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箱舟 第13話

ピ ガー

ルシア「え?防護服?」

ホスト「ええ。防護服着た連中が公園に入っていきます。」

ガー ガー

ルシア「わかった。引き続き、変わった事があったら連絡ちょうだい」

ホスト「わかりました オーバー」

ピー


ルシア「防護服。・・・警察?保健所?厚生省?人が突然、狂って暴れまわったんだ。何かの感染症だって報告があったのかも知れない。本当のゾンビ映画ね、こりゃ。」




杏子「相手の目を見ないで喧嘩する方法?」

ルシア「そう。なんかアイデアない?」

杏子「だいたい過去のマンガとかで対処法、出尽くしてはいますけど。」

ルシア「まぁ、そうなるよな。」

杏子「簡単なのは、視覚認知外からの長距離射撃です。ヤシマ作戦でおなじみの。」

ルシア「相手が、こっちを認識する前にやっちゃえばいいって事ね。」

杏子「ええ。そういう事です。」

ルシア「例えばさ、長距離射撃するって言っても、スコープで相手を狙うじゃない?そうすると、もし、相手がこっちを見た時に、相手と目が合うじゃない?」

杏子「スコープ越しにってことですか?」

ルシア「そう。そうするとアウトなのよ。むしろそれだと積極的にこっちから見にいっちゃってる事になるから。」

杏子「認知外から狙って、相手が、こっちに気づくことあると思います?・・・私はないと思いますけど。」

ルシア「向こうのさ、チート能力があってさ、距離に関係なく、目が合うとアウトなの。目が合わない保証が絶対ないといけないわけ。」

杏子「あとは、ガイ先生がイタチと戦った作戦とか、十本刀の宇水さんとか、ありますけど。どれも素人には不向きで実用的ではありませんね。」

ルシア「杏子、一般人が長距離射撃とか言っちゃって、まず、銃、使えないからね。それにレールガン的なもの、ないから。」

杏子「あ、あははははははははははははははははは。そうでした。」

ルシア「相手の目を見ないで、戦う方法。」

杏子「古典でいいなら、メディーサの盾、っていうのがありますけど。」

ルシア「あ、鏡。鏡の盾ね。」

杏子「見たものを石にしてしまう能力を逆手にとって、鏡で自分の目を見せて、石にしちゃうっていう奴。」

ルシア「石になるかも知れないけど、私が考えて欲しいのは、どうやって戦うかって話。鏡、見せるのはいいけど、その間、どうやって戦うかよ。鏡超しだって何だって相手と戦わなきゃいけないんだし。チラチラ見てたら同じでしょ?チラ見した瞬間に石にされちゃうだろ?」

杏子「相手の目を見なければいいんですよね?」

ルシア「さっきからそう言ってるだろ?」

杏子「なら、相手が目を開けなければいい。相手の目を開けさせなければいい。これです、これ。」

ルシア「玉ねぎ?」

杏子「玉ねぎの汁です。硫化アリルっていう成分です。これを相手の目の中に入れてやれば、痛くて目が開けられないはずです。場合によっては角膜が溶けて失明する恐れもありますし。」

ルシア「いいね。いいね。杏子、極悪非道だね。そういうの好き。」

杏子「そんなんでいいなら、唐辛子パウダーとか、催涙スプレー、焚火の煙だって、風向きが悪ければ目が開けていられなくなるほど、困る事があるじゃないですか。」

ルシア「きひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ。そうか、やりようによっては戦えるな。」

杏子「・・・おかしな事に首を突っ込んでいないでしょうね?」

ルシア「今、地球を征服しようとしている悪の生命体と戦っているんだ。」

杏子「・・・」

ルシア「?」




ピー ガガガガガガガガ

ガピー

額賀「こんな状況じゃ商売にならないからね。上からも逐一、状況報告を求められているんだ。まったく嫌な役回りだよ。」

ルシア「額賀さんのお店の皆さんが情報を回してくれて助かっています。」

額賀「この町は僕等の箱庭同然だからね。イエスマンだっけ?あの精神異常のホームレス。町の中央に現れたらしいじゃないか。いよいよ本気で戦争を始めようとしているんじゃないか?」

ガ ピー ピーガー

ルシア「もし、本気で戦争をしようとしているのなら、頭が悪いやり方だと思いますけど。」

額賀「僕は信じていないけど、超能力で、人を自由自在に操る事が出来るんだ。警察だろうと自衛隊あろうとスワットだろうと、こっちが人間である以上、奴には勝てないだろう?」

