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赤鬼族と錬金術師⑩

 昼間から酒をあおり、グデグデになった赤角族の面々。

 既に死屍累々である。獣族もそうだが、都の宴は激しい。

 未だに酒場から顔を出さない連中を放置し、突発的に巻き込まれたタヌキな店主に支払いを済ませた。


「またツケだと思ってました! ありがとうございます!」

「お、おう。なんかすまんな」


 まだ飲み足りなそうなロドリゲスと、千鳥足のハクオウ。それとロドリゲスにくっついて離れようとしないフェイローノネを連れて獅子王騎士団の寮、こちらの拠点に移動する。


「ほほー、ここに住んでるのか。好待遇だな」

「まあな」


 感心するフェイを尻目に、少し焦りつつ速足で家に入る。


「あ、おかえりー」

「おう栞、スマンが急ぎだ。扉で向こう行く」

「急ぎ? あ、確かに」


 千鳥足のハクオウは角と尻尾だけでなく、羽も出てて口から牙も顔を出し始めている。

 しかも尻尾や羽がプルプルしてる

 こんな街中で本来の姿になられたら大事だ。


「ほら、ハクオウ! はよ! はよ!」

「わはははは、良きかな良きかなー」


 ハクオウの手を引き、急いで扉に入る。

 ロドリゲスもフェイも後からついて来る。

 扉を抜けて、島の拠点の家に移動。そのまま即座に外へ出る。


「え? 何ここ……」

「ほら、ハクオウ! いいぞ!」

「お? おお、おおおおおおおおおおお!」


 酔っ払ったハクオウは、海の見える方へ駆け出して奇声をあげて……元の姿に戻った。


「…………」


 パタリ。

 と、後ろで音がしたと思ったらフェイが気絶した。

 なむさん。


 諸事情により、フェイは風呂に入り島のチャイナ風の民族衣装に着替える。

 ジェニファーの服だ。

 そんなジェニファーは、昼間から酒を飲んで女を連れ込んだから正座させられているロドリゲスの前で仁王立ちである。

 室内ではなく、外である。

 あんなに強気の姿勢を見せたフェイがオロオロしている。ジェニファーより体が大きいのに小さく見えるから面白い。

 若干茶色かかった黄色いチャイナドレスのフェイは、先ほどよりも肌面積が小さいのにも関わらずスリット部分を抑えて恥ずかしそうにしていた。

 フェイが着るにはサイズが小さいから色々とギリギリだ。


「大体なんですかあの格好は。痴女ですか? 痴女なんですか? 下着で歩き回るなんて非常識です!」


 プリプリしているジェニファーはフェイに拳を落としたりロドリゲスにビンタしたり蹴り入れたりと大忙しだ。


「それで、話し合いはうまくいったのですね?」

「あ、はい。いきました」


 思わずオレも敬語になってしまう。


「ふふ、道長さまはいいんですよ?」

「みっちー、基本的に強い女の子に弱いよね」


 うるさいやい。

 遠くに見えるハクオウの巨体から出るイビキも五月蠅いし。


「彼女を連れて来たというのは……」

「彼女は向こうの赤角族、オーガ族の事だな。それの族長の娘だ。向こうの族長は受け入れの為に早速動いてくれてる。あとはこっちの連中の説得だが」

「既に話は通しました」

「おおう、すげえな」


 ジェニファーも有能だ。連れて行って喧嘩して、話し合いに禄に参加せずに酒飲んでフェイノローネとイチャイチャしてただけのロドリゲスとは大違いである。


「別に説得は必要ありませんから。年寄組みはハクオウ様のお言葉ならと納得されますし、若い連中は不満を持っても、力でねじ伏せれば問題ありません。既にそれは終わりました。それでも文句のある者はロドリゲスを打ち取れば良いですし、ハクオウ様の目の前に引きずりだしても構いません」


 こんな細腕で、キリっとした感じなのに腕力で人を従えるから不思議である。

 まあ流石明穂の弟子といったところか。


「今は村の衆に森で狩りと薪の確保、森歩きに向かない者は海で塩の作成をさせているところです。女衆には保存食を作らせています」

「お、おう。流石だな」


 こちらからお願いしたい事をほとんどやっておいてくれている。

 移住なんか……とは思ったが、ここの赤角族達は過去に大陸を追われて船であてのない旅をしてここに辿り着いた一族だ。

 当時の船は解体されて木材は建物に使ってしまったそうだが、そういうノウハウは口伝で残っているのかもしれない。


「家の解体や、田畑に関しては後回しにしております。特に田畑は思い入れが強いですし……せっかく道長さまに手を入れて貰ったというのに」

「気にする必要はない。気にするとすれば、今までのお前たちの努力をなかった物にしなければならないことだろ」

「我々には経験が残ります。それに苗も。ご安心ください」


 おおう、本当にやる気に満ちているな。


「申し訳ないお話にはなってしまうのですが、道長さまにお助け頂きたい事がございます」

「内容にもよるが、ハクオウの指示だしある程度は力になるぞ? 転移ドアも使わせるし、魔法の袋とかも貸す予定だし」

「それもありがたいのですが、その」

「?」

「言葉と文字を、教えて頂きたく」

「ああ……なるほど」


 この島の中で使われている単語であれば問題ないだろうが、外の世界には様々な物が存在するのだ。

 ちなみにエイミーと栞も会話は不思議な女神パワーで出来るが、文字の読み書きはまだまだである。

 この世界出身組に指導を……あ、ユーナが暇してたな。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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