第一章:冤罪・投獄・転生
その昔、とある王国では宮廷に魔術師・魔法使いなどを雇い入れ、魔術・魔法の類の研究をさせていた。また、魔法学校も設立されており、才能がある者を若いうちに入学させて、修行をさせていた。
王国には魔王の統べる国も隣接しており外敵はいくつかあるものの比較的裕福で、そのために外敵から国を守るための軍事力、特に魔術・魔法関係の研究で各国から一目を置かれていた。
メリトニス・マーリン・フォークネルは王国の中にある小領主の次男坊で、兄は騎士として王宮に使え、やがて父親の領地を継ぐ身だった。弟には領地を与える余地がなかったので、幸いにも魔力関係の才能を見込んで魔法学校へと入学させることとなった。
フォークネルは特に宝石魔術に才能を示し、宝石に何かしらの魔術または魔法を仕込み、あるいは魔力そのものを封じ込めておき、必要に応じて取り出せるような技術を磨いていった。
やがて十年近くの修業を経て魔法学校を卒業したフォークネルは、数十人の卒業生の中でも10人と入ることのできない王宮付き魔術師の一人として出仕を許され、王宮の一角にある研究所にて学生時代に引き続き宝石魔術の研究を行うこととなった。
「その宝石からは誰でも魔法を引き出せるのかしら?」
「ものに寄りますよ。・・・ところでここにいて大丈夫ですかお姫様?」
彼のいる研究所には時々、王宮から王女が遊びに来ては、フォークネルを質問攻めにしていた。彼は、彼女が魔法に興味があるのかと思って答えていた。
「まあ大丈夫じゃないわね。お稽古事を抜け出してきたから。」
彼女はイタズラするときのような笑顔を彼に向けて答える。
「・・・早くお戻りください。できれば時間が空いているときにいらしてください。」
「一国のお姫様にはそんな自由な時間はあーりませーん。お稽古事か行事ばっかりよ!」
やや憤慨するお姫様に、フォークネルはため息をつきながら、研究成果の一文を綴ってゆく。大した成果ではないが、それは幻術や催眠術系統の魔法を応用した、人の記憶の複製を宝石に移し込むという魔術研究の一端だった。
隣地の魔王軍が活発になり、戦乱の雰囲気が王国とその周りを覆う中、王宮はとある決断をした。それは軍事費をねん出するために、小領主たちのいくつの領地を潰して直轄領にし、そこの年貢を軍事費に充てるという非常手段だった。その一つとして、フォークネル家の領地が目をつけられた。領主は病死し、後継者たる長男が戦死したため、フォークネルに領地が継承される道もあったが、政略結婚に使う予定の姫と彼の仲を引き離すために、王宮の側近たちが一計を案じたのである。
ある日、フォークネルは研究所で衛兵たちに捕らえられた。罪状は王女を誑かしたという反逆罪だった。彼は地下牢に牢獄され、王宮の目論見通り、フォークネル家の領地は取り上げられて王宮の直轄地となり、領地から算出される各種の産物や年貢は直接そのまま軍事費の一助になった。
裁判も刑期の告知もなく、フォークネルは獄中につながれたままとなった。
獄中の彼には食事は少しばかりで、日に当たることもなくやがてフォークネルは肺を患い、熱病に侵されて死んでいった。その後の王宮の行く末を、彼は知らないままだった。
「暗い・・・・・・・」
