アールスローン戦記7
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】
隊員が言う
「いやぁ~まさか この食堂で夕食を食うのが 日課になっちまうとはなぁ?」
隊員たちが笑って言う
「ああ、メインアームを固定されて 同じ訓練ばかりやってれば 飽きちまうかと思ってたら」
「たかがサブマシンガン されどサブマシンガン!」
「あははっ!なんだよそれ~!?」
「奥が深いって事だよ!俺は今まで サブマシンガンなんて 敵を脅かすか ラッキーで当たる位にしか思ってなかったが」
「確かに 弾の消費は激しいし 飛距離も微妙だし 良い所はその辺だけって武器だよな?」
「それが それだけでも無いんだぜ?」
「ああ、それだけじゃないって事は バイスン隊員を見てれば 分かるじゃねーか?」
「あぁ… バイスン隊員があんなに凄いだなんて… ちょっとショックだったね…」
「っははっ まぁ 良いじゃねーか へらへらした奴だけど 今じゃ 俺たちの教官役だぜ?」
隊員たちが 休憩所に居る隊員Bを見る
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員Bが言う
「アッちゃん アッちゃん!俺 命中率65%まで行ったんだぜー!凄いだろー!」
隊員Aが言う
「へぇー サブマシンガンの命中率65%ってのが 正直俺には分からないんだが バイちゃんのサブマシンガンは 少佐の次に凄いと 俺は思ってるよ」
隊員Bが笑って言う
「少佐は当てようと思えば サブマシンガンでも100%だって言ってたよー」
隊員Aが呆れて言う
「流石 少佐だ…」
隊員Bが言う
「それで アッちゃんの方はー?」
隊員Aが苦笑して言う
「あぁ… 俺は命中率で言うと80%まで行ったよ」
隊員Bが言う
「すっげー!アッちゃん スゲーじゃん!」
隊員Aが言う
「いや、そうでもないんじゃないかな 他の連中は 86から93%位だぜ?」
隊員Bが呆気に取られて言う
「え…?そうなの?」
隊員Aが苦笑して言う
「まぁ 俺は拳銃で 連中は小銃なんだけどな?」
隊員Bが苦笑して言う
「なんだぁー それじゃぁ アッちゃん以外の皆が命中率高いの 当然じゃーん!」
隊員Aが言う
「けど 折角少佐が お前は拳銃が向いてる って言ってくれたんだからさ?だったら俺は 早くその期待に答えたいんだよ そうすると 拳銃による確実な先制攻撃の命中率は 最低でも95%は必要だから まだまだ だなってさ…」
隊員Bが呆気に取られた後喜んで言う
「す… スッゲー アッちゃん!スッゲー カッコイイ!」
隊員Aが衝撃を受け呆気に取られて言う
「え?そ、そんなに 俺 カッコイイっ?」
隊員Bが言う
「セリフだけね?にひひっ」
隊員Aが衝撃を受けてから 苦笑して言う
「ちぇ やっぱり そんなオチかよ」
隊員Bが言う
「あ バレてた?」
隊員Aが言う
「も~バレバレ 大体 バイちゃんが俺の事 そんなに褒める筈がないからな?」
隊員Bが言う
「えー?」
軍曹が隊員Xへ向いて言う
「おおっ では自分が居らなかった間は 小銃メインのグループに 同行しておったのか!」
隊員Xが言う
「はいっ!普段は軍曹からのご指導を直に受けっ 更に本日は 少佐からのご指導を 直接受ける事が出来っ 自分は光栄でありますっ!」
隊員Bが驚いて言う
「えーっ!?ゼクちゃん 少佐から直接指導受けたのー!?」
隊員たちが反応する 隊員Aが言う
「ああ、そう言えばそうなんだ ついでに俺も ちょっとだけだけど 指導してもらっちゃったもんねー にひっ」
隊員Bが言う
「えー!どう言う事ー?」
隊員Xが言う
「自分はメインアームが軍曹と同じ盾だけど 拳銃の所持も命じられてる だから いざと言う時は 盾を構えた状態で銃を撃たなきゃいけない でも、そうすると どうしても構えが中途半端になって 腕や肩を痛める事になるから 射撃位置は盾の上方からにするようにって」
隊員Bが疑問して言う
「え?指導って それだけ?」
隊員Xが苦笑して言う
「それだけって… 少佐から個人的な指導をしてもらえるなんて 物凄い事じゃないか!」
隊員Bが疑問して考える 隊員Aが笑んで言う
「ああ そうだよな!俺もそんな訳で 拳銃を片手で構える時は 教科書通りより 少し反対側の体を引いて 反動を腕だけじゃなくて体全体で受けるようにしろって そうしてやったら 本当に楽でさぁ 流石少佐だよなー」
隊員Bが苦笑して言う
「なんだぁー びっくりした もっと本格的に 手取り足取り教わったのかと思ったー 言葉で教えてもらうのなら 俺は 前からもっと色々教わってるもんねー!にひひっ」
隊員Aが言う
「ほんと 羨ましいよなぁ バイちゃんは 俺なんて未だに 声掛けるのヒヤヒヤしてるのに」
隊員Bが言う
「アッちゃんは心配し過ぎなんだよー?少佐はタメなんだしー?もっと気楽で良いと思うんだけどなぁ?」
隊員Aが苦笑して言う
「まぁ 気楽より 気長に慣れる様にするよ バイちゃんは結構 長いんだろう?」
隊員Bが笑顔で言う
「そうだねー!俺と少佐の裸の付き合いは もう3ヶ月以上かなぁー?」
隊員たちが衝撃を受ける 隊員Aが慌てて言う
「ちょ、ちょっと バイちゃんっ!その言い方は誤解を招くってっ!」
隊員Bが疑問して言う
「えー?」
軍曹が苦笑する TVで映像が流れキャスターが言う
『皇居での就任報告を終えられた メルフェス・ラドム・カルメス皇居宗主兼政府長長官は 政府関係者で催された 就任祝いパーティーに出席 晴れやかなパーティーは この後遅く22時まで執り行われるとの事です』
隊員Cが映像を見て言う
「うわー 美味そうな料理…」
隊員Bが軍曹へ向いて言う
「あれー?でも 軍曹や総司令官の時は こういうの無かったですよねー?国防軍の方ではやらないんですかー?」
隊員Aが言う
「あっても 俺らは食えないし…」
隊員Cが言う
「だな?」
軍曹が言う
「国防軍の方では パーティーなどはやらないのだ 政府の方でやるのは 政府は役人が多い為 その顔合わせであると 兄貴が以前言っていたのだ」
隊員Bが言う
「それじゃぁ 国防軍には 役人は居ないんですかー?」
隊員Aが言う
「バイちゃん 国防軍で役人って行ったら 軍階持ちの人全員って事になるんだぜ?」
隊員Bが言う
「えー そうだったんだぁ?アッちゃん 物知りー」
隊員Aが苦笑して言う
「いや、普通だよ…」
軍曹が苦笑して言う
「いや、しかし バイスン隊員がその様に思うのは 良い事なのだ 国防軍の役人は 皆 役人などと言う意識ではなく 同じ国防軍の仲間として 隊員たちと共に戦う事を考えている 対する政府の者は 一人一人が役人として個々に行動する為 全体の統一が取られなくなるのだ だから こう言ったパーティーで顔を合わせ 意識を統一しなければならない …ものと 自分は思っているのだが」
隊員Bが感心して言う
「おおー!」
隊員Aが微笑して言う
「流石 防長閣下!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えっ!?」
隊員Cが笑んで言う
「ズシッと重い お言葉だったな!」
隊員Bが笑んで言う
「うんうん!」
隊員Aが言う
「当たり前だろ?軍曹は普段は軍曹だけど 俺たち国防軍の代表 防長閣下でもあるんだ!」
隊員Bが笑んで言う
「さっすがー!それに俺!国防軍の方で良かったーって 思ったし!」
隊員Cが笑んで言う
「だな!俺もだっ!」
隊員Xが頷く 軍曹が呆気にとられて言う
「じ… 自分の言葉を こんなに認められたのは 初めてなのだ…」
隊員Aが言う
「これからも 俺たちは 軍曹と防長閣下に 付いて行きます!」
隊員Bが笑んで言う
「もっちろん!少佐にもー!」
隊員Aが苦笑して言う
「それじゃ バイちゃんはまず サブマシンガンで命中率100%な!」
隊員Bが衝撃を受けて言う
「えー そんなの出来る訳無いしー アッちゃんの いじわるー!」
隊員たちが笑う
【 マスターの店 】
TVの映像に政府就任パーティーの映像が流れている マスターが片付けをしながら見ている TVからレポーターの声が聞える
『こちらは政府の就任パーティー会場の外です!先ほどパーティーが終了し 普段は中々お目にかかる事の出来ない 政府重役の方々が会場を後にしていますが 恐らく本日の主役であられる メルフェス・ラドム・カルメス新政府長長官は 最後に会場を後になさるものと思われ 少しでもお時間を頂ける様でしたら お話を伺いたいと 我々は その時を』
マスターが息を吐き片付けを行う
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
TVの映像に政府就任パーティーの映像が流れている ハイケルがノートPCを見ている TVからレポーターの声が聞える
『あ!メルフェス・ラドム・カルメス新長官です!長官っ!長官っ!この度のご就任 おめでとう御座いますっ!』
ハイケルがTVを見る メルフェスが微笑して言う
『ありがとうございます』
レポーターが言う
『長官は 今回のご就任以前から 皇居宗主の任に就かれていた訳ですが 今回のご就任に付いて どの様なご感想をお持ちでしょうか!?』
メルフェスが微笑して言う
『これからは政府長長官の責務を兼任すると言う事で 大変になるとは思いますが 攻長閣下からの 直々のご任命でありましたので その重責をしっかりと受け止め 執り行っていく所存にあります』
レポーターが言う
『政府の長となられた事で これから 何か特別に執り行おうと 考えていらっしゃる事などは あるのでしょうか?』
メルフェスが言う
『ええ それはもちろん 沢山有りますね』
レポーターが言う
『例えばどの様なことでしょう!?よろしければ』
メルフェスが言う
『そうですね まず何と言っても1番は 現在 国防軍に少々遅れを取っている 我々の政府警察の能力 主に戦力を高めようと』
ハイケルが視線を強める レポーターが呆気にとられて言う
『え?えっと… それは…?』
メルフェスが微笑して言う
『我々政府は 元々 陛下を軸として 国をまとめ 外交を持って 他国との交流を深め 平和的に世界の一員として歩む事を 目指してきました その功が奏され 現在我々アールスローン国は 外国から多くの支持を集めている所です しかし… ここへ来て このアールスローン国に 古くから保存されている 危険な力が目覚めようとしていると言う事を 我々政府は突き止めたのです』
レポーターが驚いて言う
『え?…えぇーっ!?…そ、それは 一体どう言う事でっ!?』
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
軍曹や隊員たちが呆気に取られてTVを見ている TVからメルフェスの声が聞える
『その危険な力を止め 消し去る為に 我々政府は今 外国からも力を借り受け 政府警察や同じく 政府警察機動部隊の戦力を高めている所です …ですので アールスローン国 国民の皆様は どうか ご安心を 我々政府は 政府の持つ外交や政府警察の力を持って その恐ろしい力から アールスローン国や 周辺諸国を守る事を誓います』
レポーターが慌てて言う
『あ、あのっ 長官っ!?それは 本当のお話なのでしょうかっ!?アールスローン国に その様な恐ろしい力がっ!?でしたら 長官っ!それこそ 政府警察と国防軍で力を合わせ その恐ろしい力と戦われた方がっ』
メルフェスが言う
『ええ… 出来る事ならそうしたいのですが 残念ながら その恐ろしい力の詳細を記す貴重な資料の提供を 先日 国防軍を代表する 防長閣下にお断りされてしまったのです』
軍曹が驚いて言う
「なっ!?」
隊員たちが驚いて軍曹を見る TVからレポーターの声が届く
『提供を断られたっ!?』
隊員たちがTVを見る メルフェスが言う
