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邪神に仕える大司教、善行を繰り返す  作者: 逸れの二時
探検と模索
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村を目指して

 あれから俺は大蛇から入手した戦利品と着ていたスーツを【闇の領域(ブラックホール)】という奇跡で亜空間に仕舞い込み、洞窟を出て人間のいる街を目指すことにした。ずっと洞窟にいるわけにもいかないし、何よりちょっとお腹が空いたんだ。


 霞を喰って生きられるわけじゃないから何か食べたいな。それから人間が俺一人だと心細い。


 ということで洞窟から意気揚々出て行くと、もちろんその先は一面の大森林だったわけなのだが、いかんせん全く道がわからん。というか道なんてない。動物……多分魔物が通った跡しかないのだ。


 しかもさっきからグニャグニャした変な形の草木が体に当たって鬱陶しい。司祭衣に着替えちゃったのも歩きにくいから失敗だったかもな。


 ちなみにアンヘルは俺の隣を悠々と飛んでいる。悪魔の翼でな!


「こっちで合ってるのかな」


「合っておりますよ。一番近くのウナンベセスの村までもう少しです」


 あと少しってどれくらいだろう。ちょっと確かめてみるか。使えそうな奇跡をいくつか紋章に聞いておいたからその中の一つを使ってみよう。腰につけた邪光ランタンから奇跡を行使する。


闇の感知(ダークセンス)


 パッと周囲の悪意や憎悪などの負の感情が感じ取れる。離れた後ろの方向に強い憎悪がちらほらと、それから自分の向かう先に数個の強い悪意と小さな悪意が点々としている。


 恐らく前方の小さな悪意が人間のものだろう。誰しも小さな悪意や黒い感情を持っているものだからな。そして強い悪意の方は魔物のものだろう。


 できれば魔物とは関わり合いになりたくないのだが、どう頑張っても一回は遭遇しそうだ……。


「サム様、どうしてここで【闇の感知(ダークセンス)】を? 魔物の気配を探りたかったのですか?」


「いや? それもあるけどウナンベセスの村までどのくらいか知りたかっただけだよ。あと一キロくらいだね」


「……」


“さすがだな我が大司教よ。人間のわずかな悪意を感知した上に一キロ先まで感知するとは”


「そういえば奇跡が邪悪っぽい名前になってるけど変なのは【邪悪なる闇線(ホーリーレイ)】だけなのか?」


「そうではありませんよサム様。マサマンディオス様元々のお力にあった奇跡は神聖なお名前に、そうでないものは別のお名前になっているのです」


「そうなのか。ということは【闇の感知(ダークセンス)】と【黒き排除ブラックエリミネイション】、それから大蛇を仕舞った【闇の領域(ブラックホール)】も……その……邪神になってから得た力ってことだな」


「はい。しかし光のお力も今は闇の神力に近いお力となっております」


「そうだな。【邪悪なる闇線(ホーリーレイ)】は特にそれが顕著だった」


“……”


「そんなに落ち込むなよマサマンディオス。俺が“善い”神様として名前を広めてやるからさ」


“……感謝する”


「よし! じゃあまずは腹ごしらえだ! いい加減腹減ったよう……」


「そ、そうですか。ですが村に着く前に魔物と遭遇してしまいましたね」


 アンヘルが言った数秒後にイノシシのような生き物が草木をかき分けて出てきた。イノシシとは言ったものの、首元が黒いトゲトゲに覆われているけどな!


「せっかくですから私を使ってみてください。お手を拝借」


 アンヘルが手を差し出して来たので、反射的にそれを握る。するとその先からアンヘルの体が紫の光の粒を散らしながら変化し、あの湾曲した剣に変身した。


「腹減っててあんまり動きたくないけど、せっかくだから剣も試してみるか……」


 もちろん元の世界では剣はおろかナイフすら持ったことがないので、ここは奇跡に頼ることにする。


呪怨(ブレス)


 祝福を意味する読み方だけど、これは死者の思念を体に宿す奇跡だ。この場合は剣術に精通する者の思念だな。体に宿った思念に抵抗しないと体が乗っ取られるみたいだが、存外なんてことないな。特に問題なさそうだ。


「サム様、大丈夫そうですか?」


「ああ。あの魔物の肉を持って村に行こう。もしかしたらお代が安くなるかも!」


「そ、そうですね……」


 なんて馬鹿なことを言っていると、イノシシらしき魔物がついに突進してきた。トゲトゲの生き物に突進されるなんてことは経験してこなかったので、俺は見事にヒヨった。


 枝を跳ね飛ばしながらやって来る様は迫力しかないのだ。でも俺はそれをしっかり引き付けてから横にサッと躱して、両手持ちにした邪剣から一太刀お見舞いしていた。


 自分でもびっくりな華麗なる動き。体に宿した剣士の思念は伊達ではなかったらしい。


 魔物の固そうな首もとのトゲトゲは邪剣パルーサにスパッと両断されて、その先の皮膚もいとも簡単に切り裂いた。


 そんなに力を入れていなかったのだが、イノシシもどきは重症のようで突進した先でガクガク震えている。ちょっと可哀そうだが、魔物は魔物だ。村の人間を襲うかもしれないし、きっちりとどめを刺しておく。

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