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邪神に仕える大司教、善行を繰り返す  作者: 逸れの二時
険しき道々
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廃遺跡

 そこからも引き続き落石と魔物の襲撃に注意しながら歩を進める。案の定、小高い上の場所から石を投げてくる憎たらしい人型の魔物、エイジャンも出てきた。オレンジ色のこいつは小柄な分動きが素早くて、小賢しい戦い方を好むんだとか。


 攻撃が届かない距離だと思っているのか、こちらに腕を振り上げながら挑発のようにぎゃーぎゃー喚き、小ぶりの石を延々と投げてくる。さすがの俺もちょっとイラッとしてしまい、加減少な目の【漆黒の槍玉(ブラックランスライズ)】をお見舞いしてしまった。


 まさか真下から攻撃されるとは思っていなかったのか、エイジャンは驚愕の表情を浮かべながら俺の生み出した槍に跳ね飛ばされている。はっはっは、ざまあ見なさい。残念ながらその後も数度魔物に襲われた。


 カラガオンがのっそりと出てきて余裕かと思いきや、二足歩行かつ腕に植物のツルを巻いたウサギが大量に出てきて戸惑ったりもした。事前に気配は察知できているものの、どんな魔物かまではわからないのだ。


 この二足歩行のムキムキウサギ、マガクネホが腕にツルを巻いている理由は、格闘攻撃で手を痛めるのを防ぐためということのようで、奴らはファイティングポーズを取りながら見事なフットワークでこちらに向かってきた。


 接近が早かったので、奇跡よりもパルーサでの対処に切り替えて、依頼人の二人にも遠隔武器での自衛をお願いした。久しぶりに【呪怨(ブレス)】を使って接近戦をしたが、以前よりもさらに素早く動けて、補助系の奇跡もしっかりと効果が高くなっていることを実感できた。


 ノエラも後ろからしっかりと風や岩や植物の魔法で援護してくれていて、数は多かったがそこまで危なげなく対処できた。依頼人自身もも自衛ができるというのも大きかったな。


 凝りもせず上から石を投げてくるエイジャンを倒しながら先を急ぐと、左斜め前に大きな石の建物が見え始めた。見たところそれは人工物のようで、自然に同化しながらも屋根と壁を完備している。興味を引かれてそっちの方を眺めていると、ミーナが話しかけてきた。


「どうしたの?」


「あの遺跡みたいのは何なのかなって思ってさ」


「あれはラビ遺跡っていって危険な場所って言われてるところだよ。何でも中に入って生きて帰った人はいないとか」


「あらゆる魔術の力を結集して作られた遺跡だという話ですわ。情報元が不確かなので、本当のところはわかりませんけれども」


「へえ。そんな遺跡があるのか。面白いな」


“我が大司教、あれはカロヌガンの信者の魔術師たちが作った遺跡である。今から約三百年前に建造されて、魔術の力を称えるために活用されていたのだ”


 俺が面白がって入ることを恐れたのか、マサマンディオスが詳細な情報をこっそり教えてくれた。カロヌガンは知識の神だから、魔術師たちにも信奉されてるってことかね。そう考えると入りたくはないな。


 マサマンディオスの声はもちろんノエラにも聞こえているので、俺とノエラは目配せをしながら遺跡には近づかないことに決めた。今は護衛依頼の途中だから危険な遺跡に入るのはあり得ないし、帰りもわざわざ危険に飛び込む必要を感じないからな。


 ということで遺跡を横目に見ながら先に進み、岩山の地帯の先を目指す。途中で昼食を挟み、そこからさらに進むが、結局日が沈む前には岩山のエリアを抜けることはできなかった。でも依頼人二人の話では相当早いペースで進めているそうで、明日には丘陵都市ブロルに着くだろうとのことだ。


 日が完全に沈みきる前に丁度良い場所を探して、昨日と同じく野営の準備に取り掛かる。選んだ場所は縦長の岩壁に穴が空いているような、ちょっとした洞窟のような場所。


 そこを中心にまた結界と障壁を前半後半に分けて張り、昨日とはメンバーを入れ替えて夜の見張りをした。昨日はいなかったフクロウに似たクワゴの鳴き声がして、静かな夜に相応しい落ち着く音色を奏でていた。


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