『恐らく 我々政府や政府警察では 対抗する事は出来ないだろうと… 国防軍に任せておけば良いと言う意味なのでしょう… 従って 私は 国防軍にその様に見放されてしまっている 現状の政府や政府警察の力を改め しっかりと高めようと そうすれば 国防軍を率いる防長閣下にも認めて頂け かつ 恐ろしい力の情報を 我々政府にもご提供頂けるものと… 私はその様に信じるしかありません …では 折角の就任パーティーの後に これ以上 政府の恥を晒す訳には 参りませんので 失礼を…』
レポーターが慌てて言う
『長官っ!長官っ!?今のお話はっ 本当にっ!?長官っ!カルメス長官っ!』
【 ハブロス家 アースの部屋 】
TVからレポーターの声が響く
『長官っ!長官っ!?今のお話はっ 本当にっ!?長官っ!カルメス長官っ!』
TV映像が切り替わりキャスターの声が響く
『この突然の 驚くべき情報に 現在マスコミ各社を始め 多くの…』
TVが消され アースが言う
「…やられたな?」
軍曹がアースを見る アースが軍曹へ向いて言う
「これで世論は 政府の味方へ傾くだろう 国防軍は 政府へ情報を提供せず 政府の力を蔑み 己の力を誇示していると その様に取られる …アーヴァイン」
軍曹が反応する アースが言う
「何故 攻長閣下を助けに行った?」
軍曹が視線を落として言う
「それは…」
アースが言う
「私であっても カルメス新長官が この様な手段に出るとは 予想だにしていなかった だが これが現実だ お前が攻長閣下を助けに行かなければ …アールスローン戦記の原本の その偽物を渡したりなどしなければ」
軍曹が慌てて言う
「し、しかしっ もし 助けに行かなかったらっ 俺は守りの兵士でありながら 攻撃の兵士を見殺しにしたと その様に 言われたのではなかろうかっ!?俺が助けに行かなかったから ラミリツ攻長が殺されたなどと 言われたよりはっ」
アースが言う
「その時は その様な要求など聞いていないと 白を通せば良いだけだっ!カルメス長官は お前がラミリツ攻長を助けに行った証拠をっ その時の映像でも 持っているのだろうっ!?」
軍曹がハッとする アースが息を吐いて言う
「こちらは今 明らかに不利だ 打つ手が無い このままでは いつか本当に アールスローン戦記の原本を 政府の側へ渡す羽目になるとも限らない」
軍曹が視線を落とす アースが椅子に座り言う
「下がって良い」
軍曹がアースを見て言う
「兄貴っ」
アースが言う
「何か有れば声を掛ける それまで 何もせず 大人しく …レギストの軍曹でもしていろっ!」
軍曹が視線を落として言う
「…分かった すまない 兄貴」
軍曹が出口へ向かう 出入り口の外に居たラミリツが逃げる 軍曹がドアを出て立ち去る
【 ハブロス家 ラミリツの部屋 】
TVで映像が流れ キャスターが言う
『政府の新長官となった メルフェス・ラドム・カルメス長官による この突然の発表に対し 国防軍は現在 調査中としており』
ラミリツが携帯に言う
「何でこんな事を?政府の攻長である僕を 国防軍の防長であるアイツが見殺しにする その映像を TV中継するんじゃなかったの?」
携帯からメルフェスの声が届く
『貴方からは 原本に関する重要な事を教えて頂きましたからね その貴方へ その様な酷い仕打ちをしては申し訳ないかと?』
ラミリツが言う
「嘘なら もう少し上手く言ってくんない?政府を潰そうとしてた アンタが なんで政府を持ち上げる様な事してんだよっ」
携帯からメルフェスの声が届く
『っはは そうですね 演技では貴方には敵いませんよ しかし 貴方にとっても良かったではないですか?これで 貴方は晴れて 自由になられます もはや 貴方を餌に 防長閣下をゆする必要も無くなった訳ですから 誰も 貴方を捕らえようなどとはしません むしろ… 今度は防長閣下が 狙われるかもしれませんね?フッフッフ…』
ラミリツが言う
「分かった そんなのはどうでも良い それより 好い加減 開放してよ 原本の事は分かって 手に入れる方法だって …僕はもう用済みなんでしょ?だったら」
メルフェスが言う
『残念ながら それは了承出来ません しかし 攻長閣下 貴方は自由です その貴方が 原本の情報や 国防軍の情報を手に入れる事も 自由ですよ?』
ラミリツが悔しそうに言う
「まだ僕を使うつもりっ!?」
メルフェスが笑って言う
『っはははっ 人聞きが悪いですね どうぞご自由に と言っているではありませんか?』
ラミリツが言う
「…ふざけんなよっ 僕に出来る事なんて もう無いって言ってるだろっ!?後はあんたらで勝手にしろよっ!…だからっ!」
メルフェスが苦笑して言う
『悪い事をするから その様な目に会うのですよ 国民を守る為にあるのが法律です それを犯せば 悪魔に呪われてしまいますよ?ペジテの姫は 悪魔とも仲が宜しいそうじゃありませんか?っはははははっ!』
電話が切れる ラミリツが悔しがって言う
「…クッ!何が悪魔だよっ そんなものより お前の方がよっぽど悪魔なんだよっ!」
ラミリツが机を叩く
【 マスターの店 】
TVの映像にアースが映っていて言う
『我々国防軍に そのような情報は 確認されていません そして、万が一にでも アールスローン国や周辺諸国を脅かす その様な恐るべき力などが確認された際には 我々は速やかに陛下 並びに 政府へお伝えし 共に対処を行う事を誓っております 我々国防軍は 己の力を 過信するような事は 決して ありません』
TVの映像が切り替わり キャスターが言う
『昨夜の政府長官メルフェス・ラドム・カルメス新長官の言葉に対し 今朝早く 国防軍長総司令官アース・メイヴン・ハブロス総司令官は この様に会見を…』
マスターが苦笑して言う
「まぁ… こう言うしかないよな?」
マスターが仕度をしている 店の来客鈴が鳴る マスターが入り口へ顔を向けて言う
「いらっしゃいませ」
老紳士が微笑しカウンター席へ座る マスターがコーヒーを用意する TVからキャスターの声が届く
『尚 今回のこの突然の話題に対し 政府各省の重役は一様にノーコメントの姿勢にある事から 現在は 新任のメルフェス・ラドム・カルメス長官の発言に 信頼性が薄く 政府省長においても 今回の話題を 独自に確認を取ろうという 動きが見られています』
マスターが老紳士の前にコーヒーを出す 老紳士が静かにコーヒーを飲んでホッと息を吐いて言う
「うん 結構結構」
マスターが微笑する 老紳士が言う
「皇居宗主であったとは言え 随分と事を急いだ様だ 政府は一枚岩ではない 事を行うには 念入りな根回しが必要なもの」
マスターが言う
「対する国防軍は 先任は異なったとは言え ハブロス家が歴代の国防軍長ですからね?急にその信用を奪おうとしても 簡単には行かないのでしょう」
老紳士が言う
「とは言え 国防軍も無傷とは行かない この様な時に 他国からでも攻められたら 国の安定を揺るがされると言うもの 早く収まってくれると良いのだが…」
マスターが視線を細め PCを横目に見て言う
「ええ… 本当に」
【 ハブロス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツが携帯に言う
「…ああ 構わない どうだって良い どんな手段を使っても良い …そうだよ だから 分かったら直ぐに連絡して」
ラミリツが携帯を切り 息を吐いて窓の外を見る 周辺を見渡し 別の屋敷を見つけて疑問する ドアが開かれ 執事が入って来て言う
「お茶をお持ち致しました」
執事が紅茶を用意する ラミリツが言う
「ねぇ… あっちの屋敷は?」
執事が言う
「はい、あちらは ヴォール・ラゼル・ハブロス大旦那様の お屋敷に御座います」
ラミリツが言う
「…確か 2代前の防長だっけ?」
執事が微笑して言う
「左様に御座います」
ラミリツが紅茶を一口飲んでから言う
「…どんな人?」
執事が微笑して言う
「とても お優しい方にございます」
ラミリツが視線をそらして言う
「そう… なら…」
ラミリツが言葉を飲んでから茶菓子をつまむ 執事が軽く微笑してから言う
「はい アーヴァイン様に よく似ていらっしゃいます」
ラミリツが衝撃を受け むせて言う
「ゲホッゲホッ… んな事っ 聞いてないっ …余計な事言うなよっ!」
執事が微笑して言う
「失礼を致しました」
ラミリツが息を吐いてから 再び窓の外を見る
執事がお茶のトレーを持って下がる ラミリツが携帯を見てから 間を置いて窓の外を見る
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
ラミリツがやって来て屋敷を見上げ周囲を見渡して言う
「警備は居ないんだ…?無用心なの」
ラミリツが屋敷の前へやって来て ドアノブに手を掛けようとして止め考える ラミリツが間を置いて溜息を吐いて言う
「やっぱ やめよ… こんなんで怒られたら 馬鹿みた… いっ!」
ラミリツが立ち去ろうとした所 扉が開かれラミリツの頭に当たる ラミリツが頭を押さえて言う
「いったぁ~… 何するんだよっ!?」
ラミリツが見上げた先 エルムが目を細めて言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下 ここで何をしている?」
ラミリツがエルムを見て衝撃を受ける エルムが言う
「何をしている と 訊いている 答えろ」
ラミリツが震えそうになるのを必死に堪えて言う
「な… 何をって…っ ぼ、防長にっ 2代前の防長に あ、会ってみようかと…っ」
エルムが言う
「任を解かれた彼らは 防長とは呼ばない 名はヴォール・ラゼル・ハブロス」
ラミリツが間を置いて言う
「…アンタは?」
エルムが言う
「私はエルム・ヴォール・ラゼル ヴォール・ラゼル・ハブロスの 私設自衛小隊 隊長だ」
ラミリツが言う
「エルム・ヴォール・ラゼル… エルム?」
ラミリツがハッとして顔を上げる エルムが言う
「それで?」
ラミリツが衝撃を受け言う
「えっ?」
エルムが言う
「ヴォール・ラゼル・ハブロスへ用があるのなら 私が伝えて来る 用件は何だ」
ラミリツが表情を困らせて言う
「あ… べ、別に… 用件なんて… ただ ちょっと挨拶でもしようかと 思っただけだよ」
エルムが言う
「了解 待機していろ」
エルムが立ち去る ラミリツが表情を顰めて言う
「…変な奴」
ラミリツが周囲を見てふと気付き振り返ると ラゼルが現れ 微笑して言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下 孫がお世話になっております」
ラミリツが驚き視線をそらして言う
「あ… いえ… … …僕の 方こそ…」
ラゼルが微笑して言う
「どうか 攻長閣下のご気分の良い時にでも お声を掛けてやって下さい アーヴィンは貴方と仲良くしたいと思っていても 政府の攻長閣下が どの様なお話を好むものなのかが 分からずに 困っているのです…」
エルムが言う
「君自身がそうであったからな」
ラゼルが衝撃を受け 苦笑して言う
「ほっほっほ… 今となっては懐かしい思い出であります 少佐…」
ラミリツが疑問して言う
「君自身が…って?」
ラゼルが微笑して言う
「私も過去には 陛下をお守りする 陛下の盾となった事がありました その頃には やはり 陛下の剣となられた 政府の攻長が居られました 私は その攻長とお友達になりたいと 手を尽くしたのですが… 何をやっても 逆に嫌われてしまうばかりで とても残念に思ったものです 折角 陛下の下 一対の剣と盾として召集されたのですから 共に助け合い 共に戦いたいと 願ったのですが…」
ラミリツが視線をそらして言う
「そう… けど 政府と国防軍だもん 仲良くなんて 出来る訳が無いよ」
ラゼルが言う
「政府と国防軍であろうが なかろうが 私にはどうでも良かったのです 何故 同じアールスローンに住まう者が 争わなければ ならないのでしょう…?」
ラミリツが一瞬反応してから言う
「…それは」
エルムが言う
「帝国が動き出していると言うのに 愚かな連中だ」
