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猫の里と錬金術師②

「可愛いなぁ、イアンナは。あ、また耳が少し伸びてる」

「誤魔化さない」

「いてててて」


 耳を引っ張らないでください。

 休憩になったので、元気にイアンナの姿を見に来たオレ。

 イアンナ寝てた。残念。

 リアナと共に、無事に草原の悪夢の縄張りを突破した事もついでに報告だ。

 勿論、そんな大イベントに参加出来なかったイドはオカンムリである。

 でも流石に産後で体力の落ちたイドにそんな荒事を参加させるわけにはいかなかった。

 だからお義母さんやイドのお姉さんであるイーラサーラさんと妹のイーファンナちゃんにお願いしてイドの足止めをしておいて貰った。

 その隙に転移ドアの機能を一時的に止めたのだ。策士だろう?


「怒ってる」

「分かってるって、ごめんて」

「ちゃんとこっちを見る」

「イアンナを前にして?」

「ライト?」

「はい、すいません」


 そんなやりとりに、クスクス笑うイドの家族達。


「ん」

「はいはい」


 イドに抱かれたイアンナを受け取り、イドはオレの横にしっかりと腰を下ろしてくっついてくる。


「あらあら」

「イアンナは、あんまり泣かないな。髪は金髪、イドに似たのかな」

「エルフだから」


 エルフだからか。


「世界樹の波動だか、エネルギーだか、そんなのを受けながらこの辺りの食事を食べてるとハーフは普通のエルフになる」

「そういやそんなの聞いたな」


 エルフならば美人になるのは間違いなしだ。


「草原の先ってどうなってるんですか?」


 イーファンナちゃんがオレに聞いて来る。


「見た感じはシルドニア側と大きく違わないかな。今は川を渡った平地の丘の上に拠点を出して休んでるけど、そこからの景色も大して変化はなかったよ」

「そうなんですか」

「つまらないわね」

「まああの連中の縄張りを抜けたらいきなり黒竜王の眷属がいる、なんて可能性もあったから良かったよ。多少モンスターは見えてたけど小物だったからこちらに手出ししてきそうになかったし」


 肉食系の魔物だと結構実力差を無視して襲い掛かってくるけど、川を渡った段階では危険な魔物の影はなかった。


「それにあの辺りも元々は人間が住んでいた土地だからな。100年も経ってるから変化はあるかもしれないけど、少なくとも人間が住んでいた土地にそんなに厄介な魔物はいないでしょ」

「昼間はともかく、夜になったら変わるかも」

「そういう場所もあるわねぇ」


 確かに。イドの言う通り、昼間と夜でガラリと姿を変える場所も存在する。

 夜行性の魔物が妙に強かったり、好戦的だったりする場所もあるからだ。


「見た事のない魔物、楽しみ」

「明日も連れてかないぞ」

「がーん」


 口で言うな口で。


「ダメ?」

「だめ」

「どうしても?」

「どうしても」


 可愛く言ってもダメです。


「いじわるね」

「イアンナが大きくなったらな」

「何十年後の話よ」

「ははは、まあでもまだ連れていけないよ。イアンナはまだ預けられないんだろ?」


 不満気なイドは小さく頷いてイアンナの頬を撫でる。


「まだ我慢ね。母さんもサーラもファンナも仕事あるし。リアナがいて助かってるけど」

「リアナもお世話は出来るが授乳が出来ないからね」

「ライト、リアナも授乳できるようにできない?」

「ホムンクルスを何だと思ってるんだ……」

「マスター、リアナもおっぱいあげてみたいです」

「出ないからやめなさい。脱ごうとしない」

「あらあら」


 そんな機能は付けられません。


「……マスターなら出来るような気がします」

「放しなさいリアナ」

「確かに、ライト君なら可能そうね」

「お兄さん、出来るの? それなら私も出してみたいです」

「あたし達も出産すれば出せるようになるじゃない、そっちで期待してもいいかしら?」


 美人のエルフ姉妹とリアナに迫られる。


「阿呆な事言わないでくれよ……」


 オレ、休憩しに来たんですけど?

