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邪神に仕える大司教、善行を繰り返す  作者: 逸れの二時
邪な企み
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陰謀

 ノエラのおかげで本当に助かった。光の浄化の奇跡は伊達じゃなかった。俺とマサマンディオスの繋がりは結構強かったみたいで、俺の内側にある闇の神力の部分が焼かれるように浄化されていて動けなかったんだ。


 でもノエラが守ってくれたおかげで浄化の奇跡を解く時間ができた。マサマンディオスの元の神力、光の部分の神力で何とか相手の浄化を避けたんだ。


 さすがに現役の光の神の奇跡は強かったけど、集中しながら時間をかけて俺の内側を光の神力で覆って対処すれば、闇の性質に反応する奇跡でも問題なかった。


 一旦浄化が解けてしまえば後は元に戻しても大丈夫だから、相手の最後の一撃は全力の【邪悪なる守り(ホーリーバリア)】で何とかできたんだよな。


 いやはや、まさか天使と邂逅するとは思わなかったな。しかもノエラにその相手をさせてしまって申し訳ないことをしちゃったな。


「ごめんなノエラ。余計な負担を背負わせちゃってさ」


「いいえ、余計な負担だなんて言わないでください。私たちは……仲間、ですから」


「あ、ああ。そうだな。でも本当にありがとう。今回ばかりは死ぬかと思ったよ」


「そうならなくて良かったです」


 ノエラは穏やかに笑った。この笑顔が見られて幸せだ。こんなところで死ななくてよかったよ。それから戦いで活性化していた月はまた元の自然な状態に戻り、落ち着いた。


「サム様、ご無事で何よりです」


「アンヘルも俺と同じ方法で浄化を回避したんだな。お互い無事で良かったな」


“我が大司教よ……月の暴走はしばらく止まるであろうが、カロヌガンに我らの動向を勘付かれるところとなってしまった。相手の信者はこれから何か謀ってくるかもしれぬ故、先んじて謝罪しよう”


「マサマンディオスが謝ることないぞ。俺もそうなることぐらい予想してたから心配すんなって」


“そうであるか。頼りにしておるぞ我が大司教サムよ”


「おう! どんと頼ってくれ」


 月の暴走に対処した俺たちは、こんな遅い時間にまたしても空を飛び宿に帰った。バロンや他の客を起こしたくなかったので、抜き足差し足忍び足で自室へと戻って眠りについた。


 空中散歩と戦いでの疲労が効いたのか、その夜は死んだように眠ってしまった。起きた時にはお昼頃で、日が大分高くなっていた。窓からの日の光を浴びながら、俺はふとあることに気付いた。今日はバロンが起こしに来なかったのだ。


 いつも朝食の時間を過ぎそうになるとバロンは起こしに来てくれた。眠すぎるときはそれを断って二度寝していたのだが、今日は起こしに来ていた記憶がない。寝ていて気付かなかったのかと思って起きてきたノエラにも聞いてみたが、彼女も来ていないと言っていた。


 不審に思って宿の他の従業員にも聞いてみたが、バロンは今朝から見ていないとのことだった。いよいよ心配になった俺はバロンがいつも立っている粗末な受付カウンターの裏を見てみた。何か置手紙とか、彼のスケジュールがわかるものが置いてあるかもしれないと思ったからだ。


 そしたら置手紙が確かにあった。しかしそれはバロンからのものではなく、なんとカロヌガンの神官からだったのだ。俺はその場で置手紙を読み漁る。


 内容はこう。バロンは我々が預かった。彼が一人で心細くないように、デリサイ水郷まで一人で来いとのことだった。心細くないように、なんて書いているがこれは脅迫だ。


 魔物がいるような場所に一般人が一人。それはつまりバロンの命が惜しければという意味だ。昨夜マサマンディオスも言っていたが、こうも早く陰謀を練ってくるとは正直思っていなかった。しかも人質まで取ってくるとは完全に犯罪者だろう。


 この手紙を四力統治塔に持って行って報告したいところではあるが、そんなことをしてはバロンがどうなるかはわからない。いや、そもそもバロンが生きているのかどうかすらわからない。


 人質の形を取っているならバロンは生きていると思いたいが……遠くにいる人と話す手段がない現状では、バロンの生存を確認する手段はない。既に死んでいても俺をおびき出すのには事足りるだろうから、本当にデリサイ水郷に野放しで魔物から守ることはしないということも考えられる。


 水郷の入り口付近で見張っていれば俺がきたことは確認できるし、わざわざバロンを生かしてそこで待っている必要もない。こうなってくるともう時間がない。


 俺はノエラに短めに状況を説明した。ノエラは当然のようについてくると言ってくれるが、彼女にはここで待っていてもらうのが一番良い。


 下手をすれば宿から二人で出て行くところをカロヌガンの信者に見られて、そのせいでバロンが死んでしまうなんてこともあり得る。ということで半ば強引にノエラにはここで留守番をしてもらい、俺だけがデリサイ水郷に向かうことになった。

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