ラミリツがエルムを見る ラゼルが表情を落とす ラミリツが言う
「帝国って あの帝国の事?」
エルムが言う
「他に何処がある?」
ラミリツが表情を顰める エルムが言う
「間もなく 帝国から多くのマシーナリーが導入されるだろう 国防軍も北東の駐屯地辺りは すぐに壊滅させられる 19部隊辺りが残れば良い方だ」
ラミリツが驚いて言う
「どう言う事っ?」
エルムが言う
「自分で調べろ お前は政府の攻長だろう」
ラミリツが言う
「僕は ただのっ …政府?その事に 政府が関わってるって事なのっ!?」
エルムが言う
「政府の新たな長官 メルフェス・ラドム・カルメスが取り仕切っている事だ 政府は 本気でアールスローンを帝国へ明け渡すつもりか?奴を任命したのは お前なのだろう?」
ラミリツが表情を怯えさせつつ言う
「僕は… 僕は ただ…っ」
ラミリツが視線を落とす ラミリツの携帯が鳴る ラミリツが一瞬驚き 携帯を取り出す ラゼルが微笑して言う
「どうぞ 御気になさらず」
ラミリツが言う
「…失礼します」
ラミリツが少し離れて携帯に出る 後方でエルムがラゼルへ言う
「挨拶なら済んだだろう 部屋へ戻れ 軍曹」
ラゼルが微笑して言う
「自分は 大丈夫であります 少佐」
エルムが言う
「君の大丈夫は 当てにならない」
ラゼルが笑って言う
「ほっほっほ… 流石は少佐 しかし、今日は本当に 調子が良いのであります」
エルムが言う
「そうか なら良いんだ」
ラミリツが携帯に言う
「兄上の居場所が分かったんだろっ!?何で助けに行け無いんだよっ!?」
エルムとラゼルが顔を向ける ラミリツが表情を顰めて言う
「だから行けないって言うのっ!?何でっ!?…それじゃっ 以前 僕や兄上が捕まっていた時も お前たちは分かっていて 見殺しにしていたのかっ!?…謝罪が聞きたいんじゃないっ!何とかしろよっ!いくら使っても良いっ!政府警察が駄目なら 他を探せよっ!何処かあるだろっ!?」
ラミリツが驚き 目を見開いてから 視線を落として言う
「…アイツに頼むなんて もう…っ」
ラミリツが携帯を切り 頭を抱えしゃがみ込む ラゼルが微笑しラミリツの下へ向かう エルムが言う
「その様な事をしているから 君は嫌われるんだ」
ラゼルが立ち止まると振り返り苦笑して言う
「そうであっても 私はやはり 攻長を見殺しには出来ません 朽ちても盾は盾ですから」
エルムがそっぽを向いて言う
「…ふんっ」
ラゼルが言う
「何かお困りでしょう ラミリツ・エーメレス・攻長閣下」
ラミリツがびくっと反応して振り返る ラゼルが微笑して言う
「私に出来る事が有るのなら 私は貴方をお助けしたい」
ラミリツが驚いて目を見開く
【 元政府収容施設 外 】
エルムが出入り口を見て言う
「言って置くが 私の任務は シェイム・トルゥース・メイリスの奪還だ お前の保護は含まれていない」
ラミリツが言う
「分かってる 自分の身は自分で守るよっ」
ラミリツが小脇に抱えたサブマシンガンを握る エルムが銃を用意して言う
「そうか なら良いんだ …では 作戦を開始する」
エルムが顔を上げると 周囲にエルムβが立ち上がる
【 マスターの店 】
マスターがコーヒーを淹れている TV映像が切り替わり キャスターが言う
『ここで たった今入った情報です!先ほど 午後1時過ぎ 政府管轄の収容施設に 武装集団が押し入ったとの事です!』
マスターが顔を向ける TVからキャスターの声が続く
『この収容施設には 以前にも武装集団が入り込み 収容されていた犯罪者 2名が連れ去られた事もあり 今回警察は新たに取り入れた 外国からの支援を追加しての 大掛かりな作戦を用いて 徹底抗戦に出る構えです』
マスターが言う
「帝国のマシーナリーを 本格導入するって事か…?武装集団っていうのは?…まさかっ またっ!?」
マスターがPCを操作し 間を置いて言う
「…いや、国防軍の部隊は 何処も出動していない …なら 一体誰が…?」
マスターがTVを見詰める
【 元政府収容施設 施設内 】
エルムβたちがサブマシンガンを放ちながら階段を降りて行く 警備兵たちがエルムβたちへ銃撃を行い エルムβたちが被弾するが エルムβたちは無反応にサブマシンガンを撃ちながら降りて行く 警備兵たちが怯え言う
「なっ なんだっ!?あいつらはっ!?」
「撃たれても倒れないなんてっ あんな連中に勝てる訳が無いっ 退却するっ!」
警備兵たちが逃げて行く エルムβたちがサブマシンガンの弾倉を変え周囲を見渡す 後方からエルムが降りて来る ラミリツが呆気に取られていると エルムが言う
「サブマシンガンの射程距離から離れるな」
ラミリツがエルムへ向き慌てて駆け寄って言う
「ね、ねぇっ!?こいつらっ 何なのっ!?なんで銃撃を受けても 倒れないのっ!?」
エルムが言う
「強化防弾装備を装着している 重量がある為移動速度は下がるが 政府警察が使用する ハンドガン程度の銃弾ならば防がれる」
ラミリツが苦笑して言う
「なんだ… そう言う事?」
エルムが言う
「行くぞ」
エルムβたちが先行する エルムがゆっくり追う ラミリツが追いながら言う
「そんな凄いのがあるなら 僕にも貸してくれれば良かったのに 何で貸してくれなかったのさ?」
エルムが言う
「重量は108キロある お前は緊急時には動く必要がある 重量装備をさせる事は 推奨されない」
ラミリツが表情を顰めて言う
「108キロ…っ 確かに」
ラミリツが視線を向ける 視線の先 エルムβたちが警備兵と抗戦している
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルがノートPCを見ている TVが付いていてキャスターが言う
『政府管轄の収容施設 襲撃事件の続報です 今日午後1時過ぎに 襲撃があった 政府管轄の収容施設へ 先ほど 政府警察機動部隊が到着 新勢力を用いて 武装集団と抗戦するとの事です』
ハイケルがTVを見る キャスターが続けて言う
『また、これにより 以前は警察の敗北に終わった 同じこの事件を 無事解決させる事が出来るのか この事は 先日のメルフェス・ラドム・カルメス新長官の言葉の 信憑性を高める意味合いもある事から マスコミを含む政府関係者も 一様に注目しているとの情報も入っております』
ハイケルが言う
「…犯罪を犯す 武装集団を応援したいと思ったのは 初めてだ」
ハイケルがノートPCへ視線を戻す
【 元政府収容施設 地下2階 】
ラミリツが叫びながら走る
「兄上っ!兄上ーっ!?」
エルムが顔を上げて言う
「警機が入ったか…」
ラミリツが周囲を見渡し 牢屋の中を見渡す ラミリツの先の通路から警備兵が素早く現れ拳銃を向ける 銃声が鳴り ラミリツが驚いてエルムの方を向く エルムの横に居たエルムβが構えているライフルから白煙が上がっている ラミリツがハッとして対側を向くと警備兵が倒れる エルムが言う
「この通路内であるなら射程圏内だ お前は 襲撃を気にせず シェイム・トルゥース・メイリスを探せ 先ほど警機の応援が入った 捜索を急げ」
ラミリツが一瞬驚いてから頷き走る エルムβがライフルを放つ
【 元政府収容施設 地上階 】
警機が入り口へ向かおうとすると 入り口内部に潜んでいたエルムβがサブマシンガンを乱射する
【 元政府収容施設 地下2階 】
エルムがM82ハンドガンを放つ 重い銃声が響くと ラミリツが牢の入り口へ体当たりして扉を開く ラミリツが叫びながら駆け寄る
「兄上っ!」
エルムが顔を上げ表情を顰めて言う
「マシーナリーを持ち込んだか… 数を減らしたくはない 急ぐぞ」
エルムがラミリツの横へ来て ラミリツの前に倒れているシェイムを肩に担ぐ
【 元政府収容施設 地上階 】
警機が通路を走って行く エルムβが倒れている 警機の隊員がエルムβを調べようと近付く エルムβの体が青い炎に瞬時に焼かれ 白い粉と防弾装備が残る 警機の隊員が驚いて言う
「…なっ!?」
別の警機の隊員が言う
「どうした?」
警機の隊員が言う
「射殺した武装集団の奴を 調べようとしたら…っ」
警機の隊員がその場を見てから言う
「これじゃ 調べ様が無い その防具だけは 後で鑑識へ回そう」
警機の隊員が言う
「あ… ああ…」
警機の隊員たちが通路の奥へ向かう
【 元政府収容施設 地下2階 】
エルムβたちがサブマシンガンを放ちつつ 階段を上がる ラミリツがエルムの抱えるシェイムを見てから怒りに歯を食いしばり サブマシンガンを握り締めて言う
「…っ よくもっ 兄上を…っ!」
ラミリツが顔を上げ階段へ向かおうとする エルムが瞬時にラミリツの腕を掴む ラミリツが言う
「離せよっ!」
階段で爆撃が起きる ラミリツが驚いて顔を向ける エルムが僅かに表情を顰める エルムβたちが倒れる ラミリツが驚く エルムが言う
「こちらへ意識を向けたお陰で 2体失った」
ラミリツが驚いてエルムを見上げる 別のエルムβたちが階段へ向かう エルムが言う
「予定外の損失だ」
ラミリツが倒れているエルムβたちを見て呆気に取られる ラミリツが震えて言う
「…ご、ごめんっ 僕の せいで…っ 2人も… 命をっ!?」
エルムが言う
「問題ない あれはデコイだ」
ラミリツが言う
「デコイ?」
エルムが言う
「…だが 私のデコイは残りが少ない 従って 無駄に減らしたくは無い」
ラミリツが疑問していると 倒れたエルムβたちが青い炎に一瞬で燃やされ白い灰と強化防具が残る ラミリツが驚く エルムが言う
「行くぞ」
エルムが進む ラミリツが慌てて追う
【 元政府収容施設 地上階 】
警機の隊員が後ず去って言う
「銃撃が… 利かないっ!?」
他の警機の隊員が言う
「怯むなっ!さっきのを見ただろう!?奴らは強力な防弾装備を着ているんだ!装備が施されていない箇所を狙え!動きを止められれば良い!」
警機の隊員がハンドガンに持ち替え 狙いを定めながら言う
「食らえっ!」
警機の隊員のハンドガンから放たれた銃弾が エルムβの腕や足に当たる 警機の隊員たちが笑んで言う
「よしっ!俺たちもっ!」
エルムβたちが一瞬止まるが 再びサブマシンガンを放ちながら前進する 警機の隊員たちが怯えて言う
「馬鹿なっ!?」 「奴らは 痛みを感じないのかっ!?」
ラミリツがエルムを見る エルムが言う
「痛みなどは感じない 元より デコイに意識は無いからだ」
ラミリツが驚いて言う
「意識が無い?それじゃ… 動く人形って事?」
エルムが言う
「…そうだな」
ラミリツが視線をエルムβたちの方へ向け驚く ラミリツの視線の先 エルムの腕から 白い液体が落ちている ラミリツがハッとしてエルムβを見上げる エルムβがサブマシンガンを落とす ラミリツが驚き呆気にとられていると エルムβが逆の手でサブマシンガンを拾い再び撃ちながら前進する ラミリツが怯える エルムが視線を細めて言う
「…来たか 伏せていろ」
ラミリツが疑問して言う
「…え?」
エルムがラミリツの頭を押さえ付ける ラミリツが言う
「ンンッ!」
ラミリツが身を下げると 横にシェイムが下ろされる ラミリツがシェイムを見てからエルムを見上げる エルムがM82ハンドガンを構える 警機の隊員が言う
「全隊員退避っ!マシーナリーを導入する!逃げ遅れるな!?巻き添えを食らうぞっ!」
警機の隊員たちが退避する ラミリツが疑問し遠くを見る エルムβたちが次々にM90を構える ラミリツがそれを見る
【 マスターの店 】
TVからキャスターの声が届く
『ここで再び 政府管轄の収容施設 襲撃事件の続報です 政府警察の発表によると 政府警察機動部隊の投入に続き つい先ほど 政府警察の新勢力が…』
マスターがTVに視線を向ける 老紳士がコーヒーを飲みながら言う
「最初は政府の演技かと思っていたが どうやらそうでは無い様子だ」
マスターが老紳士を見て言う
「…と、申されますと?」
老紳士が言う