ルシア「そこなんです。そこ。」

額賀「そこ、?」

ルシア「地球を征服するとか言っている奴が、いざ地球を征服しようとします。どうやっておこないますか?・・・制服の仕方にもよると思いますが、昔の火星人襲来やサイヤ人来襲みたいに、直接、乗り込んで来て、火力をもって制服するんでしょうか?頭の良い宇宙人なら、そんな事をしなくても地球制服は可能だと思います。わざわざ火の七日間、巨人の地ならしをする必要なんてないんです。」

額賀「まあ、確かに、武力を行使するって、子供じみているし、自分の力を誇示したいだけにしか思えないね。」

ルシア「ええ。そうです。・・・この人間社会の、社会システムに入り込んでいけば世界征服は黙っていても行えてしまいます。政治だったり、反社会的な組織であったり、そういう人間と取って代われば良いだけの話です。もし寿命が長いのであれば、時間をかけて、ゆっくりと、人間の預かり知れない所で、宇宙人だったり、かのワームが、地球を征服しているはずです。これもミギーで有名な寄生生物の漫画からの受け売りですけど。」

額賀「え、あ、っと、いうことは、今回のテロ行為は、あのミミズ人間の単独行動だと?」

ルシア「私は本気で、地球を征服するつもりがないように思えます。・・・サイヤ人みたいな戦闘民族で戦う事だけが生き甲斐みたいな奴でない限り、言動と行動が一致していないと思います。」

額賀「じゃあ、奴の目的はなんなんだ?・・・快楽の為に女を殺したとでも言うのかい?」

ルシア「それは分かりません。自分の力を誇示したいが為に人を殺したのかも知れませんし、他の理由かも知れませんし、そこはほら。私、イエスマンじゃないから分かりません。」

ガー ガー ガピー ピーピーピー

額賀「いや、ごめん。ルシアちゃんに聞いても分かる話じゃないよね。悪かった。」

ルシア「どっちにしても、警察組織とイエスマンの武力衝突は避けられないでしょう。」

額賀「・・・極力、店に被害を出してくれない方向でお願いしたいけどね。」

ルシア「警察とイエスマンが衝突する前に、捕まえて、この町で殺された人達の仇を取りたいと思っているんですが、」

額賀「この町のケジメって奴だよね。上の人達も、欲しいのはケジメの方だからね。」

ルシア「非力な私に、ご尽力いただけると助かります。」

ガーガー ピ ガー




ピ ピ ピ

ホスト「ルシアさん?ルシアさん!あのぉ、例のホームレス男が、警察と、なんか、揉みあいになってます!」

ルシア「え?もう!」

ホスト「か、囲まれてます!・・・警察に囲まれてます、ホームレスが警察に囲まれてます」

ルシア「場所はどこですか?」

ガー ガー ピピ

ホスト「公園を出てすぐの所です。あと、道を一本渡れば中央通りです!」

ルシア「風俗街のど真ん中じゃない!」

ホスト「警察が説得しているみたいですけどぉぉぉぉぉぉおおお、あ、あああああああ」

ルシア「どうしたの!」

ホスト「えええっと、警察官が警察官を、襲ってます!よく分からないけど、急に警察官同士で揉め始めました!あ、あ、あ、あ、あ、逃げていきます!警察官が逃げていく!ああああ!え?警察官が追いかけて行きますよ?」

ルシア「昨日の夜と同じだ。」

ホスト「あの、応援にきた警察官が、棒で叩いたり、盾で叩いたり、警察官同士で戦ってます!あ、あああ、網で、網でグルグル巻きにされてます!やられた警察官がグルグル巻きにされてます!」

