表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪神に仕える大司教、善行を繰り返す  作者: 逸れの二時
月の氾濫
19/117

穏やかな安らぎ

 興味津々で地下室の中を眺めていたが、ベッドの素材がそれなりに重たいので、とりあえず持っていたものをその辺に下ろす。するとシビルが後は任せろと言わんばかりに俺の前に出た。


「それじゃ、一仕事するかの。準備は良いか?」


 彼女はどこか前の方を見ながらそう問いかける。俺に向けての言葉じゃなさそうだし、精霊に呼びかけているんだろうな。


 用済みの俺がそのままシビルの様子を見守っていると、突如として材料全てが淡く緑色に輝き始める。そしてシビルが何かを呟くと、巻き起こった風に運ばれて、若い緑の香りが微かに部屋に広がった。


 それからすぐに、植物のツタが一斉に木材に絡み付き、そして形をどんどん変化させていく。驚いたことに、何もしなくても木材たちが曲がったり、切断されたり、そして組み合わされたりして、発光を続けたまま、あっという間に寝心地の良さそうなベッドが完成してしまった。


 俺の目からは精霊たちが見えないから何をやっているのかサッパリだが、シビルからは精霊たちがせっせと働いているのが見えるのかも。シビルは完成したベッドをふわりと浮かせて空いたスペースに放り込み、着地させた。


「これで良し」


「すげえな。精霊魔法ってこんな感じなんだな」


「何じゃ、お前は精霊魔法を見たことがなかったのか?」


「ああ、ちょっと複雑な事情でね」


「そうか。ワシはともかく、後でノエラからも見せてもらうといい。良い練習にもなるじゃろうからな」


「そりゃいいな。彼女が嫌じゃなければ是非そうしてもらおう」


 それから二階に上がったらノエラがシビルのことを呼んだ。何やら精霊魔法のことで質問があったらしい。意外にもシビルはそれを邪険にすることもなく優しげに教えてあげている。


 なんかノエラには素直に優しいよなシビルって。別にいいけど。


 俺は彼女らの話題には全然付いていけないし、やることはやってあって暇なので、気兼ねなく客室に戻ってお昼寝をかますことにした。魔物と戦って木を切り倒したのだ。正直に言って疲れたのである。


 何となくそのまま眠るのも躊躇われたので、浄化の奇跡を自分にかけてから寝る。神力さえ残っていれば自分の体を清めることもできるのだから、やっぱり奇跡も便利だよな。そんなことを考えていたら俺はいつの間にかベッドの上で眠りこけていた。


 次の瞬間、サラサラと草の揺れる音がして目が覚める。確かお昼寝をしていたはずだったのだが、ツリーハウスの窓から覗く景色はとっくに暗くて、冷たいながらも穏やかな風が窓から入り込んでくる。良く寝たな。


 アンヘルも何だかんだでずっと傍にはいてくれていたようだが、翼を畳んで床で眠っていた。元天使兼悪魔でも睡眠は必要なのかな。ともかく俺は夕食にありつくために部屋を出てシビルを探した。


 そもそも今の時間はわからないが、夕食を食べ逃したなんてことはない……よね?


「どうしたサム。腹でも減ったか?」


 俺が寝起きでふらついていると、横からシビルの声が聞こえる。そこにはノエラもいて、彼女たちはあれからずっと精霊魔法について話していたようだ。思ったより時間は経ってなかったんだな。


「そろそろ夕食の時間だろ? 何か食べようぜ」


「良かろう。お前にも働いてもらいたいところじゃが、それは止めておこう。料理の心得があるとは到底思えん」


「はい。何もできません。座して待たせていただきます」


「全く。明日も魔物を狩ってこないと食事はないと思うんじゃな」


 シビルは小言をいいながら食事の準備に向かった。その肩には今朝俺に火傷を負わせた忌まわしき小動物の姿がある。けっ。まだいやがったのか。


 でも眷属だからずっといるのかな……。いるんだろうな。しばらく近寄らないでおこう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