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邪神に仕える大司教、善行を繰り返す  作者: 逸れの二時
悲しみの暮れ
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魔の剛体

 とは言ってもダロイとは違ってこの街で突如飛行すると悪目立ちしてしまうので、門から普通に出て丘をちょっと降りてから飛行した。南の方向はブロルを正面に構えた時の右なので、そっちへ向けて飛んでいき、最高速度を出す。


 景色がスイスイ変わって行くのを見ながらずっと飛んで、草原の色が綺麗な黄緑から枯れた茶色に。枯れた茶色の草原にいた魔物のバカの群れを見送ってさらに枯れ木がちらほら生える地帯までやってくる。


 ちなみにアンヘルはこの速度で飛ぶと付いて来るのがキツいそうなので一緒に奇跡をかけてあげた。そうしてきた目的地で対象の魔物を探し始める。見た目は四足歩行の大きい犬と熊と狼が混ざったような不思議な生物らしいとのことだが、文献が古かったそうで結局わからないってことみたいだ。


 ということでとりあえず大きくて強そうという頼りない情報を元に速度を落としてざっと探した。ややもすれば、その途中で明らかに魔物の動きがおかしい地点を発見した。バカやマガスパンクなどの弱い魔物が逃げるように一方向に向けて走っているのだ。


 これは期待できそうだと逃げて行く魔物の逆方向へと飛ぶと、大きな生物が目に入った。見つけた魔物のその姿は、どことなくドラゴンを思わせる。


 翼もないし、全身が鱗に覆われているというわけでもないのだが、立派に太い腕もしかり、爪の光沢や鋭そうな尖りもそう。角だって前方に突き出ている形だが、大きさはドラゴンにも負けてない。


 決定的に違うのは、岩のようにごつごつしているのに、風に揺れている堅そうな毛が背中に生えていること。逞しい背中から尻尾にかけて山なりにその硬質な毛が生えていて、それらがすべて土色をしている。


 それ以外の部分にも毛は生えているが、こちらは狼の毛を紫色にしたような滑らかな毛質。最後に毛が生えていない体の側面の部分は、上質な質感の革そのままといった感じで、色は緑色だった。


 意外とカラフルな見た目だが、それが余計に腕と爪の黒が引き出されて恐ろしく感じる。そうやって空から魔物を観察していると、不意に魔物の目線がこちらに向いた気がした。


 そしてその直後、魔物の背面に大きな魔法陣が描かれて、そこから赤の光線が連続で向かってきた。まさか魔術を使って来るとは思わなくて驚いたが、飛行状態だったおかげで高速で横に移動して回避できた。俺の後ろにいたノエラもきちんと避けられたみたいだ。


 光線を避けられるとはいえ、【漆黒の翼(ホワイトウィング)】を使ったままだと機動力はあっても他の奇跡が使い辛いので、俺たちはそっと地上に下りる。その間もパンギルハイは赤の光線を魔法陣から延々と放ってくるが、【邪悪なる守り(ホーリーバリア)】で身を守る。


 光線は守りの奇跡に阻まれて、俺たちの目前で消滅する。それを良しとしなかったパンギルハイは、今度は腕をバンッと地面に叩きつけて、次なる紫の魔法陣を地面に展開する。そうすると、俺たちの周りの空気に魔力が集まっていくのを感じた。


 嫌な予感も束の間、俄かに辺りが紫色に変化していく。一瞬爆発か何か起こるのかと思ったが違った。これは――毒ガスだ! 範囲が広くてどうするべきかパニックになったが、隣にいたノエラが咄嗟に精霊に呼びかけてくれる。


『お願い。有害な空気を吹き散らして私たちを守って!』


 風の精霊たちのおかげか、紫の空気はすぐさま上空に吹き散らされて霧散していった。助かった。毒ガスに呑まれて死ぬところだった。【邪悪なる守り(ホーリーバリア)】は衝撃には強いけどこういった攻撃はまだ防げないんだ。俺の様子でそれを察してくれたノエラの機転に感謝だな。

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