私の苦悩 (父)
「何だこれ」
水に包まれている屋敷を見る。
私たち、つまり虎次郎、妻の桃花は、屋敷を見て唖然とする。
そして、瞬時に対応する。
「魔族の襲撃だ、軍を呼べ!」
虎次郎は馬車に隠してた剣を出す。
見た感じによると上位魔法の「水籠」だ。発動に時間がかかるのとあまりの残略性で霊長類戦争法で固く禁止されていたはず。
もし、使ったとしても本来一般の魔法職でも複数人閉じ込めるのが限界だ。
どんな魔力量してんだよ
こころの中で呟く
とりあえず情報収集のため、避難している侍女に話を..
「虎次郎様、まだソコツ様が」
侍女が泣きながら丸い水に包まれた屋敷を見る。
自分の貴族の子息を死なせてしまうのは、愚の骨頂、クビいや処刑されてもおかしくない。
私は急いで屋敷に走る。
魔族の狙いはソコツ?
何故
確かに私の魔力量と剣術はこの国の指折りの存在であることは承知している。まさか捕虜に…
魔族に子息と国天秤に掛けろと言われるかもしれない。
それなら私は迷いなく子息、我が息子 ソコツを選ぶ。
屋敷の近くまで来ると感じた。
この水籠の魔力濃度はありえない程に濃い
この水を一般人が触れたら絶え間ない苦痛の末に死んでしまうだろう。
「侍女や庭師、全員下がらせろ」
果たしてこの中にいると思われるソコツは無事であろうか
「これはいったい」
ようやっと軍が来た。
一様、魔法師もいるみたいだ。
「この魔法が何だか分かるか」
一様確認する。上位魔法だ普通なら発動にも時間かかる。
だが私がここを開けたのは三時間
私がいない間、使用人の目を避け発動できたとは思い難い。
魔法師が鑑定魔法をかける。
「み..水籠です。」
いまだに成人式を迎えてもなさそうな子供だったが軍が置いているなら信じるに値するほどの才能はあるだろう。
「解除出来そうか」
「不可能です」
「対応策は」
「無理です」
らちが明かん
私は水の抵抗の多いいローブを脱ぎ、ズボンとシャツだけになった。
「なな何を」
魔法師が動揺する。だがその時には虎次郎は屋敷を囲む水に飛び込んでいた。
虎次郎には風と水の精霊の加護がある。
なので、三十分の水での呼吸が可能
「お待ちを」
残った兵士も後を追うように次々と飛び込む。
「がガアアアアアアッ」
超高密度の魔力体に入るのはキツイ
虎次郎の体が破裂するほどの痛み、入ってきた兵たちの呻き声が聞こえる。
虎次郎の体は限界を迎えていた。今の体が爆発にずの表面にずの表面水のような不安定さで均衡を保っていた。当然、虎次郎も百も承知
まだだ
体から力が漲る。
まだここで終われない
虎次郎は屋敷の扉を壊し強行突破、すぐさまソコツの部屋に行く
が――
いない
焦る
深い絶望と家族を亡くすことへの恐怖。
ソコツは、剣術の腕は驚くほどいい、しかも自分と違い努力する。あの人材を失うのは、一家いや国の損だ。
暫らく考えたが最終的に一つの結論に至った。
この水籠の中心に行き発動者を殺すことだ。
多少屋敷を壊すが、また作ればいい、さすがにソコツは中心にいないと思うが..
「これでも私の力は元上級者級貴族だ。」
「水の精霊よ、風の精霊を今私にもう一度力を、この状況をひっくるめる力を」
精霊が姿を現す。
願いは届いた、精霊は空気中の魔力を使い力を行使する。肉体もそうだ。
こんなにはっきりと見えるとは、どれほどの
いや関係ない
今は殺すことに集中だ。
体の気が増幅するのを感じる。
息を命一杯吸う。
現在水中稼働時間残り12分
1階ではない
― 残り9分
母の部屋にいない
― 残り5分
客の間にはいない
― 残り3分
最後に自分の部屋か
もしくはすれ違ったのかもしれない。
ソコツがいない
だが人の気配がある。しかもこの部屋に近づくほど魔力が濃くなる。
加護をもらわなければ死んでいた。
扉が開いてる
先手必勝
虎次郎は、壁を蹴り速度を落とさないまま強大な運動エネルギーがドアに当たり壊れる。
虎次郎は動きを止めた。
どういうことだ。
残り1分
ソコツがいる
残り三十秒
ドッペルゲンガーか、それにしても似てすぎる。だが、ソコツにはそこまでの力を持ってないはずだ
十秒
「アナタは誰ですか」
ソコツがこちらを向く、目が光っている。
その声は、聴いたことのない言語だが不思議と意味は分かった。
ソコツの声ではない。
それでも、言葉の一つ一つに恐怖が募った。
足が震える
5秒
息子の中にこんな化け物がいたとは…
3秒
いや、ソコツが化け物かもしれん
「主の父と認識、警戒を解きます。」
一秒
ソコツが黄色い光を発し、屋敷を囲んだ水は破裂した。
破裂した水は屋敷から森奥まで流れ、その影響を受けたのか植物が急激に成長した。
つまり原因はうちの子か
アッハハハハハハハハ
虎次郎はただ笑うことしかできなかったという。