホームレス野郎の病原菌は厄介でなぁ。個人差があるんだ。だからまだしばらく、経過観察が必要なんだ。
一応、警察一、優しい俺が経緯を話してやる。ありがたくおもえよ?
お前が発見されたのは、昨日の晩だ。8時ぐらいかなぁ。公園で感染させられたようだ。お前の他にも、数人、感染して、狂暴化し、見境なく、人間を襲ったり、物を壊したり、ホントいい加減にして欲しいよなぁ。昼の鎮圧作戦で、たくさん狂人を逮捕拘束したっていうのに、お前らみたいのが、どこからともなく湧いて出てくる。お前らはゴキブリか?・・・警察も暇じゃあねぇんだ、それでもモグラたたきするしか手段はね。ゾンビが湧けば、特殊部隊が急行し、鎮圧する。それの繰り返し。
公園で何やってたんだ?裸祭りか?えぇ?おい。」
皇「うぐぅ、うごぉ」
丹羽「まぁ今のところ、分かっているのは、暴れまわっているゾンビ共も、数時間経つと、意識が戻ってくるらしいんだが、暴れていた時の記憶はまるで無い。ヤク中かアル中か、おんなじ症状だ。意識が戻る時間は、個人差があって、三時間程度で、正常に戻る奴もいれば、十ニ時間かかった奴もいた。ずぅぅぅぅぅっと、頭がおかしくなっている奴はさすがにいないけど、まぁ、未知の感染症なのか、薬物依存症、精神疾患、考えられる検査はぜんぶ行われる。人間、一度、警察に捕まると、なかなか返してもらえないんだ。・・・スメラギぃ、お前も、血ぃ抜いたり、検査するから覚悟しておけよ?
狂暴人間は、お前等、公園で暴れていた奴を最後に、現時刻まで、確認されていない。警察は鎮圧作戦が成功したと考えている。警察の上層部はお気楽でいい気なもんだ。現場の人間は戦々恐々しているのによぉ。
でなぁ、お前達が暴れていた公園で、簀巻きになったオヤジが発見されたんだ。簀巻きだぞ?頭に、袋をかぶせられて、手と足に、テープでグルグル。しかもだ。質が悪いのが、皮膚がただれる程、火傷をしていたんだ。火の火傷じゃない。化学的な火傷だ。ありゃぁ治るのに時間がかかるぞ。・・・ヤクザの抗争じゃないかってくらい、質が悪い。幸い息があって、今は病院で治療を受けているがな、助かるかどうかは分からない。酷い有様だったからな。」
皇「フガ フガ」
丹羽「こんなに人間がおかしくなって、町中、暴動が起きているのにあの連中ときたら、自分達の勢力争いで、半殺し。警察の仕事を増やすなって話だよ。まったく。」
皇「フゴォ ア ゴゴ アアゥ」
丹羽「なんか言いたいのか?口に貼ったテープ、取る訳にはいかないんだよぉ。俺、責任とらなくちゃだから。俺、責任とりなくないから。平の平の警察官だからさ。
これは俺の予想なんだけど、公園で暴れたヤク中連中が、エスパーホームレスの陽動だったんじゃないか。まんまと陽動に乗っかっちゃったんじゃないかってな。そんな訳で、ホームレス野郎は逃亡中の行方不明。あのクソ野郎。また仕事を増やしやがってぇ。
いくら逃げたってそんなに遠くには逃げられねぇだろぉ、警察は目下、ホームレスゾンビマンを捜索中。今日中には捕まえられるだろう。そうすれば打ち首獄門、逆さ吊り。あいつもお終いだなぁ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
皇「フゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオ!」
丹羽「うるっせぇなぁ。・・・・そんなに騒ぎたいなら、今すぐ、採血してやるよぉおおおお、なああああああああ?ああああああああああああ?俺、医者の免許、持ってないけどなぁあああああああああああ?」
皇「ンゴゴゴオオオオオオ! ダゥバガェ!」
※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。