「マスターはお若いからご存じないでしょうが 今から60数年前にも 同じような事があったのですよ その時は 政府が国防軍に援軍を要請し 警機と国防軍の どちらの力を使っても手に負えない様子を 見事に表現した上で 帝国から受け入れた新勢力の力を メディアへ見せたものです お陰で 国民は これからは政府と警察がこの国を守ってくれると 心から安心し 信頼したものでした」
マスターが言う
「では その頃に一度 政府は帝国から 新勢力を貰い受けていた と言う事ですよね?それが 何故 今の政府や政府警察の下には 残されていなかったのでしょう?」
老紳士がコーヒーを手にとって言う
「さて… それは公式には発表されないままだったが どう言う訳か 政府はその力を帝国へお返ししたと言う事だけで アールスローンの防衛は 再び 国防軍に委任される事になったのですよ 恐らく政府から メディアへ多額の金が渡ったのでしょうな?あれほど新勢力を後押ししていたメディア各社は まったく その事を追及しなかった」
マスターが視線を細めて言う
「それが 今 再び…」
マスターがTVを見る
【 元政府収容施設 地上階 】
ラミリツが強く目を瞑り耳を抑える 重く大きな銃声が響き渡っている ラミリツが薄く目を開きハッとする 視線の先でシェイムが苦しそうに息をしている ラミリツが表情を顰めて言う
「兄上…っ」
ラミリツの近くで重い金属音が落ちる音がする ラミリツが驚いて視線を向けると M90のライフルが落ちている ラミリツが疑問し視線を上げると エルムβが両手を力なく下げた状態で立っている ラミリツが疑問しながらエルムβの手先を見てハッとする エルムβの指先から白い液体が滴り落ちている ラミリツが言う
「もう …撃てないのっ?」
エルムβが横目にラミリツを見下ろす ラミリツが視線をエルムへ向ける エルムがM82を撃っていて 空の弾筒を捨て銃弾を装填している ラミリツが通路の先を見る 通路にはキラーマシーンの残骸が転がっている ラミリツが近くの動きに驚いて顔を向けると エルムがシェイムを肩へ担ぎ言う
「通路を制圧した 次へ向かう」
ラミリツが顔を上げると エルムβたちが先行する エルムが落ちたM90を拾い上げる 両腕を負傷したエルムβが向かう ラミリツが呆気に取られてそれを見送る 通路の先で銃撃戦が再開される エルムが向かう ラミリツが立ち上がって追う
【 元政府収容施設 外 】
警機の隊員1が言う
「信じられん… 奴らは ここへ来るぞっ!?」
警機の隊員2が振り返って言う
「それならそうで コイツの力を確認するだけだ」
警機の隊員1が後方を見て言う
「だとしたら 俺らも退避しなければならないが…?」
警機の隊員2が言う
「大丈夫だ 都合良く メディアのヘリが来るらしい 鎮圧はその映像で確認すれば良い」
警機の隊員1が言う
「良いのか?血生臭い映像を 民放のメディアに流したりして」
警機の隊員2が言う
「構わないさ 危険だから近付くな とは言ってあるんだ それならって事で空からの撮影にしたんだろうが 空からだって 近づく事に違いは無い こちらの主張は通るさ」
イヤホンに無線が入る
『これより 大型マシーナリーを投入する 全隊員 退避せよ 繰り返す これより 大型マシーナリーを投入する 全隊員 退避せよ』
警機の隊員2人が頷き合い その場を後にする
【 元政府収容施設 出口付近 】
エルムが視線を下へ向ける 視線の先 白い粉と強化防弾装備がある エルムが視線を前方へ向ける ラミリツが後ろに来て言う
「やっと 外に出られるね?」
エルムが言う
「まだだ」
ラミリツが疑問して言う
「え?」
エルムが視線を細めて言う
「伏せろ」
ラミリツが驚き呆気に取られる 途端に爆発が起きる ラミリツが吹き飛ばされ床に叩きつけられ言う
「わぁあっ!」
ラミリツが起き上がるとラミリツの盾になったエルムβたちが倒れる ラミリツが驚く エルムがシェイムを床へ置いて言う
「面倒な奴が投下された ここで待機していろ」
エルムが立ち上がる ラミリツが驚いて言う
「面倒な奴って?さっきのキラーマシーンって奴じゃないのっ!?」
エルムがエルムβからM90を取って言う
「キラーマシーンより遥かに性能が高い物だ デコイだけは倒せない 直接 私が向かう お前は デコイの影から出るな」
エルムが歩いて行く ラミリツが追おうとすると エルムβたちがラミリツの前に立つ ラミリツがエルムβたちを見る
【 マスターの店 】
TVに上空からの映像が映りレポーターが言う
『我々は 現在襲撃事件が起きている 政府管轄の収容施設 現場上空へやって参りましたっ!政府警察からの情報によりますと この施設の外に!政府警察の強力な新勢力が…』
PCにディスクが入れられ TVモニターに録画マークが表示される マスターが目を細める 店の来客鈴が鳴る マスターが微笑して言う
「いらっしゃいませ どうぞ 奥の席へ」
マスターがTVを消す
【 元政府収容施設 外 】
マシーナリー1のマシンガンが乱射される中 エルムが走り距離を縮めると M82を連射する マシーナリー1の右腕に1発目がめり込み 2発目で撃ち込まれる 片腕の動力が落ちる マシーナリー1が銃弾の撃ち込まれた箇所を見て その腕を排出する エルムが対側へ移動していて M90を放つ M90の銃弾が1発で 左腕に撃ち込まれ マシーナリー1が銃弾の撃ち込まれた箇所を見て その腕を排出する エルムがM90を正面に構える マシーナリー1がエルムへ向くと 顔の部分が変形し砲台が現れるエルムが一瞬驚き回避すると マシーナリー1の頭部からミサイルが放たれ 地面に爆発する エルムが防御体制で吹っ飛ばされ 飛ばされた場所に着地する マシーナリー1の頭部がマシンガンに変形しエルムへ放たれる エルムが言う
「改良型か…」
エルムが回避する ラミリツが心配げに見つめている エルムがM82をマシーナリー1のマシンガンの付け根へ向けて放つ 銃弾が跳ね返される エルムが表情を顰め 対側へ回避してM90を放つ マシーナリー1のマシンガンの付け根へめり込む マシーナリー1がエルムへマシンガンを放ち続ける エルムが回避しつつタイミングを計ってM90を放ち トドメの一撃を撃とうとすると弾切れになる エルムが舌打ちをして回避する
ラミリツを守っているエルムβの一人が立ち上がる ラミリツが驚いて言う
「えっ!?何っ?」
エルムβがM90を持ち歩き出す ラミリツが呆気に取られ エルムβを見てからエルムを見る エルムが回避している ラミリツが言う
「まさか… それを届ける気?」
エルムβが去って行く ラミリツが視線で追う
エルムが視線を向けつつ回避し手を伸ばすと M90が投げられ エルムがキャッチする マシーナリー1がエルムに狙いを定める ラミリツが慌てて言う
「危ないっ!」
エルムの前にエルムβが立ちマシンガンからエルムを守る エルムがM90を連射し マシーナリー1のマシンガンが吹き飛ばされ マシーナリー1の動きが一瞬止まる エルムが駆け出し飛び上がると プラズマセイバーを振りかざしてマシーナリー1の首を斬る エルムが着地するとマシーナリー1の銃型の頭が落ちる ラミリツが微笑して言う
「凄いっ!」
【 マスターの店 】
マスターが店の扉に準備中の札を掛け 店内に戻って来ると言う
「さてさて?どうなりましたかね~?」
マスターがTVを付ける TVの映像が映るより早くレポーターの声が響く
『な… なんとっ!政府警察の大型新勢力が あっさりと…っ』
マスターが疑問する TVに映像が映り マシーナリー1とエルムの姿が映る マスターが呆気に取られて言う
「あらま?対人マシーナリーが…」
【 元政府収容施設 出入り口 】
エルムが施設の入り口へ戻って来て シェイムを担ぐ ラミリツが苦笑して言う
「部下にばっか戦わせてるから 命令するだけなのかと思ってたけど アンタ… ホントは凄いんだ?」
エルムが言う
「そうでもない 血が老いているせいで 昔より 持久力も瞬発力も衰えている デコイを使うのも その方が楽だからだ」
エルムが施設を出て行く ラミリツが言う
「血が老いてるって…?」
ラミリツがエルムを追う
【 マスターの店 】
TVに映像が映っていてレポーターが言う
『何と言う事でしょうっ!?政府警察の新勢力と思われる あの大型の機械が たった一人の人の力によって 停止させられてしまいましたっ!そして 先ほどの襲撃犯と思われる人物が 今、一度建物へ入り… ん?どうやら人を?人を肩に担いでいるようですっ 一体あれは誰なのでしょうか!?襲撃犯の仲間なのか!?もしくは…?』
マスターがPCを操作し映像を確認して言う
「この動きは 通常の人間が出来る範囲を超えている こんな事が出来るのは 特殊訓練を受けた ごく一部の兵士… いや それ以上の?」
TVからレポーターの驚いた声が聞える
『あ… あれはっ!』
マスターがTVへ向き直り呆気に取られる TVからレポーターの声が届く
『こ…攻長閣下!?ラミリツ・エーメレス・攻長閣下に良く似た人物がっ 今 襲撃犯の男や その部下と思われる者たちと… い、一体 これは どう言うことなのでしょうっ!?』
マスターがハッとして言う
「まさか…っ!?」
マスターがキーボードを操作する
【 元政府収容施設 外 】
上空に撮影ヘリが飛んでいる エルムがそれを見上げて言う
「…邪魔な連中だ」
ラミリツが言う
「今 車に戻ったら あのヘリに追い掛けられるかもね?」
エルムがラミリツへ視線を向けて言う
「金を積んで 取材をやめさせろ」
ラミリツが呆気に取られてから苦笑して言う
「へぇ… 意外と平和主義なんだ?アンタの事だから あのでっかい銃で 撃ち落すかと思った …ふふっ」
エルムが言う
「生憎 弾切れだ」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「…っ それって どう言う意味?」
エルムが言う
「銃弾が無いと言う意味だ」
ラミリツが慌てて言う
「そうじゃなくてっ!?…ん?」
エルムが言う
「どうした」
ラミリツがマシーナリー1を見て言う
「今… アイツ 動かなかった?」
エルムがマシーナリー1へ向き直って言う
「それは無い RTD210マシーナリーの機動回路は 頭部に…」
エルムが落ちている頭部銃口を見て ハッと気付き ラミリツを蹴り飛ばし回避する マシーナリー1の体から四方八方にミサイルが放たれる ラミリツが悲鳴を上げつつ地面に倒れる
「痛っ!」
周囲で爆発が起きる ラミリツが頭を抱えて言う
「わぁあっ!?」
ラミリツが目を開き周囲を見る 周囲が燃え上がっている ラミリツが驚き呆気に取られると 重い足音に気付きそちらへ顔を向け驚き言う
「な、何あれっ!?」
マシーナリー1が胸部からマシンガンを放ち 周囲を探りながら近付いて来る エルムが言う
「あれはRTD210マシーナリーの改良型だ 頭部に銃火器を収納した分 機動回路が別の場所に移設されたものと推測される …MT90を用意するべきだった」
エルムが足を縛る エルムの足に血が滲んでいる ラミリツがはっと気付いて言う
「そ、その怪我 僕を庇ったせいで!?」
エルムが言う
「蹴り飛ばしたせいだ」
ラミリツが慌てて言う
「同じだろっ!って そうじゃなくて!…どうするんだよっ!?アイツと戦えるの!アンタだけなんでしょっ!?」
エルムが言う
「そうでもない」
ラミリツが疑問して言う
「はあっ!?だってっ さっき アンタ自身がっ!…なんだよっ!?老いてるのは血だけじゃ ないんじゃないのっ!?」
エルムが言う
「現状の奴は 各部の重量バランスの破損から 全ての作動速度が低下している …従って」
ラミリツが呆気に取られていると エルムがラミリツへプラズマセイバーを放る ラミリツが慌てて受け取って疑問する エルムが言う
「私が注意を引き付ける その間に お前が奴の機動回路を破壊しろ」
ラミリツが驚き慌てて言う
「えぇえっ!?そ、そんなっ!そんなのっ 僕に出来る訳っ!」
エルムが言う
「セイバーの代わりに そいつを私へ寄越せ」