それからかなりの年月が経った頃・・・真っ暗な暗闇の中、フォークネルは目を覚ました。正確には、夢か現かわからないうちに蠢き出した。すでに肉も皮も果て、指輪の宝石だけがかすかに光を放ちつつ、かつてフォークネルという名だった白骨は床から手を伸ばし、壁を伝い、牢の格子を確認する。暗闇で見えないのではなく、眼球も抜け落ちて視覚を失っているのが正解だが、今の本人にはその状況が全く分からず、現状を確認するために触覚だけでいろいろと探っている状態だった。
彼はかつて魔法学校時代に習った術の一つ、探索魔法を使って周囲を空間探知し始めた。少ない魔力が枯渇し始め、彼は飢えを感じ始めた。とある方角の空中に何か塊りのようなものを感知すると、彼は猛烈に食欲がわき、それを吸い寄せようと手をかざす。それは、かつて自分が一番得意にしていた吸い寄せ魔法だ。その塊はすぐに手の中に付き、そしてそれをすぐさま口に入れた。そこから彼は魔力がみなぎるのを感じた。
コツをつかんだ彼は、空間探知でその同様の塊を探し始め、牢獄の中で漂うそのすべての塊を吸い寄せ、飲み込んだ。普段は研究に必要な宝石を吸い寄せるために使っていたズボラ魔法が、思わぬ形で役に立ったようだ。魔力が増幅し、さらに知覚が進み、自分の身の回りの壁や床、天井の位置を把握し始め、自分が牢の中にいることも把握した。そして、失くしていた記憶を少し思い出した。自分は投獄されたのだと。
では今、吸い込んだのは死んだ者の魂か?・・・それを自覚したときに彼は愕然とした。これではモンスターではないか? そう思って自分を触り始めると、コツコツと骨の当たる感覚しかない。自分は白骨のまま蘇ってしまったのか・・・。
ため込んだ魔力によって探知魔法を調整して聴覚が復活したものの、今は天井から滴るしずくの音しかなく、もともと暗くて湿っていた牢屋だ。かつては投獄された人々のうめき声や世を呪う声、時として泣き声や悲鳴までもが聞こえていた。だが今は、いくつかの遺体以外は誰も居ないようだった。視覚は復活しないままだが空間感知はできている、聴覚も復活した。牢番も居なくなり、どうやら牢の扉は空いているようだだ・・・とにかく彼は牢獄から出て、王国が今どうなっているかを知りたがった。自分の身の上を嘆きつつも、とにかく地下牢から外へと歩み出る。
牢屋の鍵が開いている理由はすぐに分かった。牢の外に出てみると、日の光と風の流れ、鳥の鳴き声などで今は昼間だという感覚はわかったが、王宮や城下町に人気はなく、家屋は荒れ果て壊れ、そして道端に放置されたままの白骨がいくつも転がっているのだった。
(王国は滅びたのか・・・魔王軍にやられたか・・・それからどれくらい時がたったのだろう?)
かつては王国の首都として栄えた街も、砂と埃に塗れた廃墟と化していた。
街を外敵から守るための外周を覆っていた城壁は所々崩れ落ち、建物も扉や窓が悉く外れ、何か大きなものが当たったのか、屋根や壁に穴が空いてるものもあった。
フォークネルは先ず外周から俯瞰してみようと、城壁の方へと進んだ。道端には骨ばかりが転がり、その骨は街の人のものなのか、侵攻してきた兵隊のものなのか、それともモンスターのものなのかも判別がつかない。
(魔王の国との戦いに敗れて滅ぼされて、王都がそのまま放置されたか・・・?)
フォークネルの生前、魔王国との関係が悪化して、王国には軍備増強の噂が漂っていた。彼が牢獄に入れられたとき、彼が継ぐべき領地に目をつけられて、直轄領にするべく冤罪を着せられたことも風の噂で聞いた。あの時は国を恨む思いもあったが、今は国が滅んだと知っても何の実感も湧かない。
(彼女はどうなったのだろう?)
