はい、もう嫌だ。
皆さん、どう思います?
私は、今すぐに父(虎次郎)をぶん殴りたい気持ちでございます。
なぜ?
それは当然、今まさに目の前にある脅威を避けるために行動したのにあんんのおおおおおおお逃げ腰のッ弱虫がああああ!!
なんでこうなった!
そもそも、この世界の貴族の令嬢は、皆こうなのか?
それか、彼女だけなのか。
ソコツは、父の提案した決闘場(山)に向かいあるき進む婚約者を見つめながら考える。
「もしそうなら貴族なのが恨ましいな」
ソコツは、ボソッと口で言った。言ってしまった。そして、前にいる女性、いや少女は、聞き逃さなかった。高い身分の貴族になると、それほど多くの責任が伴い洗脳に近い教育を受ける。曰く貴族と平民には確固たる身分、存在の価値が泥と宝石のような違いがあると、そして貴族になった人間は、国に一生奉仕をし続けその地位に確固たる誇りを持つこと。という教育がされる。つまり、ソコツの発言はもろにそれに触れる。
「父上を私達を貴族という身でありながら」
「あっ、俺用事思い出した。またね!」
虎次郎は、逃げた。
「おい!!」
ソコツは、口では意識が虎次郎に向いているようだったが実際は違う。ソコツの意識は、まだ眼の前の少女に向いていた。いや、どちらかというと話せなかった。鼠が猫に気がつくと固まってずっと睨んでしまうように。
この世界において、貴族と平民の格差は圧倒的魔力の差とその操作技術の差を表している。なので、魔法という概念はすべて貴族が独占していて、平民の中では、戦争に行く傭兵ぐらいしか知らないレベルの機密情報。そして、それは爵位とともに情報が開示される。彼女の父は右大臣、かの皇帝陛下に助言を言うことのできる殿上人の一人だ。その権限で見れる情報の量は絶大であろう。
「水魔法 水柱」
呪文とともに6つの水柱が黒髪の少女を中心として立つ。正直に言って黒髪のポニーテールそして、幼くても伝わる意志の強さ、もう少し先の未来だったら歓迎するほどの好みに刺さりそうなんだよな。そんな子を傷つけるのは気落ちするし、女性に暴力をふるのはどうかと思うが、死ぬよりマシだ。
「死ね」
強い殺気とともに剣を取り出し、風を切りながら前進して切りかかった。
動きには、隙がある。振り方は大切りで肋の部分ががら空きだ。攻撃するか?
だが、まだ水柱がなんの効果をするかわからない。回復か、それとも防御の盾として、まさかただの飾りではないだろう。どちらにせよ攻撃する以外にわかる手段はないか。
ソコツは、氣をを全身に循環させ、ああ切りの一太刀を避けきる。その剣先が地面に触れた瞬間、柱の一つが消えその方向にあった木々は、すべて、じゅわっと音を上げて溶けた。
これで、水柱の意味がおおよそわかった。水柱は、いわば魔力のストックだろう人間は魔法を打つには、詠唱しなければ発動できない。なぜなら、魔力を体から放出すうるには明確なイメージが必要だ。それには詠唱が必要不可欠だ。しかし、その魔力をあらかじめ出しといていれば、それを使うための想像力のハードルは、水柱がないのとは段違いに低いだろう。
『要するに彼女は、念じるだけで魔法が使える。』
念じるだけで、魔法が使える。脅威だ。まず、念じられたらなんの魔法を使うのか全くわからない。しかもその予備動作は、柱が消えるというだけ。
だが、そんな機会を与えないほど攻撃をすればいい。生前の空手の師匠もよく言っていた。攻撃すると攻撃する側も防御する側も一定の痛みを背負う。しかし、攻撃する方の痛みが圧倒的に少ない。
つまり、攻撃こそ最高の防御!
ソコツは、少女の溝にきれいな下突きをして、うずくまらせた。少女は両手で剣を握っており、そんな重量の武器を人間はそう簡単に引き戻すことはできない。つまり彼女の攻撃は、避けられることを視野に入れてないのだ。
「最ッt低ね」
うっ子どもに言われるのはキツイ。だとしても、動揺する姿を見せるのは握手である。
「私は、男女平等主義なのでね。敵なら等しく排除する。」
脅すように言う。これで怖気付いてくれれば助かるんだが、まあ結果的に煽っただけだな。ソコツは、黒柿の目をした少女を見た。強い怒りにみ満ちた目を、
時間は稼いだ。あッ
ソコツは気がついた。自分が大切なものを忘れていたことを、
「剣がない」
ヤヴァあああああ!!
どうすんのこれ、相手剣なのにこっちは素手!!
いや無理でしょ、一旦中断…いや、こりゃ無理だな。
猫のように威嚇しながら起き上がろうとする少女を見て思う。でも、溝には入った。しばらくは、呼吸できないだろう。溝に入ると痛いもん 取りに行くという選択もあるのだろうが、その前に彼女が起きるだろうな。背中から切られるのは嫌だなぁ。ないものねだりは良くないな。せっかくの異世界なんだ魔法で応戦しよう。
まずはフィールドづくりだ。
「水魔法 湿気寒」
ソコツを中心に水が地面を覆うように広がっていった。その水は、地面にそっと染み込み地面を少しずつふやけさせ、急激に温度が低下した。硬かった粘土質の地面は、一瞬にして泥に変わった。登っていた山は泥びたしの湿地帯に変貌していた。
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苦しい、避け…なんで
少女は混乱していた。今まで屋敷の中で自分の攻撃を避けたのは父親だけだった。そんな彼女にとって、攻撃を避けられるのは予想外。
自分でも動きに好きがあるのはわかっていた。しかし、自分の才能でその欠点は埋めていた。
彼女には、経験がなかった。強い殺気を向けられたこと。
本気で相手にされたこと。彼女は知らなかった。自分がどこまで弱かったのか。ただ、戦闘経験があるだけで私より遥かに魔力量と才能を持ってない。そう思っていた。
だが、現実は全く違った。
彼は、数人規模でやるような範囲結界を展開した。地形を変えるなんてどんな化け物なのよ。眼の前にいるのを同世代や都にいる腰抜けどもとは一線を画すほどの違い。
父上が、選んだ意味をやっとわかったは、結婚のことにはもう文句はない。でも、私とこいつの立場の違いははっきりさせる。
一気に攻める。
『酸性雨』『矛盾』
柱がすべて消費された。
私のすべてを掛けてでも家の主導権を勝ち取る!!