ラミリツが一瞬疑問してから 自分の持つサブマシンガンを見る ラミリツが言う
「でもっ!僕はそのっ …機動回路とか言うのが 何処にあるのか分からないし!?気を引くのなら 僕がそれをっ!」
エルムが立ち上がって言う
「お前はサブマシンガンを 実戦で使用した事があるのか?」
ラミリツがハッとして言葉を飲む エルムが言う
「だが、剣の心得はあるのだろう 以前に 映像ではあったが確認をした」
ラミリツが言う
「で、でも…っ!」
エルムが言う
「あれは機械だが 作ったのは人だ だとしたら 何処に重要な装置を配置するか それを考えろ」
ラミリツが呆気に取られる エルムが言う
「奴が射程距離に入った 急げ」
ラミリツが視線を強め サブマシンガンをエルムへ放る
【 マスターの店 】
マスターがTVを見つめている TVに映像が映っていてレポーターが言う
『何と言う事でしょうっ!政府警察の新勢力と思われる 大型の機械から放たれた無数の爆撃により 辺りは一面火の海です!上空数百メートルに居る 我々撮影クルーもこの熱に息も苦しい程ですっ そんな中 残されているあの襲撃犯と攻長閣下と思われる人物ですが… な、何とっ まだ戦いをっ!?人の力で 本当にあの機械を止めようというのでしょうかっ!?…しかし ここで止まらなかったら あの機械はどうなるのでしょう!?あっ!今 また大きな爆撃がっ』
TVの映像が切り替わり キャスターが言う
『ここで 緊急避難指示をお伝えいたします 現在事件が起きている 政府管轄の収容施設の周囲住民は 直ちに施設から離れる様に 避難して下さい 繰り返しお伝えいたします 現在事件が起きている 政府管轄の収容施設の周囲住民は 直ちに施設から離れる様に 避難して下さい 尚、この施設の住所は…』
マスターが表情を顰めて言う
「たかが1人2人の脱獄を阻止しようと言うだけで ここまでの事をする必要があるのか?これもあのマシーナリーを使った連中の 計算の内なのか!?」
【 元政府収容施設 外 】
爆発が起き ラミリツが吹き飛ばされ地面に叩きつけられる ラミリツが痛みに歯を食いしばりつつ身を起こして振り返ると エルムβが倒れる ラミリツがエルムβを見て言う
「また 僕を庇ったの…っ?」
エルムβが立ち上がる 体から白い液体がボタボタ落ちる ラミリツが言う
「もう 良いよっ!立たないでっ 僕なら大丈夫だから!」
エルムがサブマシンガンを撃ってから ラミリツへ向いて言う
「何をしている 攻撃を行え」
ラミリツがエルムへ向いて言う
「分かってる!けどっ 近付けないんだよっ!」
エルムが言う
「お前の身体は デコイに守らせる 突入しろ」
ラミリツが一瞬驚いてから言う
「そんな事っ 言われたって…っ」
ラミリツがマシーナリー1を見て手を震わせる マシーナリー1がボロボロになり火に焼かれながらもマシンガンを放っている ラミリツが表情を顰めて言う
「…っ こ、怖いよ…っ 兄上ぇ…っ」
ラミリツがハッとして森の方を見る 視線の先に シェイムが横たえられている 近くで火に焼かれた小枝が落ちる ラミリツがハッとして言う
「僕が やらないとっ 兄上までっ!?」
ラミリツがマシーナリー1へ向く マシーナリー1の周囲でエルムが気を引いている エルムβが増えラミリツの前に立つ ラミリツがそのエルムβの両腕を見て言う
「お前っ!?もう銃も持てないのにっ!?」
エルムβたちがサブマシンガンを構える ラミリツの正面に両腕の動かないエルムβが立っている ラミリツが視線を強め歯を食いしばると 意を決してセイバーを持つ手を握り締めて立ち上がる
【 マスターの店 】
TVに映像が流れている レポーターが言う
『果たしてっ あの大型機械を止める方法などが あると言うのでしょうかっ!?先ほどから 襲撃犯の一名が必死に大型機械の動きを止めている様子ですが 一向に止む気配の無い 大型機械から放たれる 無数の銃弾に遮られ もう1人の… 攻長閣下に良く似た人物が 近付けないといった様子ですっ!』
マスターがPCを操作してハッとして言う
「まずいな…っ あの対人マシーナリーは 自爆装置も兼ね備えている 体内に蓄えられている 銃弾を全て撃ち尽くしたら 自爆装置が作動しちまうっ!」
マスターが振り返って電話を見て言う
「自爆装置が発動したら あの取材クルーたちが乗るヘリだって巻き込まれる …だが どうやって知らせる?この情報は政府のトリプルトップシークレット …それに 取材クルーなんかじゃ ラミリツ攻長や… エルム少佐を助けられないっ」
マスターが視線を落として言う
「国防軍には空の管轄を行う部隊は無い …それを委託している警空が 政府の収容所を襲撃した連中を助ける訳も無い …くそっ どうしたらっ!?」
【 元政府収容施設 外 】
ラミリツが意を決して目を開き セイバーを握るとプラズマが放たれる ラミリツがプラズマセイバーを構える エルムがそれを確認すると言う
「行くぞ」
ラミリツが言う
「了解っ!」
エルムがマシーナリー1へサブマシンガンを放ちながら向かう エルムβたちが一歩遅れて同じくして向かう マシーナリー1がエルムへ向いていた所 エルムβたちに気付いて向き直る エルムβたちが旋回しマシーナリー1の向きを変えさせる ラミリツが走り叫ぶ
「やぁああーーっ!」
ラミリツがジャンプしてプラズマセイバーを振りかざし マシーナリー1へ突き刺す
【 マスターの店 】
マスターがTV画面に駆け寄って叫ぶ
「駄目だっ!奴の左胸には 自爆装置がっ!!」
TVからレポーターの声がする
『や…っ …やりましたっ!攻長閣下によく似た人物の攻撃により!たった今!大型機械が動きを止め!力なく地面に倒れました!』
マスターが呆気に取られて言う
「…へ?」
【 元政府収容施設 外 】
ラミリツが肩で息をしている エルムが近くへ来て言う
「上出来だ」
ラミリツが苦笑して言う
「はぁ…はぁ… えへっ …ありがと」
ラミリツがエルムを見る エルムが言う
「だが 何故 奴の右の胸を狙った?」
ラミリツが苦笑して言う
「だって アンタ言ったじゃない?これは機械だけど 作ったのは人だって?」
エルムが言う
「そうだ ならば当然」
ラミリツが言う
「当然 大切な心臓は左胸だって分かるから その人を倒すための機械なら 逆にしないと 人に見破られちゃうじゃない?」
エルムが呆気に取られる ラミリツが笑んで言う
「駄目だなぁ お年寄りはこれだから!…だからさ?新しいモンの相手は 若者に任せなよ?」
エルムが言う
「…そうだな」
ラミリツが苦笑して言う
「なんて 嘘嘘!アンタが居てくれなかったら 倒せなかったし?」
エルムが言う
「当然だ」
ラミリツがエルムβたちを見て言う
「それより どうすんの?早く脱出して 兄上や… こいつらの治療をしないと」
エルムが言う
「問題ない 間もなく」
ラミリツが気付いて空を見上げる
【 マスターの店 】
ハイケルが言う
「それで?」
マスターが皿を拭きながら言う
「ああ、国防軍のマークがばっちり入った 国防軍最新輸送機が 取材クルーのヘリの前で堂々と ラミリツ攻長やエルム少佐率いる 小隊を回収し 飛び立ちましたっと」
ハイケルがTVを見る TVに映像が流れていてキャスターが言う
『先ほど 国防軍長総司令官 アース・メイヴン・ハブロス総司令官より 今回の事件は ラミリツ・エーメレス・攻長閣下からの依頼にて 正式に国防軍精鋭小隊を用いて行われた 作戦であった事が表明されました 同時に 政府管轄の施設へ攻撃を行った事を 謝罪すると共に 必要な賠償を行う用意があるとの事 そして…』
ハイケルが言う
「政府の代表である ラミリツ・エーメレス・攻長閣下が 国防軍に依頼した …これは メルフェス・ラドム・カルメス長官への 宣戦布告と言う事か?」
マスターが言う
「メルフェス・ラドム・カルメス長官は ラミリツ攻長の任命で長官になった だが、その任命は ラミリツ攻長の兄を人質に取って行われた任命だった …なんて事がバレれば 当然メルフェス・ラドム・カルメス長官の任命は解除される 更には 元から持ち合わせていた 皇居宗主の役職だって信用を失う」
TVではキャスターが言っている
『…この異例とも言える事態に 多くのアールスローン国民は元より 現在 政府各省も…』
ハイケルが言う
「そして メルフェス・ラドム・カルメス長官が ラミリツ攻長の秘密をバラせば 痛み分けとなる どちらも痛い目を見る位なら どちらも口を噤むのが当然だ」
マスターが言う
「だろうな …それにしても」
ハイケルがマスターを見る マスターが微笑して言う
「あれが 元国防軍レギスト機動部隊隊長 エルム少佐か」
ハイケルが言う
「50歳以上の年齢にしては 良い動きだ」
マスターが苦笑して言う
「俺の仕入れた情報によると エルム少佐の年齢は 今年で70歳だそうだ」
ハイケルが衝撃を受ける マスターが苦笑して言う
「悪魔の兵士は 不老不死って奴なのかねぇ?」
ハイケルが言う
「元より その情報の方が間違っていると気付けっ 大体 70歳の老人が M82やM90のライフルを放ちつつ 走り回れる事の方が マシーナリーより 恐ろしいだろう?」
マスターが苦笑して言う
「だよなぁ?」
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
TVにニュースが流れている キャスターが言う
『そして、今回導入された 政府警察の新勢力に関しては その危険性から 導入の再検討を訴える抗議が上がっているとの事で 政府警察と共に 今一度この…』
ラミリツが振り返って視線を泳がせつつ言う
「あの… ホントに ありがとう… 今回の事」
ラゼルがベッドに座っていて微笑して言う
「お礼でしたら 私ではなく 少佐へ… 私は 何もしておりませんので」
ラミリツが言う
「エルムが お礼は 攻長の役に立ちたがっている 防長のあいつにって…」
ラゼルが微笑する ラミリツが言う
「それに アイツ 僕が何かやってって言っても すぐに お前の命令を受ける気は無い って言うんだ それって つまり ヴォール・ラゼル・ハブロス様の命令じゃないとって事でしょ?だったら 今回の事だって ヴォール・ラゼル・ハブロス様が アイツに 僕の兄上を助け出すようにって 命令してくれたから」
ラゼルが言う
「確かに ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の兄上様の奪還を 依頼したのは私ですが 私はそれ以上の事は依頼しておりません 少佐が攻長閣下をお守りした事は 少佐ご自身の意志であります」
ラミリツが苦笑して言う
「分かった それじゃ ヴォール・ラゼル・ハブロス様には 兄上の奪還を 命令してくれた事に対しての お礼って事で」
エルムが部屋にやって来て言う
「更には 国防軍で秘密裏に開発していた 新型輸送機の手配 共に アース・メイヴン・ハブロス総司令官への口裏合わせ 果てには いくら払わされるか推定出来ない 政府警察への賠償に対しても 礼を言うんだな」
ラミリツが視線を落として言う
「う… うん…」
ラゼルが苦笑して言う
「どうか 御気になさらずに ラミリツ・エーメレス・攻長閣下」
エルムが言う
「礼ぐらいは言わせろ 軍曹 君はそう言う所が 甘過ぎるんだ」
ラミリツが言う
「お礼を言わなきゃいけないって事くらい 僕にだって分かってるんだよ エルム ただその… あんまりにも 大き過ぎるから… さっきアンタが言った事 もし、全部 メイリス家でやろうとしたら…」
エルムが言う
「破産だな」
ラミリツが慌てて言う
「言わないでよっ 僕が怖がってるの 分からないのっ!?」
エルムが言う
「言い忘れていたが このヴォール・ラゼル・ハブロス私設自衛小隊に 匹敵する部隊を探し 雇うとなれば 必要な金額は お前が恐れる それらの額の倍にでもなるだろう」
ラミリツが驚き視線を落とす ラゼルが苦笑して言う
「少佐…」
エルムが言う
「ふんっ 気が済んだ」