フォークネルは生きている人間を探そうとしてふと、かつて王宮から時々、研究室に忍び込んでいたお姫様のことを思い出した。彼女は日々の生活に嫌気がさしたのか、気晴らしに研究室に来てはフォークネルにチョッカイを出しては喜んでいたものだ。
「私をどこか遠くに連れて行って。」
そう言われたことも何度かあった。時には冗談めかして、そして時には真顔で。しかし、他の魔法使いがこなすような冒険の旅に出たことはなく、専ら研究室内で引きこもり一辺倒だったフォークネルにその選択肢は選べなかった。すぐに捕まって、それこそ牢獄行きだったにちがいない。
結局、牢に入る運命は変わらなかったのだと、一人思い耽り、暗く沈むのだった。
途中、道すがら漂っていた死者の魂を吸い取りながら、何とか城壁の上に出た彼は、王都の様子を一望してみた。改めて相変わらず視覚は戻らず、探索魔法によって得た情報は色のついてない街の模型か白黒の絵のようなもののようだった。とりあえず鳥類は空を飛んでいるようだったがその数は少なく、鳥たちが餌にできるような気配どころか、植物さえ生えている様子もない。色がわからないので晴れているのか雲が出ているのかもはっきりとしない。彼にとっては、まるで灰色の空の下に居る気分だった。
(本当に誰も居ない‥‥いや、アレは?)
かすかに人の気配を感じる。それはどうも気配を消すように忍び足で動いているようだ。フォークネルは久しぶり人を見つけて、ちょっと気分が高揚して、少し、大袈裟な魔法を使うことにした。
その男は身長が低めで、そこからさらに身をかがめながら素早く、そして足音を立てずに移動するため、まさに盗賊にうってつけの存在だった。遺跡の宝物狙いを十八番にしていたその盗賊は、そろそろここもネタ切れかなとも思いつつも、王都だった廃墟を素早くそして慎重にうろついていた。
とある路地の、少し開けた十字路のようなところで突如、目の前に一瞬、光の柱が立ちはだかったかと思うと、人間の白骨が現れた。盗賊は酷く狼狽した。
「・・・おいおいスケルトンってそんな表れ方しないだろ!?誰かに嵌められたか?」
スケルトンは通常、魔力をほとんど持たず魔法を使わない。墓場をさ迷っているか、誰かに使役されてるにしても地中から出てくるはずだ。
「失礼、ちょっとお尋ねしたいことがあってね?」
そういう返事が白骨から返ってきて、盗賊はさらに固まった。
(なんでコイツしゃべれるの!?・・・いや待て魔法の念話かコレ?)
少しずつ冷静になっていく盗賊に対し、敵意の無いフォークネルは慎重に少しずつ、ゆっくりと話をし始めた。
「争う気はない。金目のものは持っていなくてね。・・・ただ、私自身ちょっとばかり眠っていて、目が覚めたらこんなありさまだったので、今は街も国もどうなっているのか知りたくてね。」
戦闘にはならなそうなので少し冷静になった盗賊は、この奇妙なモンスターにちょっと興味を持った。アンデットなのに魔法を使うようだ。まあ例外はどこにでもいるが。
「目が覚めたらここはどこ私は誰?って感じか。そりゃあご苦労なこった。」
笑みを浮かべるくらいには動揺から回復した盗賊に、フォークネルも少し安心した。
「私はかつて、この都の宮廷魔術師だった者だ。ちょっとした事件に巻き込まれて牢獄に繋がれて、死んだと思ったらこのありさまさ。」
フォークネルもまた自嘲気味に陽気に話した。
「こちら盗賊なんでね。タダでは無理だな、情報料は獲るぜ?」
「構わない、取り敢えず情報交換で。・・・うまくいけば宝物庫にご案内できるかもしれない」
盗賊は腕を組み、少し値踏みするような目を向けたが、決断してすとんと腕をおろした。
「ま、いいでしょ。・・・ここはかつて王都だったところだ。だいぶ昔に魔王軍にやられたらしいって話は聞いてる。もっとも、その魔王軍も仲間割れとかで内乱が起きて、今は国かどうかってレベルですっかり衰えちまったし、周辺の国も勇者の御一行様やら調査団やらを送り込んでチョッカイ出す程度らしいな。ここは誰の領地でもない空白地帯なもんさ。」