ガー ピー ピー

ルシア「あの、ホームレスの男は?ホームレスの男はなにしているの?」

ホスト「あ!・・・あ、見失いました!いません。いません、ホームレスの男がいませんよ!」

ルシア「あなた、あのホームレスの男に近づかないで!あなたも、あれに見られると、正気を失って暴れ出すよ!いい?あれには近づかないで!」

ホスト「え?・・・あ、はい。わかりました。 近づきません。」

ピーガーガー ピー


ルシア「警察は何故無策で近づく?これじゃ昨日の二の舞じゃない。・・・情報が共有されていないの?」


ガガー ピー ピ

ホスト「こちら郵便局前交差点、どうぞ」

ルシア「はい、こちら、スメラギルシア、どうぞ」

ホスト「たった今、昨日のゾンビの親玉とみられるホームレスが、ゾンビを従えて、郵便局前交差点まで侵攻してきました、どうぞ」

ルシア「警察は?警察は何してんの?」

ホスト「警察は、ええ、ゾンビと交戦してますが、ゾンビの数が多く、徐々に後退の模様、どうぞ」

ルシア「あなた、早く、そこから離れて!巻き添え、喰らうぞ!」

ホスト「了解、直ちに撤退する どうぞ」

ピー ガガー ピーガー


ルシア「イエスマンが進軍している?警察と全面的に戦うつもりか?・・・むしろ、奴は己の力を試したいんだ。遅かれ早かれ警察と全面戦争をするつもりだろう。警察は警察でバカか?イエスマンの味方を増やしているって気づかないのか?」




トゥルルルルルルル トゥルルルルルルルルルルル ガチャ

丹羽「ようスメラギぃ、生きているか?」

ルシア「おかげ様で。・・・丹羽さんはどちらに?」

丹羽「俺かぁ?俺は公安部の事務所だ。俺は重要参考人だからここから出られねぇ。出られねぇけど情報だけは入ってくる。・・・安全な所で高みの見物だなぁこりゃ。」

ルシア「丹羽さん、警察は何をやっているんですか?昨日より犠牲者を多く出してますよ?」

丹羽「あれの超能力をどうする事もできねぇから、なぁ。お手上げだ、お手上げ。・・・お前に教えておいてやりたい事があってな。」

ルシア「なんです?あらたまって。」

丹羽「狙撃に失敗したんだ。」

ルシア「え?・・・はぁ?え?」

丹羽「お前、おかしいと思わなかったのか?婦女連続殺人犯で、超能力で人間をおかしくさせちまうあいつを、警察が、放置しているのか。俺だったら見つけ次第、始末するね。」

ルシア「失敗したんですか。」

丹羽「ああ。狙撃係りが配置されて、発砲する瞬間、その狙撃係りが、おかしくなった。他の奴、同様、見境なしに暴れ出したんだ。」

ルシア「狙撃係りが。・・・ああ。そうですか。」

丹羽「スメラギ、お前、驚かないのか?それも俺は心外だけど。」

ルシア「ある程度、想定はしていたんですけど、まさか、本当に、距離に関係なく、人間を暴徒にする能力があるとは、思わなかったんで。」

丹羽「あのエスパーホームレス。何でもアリだな。核爆弾でも落とさない限り、殺せないんじゃないか?」

ルシア「丹羽さん。もしかしたら、丹羽さんがいる所が一番安全かも知れません。事態が鎮静化するまでそこにいる事をお勧めします。」

丹羽「俺もそうしていたいんだけど、俺も所轄の人間だろ?いつまでも後輩に任せておけねぇんだよ。そのうち、隙を見て、現場に復帰する予定だ。」

ルシア「それって脱走って言うんじゃないんですか?」

丹羽「バカ野郎。戦略的現場復帰だ。・・・お前も、バケモン相手に、無茶するんじゃねぇぞ?いいな!あいつは遠距離射撃も無効化するバケモンだ。素手じゃ戦になりゃしねぇぞ?」

ルシア「心配してくださって、ありがとうございます。」

丹羽「・・・バケモンの侵攻ルート上に、俺達の警察署がある。たぶんそこが奴の本丸だ。」

ルシア「本格的にドンパチしそうですね。」

丹羽「いくら狂ったとはいえ、人間相手に警察も無暗に発砲も出来やしねぇ。・・・法治国家の悪いクセだよなぁ。俺達がヤクザならポリ公なんて蜂の巣なんだがよ?」

ルシア「非常事態に法律が足かせになるのは、昔からですよ。殺せるものも殺せないし、反対に、助けられる命も助けられない。何もしない、何もやらないが、日本古来の美学ですから。」

丹羽「まぁ、そういう事もあるわな。少なからず、それに俺達は守られて、のほほんって生きているんだ。これからものほほんって生きていきたいもんだぜ。」

ルシア「同感です。」

丹羽「そういう訳だ。」

ルシア「どういう訳ですか?」

丹羽「お前は奴に近づくな。いいな。」

ルシア「・・・」

丹羽「聞いてんのか!てめぇ!おい、スメラギ!」

ガチャ

丹羽「切りやがった」


※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。

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