エルムが移動する ラゼルが苦笑してから言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下 先ほど 仰ってらした様に どうか今回の事は 私ではなく 現防長である アーヴィンに いつか気の向いた時にでも 何かお話をして頂ければ 十分御礼になりますので」
ラミリツが驚きエルムへ向いて言う
「そう言う事?」
エルムが言う
「こいつを誰だと思っている 現防長である ヴォール・アーヴァイン・防長閣下の祖父だ 孫のために力を尽くすのは当然だろう」
ラミリツが視線を落として言う
「…そっか そうだよね …知ってる 僕の祖父上も 凄く優しかった もう ずっと前に死んじゃったけど」
ラゼルが言う
「私も もうしばらくすれば ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の お爺様方に お会い出来るでしょう その時は お孫様は立派な攻長閣下として 勤められておりますと お知らせを致します」
ラミリツが驚き表情をしかめて言う
「そんな事っ 言わないでよっ」
エルムが言う
「そうだな ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 立派な攻長とは言い難い」
ラゼルが苦笑する ラミリツがエルムを睨む エルムがラミリツを見て言う
「狙い所に関しては 悪くなかったが 技術や基礎体力がまったく足りていない それらで言えば 今の私であっても お前より上だ 攻長と呼ばれる範囲に無いと言える」
ラミリツが怒って言う
「兄上を助け出す事に 協力してくれた事には お礼を言うけどっ …アンタに攻長の何が分かるんだっ!攻長なんて ただの政府のお飾りなんだよっ!立派も何も 無いんだっ!」
エルムが言う
「何時まで甘えているつもりだ 今回の事は ヴォール・ラゼル・ハブロスの力で形が付く だが お前はこの先も生き続けるのだろう お前は作戦前に確かに言った ”自分の身は自分で守る”と 今のお前は それを実行出来るのか」
ラミリツが驚く ラゼルが表情を落として言う
「アーヴィンは防長として 貴方様を守ろうと勤めるでしょう しかし 防長は攻撃をする事は出来ません 貴方様がこれからも その政府へ身を置かれるのでしたら 相応の力を手に入れられなければ 攻長であり続ける事は難しくなる もし望まれるのでしたら 私の命がある間に 貴方様を政府の元から救い出す事も出来ます ラミリツ・エーメレス・攻長閣下」
ラミリツが言う
「力なんて… 僕は… 僕は 本物の悪魔の兵士じゃないんだ だから…」
エルムが言う
「本物かどうかなどは関係無い お前が現在 攻長と呼ばれる者である事に 変わりは無いからだ …そもそも政府の人間に 本物の悪魔の兵士などが 居る筈が無い」
ラミリツが驚いて言う
「それは どう言う事?」
ラゼルが言う
「陛下の剣と盾は 攻撃と防御を示し 確かに アールスローン戦記が記された遥か過去においては 武器の剣と防具の盾を用いたでしょう しかし、時代は変わり 他国との戦いは政府が平和的に行う事となりました 従って 過去には剣を持ち攻撃を行っていた 攻撃の兵士と呼ばれた者は その役目を終え 代わりに 外交と言う戦いを行う 政府の代表がその地位に着いたのが現在の姿です ですから 本来は ラミリツ・エーメレス・攻長閣下が 本物の剣術に優れている必要は 無いのです」
エルムが言う
「だが、お前は お前の持つべき力である 政府長官の地位を持たない それでも政府の攻長であり続けるのであれば お前は政府の長官という力以外の力を所持しなければ 現状の地位を維持する事は難しくなる ヴォール・ラゼル・ハブロスは お前が力を得る事を望まず 攻長の座から逃げ出したいと言うのであれば 現行の政府の権力を完全にメルフェス・ラドム・カルメス長官へ移し 攻長と言う役職を抹消してやろうと言っているんだ」
ラミリツが呆気に取られてから視線を落として言う
「僕は… 攻長である事が… 嫌だった 逃げ出せるんなら いつでも逃げ出したかったっ …でもっ」
ラミリツが手を握り締める ラミリツが視線を細めて言う
「僕や 兄上を 苦しめたアイツを…っ メルフェス・ラドム・カルメスに 政府の力を全て渡すなんて アイツの思い通りにさせるなんて 嫌だっ!」
ラミリツがエルムからラゼルを見て言う
「どうしたら良いのっ!?僕に 出来る事が有るのっ!?」
ラゼルが微笑して言う
「もちろん 貴方様は 攻長閣下であられます ラミリツ・エーメレス・攻長閣下」
ラミリツが言う
「攻長だから…?」
ラゼルが言う
「少佐 よろしいでありましょうか?」
エルムが言う
「ふん…っ 面倒な老後になった」
ラミリツが呆気に取られて言う
「…え?」
【 マイルズ地区 】
周囲でイベントが行われている ハイケルが周囲を見渡しイヤホンを押さえて言う
「イベント会場 メインゲート前 異常なし」
イヤホンに無線が入る
『こちら A地点 異常なし』 『B地点 異常なし』 『C地点 異常なし』 『D地点 異常なし』 『サブゲート前 異常なし』 『メインストリート 異常なし』
ハイケルが言う
「了解 間もなくイベントが開始される 警戒態勢を維持しろ」
ハイケルがステージを見上げる
【 A地点 】
隊員Aが言う
「久しぶりの任務だと思ったら またここのイベント警備か~」
隊員Cが言う
「ここは週に3度はイベントが行われる メジャースポットだからな?俺たちレギストの担当区域である以上 警備に呼ばれるのは当然だろ?」
隊員Aが言う
「そっか それなら …ん?週に3回?その割には 俺らがここに就くのって週1回位じゃないか?」
隊員Cが言う
「残りの2回は 国防軍レギスト駐屯地の別部隊が就いてるんだ 16と18部隊が」
隊員Aが言う
「へぇ~ 知らなかった …けど ここはレギストの担当区域だから レギストが警備に就くって サッちゃん さっき言ってなかったか?なら、何で他の区域担当の16、18部隊が就くんだよ?」
隊員Cが衝撃を受けてから 表情を顰めて言う
「おい、お前まで サッちゃんとか呼ぶなよっ」
隊員Aが笑んで言う
「別に良いじゃねーか?…にひっ」
隊員Cが呆れて言う
「おいおい バイスン隊員が移って来てるぞ?」
隊員Aが苦笑して言う
「っはは… まぁ 最初は アッちゃんとか呼ばれるのも抵抗あったけど 慣れて来たら 何か親しい感じがして 悪くないかなって …良いんじゃないか?仲間っぽくてさ?」
隊員Cが苦笑して言う
「ニックネームで呼ぶなとは言わねーけど ガキじゃねーんだから ちゃん付けは止めろよ」
隊員Aが苦笑してから言う
「まぁな …で?何でー」
隊員Cが言う
「ああ、本来なら 担当区域の部隊が任務に就くのが通常なんだけど 17部隊 レギストだけは 特別らしいんだ」
隊員Aが言う
「特別って?」
隊員Cが言う
「国防軍レギスト機動部隊は国防軍17部隊でもあるけど 今でもレギストって呼ばれてるだろ?」
隊員Aが言う
「ああ そりゃ 元々レギストが マイルズ地区の富裕層が作った自衛部隊だったから その名残だって」
隊員Cが言う
「その元々のレギストって部隊は ただの自衛部隊じゃ無かったらしいんだ 話によると、マイルズ地区を死守する為に 特別に強化された部隊だったらしくて 国防軍に取り入れられたって 本来はイベントの警備みたいな軽い事に 使うような部隊じゃないんだってさ」
隊員Aが言う
「へえ~… そうだったのか 俺ら そんな部隊に居るのか」
隊員Cが苦笑して言う
「と言っても 昔の話だけどな?俺の兄貴が 爺ちゃんから聞いたんだって 今じゃもう レギストは国防軍17部隊だから こうやって イベントの警備にも就いている訳だ」
隊員Aが言う
「けど、国防軍17部隊でもあると同時に やっぱりレギストだから 週の2回は別部隊にやってもらうって事か?」
隊員Cが苦笑して言う
「かもな?まぁ… 俺が勝手に そうじゃねーかな?って思っただけだから 本当かどうか 分からねーよ?」
隊員Aが苦笑して言う
「なんだよー サッちゃんの思い込みかよ?」
隊員Cが言う
「昨日兄貴から聞いたから 何となくそんな気がしちまったんだよ …ってか サッちゃんは 止めろってっ!」
隊員Aが言う
「でも、確かに 有り得そうな話だよなー?…よし、それじゃ バイちゃんに話して 今度少佐に訊いて貰おう」
隊員Cが言う
「サッちゃんとか バイちゃんとか… ここは幼稚園かってのっ レギストの名が泣くぜ」
【 B地点 】
隊員Bが言う
「ナっちゃん 風邪だってー?」
隊員Mが言う
「そうそう 一昨日催されたイベントではしゃいで そのまま道路で寝て 次の日 熱があんのに 無理して訓練してたら ぶっ倒れたってさ」
隊員Bが爆笑して言う
「あっはははっ!道路で寝たとか ちょースゲー!」
隊員Vが言う
「俺はちゃんと家に帰れって 言ったんだけどさぁ?軍隊は野宿する事もあるだろうから その訓練だーとか言って ありゃ、そうとう酔ってたな?」
隊員Bが笑って言う
「あははっ!野宿は アスファルトの上でなんてしないもんねー!でもって アルコールもナンセンスー!駄目だなー ナっちゃん!基礎知識まるでなしー!にひひっ」
隊員Mが言う
「さっきから話してて思ったんだけど バイスン隊員って 意外と 色んな知識持ってるよな?」
隊員Vが言う
「ああ、俺も思った 意外と勉強家なのか?」
隊員Bが言う
「二人とも 意外 意外って チョー失礼ー!俺は毎日 少佐と 色んな話してるもんねー!少佐の知識の広さ 半端無いんだぜー!?」
隊員Mが言う
「え?じゃぁ さっきまで話してた事って 少佐から聞いた事だったのか?」
隊員Bが言う
「そうそうー!ほとんどそうだよー!」
隊員Vが苦笑して言う
「そうは言っても 人気デスメタルバンドのギターの奴が アールスローンとメルシ国のハーフだった なんて話は」
隊員Bが言う
「そうそう!あいつハーフだったなんてさぁー だからメタルに変えたのかな?インディーズではロックだったのに って、俺 今朝 少佐にその話聞いて」
隊員MとVが衝撃を受け 慌てて言う
「「少佐から聞いたのっ!?」」
隊員Bが言う
「そうだよー?俺もチョーびびったよー!聞いた瞬間叫んだね まじでーっ!?って!」
隊員MとVが衝撃を受け 慌てて言う
「「まじでーっ!?」」
隊員Bが不満そうに言う
「えー?だから さっきも言ったじゃん あのギターの奴 アールスローンとメルシ国のハーフだった」
隊員Mが言う
「少佐が メタルバンドの話をするなんて」
隊員Vが言う
「信じられん…」
隊員Bが言う
「それで そのギターの奴がライブ直前に怪我しちゃって… って 聞いてる?2人ともー?」
隊員Mが言う
「あぁ 悪い悪い 余りにも衝撃が強過ぎて… で?今度はなんだ?」
隊員Bが言う
「こっちはゼクちゃんから聞いたんだけど そのメタルバンドの以前のギターの奴が 一昨日ここのイベントに特別参加したらしくってー」
隊員Vが言う
「ああ、それなら俺も見に行った で、ナクスが風邪引いた訳」
隊員Bが言う
「えー?行ってたのー?それなら 俺も誘ってくれれば良かったのにー」
隊員Vが苦笑して言う
「バイスン隊員がデスメタ好きだって 知ってたら誘ったさ」
隊員Bが言う
「俺は別にー 好きとか嫌いとか無いんだけど 皆行ってたんでしょー?」
隊員Mが言う
「俺は行ってないぜ?」
隊員Bが意外そうに言う
「えー?なんでー?ナッちゃんやヴェイちゃんが行くんなら 当然じゃないのー?」
隊員Mが言う
「いやぁ… 別に… つか、行くイベントがデスメタルバンドじゃなければ 付き合っても良いけどさぁ?正直あれは 好きな奴じゃないと耐えられなくねーかぁ?」
隊員Bが隊員Vを見て言う
「えー?そうなのー?」
隊員Vが苦笑して言う
「バイスン隊員は もしかして デスメタ聞いた事無いのか?」
隊員Bが言う
「無いかなー ロックなら普通に聞くけどー?」
