婚約!
今日は、私にあの甲冑を送った主が来る。
彼の男の先祖は、戦の武功で天皇の右大臣に任命され、国事を任せられる身分になった家だ。四民平等の後も、朝廷の長い忠義が認められ、侯爵に任命された。
つまり、子爵である私たちより断然偉い。
そんな人間が来る。
家は、その話で持ち切りで、礼儀作法や一般常識の教育などがより一層厳しくなった。
大学の受験勉強を思い出すほどの過酷さであった。
だが、ゲームやテレビがあった私の時代とは違ってそこまで娯楽と言える娯楽がなかったので、苦しくはなかった。
後何故か分からんが、少し寒気もする。
「車が来た!」
窓から覗いていた使用人が、皆に知らせるかのように大声で言った。
車!
この時代の技術は精々明治時代
車なんて相当貴重なものだぞ!
さすがは侯爵ということか。
私はすぐに洋式のスーツに着替えた。
例の男が入ってきた。
その姿は、大男
侯爵というものだから肥えた体をしているデブかと思ったが。。。
そんな思惑とは裏腹に、男の体は筋肉だらけ、
体に戦闘した傷と思われる傷が何個も。
服装は、軍服だった。まあ、そうだよな。軍事により出世したんだから軍に入ってないわけがないよね。
軍服は、黒い生地に何個も勲章が付いている。
「この度、お邪魔していただきありがとうございます。」
大男は、一礼をする。
それに続いて、隣にいた補佐のような男も一礼した。
「それではどうぞ」
使用人がドアを開け、大男が屋敷入る。
その後、侯爵と父は将棋をやり、それが終わるとテーブルの上で食事をした。
同じ軍学校の同期らしく、昔から仲が良かったらしい。だから、時より侯爵が忙しい中、ここに寄り将棋で勝負するらしいがここ数年来てなかったということから、歓迎は盛大に行われる。(料理で)
私は、まだ礼儀が完璧でないことを理由にあってはダメだと言われた。まあ、あの男は絶対私を目を付けている関わりたくないので好都合!だが気になる。
少しならいいよね
ドアの隙間から覗き見る
「あ」
「あ」
使用人の燈子がもう覗いてた。
『何やってんだ』
『シー、ソコツも気になる?一緒に覗こう。』
燈子は優しい声で静かに言う。
ここで戻れと言うのはカッコ悪い。
そう思い、一緒に聞くことになった。
「ところで虎次郎」
「何だ?」
片手にワイングラスを持ち一服してから答える。
「俺が前送った甲冑、お前の息子は気に行ったか?」
「うッツ、ゴホッツ ゴホッ」
「大丈夫か?」
「大丈夫だ、ただ今この話が出ることに驚いただけだ。」
大男の顔が真顔になる。
「おい、ドアにいる者、こそこそしてないで出てこい。」
「ヤバッ」
私は、燈子を見..
居ない
どうしよう
いや初めから選択肢はあってないものだ。
「はい、分かりました。申し訳ありません父上少しばかり気になり覗いてしまいました。」
「お前...」
父が呆れた顔をすると同時に大男は笑う。
「何だお前見えないと思ったがいるではないか。」
「お前、名は何という。」
「名は..」
!
一気に体重くなった。
これは、魔力、霊力も感じる。
魔力に押しつぶされそうだ。体が、逃げろと叫んでいる。
本能が『お前は駆られる者だ』と自分に呼び掛けている。
だが、決して家が馬鹿にされる訳にはいかない。今でも、家を大事にする。日本での武士の家の認識と近い認識がこの世界にもある。
唾をのみ前に一歩、そして一礼
「私の名は、底筒男命 氏は有馬でございます。」
再び一礼をする。
またしても大男がニヤケル。
「ソコツよ、お前に朗報がある。」
何だろう嫌な予感
「俺の娘と婚約しろ!正室で」
「はぁ?」
そんな間抜けな声を上げたのは父だった。
流石に、要らない。軍と関係のある者と繋がりたいが、そこまで深くなくていい。
ここは丁寧に断って、
「ソコツよ、甲冑はどうだった。あの甲冑は魔法付与がされていて金属はミスリル、値段は相当したぞ」
ニンマリと笑う
あ、これ断れない奴だ。
ソコツは、いや、この屋敷の中全員が思った。
〈これ断れない奴だ〉
「分かりました。」
嫌だ。
こんな大物とはあまり関わりたくない。
俺の人生これからどうなっていくのだろう。
今日の空は、とても青く晴れ晴れとした快晴だった。