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おいてけぼりの錬金術師②

 フレームが緑色の光輝く映像がモニターに表示されている。

 そのフレームは帯電し少しずつ光が収束されると共に、そのフレームの中心に真っ黒い空間が映し出される。

 天井に吊るしておいたカラーの紐がバサバサとフレーム側に吸い寄せられるように揺れる。空気の流出が、やはり発生しているようだ。

 隣の部屋のどこかしらから発生した軋むような音をマイクが拾っている。だがすぐに収まったことから問題ないのであろうと判断。


「ユーナ、照明」

「はいでございます!」


 ユーナがコントローラを操作し、瞳の魔道具の頭に付けておいたランプが前を光らせる。

 ……血走った瞳の上に、動物の耳みたいの光を放つランプがついているのは新手の魔物みたいだ。


「前進」

「前進させま……」


 オレの指示に従いユーナがコントローラーで瞳の魔道具を前進させようとしたところで、フレームの中の暗い空間が消えて、フレームの向こう側の壁を映す。


「もう閉じてしまったのか」

「台座内のエーテル残量、ほぼゼロにございます」


 オレの前に置いてある長机の機材の一つ、台座と直結してある機材のメーターが赤を示している。

 世界の壁をこじ開けるだけで、一瞬でエーテルボトル内の魔力を持っていきやがった。


「マジかぁ。こりゃきつい」


 結構な量を準備しておいたのに、速攻食いつぶしてくれた。

 これは考えもしていなかった事態だ。


「世界の壁の元に戻る力が強いのか、それとも壁に穴を作るのにエネルギーを消費するのか」


 どこを改善させるべきだ?


「エーテル……以上の魔力源を用意するべきか?」

「エリクサーでありますか?」

「流石にこの量を作るのはな。それにエリクサーは怪我を治し魔力も回復させるけど魔力の回復量はエーテルとそこまで変わらないんだ」


 エリクサーが貴重なのは素材の入手難易度よりも制作難易度の高さだ。

 もちろん素材も当然貴重なものを多く使うので量を作る事は難しい。


「エーテルをもっと回復量の多い物に作り変える……圧縮? でも液体だしな。凝縮か?」


 若干言葉遊びに逃げているが、とにかく課題は分かった。


「世界の扉をこじ開けるのに、もっと大きな力が必要で、それの元となるエネルギー元を改良しないと話が進まないか」


 分担してそれぞれ研究をしたいところだが、ユーナはホムンクルスだ。

 今ある物を作る事はできるが、そこから新しい物を生み出すとなるとまた別の分野の才能が必要になる。


「むう、仕方ない」


 オレはセーナに声を掛けて、手紙を託した。

 ドリファスが適任だとは思うが、セーナの方が確実に連れてきてこれそうな気がする。






「ふうむ。なるほどのぅ」


 世界と扉をこじ開けて、すぐに閉じる。

 その光景を再度確認すると共に、応援に来たじいさまに視線を向ける。


「どうだ? 思いつきそうな素材とか道具とかあったか?」

「お前が阿呆なのがよーくわかったわい」


 ジジイがため息をつくようにその言葉をオレに投げかけてきた。


「阿呆って何だよ阿呆って」

「阿呆は阿呆じゃろうが、なんじゃこのエーテルの垂れ流し装置は。もっと工夫をせんか」

「や、それを聞きたくて呼んだんだけど」

「儂の弟子の癖に、こんな事もおもいつかんのか。まったく嘆かわしい」


 首を振るのはジジイこと、オレのビルダーとしての師匠。ゲオルグ=アリドニアだ。

 このジイさんとオレはいくつもの新しい物をこの世界に作り出した。


「まずじゃ。お主の勘違いを正す必要がある」

「勘違い?」

「おうよ、そもそもエーテルってのは魔力を回復させる薬じゃ。こんな魔力タンクのようなものにぶち込んで使う物では本来ないわい」


 そう言って台座の下に取り付けられていたエーテル貯蔵タンクを蹴る。


「道具には道具の、薬には薬の使い方があるのじゃ。エーテルは人間の体に取り込まれるために生命の中和剤や、飲み口を良くするためのハーブなどが使われておる。この装置にそれらはいるか?」

「ああ、いらないな」

「体内に取り込まれる事によって魔力を回復させられる機能はいるか?」

「それも、いらないな」

「うむ。この装置であれば、単純に魔力を貯蔵する……あれじゃな、世界樹の素材の加工をする時に勇者殿達と魔力をため込んだ魔石があったじゃろ。ああいうものに魔力を込めて直接使う方式を取るべきではなかろうか」

「あれかぁ」


 あれは今はオレが錬金術を行う際の補助として工房に組み込まれている。


「でもあれはビルダーとして物を作成するのに、チューンされてるからな」

「なんじゃ、儂の教えを忘れたか?」


 む、勿論覚えているぞ。


「無いなら作ればいい」

「その通りじゃ。まあ今回は魔石ではなく液状の物のが良いから理論から作り直しじゃな」

「だな。こいつに魔力を流すのをエーテルで想定されてるからな」

「魔石を液状化させて、その上で均一の属性【空間属性】とでも呼ぶべきかの。それらを作るには……まあ液化剤は当然として、魔石も均一種の魔物のが良いな」

「空間系を操る魔物……またあいつかよ」

「心当たりがあるのかの?」

「あるよ。この機材を作るのにもそいつの素材を使ってるんだけど。獲るのが大変なんだよな。オレ、死にかけたし」

「ふうむ。お主が死にかけたレベルならば下手な冒険者や国の騎士に依頼を掛けるわけにはいかんな」


 確かに。


「まあお主には関係のない話か」

「何がさ」

「おるじゃろ。この世界随一の戦闘集団が。お主の嫁にも」

「……いるなぁ」


 問題は無事に手に入るかどうかだけど。


「別に無傷じゃなくても構わぬであろう? どうせ液化させるんじゃ。どれ、儂は液化薬の精製か、こっちは冒険者の素材を依頼かけるかの」

「手伝ってくれるのか?」

「そのつもりで呼んだんじゃろう? ああ、儂の工房も作れ。どうせ部屋は余ってるんじゃろ? あとセーナかリアナを儂の助手に」

「ユーナを貸してやろう」

「ふむ……まあ、有りじゃな」

「無しだ。セクハラは駄目だぞ」

「ちいとくらい良かろうて」


 手をワキワキ動かすんじゃない。


「というか、性別がないぞ」

「なんと! では、むう……これは女子と扱うべきかどうか」

「頼むから助手として扱ってくれ」


 ユーナはユーナだ。

 困惑した表情を見せるユーナの頭を撫でて落ち着かせる。

 うん。性別ないけど、可愛いものは可愛いな。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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