隊員Mが言う
「じゃぁ 今度イベントがある時は 事前に一度聞いてからの方が良いぜ?」
隊員Vが言う
「そうだな?警備に付いてた政府警察の奴らも 結構しんどそうだったし… クククッ」
隊員Bが疑問して言う
「え?そのイベントって ここでやったんでしょ?なのに政府警察が警備してたの?」
隊員Vが言う
「ん?ああ、そうだぜ?」
隊員Mが言う
「本当は今日も政府警察が就く予定だったのが 急遽 国防軍に戻されたって話だ」
隊員Bが言う
「えー そうだったんだぁ?」
隊員Vが隊員Mを見て言う
「やっぱ 先日のあの事件のせいだろうな?」
隊員Mが言う
「だろうな」
隊員Bが言う
「ふーん?知らなかったぁ~」
【 政府警察本部 警察長室 】
警察長が言う
「長官 やはりあのマシーナリーは危険です 我々の手には負えません」
メルフェスが言う
「そんな弱腰では困るな」
警察長が表情を顰めて言う
「弱腰などではありません 長官も先日の映像を ご覧になられたかとっ」
メルフェスが苦笑して言う
「もちろん 見ていたとも …実に惜しい所だった 攻長閣下があのまま 対人マシーナリーの左胸を刺して下されていれば 我々の勝利であったもの」
警察長が慌てて言う
「何を仰いますっ あの場所で自爆装置が発動していたらっ それこそ 恐ろしい殺人機械の全貌を メディアを通じ アールスローンの国民へ見せていた事でしょうっ 攻長閣下のお陰で それが免れたのですっ」
メルフェスが軽く笑って言う
「っはは… 子供の偶然で免れた事態に 警察組織の長たる貴方が それほど感激するとは っははは… 実に滑稽だ」
警察長が言う
「カルメス長官…っ」
メルフェスが言う
「さて、そんな話は置いて 今後の事についてだが」
警察長が言う
「ですから 我々ではっ あのマシーナリーを扱う事は出来ないとっ」
メルフェスが言う
「では一度 本当の扱い方を見て 確認すると言うのはどうか?」
警察長が呆気に取られる メルフェスが言う
「見本となるものを見て 学ぶというのは とても 分かりやすいものだ あのマシーナリーの効率的な使い方を しっかりと見て 学んでくれたまえ」
メルフェスが笑む 警察長が表情を強張らせる
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルがノートPCに入力をしてから 軽く息を吐いて言う
「…これで良い が、予想外の減員だ これ以上となると 任務の成功に支障が」
ハイケルがコーヒーに手を伸ばすと ドアがノックされる ハイケルが顔を上げると ドアの外から隊員Fの声が届く
「フレッド隊員でありますっ!」
ハイケルが一瞬表情を顰めた後言う
「入れ」
隊員Fの声が届く
「はっ!失礼致しますっ!」
隊員Fが室内に入り敬礼する 隊員Fが言葉を発っそうと息を吸った瞬間に ハイケルが言う
「臨時休暇申請なら 却下だ」
隊員Fが衝撃を受ける ハイケルが言う
「以上だ」
隊員Fが呆気に取られる ハイケルがノートPCへ視線を向ける ドアがノックされ 隊員Dの声が届く
「ドルト隊員でありますっ!」
ハイケルが僅かに表情をゆがめて言う
「入れ…」
隊員Dの声が届く
「はっ!失礼致しますっ!」
隊員Dが室内に入り 隊員Fを見て衝撃を受けてから 改めて敬礼する 隊員Dが言葉を発っそうと息を吸った瞬間に ハイケルが言う
「臨時休暇申請なら 却下だ」
隊員Dが衝撃を受ける ハイケルが言う
「以上だ」
隊員Dが呆気に取られ隊員Fを見る 隊員Fが苦笑する ハイケルがコーヒーに手を伸ばすと ドアがノックされる ハイケルが衝撃を受けると ドアの外から隊員Cの声が届く
「サキシュ隊員でありますっ!」
ハイケルが怒りを堪えた後言う
「…入れ」
隊員Cの声が届く
「はっ!失礼致しますっ!」
隊員Cが室内に入り 隊員FとDを見て衝撃を受けてから敬礼する ハイケルが言う
「臨時休暇申請なら 却下だ」
隊員Cが衝撃を受ける ハイケルが言う
「以上だ」
隊員Cがゆっくり隊員FとDを見る 2人が苦笑する 隊員Cがガクっとうな垂れる ハイケルがコーヒーを掴む ドアがノックされ 隊員Bがドアを開けて叫ぶ
「少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「臨時休暇申請なら 却下だ」
隊員Bが疑問して言う
「えー?」
ハイケルが言う
「以上だ」
隊員Bが横を向き驚く 隊員FとDとCが苦笑する ドアがノックされ ハイケルが衝撃を受ける 隊員Aの声が届く
「アラン隊員であり」
ハイケルが言う
「却下だっ!」
隊員Aが廊下で衝撃を受ける 隊員Bがドアを開ける 隊員Aが驚いて言う
「バイちゃん!?」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ アッちゃん アッちゃん 面白い事になって…」
隊員Aの横に 隊員Eが来て 呆気に取られて言う
「あっ もしかして お前らも 臨時休暇申請か?」
隊員Aが振り返って言う
「臨時休暇申請?」
ハイケルが言う
「却下する!」
隊員Eが衝撃を受けて言う
「なぁーっ!?」
隊員Eがガクッとうな垂れて言う
「折角 勇気出して来たのに… 申請するまでも無く… 撃ち落とされた」
隊員Aが呆気に取られ苦笑する 隊員Bが笑って言う
「にひひっ 流っ石 少佐ぁー」
隊員Iがやって来て言う
「げっ!まさか 皆」
ハイケルが言う
「却下するっ!」
隊員Iが衝撃を受ける 隊員Bが爆笑する ハイケルが溜息を吐く 隊員たちが表情を落として言う
「少佐ぁ~…」
ハイケルが鋭い視線を向ける 隊員B以外が衝撃を受ける 隊員Bが言う
「少佐ぁー 俺とアッちゃんは 休みが欲しいって来た訳じゃ ないでありますー」
ハイケルが言う
「…そうなのか?」
ハイケルが隊員Aを見る 隊員Aが苦笑して言う
「あ、はい 自分はー…」
隊員Bが言う
「アッちゃんは怪我が治ったんで 完全復帰のお知らせでありますー!」
隊員Aが言う
「はっ …そうであります」
ハイケルが言う
「そうか ではすまなかった 35回目の同シチュエーションであった為 先行してしまった」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「35…?」
隊員Bが言う
「えー?それじゃ 少佐ぁ 34人も 臨時休暇申請に 来たのでありますかー?」
ハイケルが隊員Bを見て言う
「お前も同じであったなら 恐らくそれで正しい」
隊員Bが笑んで言う
「自分は アッちゃんのお知らせを 先行してお知らせに来ただけでありますー 少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「そうか では 恐らく33名が 臨時休暇申請に来たと思われる 内13名は 先行して却下した」
隊員Bが笑って言う
「あっはははははっ!スッゲー 流っ石 少佐ぁー!チョー面白れー!」
ハイケルが言う
「残念だが 面白くは無い レギスト機動部隊隊員60名の内 既に20名が 同日に臨時休暇だ 後1名でも欠ければ 任務を達成させる事が 難しく…」
軍曹が現れて言う
「お疲れ様でありますっ!少佐ぁーっ!そして、真に持って申し訳ありません!」
ハイケルが言う
「却下だ!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁっ!?」
軍曹がハッとして隊員たちに気付き衝撃を受けて言う
「のぉっ!?お、お前たちっ!?い、一体何がっ!?」
隊員たちが苦笑する 軍曹が呆気に取られる ハイケルが溜息を吐いてから 気付いて言う
「…うん?そうか …よし、では 作戦を変更する」
隊員たちが衝撃を受けて言う
「え?」 「作戦?」
隊員たちが顔を見合わせる
【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】
ハイケルが言う
「これより 我々国防軍レギスト機動部隊は サムル地区 サムルストリートY303 特設会場にて行われる メルシ国主催の大型イベントを 警備する任務へ向かう」
隊員たちが敬礼する ハイケルが言う
「尚、今回の任務には サムル地区担当の国防軍第1機動部隊 及び 同駐屯地の 第2部隊が配備される 警備担当区域が明確に分かれている為 共同する事は無いと思われるが 協力を惜しむ事は無い様に 別部隊から何らかの要求要望が伝えられた際は 速やかに私へ連絡をしろ 以上だ」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ 了解っ!」
【 車内1 】
隊員Cがあくびをして言う
「ふあ~… 流石に朝4時集合は キツイ…」
隊員Fがあくびを伝染させながら言う
「ふぁ~… けど お陰で臨時休暇申請を出せなかった俺たちも イベントを先行して見られるんだ 早起きの甲斐はあるってもんだろ?」
隊員Eがあくびを終わらせて言う
「ぁ~… にしても 警備に就く俺たちの為に イベントを先行して見せてくれるなんて そんな事出来るのか?」
隊員Iが言う
「やっぱりこれもまた 軍曹の防長閣下のお力だったりして?」
隊員Cが言う
「なるほど~」
隊員Fが疑問して言う
「え?そうなのか?だって今回は メルシ国主催のイベントだろ?アールスローン国の防長閣下が どうこう出来るもんじゃ ないんじゃないか?」
隊員Cが言う
「それもそうだな?」
隊員たちが疑問する
【 車内2 】
隊員Bが笑顔で言う
「少佐ぁー!俺 サブマシンガンの命中73%になりましたー!」
ハイケルが言う
「上出来だ」
隊員Bが喜んで言う
「いえーい!」
隊員たちが眠そうな目で言う
「何であいつ こんな早朝から あんなに元気なんだ?」
「ホントだよなぁ」
隊員たちが隊員Bを見る 隊員Aが言う
「バイちゃん そう言えば あれ 少佐にお願いしたのか?」
隊員Bが疑問して言う
「え?あれって?」
隊員Aが言う
「ほらぁ 副武装にって…」
隊員Bが思い出して言う
「ああ!そうそう!忘れてた!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「何だ」
隊員Bが言う
「俺、サブマシンガンの副武装に 拳銃やデリンジャーじゃなくて 手榴弾にしたいでありますー!だめー?」
ハイケルが考えてから言う
「サブマシンガンを用いての ビフォアーバーストショットが 可能であるのなら 許可する」
隊員Bが表情を困らせて言う
「えぇー…」
隊員Aが苦笑して言う
「っはは それじゃ 残念だけど 駄目だな?バイちゃん」
隊員Bが残念そうに言う
「折角 手榴弾を一杯 所持する方法を 考えたのにぃ~」
隊員Bのベルトに手榴弾が多く付いている ハイケルがそれを見てから言う
「最低でも デリンジャー1丁の所持を義務付ける …共に」
隊員Bと隊員Aが疑問してハイケルを見る ハイケルが言う
「特例として アラン隊員が同班である場合に限り 手榴弾を副武装とする事を許可する」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「えっ!?そ… それって もしや…」
隊員Bが喜んで言う
「やったー!アッちゃん!俺たちの最強コンビ結成の 糸口が見えてきたよー!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「いやっ ちょっと待てっ バイちゃんっ!それはそのっ!少佐は まさか バイちゃんに手榴弾を持たせて 俺にっ!?」
隊員Aがハッとしてハイケルを見る ハイケルが言う
「アラン隊員」
隊員Aが衝撃を受け慌てて敬礼して言う
「は はっ!少佐っ!」
ハイケルが言う
「万が一外したら… 1発に付き 1割を同月の手当からを差し引く」
隊員Aが衝撃を受け石化する 隊員Bが爆笑している ハイケルが言う
「…冗談だ」
隊員Aが崩れる 隊員Bが爆笑して言う
