表彰
それから一応クレーターを元通りに戻したことを四力統治塔に報告しに行った。今日は起きたのがお昼に近い時間だったので今は二時か三時くらいだと思うのだが、人通りがかなり増えてきて俺とノエラ、そしてクルトも注目されている。
嫌な視線ではないのだが、注目されるのはあまり慣れない。昨夜のドラゴン騒ぎは目撃していない人はむしろあまりいないだろうし、屋根の上に登って奇跡を使ったから目立ったのだろう。
「どうした? 注目されるのは慣れないか?」
「ああ。正直居心地があまり良くないよ」
「私も、ちょっと恥ずかしいです」
「ふっ。そうか。私はそれなりに注目されることが多いから慣れたぞ」
「その割にはフードを深めに被ってるじゃないか」
「これは無用に顔を見られないためだ。慣れたとはいえ注目されることは好きではないのでな」
「へえ。不細工なの?」
「サムさん!? なんてことを言うんですか!」
「悪魔呼ばわりされたんだもん。いいだろ別に」
「不細工だから隠しているわけではない。何なら見せてやっても良い」
「いや、そんなムキにならないでくれ。冗談だから。ごめんな」
「そうか。ならいい」
クルトは口元だけでニッと笑って歩きだした。何だか読めない人だな。怒ったかと思ったが笑っていたみたいだし不思議だ。俺たちはそのまま四力統治塔に向かい、受付に話を通した。そのまま伝えておいてくれるそうなので、そこで俺たちは別れた。
その後も俺たちは注目されていて、視線を感じるのだ。邪神の神官だってバレてからはそれなりに見られていたが、今やその視線がおびただしい。貴族として名前を呼ばれる前からこれかと俺は期待半分、むずがゆさ半分で宿に戻るのだった。
それから数日。俺は今、街の中心から王城に近い広場にいる。隣にはノエラがいて他数名の貴族たちがそれぞれ王様を待っている。中にはあの四人組みもいて、ドラゴンのときとは違う緊迫感があたりを包んでいた。ついに七月に突入し、貴族たちの称号の更新が行われる。
俺とノエラはもちろん新たに貴族となるし、その他のここにいる人たちも称号が一段階以上上がるということなのだろう。今回は一列に並べるくらいの数だったので、そのように並び王様を待っていた。そうしてややもすれば、数人の護衛を連れた王様がやってきた。
青い宝石の杖でカツカツと綺麗な音を鳴らして、広間に集まっていた俺たちと民衆の注目を一気に集める。みんなガヤガヤと話しているのを止めて、急に全体が静かになった。王様はその広間の中心までやってきて、俺たちと相対した。
貴族の称号の更新は王様の使いだけがやってくるはずだったが、今日は違う。なぜなら――あのドラゴンを倒した俺がいるからだ。
「我が国の諸君、よくぞ集まってくれた。今回は貴族の称号の認定だけでなく、またしてもドラゴンを退けた英雄を称えることとする。みな、その姿を目に焼き付けよ」
まずは貴族の認定からだと王様が告げて、全員が貴族としての称号の変化を発表される。順調にその儀式は進められ、俺とノエラは伯爵の称号を得た。そして名字。俺はオルグレンの性を、ノエラはラ・トゥールという姓を頂いた。民衆全員の前で名前をもらい、そして称えられた。
そしてその上、俺はドラゴンを倒した者として王様直々に感謝を述べられた。ちなみにこういうときの作法は紋章に聞いていたので、それに従っておいた。王様が来たら跪き、王の声がけがあるまでは立ってはならないのだ。
こんな体勢でいたことがなかったのでかなりぎこちなかったかもしれないが、この際できてさえいれば何でも良いだろう。初めてこんな場に呼ばれて、しかもこの世界の住人じゃないんだから慣れていないのも仕方ないよな。
王様から直接感謝されるとは正直思ってもみなかったのでちょっとビビッてしまったのだが、謙遜しておけばとりあえず大丈夫だろうとその場の雰囲気に合わせて礼をしておいた。