「魔王の国と戦争になりそうだったとは生前聞いていたよ・・・その為に私は処刑されたようなものだからね。」
「へえ、魔王のスパイでもやってたのかい?」
「そんな器用なもんじゃないさ。領地を取り上げられるために冤罪を被った。」
「・・・そりゃあお気の毒だったな。それじゃその姿にされたのも王様のせいかい?」
「それはわからない。魂を転生する魔術なんて知らなかったからね。」
盗賊は半ば納得する様子ではあったが、職業柄、警戒は解いていないようだった。フォークネルは話題を変える。
「どうやら君は宝探しにきているようだが、魔法研究室の倉庫には行ってみたかい?」
「へえ、そんなものがあるのかい。王宮にはちょくちょく入ってたが、めぼしいもんは粗方取っちまったからな。」
そう言って丸めた紙を取り出し、それを拡げて彼が作った王都の地図を見せた。どうやら新たな宝物を見つけられると踏んで、盗賊は乗り気になる。
「ちょっと失礼。」
そう言ってフォークネルはゆっくりと近づいて地図に手をかざし、なぞるように片手を這わせてみた。視覚がないので、魔法で読図を試みるしかない。字は読めなかったが大体の位置関係は把握できた。
「そうだな・・・ここは手つかずってことでいいのかな?」
何か注釈付きで丸で囲んでいる箇所を指して訪ねてみる。
「お、やっぱりそこか。どうも地下室があるらしいんだが、入り口がどうやっても開けられねえ。穴掘っても構わねえんだが、万が一崩落してお宝が埋まるのも嫌だったんでそのままだったのさ。」
「正確には地下通路だな。研究室に行くための。・・・崩落していたらお手上げだった。」
「そいつはラッキーだったぜ。」
盗賊は笑顔を浮かべる。
早速、二人はその地下通路の入り口へと向かった。途中、盗賊がちょっと横道に逸れて何かをとってきて「そのままだと気味が悪いからこれ着てくれや」と言って、裸のスケルトン姿のままのフォークネルにボロ布を被せた。それは真っ黒な、フード付きの外套のようだった。
「これはどうも。だいぶここも年数が経っているようだが布が残っていたのか・・・」
「いや、これはたぶん最近モンスターか何かにやられた冒険者かご同業のもんだな。」
そう言って人の悪い笑顔を浮かべる盗賊。フォークネルは呆れたが贅沢は言えないので、それについては無言を貫いた。
地下通路へ御入り口は魔法で動くようになっており、年数が経っていても構造的には何の問題も無かった。フォークネルは手を当て、念話を使わず音を出さないまま呪文を呟くと、鈍い音と振動を響かせながら入り口が開いた。長年のうっ憤も開いたようで盗賊は飛び上がって喜ぶ。
「やったぜ旦那、やっぱりあんた腐っても宮廷魔術師様だ!」
「腐ってるというか枯れ果ててるんだけどね・・・まあ誉め言葉と受け取っておきましょ。」
白骨姿のままやや傷ついた感じで答えるも、彼もまた懐かしさに心が浮かれていた。
地下通路には明かりが全くなかったが、盗賊は夜目が利き、フォークネルも探知魔法で問題がなかったのでそのまま進んだ。途中で崩落しているような部分もなく、やがて二人は階段を上がって、かつての魔法の研究室にたどり着く。
「ここは魔法や魔術の研究室さ。研究者は何十人も居て、私もその一人だった。」
フォークネルは呪文を唱えると、天井と壁の一部が柔らかな光を発して明るくなり、研究室全体を照らした。
「なんかすっげえ所だなってことはわかるよ。ところで触ると爆発するとかそういうトラップみたいなもんはないよな?」
「研究途中のものは勝手に作動しないようにストッパーをかけてあると思うが、念のため触らないようにしてくれ。・・・君のお目当てのものはもうちょっと奧だ。」
お宝が近くなり、盗賊忍び足にも陽気な様子が見て取れる。2人は廊下に出て、部屋をいくつか通りすぎ、少し歩くと、宝物庫の扉にたどり着いた。
