決闘
空気が変わった。
ソコツは、少女から距離をおいた。何故なら、先ほどまであった水柱が5つ全て消費されたからだ。一本で即死級の攻撃力を誇っていた柱が一気に消えた。警戒せざるを得なくなる。
何も変化がない
だが、本能が何かが来ると警告を鳴らし続けている。
自分で作った湿地、地面が濡れることで急激に水蒸気の量が増す。それに温度を下げてしまえば、霧が発生する。それに雨まで降り出した。相手もそうだが水が多いいのは水魔法使いとしてプラスだ。
じゅわ
痛い
痛い じゅわ
攻撃!どこから じゅわ
体からいきなり痛みがする熱い、痛い、やけどするみたいだ。
攻撃はどこから じゅわ
ソコツは、ひどい痛みのする腕を見る。 じゅわ
「!!!」
腕の皮が溶けていて、肉が見えていた。
『酸性雨か!』
「水の盾」
「見つけた!!」
猛スピードで剣が目の前から出現する。
咄嗟の判断で避ける。そして、その剣はバターを切るかのように周り位にある木々を切り倒した。
やば
冷や汗が出た。これは、武器なしでは対抗できない。怖い、怖い、怖い、逃げたい、ここから逃げ去りたい、人間としての危機察知能力が退避を呼びかけている。
恐怖が心の奥底から湧き上がる。
逃げたい。
怖い
でも、同時に心が踊る。
心が震え上がる。ソコツ、いや来訪者の闘争心が沸き立つ。
あなたは知っているだろうか、龍も魔物も魔力すらもない世界で最も残虐で、非道で、最強で最凶な生物の名を、彼らは弱かった。
牙、屈強な骨、皮、超次元的な視力、鋭い爪、何者にも負けないフィジカル、彼らはそのいづれかも持っていなかった。そして、そんな弱いホモ属の中でもホモ・サピエンスは特に弱かった。
そんな中、誰か彼らが世界を支配できると思ったのだろう。誰か、我々ホモ・サピエンスが唯一無二の存在になると想像しただろうか
いや、誰も想像すらしてなかった。
母なる海も、地球すらも
だが、現に人間は唯一無二の人族として食物連鎖のピラミッドの更に上の生物として君臨している。
何故か、
何故、我らはホモ属唯一無二の存在たり得ているのか、
能力が勝っていたから。
違う。
知能が発達していたから。
違う
正解は、私達には、異常なほどの攻撃性と嘘を持っていたから。
嘘は、集団をまとめるために宗教や英雄などを作れる。
そして、ほかのホモ属はかの集団の異常なほどの攻撃性に敗れた。
そのホモ・サピエンスの記憶と意識はソコツに前世から染み付いている。
その本能が彼を湧き立てる。
真っ向勝負は、なしだ。
「ひとまず戦略的撤退」
「逃がすか!!」
「なんつって」
「!!」
少女の踏み込んだ足が泥に沈む。
それによって彼女の重心は大幅に変更され、結果横転する。
「氷剣」
周囲にあった水分を凍らせ剣を形成する。
相手が殺しにかかっているから正直に言うと殺したい。そのほうが楽だから。しかし、裁判で勝たなければ正当防衛は認められないし、私としては、右大臣の娘という超重要人物の親族を殺した人間がそう簡単には、というか絶対無罪はないと思うからだ。国を追われる立場にはなりたくない。
なら必然的に相手を気絶させるのが先決だ。
アニメではよく首を叩いて気絶とあるが、あれは普通にやったら延髄に傷をつけて一発でお釈迦だから却下。
切るのもだめ、殺すのもだめ、なら単純に打撃で気絶させればいいのでは!
我ながら素晴らしいアイディアである。そうと決まれば氷の剣をメイスの形に変える。まあ、どちらかというと金棒に見えるが細かいことはどうでもいい。
「できれば一発で寝てくれないかな」
そう言いながら、ソコツはメイスを少女の頭に振りかざした。
「 」
メイスが消えた。
なんで?
細かく言うと少女に当たるはずの部分が消えたというのが正解だ。
なんの能力だ?
ソコツは考える。が・少女は待ってはくれない。
「痛くも痒くもないわよ!!」
「氷壁」
「無駄!!」
剣は、すり抜けるように壁を通り過ぎ、少女もそれに続いて通った部分を消滅させなが有に壁をすり抜けた。
「死ね!!」
氣を更に消費し攻撃を紙一重で避けきる。
泥を操って、スケートのように泥の上を移動できる「泥滑り」をかけて置かなければ今頃真っ二つだった。
もう体が持たない。体中の筋肉が骨が、悲鳴を上げている。残りの氣も魔力も少ない。
次で賭けるか、一か八か
ーーーーーーー
嘘でしょこれでも避けきるの!
「矛盾」を発動してなかったら今ごろ気を失っていたかもしてない。
少女は驚いていた。知識では勝っている。
彼の知っている魔法も旧世代の非効率の魔法術式で魔力を相当食っているはず。
氣も使ってるようだけど、だからといって痛みが癒える訳では無い。
そこまでの痛みをせよって何故、なぜ、笑っていられるの!!
痛いのが嫌だ、それが人間いや生物としての正しいあり方のはず。なのになんで、この眼の前にいるいけ好かないガキ(ちなみに同年代)は笑っていられるの!
手から肉みたいのが見える。
水の盾で自分の上空は防いでいてもかなりのダメージを食らっているはず。
なんで!
怖い、あの攻撃がもしもあったっていたら。
でも大丈夫
この「矛盾」があれば、私の武器はどんな障害物すらも貫くし、私の周りを覆っている透明な膜はどんな物質でも瞬時に溶かす。
私には、物理攻撃は聞かない
しかし、どうしてそこまでこの沼地を高速に移動できるのだろう。
こんな泥だらけの場所。足が重い、靴に泥が入ってキモチワルい
どんどん戦意が低下していく、精神が削られる。
このままじゃ負けちゃう。
次で仕留めよう一発で、幸い酸性雨で木々は液体と化している。
障害物はない
避けられようがない。あ、あっても避けられないか
少女は、ソコツに剣を向け氣をできる限りすべて体中に循環させ、魔力を剣先にすべて注ぎ火魔法を付与した、そしてキツイ鍛錬の中で会得した技能『一刀両断』を使う。
「いっとう両っだー・ー」
また同じ手を!!
しかし、今回沈んだのは足だけではなかった。
頭のてっぺんまで泥に沈んだ。だとしても、関係ない
技能をそのまま使い周囲の泥を吹き飛ばす。氣を全開まで使う攻撃、それはヒグマの全力の攻撃と等しいそんな腕力と強力な魔力が重なり合い周囲の泥は強大な熱量で一瞬にして水分を失い土となって吹き飛んだ。
目は砂が入って見えないがあのガキの足場はこれで崩れた。
このまま降ってしまえば、攻撃は絶対当たる。
そして、聞こえる詠唱を英雄すらも殺してしまう呪文を
「我が国の水の神よ」
「やめろおお!」
焦る焦る
それはやばい、発動前に
「大地に渦巻く生命の源」
声のする方向に剣を振るう
しかし、攻撃があたった感触がない。
どこ
「の龍脈よ敵に水の牢獄を、敵に痛みを」
全方位に攻撃だあああ!!
破壊音がするが声はなお続く。
「水籠」
私は息苦しさとともに意識を失った。