未来の見えない恋 7
次の日は期末試験前で、四時間で授業はあがった。
俺は弥生を呼び出して、屋上に続く階段で二人で飯を食うことにした。
「二日も連続って、初めてじゃない?」
弾んだ声で階段に座ると、紙パックにストローをさす。
やっぱり前と変わった感じはしない。
俺はパンをかじりながら尋ねた。
「勉強ははかどってるのか?」
「まぁね。亮太こそ、期末大丈夫?」
投げれば気持ち良く返って来る会話。
俺は黙って肩をすくめる。考えたら、弥生はこんな話題のない俺といて、何が楽しいんだろう?
「……亮太は、私に大学、受かって欲しい?」
「当たり前だろ。落ちたいのか?」
弥生は拗ねた顔で首を横に振った。最後の一口を飲み込むと
「亮太……約束してよ。離れても、私達大丈夫だって。私、そればっかり気になって……」
不安。
前なら深読みしなかった。けど……。
「お前の気持ちが変わらねぇなら、大丈夫なんじゃないか?」
嫌な言い方だ。
俺はこんな言い方、嫌いなのに…。
弥生は顔を曇らせる。
「そんなんじゃなくて、ちゃんと亮太の言葉で約束して欲しいの! ね? だったら、私……」
やっぱり気持ちが揺れてるって事なのか?
俺は苛立ちを誤魔化す様に、手にしてた缶コーヒーを飲み干した。
「お前さ、昨日、何の用事だったんだ?」
「……え」
弥生が戸惑う。
俺は目をこらす。嘘をつかないでくれ、祈る様な気持ちで見つめた。
でも弥生は視線を外す。空の紙パックを弄ぶ。
「昨日は……お嬢達と家で勉強してたの」
俺は弥生を、どんな顔して見てたんだろう。
弥生の顔色が変わる。
「亮太?」
なんだよ。嘘までつくのかよ。違う奴とこそこそ会って、不安なのは俺のせいにして。
なんだ? なんでだよ?
「弥生こそ、俺の事、どう考えてるんだよ」
「え……どうして?」
すぐに答えないのが苛ついた。
俺は弥生の手を抑えると、反対で肩を掴んだ。
強引だった。わかってた。けど、確かめたかった。自分の不安が考えすぎって思いたかった。
俺は弥生を強く引き寄せ、唇を重ねようとした。
「っ!」
衝撃が強く胸に生まれ、突飛ばされた。
「何? 変だよ、亮太」
弥生は涙を浮かべてた。
「なんだよ。俺達、付き合ってるんだろ!」
苦しさを吐き出す。弥生は立ち上がると、睨み上げ
「亮太が、そんな人と思わなかった……」
頬に刻む痛み。
弥生はそのまま走り去ってしまった。
「なんっだよ」
俺は壁を叩くと、行き場のない気持ちを握り締めた。