拠点とダンジョンと錬金術師①
「よし、そのままの魔力量をキープだ」
「了解でございます!」
煌々と光る魔道具がオレ達と地下闘技場を照らす中、オレは勇者召喚の魔法陣の調査を継続していた。
レコーズさんの協力もあり、この魔法陣を作るにあたって使われた女神クリア様の術式の資料も閲覧できたのでこういっちゃなんだけどかなり解析は進んでいる。
「エイミー、そっちの機材の」
「はいはい、青いボタンでいいんだよね」
「サンクス」
今は勇者探索の魔法陣の解析を行っているところだ。正確には勇者の素質を持つ存在の探索魔法だ。
ただ分かっているだけで複数の反応が出て来る。魔法陣の発動者の頭になんとなくピンとくるものがある、そんなレベルのモノだから正確ではない。
それと明らかに人里じゃないところに反応があるから、人間や獣族じゃない可能性が高そう。
世界の壁を突破しての探索はまだ不安要素が多いので、この世界に限りだ。
探知されているのかも向こうは感じ取っているのだろうか?
「うーん。いっそ異世界と異世界の間の部分を覗き込んでみるか」
「あ、危なくないかな?」
「ユーナも賛成できませんでございます!」
「の、覗くだけでも……」
二人が首を振っている。この二人妙に仲がいいんだよな。
「勇者をこの世界に連れてくるのに補助というか、保護する為の魔法陣もあるでございます。つまり保護しなければ危険ということでございます」
「はいはい」
「ちゃんと聞くでございます!」
「聞いてるって」
ユーナも生まれてかなり時間がたったから感受性が高くなったなぁ。
「それに、ここで開けるのは危なくないかな。地下だし」
「あー、崩落とかあるかもだしなぁ」
予期せぬ事態が起きて、オレ達がダメージを受ける。オレだけがダメージを受ける程度ならいいが、生き埋めになったりすれば上の城にいる他の連中も巻き込みかねない。
試すならば他の場所に行った方がいいな。
「だとしたらオーガの島か。移住が済んだら無人島になるわけだし」
「ハクオウさんに迷惑じゃないかな……」
「どうだろうな。あそこだけが拠点て訳じゃなさそうだが」
結構転々としてるんだあいつ。
人里には近寄らない様にしているみたいだけど。
「それでしたら、ここの魔法陣の改良を行うべきだと思うでございます。世界に壁を開けるだけでなく、まずは出入りできない様に厳重に閉鎖したうえで覗き込むだけにするべきでございます」
「ユーナの言う通りだな」
もしこの世界と世界の間、ここも一つの世界かもしれないが次元の狭間というべきか。そこに何もいない、何もないという保証はない。
何もなければ真空状態、宇宙のような空間なのかもしれない。
そうなると空気の流出があったりとか、ああ考える事が多すぎる。
「研究室でも作るか」
「研究室でございますか?」
「ああ。以前の装甲車を作成した小屋みたいなのじゃなくて、魔法陣の実験や異世界との接続を行う為の専用の密閉室とか、工房とかと一体になった施設を」
「それは、すごい規模になりそうだね」
「だな。ユーナの専用の工房も作ってやろう」
「ユ、ユーナはできれば旦那様と一緒がいいでございます……」
可愛い事を言ってくれる。
「ユーナ、かわいい」
「だな」
エイミーが口にだした。そして撫でている。
「は、はうう」
「エイミーはユーナが好きだな」
「うん。ちっちゃい道長君みたいで可愛いし」
「オレはもっとやんちゃ坊主だったよ……」
一番のやんちゃ坊主は明穂だったけどね。
「研究施設、だと?」
「ああ。オレ専用のな。色々問題が起きるかもしれないから」
「ふうむ、別に構わぬのでないか? その口ぶりだと、危ない事をするのであろう?」
「あ、わかる? それでもいい?」
「うむ、オーガ連中もいなくなればこの地も荒れてしまうだろうからな。お主らが管理してくれるのであれば、我も安心である」
オーガの里に行き、引っ越し準備中の連中をねぎらった後、ハクオウのところに向かう。
今日は女性姿のハクオウが応対してくれる。
無駄に美人なんだよなぁ。女性バージョン。
「でもこんなところに研究所とか、もう秘密基地だよね!」
「ヒミツキチ? なにやら素敵な響きであるな」
「でしょ!? あ、孤島にあると悪の組織っぽいね!」
「悪の組織ってなんだよ……」
こちとら神様の使徒だぞ。栞もだけど。
「ふむ、アクノソシキのヒミツキチか。響きは良いな!」
「いいのか!?」
「いいじゃん!」
「そ、そうかなぁ?」
「それじゃ、設計図を作らないと! ハクハク! やるぞう!」
「うむ」
「作るのオレなんだからな?」
あまり無茶な設計にしないで欲しい。てかお前らが作りたいのは自分の居住エリアだけだろ。そこ、研究所から離すからな?
「オーガ連中がいる間の方が良いな。今なら力仕事に彼らを使える」
「おお、流石ハクハク」
「引っ越し準備に集中させてやれよ」
とはいうものの、赤角族達の半数は既に都の連中と合流を果たし、赤角族の村に移住が完了している。
今残っているのは主に戦士と女性で、住居を解体していたり畑から種や苗、稲を回収したりの作業だ。
育て途中の水田に畑もあるから今年の収穫は行いたいらしい。
来年以降は向こうでやるから気候が違うせいで育てられない作物も多く出ると思うけど。
「お米が育てられるのは良かった」
「だな」
水も豊富で気候も安定している。少々こちらよりも雨が少ないが、都の近くの赤角族の里でもお米が作れることは分かっている。
品種は違うかもしれないが、向こうでもお米を育てていたのだ。
そのお米はすべてお酒になってたらしいけど。
「日本に帰ったらお米を持ってこよう。野菜とか果物とかも」
「そ、それはどうなの?」
「オレが食べたいんだもん」
「いいかもしれないけどね……」
日本の作物は品種改良されまくった物ばかりだからね。少ない田畑面積で大量に収穫出来たり冷害や病気に強い作物も多い。
何よりも、オレ達の舌が慣れ親しんだ食べ物ばかりだ。
こちらの食べ物も美味しい物は多いが、それらは魔力が潤沢だから美味しく感じられる魔物由来の物がほとんどである。
美味しいパンを食べるのに、走り周る小麦を追いかける地方とかあるらしいし。
「でも、研究所ってどう作るの?」
「こう、魔法でバーっと作って必要な個所はオリハルコンとか世界樹の板で補強して場所によっては補強魔法陣で強化を行って……」
「またゴーレム周回?」
「イドのお守も頼むわ」
世界樹のダンジョンの上層階でオリハルコンゴーレムマラソンをお願いします。
産後で落ち着いたからイドも連れていって欲しい。
「ミリアさんとイドさんの前衛……あたしいる?」
「ノーコメントで」
でも流石に相手する魔物は超が付くほど危険なレベルだ。何か事故が起きないとも限らないのでエイミーにはフォローをして貰いたい。
そんな事を考えてると、エイミーがオレの顔をじっと見てため息をついた。
「たまには道長君も付いて来てね」
「いつも助かってます」
「ダンジョン、ついてきてね?」
「……はい」
うん。オレの仕事はユーナに振ろう。