「こりゃあまったくの手つかずってところだな。」
固く閉ざされた様子の扉を見て、盗賊は期待を膨らませる。フォークネルは片手を扉に当てると、やはり無言で呪文を唱えて、魔法で起動する扉を開いた。戦火からも盗掘にも遭わなかったためか扉は傷つけられておらず、スムーズに開いた。
「まだ入るな。今取り出すから。」
フォークネルは中に入ろうとする盗賊を鋭く制し、手をかざして取り寄せ魔法を使った。現役時代ならば、研究室の椅子に座ったまま扉さえ遠隔で開いて、魔法で宝石箱ごと吸い寄せ、空中を漂う宝石箱で廊下を歩く同僚たちを驚かせたり面白がらせたりしたものだ。フォークネルは懐かしさに記憶を少しずつ思い出してゆく。
「お待ちどうさま。・・・こちら宝石が詰まった箱にございます。カギはかかってないし魔法の類も入っていないやつなのでご自由にどうぞ。」
宝物庫の中から魔法で宝石箱を取り寄せ、両手に持ったフォークネルがそう言って箱を開けると、盗賊の前には宝石箱にいっぱい詰まった大小さまざまな宝石が輝いていた。加工済みのものもあれば原石のままのものもある。正にそのお宝に盗賊は飛び上がって喜んだ。
「なんてラッキーだ。本当にコレもらっていいのか?」
「構わないさ。色々教えてくれたお礼だ。・・・正確には私のものではなく王宮のものだから、横領罪だな。私もこれですっかり盗賊の一味だな。」
笑う二人。盗賊はすっかり気分を良くし、フォークネルはやや自嘲気味に、それでも心を持ち直したように笑った。
「一応無難にもち出せるものはとりあえずそれだけだな。あとは大半が魔法や魔術を仕込んだ宝石なので、暴発したら大変なことになる…と思う。」
「わかったわかった。今日のところはとりあえずこれで満足しておくさ。」
盗賊はいつの間にか厚手の大きめの袋を取り出し、宝石箱を中に入れる。
軽い足取りで2人は研究室を後にし、外の明るいところまで出た盗賊は地図に改めで何か書き込むと、
フォークネルは尋ねた。
「アンタこの後はどうするんだい。宮廷魔術師さまはここに住むのかい?」
「・・・しばらくはここに居るかもしれないが、あまり意味はないな。魔法の宝石と魂を粗方回収したら、どこかに出て彷徨うさ。」
魂を回収すると聞いて、盗賊はぎょっとして後ずさった。警戒感が強まる。
「ああ失礼、生きている人間から魂をとることはないよ。死者の魂だけで十分さ。ここはまだたくさん漂っているからね。たぶん人間だけでなくモンスターや動物、植物のもね。」
「・・・その魂が人間かその他かは見分けがつくのかい?」
「わからないね。ただ、ここの住民だけの分にしては多すぎたからそう思っただけさ。」
「なるほどね・・・。」
フォークネルが目が覚めたばかりと聞いていた盗賊は冷静さを取り戻した。今はまだ自分でもわからないことがあるってわけか。盗賊はある提案をしてみる。
「じゃあちょっとした取引だ。俺はとあるギルドに入っている。いまもらった宝石もほとんどはギルドに献上することになるだろう。情報としてはあんたのこともギルドに報告しないといけない。当然、俺っちの国ではモンスターは討伐対象だ。」
「見逃すから早く逃げろと?」
「そういう話じゃないさ。うちのギルドに入らねえかい?そうすれば討伐ではなく保護の対象になる。あんたの研究室まで守れるかはわからないが。」
「なるほど、そう言うことか・・・。」
フォークネルは思案した。目覚めたばかりでまた葬られるのも悪くないなと一瞬思ったが、今、外の世界がどうなっているか興味を持った。それは魔術師特有の知的好奇心からだった。
「いいでしょう。とりあえずよろしく。」
フォークネルは盗賊と握手をした。とりあえずギルドに入っておくのも悪くない。それはやがてギルドで死神と呼ばれるようになる、かつては宮廷魔術師だった、今は白骨化したアンデットモンスターの、転生して初日のことだった。