心の成長
ある夏の日、まだ私が高校生の時に自転車に乗って川沿いを走っていた時の話。
電動自動車?(お年寄りの方がよく乗ってるやつ)に乗ったお爺ちゃんが川に向かって嘔吐していた。
(おお、凄いところに出くわした)
私は無視をしてそのまま走り去った。
けれど気になって戻ってみた。
お爺さんはさっぱりした顔をしていた。
「大丈夫ですか?猛暑だから熱中症かもしれません。水は持っていますか?」
私は気づいたら声をかけていた。
「大丈夫、大丈夫」
お爺さんは私を煙たがって走り出す。
「でも、危険ですよ。家まで一緒に行きましょうか?」
「いいから!!」
「じゃあ、何かあったら通行人に声をかけてください」
お爺さんは無視をして私の前から消えていく。
心配もあったしついていった方がいいかなと葛藤もあったけど…あんな言い方されたしもういいやと。私はその場を後にした。
それから何年かたった大人になった私、それは先月の話。
散歩をしていたら遠くでバイクが転がって倒れているお爺さんを見かけた。上記の人とは違う人。
私は慌てて走る。
「大丈夫ですか!?」
「ちくしょう、なんでこんなところで転ぶんだ」
「頭は打っていませんか?救急車を呼びましょうか?」
「大丈夫、余計なことはしないでくれ」
「でも、後から症状がでることがあります!!」
「いいから」
「じゃあ、バイクを起こす手伝いをさせてください」
バイクは女性の私には重たかったけど何とか起き上がらせることが出来た。
「いてて、全くなんで。ぶつぶつ」
「もし、症状がでたらすぐに病院にいってください。本当に危ないことですよ」
お爺さんは無視してふらふらとバイクを走らせて去っていった。
私はお爺さんがいなくなるまで見送った。
「大丈夫かな…」
私は地面に置いて汚れた鞄をパンパンとはたく。
自然と怒りはわかなかった。むしろ心配でしかなかった。
ふと高校生時代の記憶が甦る。
ああ、そういえば似たようなことが前にもあったな。
でもあの時よりも気持ちに余裕がある。
少しは大人になれたのかな。
でも、私が同じことになったら…お礼は言えるようになりたいな。
なんてね。