 そんな事を思ってると、転移ドアを設置した部屋からセーナが出てくる。


「ご主人様、お客様です」


 えっと、どこの拠点の話ですかね?






「びっくりしたニャン」

「驚いたニャム」

「すごい家ニャル」

「はあ」


 セーナに言われて移動したのは、草原の悪夢の縄張りの先。みんなが休憩している家だった。

 そこにいたのは3匹の猫。

 猫?

 しゃべる猫がソファに座って(・・・)寛いでいた。


「かわいいね」

「かわいいですわ」

「ニャムの子だけ声が低いね……」


 ダンディだ。


「えっと、そちらさんは?」

「ニャン達はケットシー村の勇者だニャン」

「ニャム達は選ばれし戦士ニャム」

「果実水美味しいニャル。クッキーおいしいニャル、お替り欲しいニャル」

「はあ」

「ニャン、信じてにゃいニャンね? 仕方にゃいニャン」


 ニャンっと猫たちはソファから降りて、てこてこと二足歩行で歩いていく。うん、どう見ても猫だ。


「ニャンはトーガ! 全てを切り裂く剣の戦士っ!」


 背負った剣を抜いて両手で構えるのは茶色い毛の猫だ。可愛い。


「ニャルはピッコン! 紅一点の美人ニャル!」


 腰に下げた短いステッキを手に持ち、空いた手を頬にあてる白い猫。可愛い。


「力を封じられし最強の拳士。ヴォルフと申すニャム」


 ツッコミどころ満載黒猫は腕を組んで背中を向け、顔だけをこちらに見せる。ちなみに一番背が低くて、毛もフサフサ。可愛い。


「「「 三人合わせて 」」」

三猫士(さんびょうし)!」

「クイーンキャッツスリー!」

「トリプルサンダー!」


 並んでポーズを決める3匹。


「うん、分かってた」

「「「 とりあえず可愛い 」」」

「か、かっこいいっ!」


 妙な衝撃を受けないでくれイリーナ。


「三猫士って決めたニャンじゃにゃいかニャン!」

「三拍子みたいで嫌って言いましたニャル。ここは一番の美人ニャル、ニャルを前面に出すべきニャル」

「誰がクイーンニャル。サンダーは外せないニャム」

「「 サンダーが一番わけ分からないニャン(ニャル)! 」」


 ニャーニャーニャンニャルニャムニャンニャンニャルと言い合いをして、和む。

 ほら、女性陣が優しい目になっていらっしゃる!


「癒されるねー」

「この子達は獣族でしょうか? 確か獣人の祖先と言われてた種族だと思いましたけど……」

「ダランベールでは見ないタイプの人種だよね。あっちはイリーナみたいな獣人ならそこそこいたけど」

「ほら、クッキー出すから喧嘩しないの」

「「「 にゃーい! 」」」


 セーナがクッキーのお替りを出すと素早くソファに戻る猫ちゃん達。


「君たちはこの辺に住んでるのか? この辺りには良く来るのか?」

「そうニャン、近くにニャン達の村があるニャン」

「誇り高いケットシー族の村ニャル。しかしここのところ魔物が出て危険ニャル」

「ニャム達は最近ニャム達の狩場を荒らしている魔物を退治しに来たニャム」

「ほー、そりゃ危ない話だな」


 それって草原の悪夢じゃないよな?


「その、魔物って、平べったくて、足4本の魔物かな?」


 エイミーも同じ疑問を持ったらしい。聞いてくれた。


「にゃにを言ってるにゃ? 守護樹血は川の向こうにしかいないニャン」

「守護樹血は川を渡ると襲ってくるニャル。でもそれは敵を追い返すためニャル」

「ニャム達が言ってるのは三本サソリニャム。でもニャム達は必勝パターンを考えてたニャム」

「三本サソリ?」


 とりあえず蠍の魔物なのかな。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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