「やっぱっ!面白れぇー!少佐ぁー!あははははっ!」
隊員Bが転げまわっている 隊員Aが困惑している ハイケルが言う
「何故 正気に受け取る?」
隊員Aが慌てて叫ぶ
「少佐が 言うからでありますっ!」
ハイケルが間を置いて言う
「…そうか」
隊員Bが爆笑している
【 サムル地区 サムルストリートY303 】
ハイケルを先頭に隊員たちが続き歩いている 隊員たちが周囲を見渡して話している
「サーカスはサーカスでも メルシ国の動物を使ってやるとはなぁ?」
「ちょっとやそっとの サーカスじゃなくなるぞぉ!」
「あのCM見たか?」
「見た見た!驚きだよなぁ!?」
隊員Bが疑問して言う
「CMー?」
隊員たちが言う
「レギストが警備に就くって聞いた時から 諦めてたけど」
「早々に臨時休暇出してた奴らは フルに見られるんだぜ?やっぱ 残念だよ」
「まぁまぁ 少し見させてもらえるだけでも 良しとしようじゃないか?」
隊員Bが言う
「アッちゃん?アッちゃん?」
隊員Aが言う
「んー?何だよ バイちゃん?」
隊員Bが言う
「動物たちでサーカスやるって そんなに凄い事?マイルズ地区のイベントでも たまにやってるじゃん?」
隊員Aが言う
「動物って言っても メルシ国の動物だ アールスローンの動物の 5倍から10倍はあるから 迫力満点なんだよ」
隊員Bが驚いて言う
「えぇえっ!?5倍から10倍って…っ それじゃ 像とかどうなのっ!?」
隊員Aが笑んで言う
「像も5倍のや10倍のが居るんだ!…おまけに!」
隊員Cが止めて言う
「おいおいっ それ以上言うなって!」
隊員Bが不満そうに言う
「えー?」
隊員Cが笑んで言う
「知らない奴は 見てのお楽しみってやつで!」
隊員Aが苦笑して言う
「ああ、そうだな」
隊員Bが不満そうに言う
「あー!なんだよ アッちゃん 何時から サッちゃんと そんなに仲良くなったのー!?」
隊員Aが苦笑して言う
「別に 仲良くなった訳じゃないけど 楽しみにしててくれって事だよ」
隊員Cが笑んで言う
「そうそうっ!」
隊員Bが不満そうに黙る
「…っ」
ハイケルが横目に見てから視線を戻して言う
「恐竜が居るんだ」
隊員Bが驚き叫ぶ
「恐竜ーっ!?」
隊員AとCが呆気に取られて顔を見合わせる 隊員Bが喜んで言う
「恐竜って マジでマジでー!?」
隊員Aが苦笑して言う
「あ… あぁ そうなんだよ」
隊員Bが喜んで言う
「スッゲー!チョー楽しみ!恐竜なんて 俺見た事!…あれ?でも 恐竜ってー…?」
ハイケルが言う
「本物ではない メルシ国の大型動物たちを掛け合わせ 人工的に再現したものだ」
隊員Bが言う
「なーんだ そっかー… けどっ やっぱ 楽しみー!」
隊員Bが笑顔で歩く 隊員AとCが遅れ 隊員Cが苦笑して言う
「言われちゃったよ… 折角 バイスン隊員が驚いて腰でも抜かすかと 楽しみにしてたのに」
隊員Aが苦笑して言う
「っはは まぁ 俺もたまには バイちゃんがマジで驚いてる所でも 見たかったんだけど…」
隊員AとCがハイケルを見る 隊員Bがハイケルに言う
「でも そんなでっかい恐竜なんてー 暴れたりしたら 大変じゃないんですかぁー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「それを操る技術が メルシ国にはある …それが このサーカスの見せ場だ」
隊員Bが驚いて言う
「えー!スッゲー!どうやって 操るんですかー!?少佐ぁー!?」
ハイケルが言う
「それは…」
隊員Bが喜んで言う
「それはっ!?」
ハイケルが言う
「”見てのお楽しみ”だ」
隊員Bが呆気に取られた後苦笑し 笑って言う
「あー!少佐ぁー!意地悪でありますー!」
ハイケルが言う
「そうだな」
隊員Bがぷっと吹き出して言う
「ぷっ …はははっ!面白れー!少佐ぁー!そこで 認めちゃうんですかー!?やっぱ 少佐ぁ ちょー面白れー!あははっ!」
隊員Aが苦笑して言う
「まぁ 良いや バイちゃんのお楽しみは 残った訳だし」
隊員Cが不満そうに言う
「バイスン隊員を脅かしてやろうって 俺のお楽しみは無くなった訳だが?」
隊員Aが苦笑して言う
「良いじゃねーか バイちゃんが驚いて腰を抜かしたりなんて しなかったかもしれないんだ だったら こっちの方が良いだろ?」
隊員Cが苦笑して言う
「何だよ お前も少佐も バイスン隊員には 自棄に甘いよなぁ?」
隊員Aが呆気に取られて言う
「そうかー?」
隊員たちが巨大サーカスステージへ向かう
【 サーカス会場 】
役人が言う
「こちらの開場が7時 8時半には入り口が閉じられます そして8時40分に メルシ国のスフォア女王様より メルシ国とアールスローン国の友好行事の一つであります 今回のサーカスイベントを開催する事に対し お礼のお言葉が御座います」
軍曹が言う
「メルシ国の女王から お礼の御言葉とは?むしろ メルシ国の国宝と言える メルシの恐竜を迎えられた こちらが礼を言うものでは あらぬのか?」
役人が言う
「はぁ…それは…」
ラミリツが言う
「メルシ国は60数年前に アールスローンの地を その恐竜たちを使った攻撃で 奪い取った経緯がある その事を水に流して 新たに友好を築こうって言うのが メルシ国側の今回のイベント このサーカスが無事終えられる事は 両国の今後に大きな影響を与えるんだ …だから 政府の政府警察機動隊と 国防軍も3部隊を使っての 大掛かりな用心をしているんだよ 知らないの?」
ラミリツが横目に軍曹を見る 軍曹が衝撃を受け言う
「うっ… す、すまん 自分はそう言った 外交に関する事は さっぱりなのだ…」
ラミリツが言う
「ま、外交は 政府の役目 僕の担当だからね 良いんじゃない?そっちはそれで」
軍曹が呆気に取られる 役人が苦笑して言う
「そして、サーカスの開催が 10時丁度となります 防長閣下と攻長閣下のお二方は 陛下の御簾のご両脇にて 御鑑賞下さい」
役人が礼をして去る 軍曹が役人を見てからラミリツへ向く ラミリツが顔を向けないで言う
「気を付けた方が良いよ」
軍曹が驚いて言う
「うむ?」
ラミリツが言う
「政府警察の動きが怪しいから もしかしたら また マシーナリーが使われるかもしれない」
軍曹が一瞬呆気に取られてから気を取り直して言う
「え?あ… いやっ それは大丈夫なのだっ 警察の新勢力に関しては 国民への改めて説明がなされるまでは 使用を禁じる事になっているのだ カルメス長官が その様にと 今朝方 自分もメディアにて…」
ラミリツが言う
「備えはして置いた方が良いよ 本来なら 外交相手の一番近くを政府警察が固めるのが常識なのに わざわざ ハブロス総司令官へ委任をしてまで 警機を一番外に配置してる …こういう時は 政府は何か企んでるから」
軍曹が呆気に取られて言う
「ラミリツ攻長…」
ラミリツが視線を強めて言う
「…それから もし、何かあったら アンタは国防軍と一緒に アールスローンの国民を守って …僕が メルシ国のスフォア女王を守る」
軍曹が驚き慌てて言う
「な、何を言うのだっ!?ラミリツ攻長っ!ラミリツ攻長と自分はっ!陛下を守る剣と盾なのだっ!何かあった時には 自分と共に 陛下をっ!」
ラミリツが言う
「それは 国防軍の剣と盾の役目でしょ 政府の剣は 外交を …アールスローンへ迎え入れた 外国の要人を守る事が使命ってやつ」
軍曹が驚いて言う
「ラミリツ攻長 …まさかっ」
ラミリツが言う
「エルムとラゼル様から聞いた …あいつが本物の剣 …悪魔の兵士なんでしょ?」
軍曹が慌てて言う
「ラミリツ攻長っ!どうか その事はっ!」
ラミリツが言う
「馬鹿 言う訳無いだろっ?そんな事言ったら 僕がどうなるのか 考えろよ?」
軍曹が呆気にとられて言う
「そ、そうだったのだ…」
ラミリツが呆れて言う
「はぁ… こんなのが防長で アールスローンが守れるのか やっぱ 僕 心配なんだけど?」
軍曹が笑んで言う
「大丈夫なのだっ ラミリツ攻長!」
ラミリツが横目に軍曹を見て言う
「え?」
軍曹が微笑して言う
「自分には ラミリツ攻長と言う 頼れる剣が 共に在るのであるっ!この一対の剣と盾がある限り アールスローンは 守られるのだっ!」
ラミリツが一瞬呆気に取られてから顔をそらし 頬を染めつつ言う
「だ、だからっ 盾の方がっ 馬鹿過ぎてっ 心配だって言ってるんだよっ!?」
軍曹が笑顔になる
【 サーカス会場 舞台裏 】
恐竜が雄叫びを上げる 隊員たちが驚き 隊員Cが表情を強張らせて言う
「や… やばい 腰が抜けそうだ…っ」
隊員Bが呆気に取られて見ていると 恐竜が隊員Bに向かって檻を叩く 隊員Bが悲鳴を上げ 隊員Aの後ろに隠れて言う
「うわぁあっ!アッちゃんっ!アッちゃんっ!俺 怖いぃ~…っ!」
隊員Aが苦笑して言う
「大丈夫だって バイちゃん これは この恐竜の芸なんだ 本当はこの恐竜 スゲー優しい奴なんだぜ?」
隊員Bが不安げに言う
「ふぇ?」
スフォアがやって来て言う
「良くご存知ですね?レギストの隊員の方」
隊員たちが振り返って驚いて言う
「え?」 「あ… 貴方は?」
ハイケルが言う
「メルシ国の王 スフォア女王だ」
隊員たちが驚き 慌てて敬礼する スフォアがハイケルの近くへ来る ハイケルがスフォアへ向き直り跪くと スフォアが手を差し伸べて言う
「久方ぶりですね ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「アールスローン国への来国 及び 隊員らへの格別の計らい 御礼申し上げます スフォア女王」
ハイケルがスフォアの手の甲に口付けをする 隊員たちが驚き 隊員Aが呆気に取られて言う
「何で少佐が メルシ国の 女王様と…?」
スフォアが言う
「レーベット大佐の事は 伺いました とても残念です」
ハイケルがスフォアを見る スフォアが微笑して言う
「メルシ国は アールスローンとの友好を取り戻し 再び 共に歩める事を 心より願っています そして… 私は 貴方に許して頂ける事も」
隊員たちが顔を見合わせる ハイケルが僅かに視線をそらす スフォアが表情を落として言う
「黒の楽団員となった者たちは 皆 帝国の名を出され脅されていたのです… しかし、メルシ国が 再びアールスローン国と共に歩めるのであれば あの帝国さえ 私は恐れる事は無いと思っています …貴方方 レギストも それは同じなのでしょう?」
隊員たちが驚く ハイケルが立ち上がって言う
「スフォア女王」
スフォアが隊員たちへ向けていた視線をハイケルへ向ける ハイケルが言う
「大佐はお亡くなりになりました アールスローンは平和的に 帝国とも 共に歩む事を望んでいます レギストも 今では 国防軍17部隊 …戦いは終わりました」
スフォアが寂しそうに微笑んで言う
「…分かりました そうですね 平和的に共に歩める事が 何よりです その為にも 今日はアールスローン国の皆さんへ 私どもの愛する この子達を ご覧に入れましょう」
スフォアが遠くの係員へ視線を向けると 係員が頷きスイッチを押す 機械音と共に鎖が動き 恐竜の入れられている檻が外される 隊員たちが驚き慌てて言う
「ぬあっ!?お、檻がぁあ!」
恐竜が雄叫びを上げる 隊員Cが悲鳴を上げる
「うわあぁあっ!」
隊員Cが尻餅を付く 隊員たちが怯える スフォアが微笑し恐竜へ手をかざすと 恐竜がスフォアの手に顔をすり寄せる 隊員たちが呆気に取られる
隊員Bが恐竜の頭に乗った状態で 恐竜が頭を持ち上げる 隊員Bが大喜びで言う
「スッゲー!高っけー!こっえーけど たっのしいー!」
恐竜が雄叫びを上げる 隊員Aが恐竜の尻尾に掴まった状態で持ち上げられ楽しんでいる 他の隊員たちが呆気に取られている スフォアが微笑して言う
「他の隊員の方も どうぞご自由に」
隊員たちが衝撃を受け 怯えつつ皆で顔を見合わせる 隊員Cが慌てて顔を左右に振る ハイケルが隊員たちへ言う
「どうした?スフォア女王の格別の計らいだぞ 本来であるなら 特別な者でなければ 触れる事が許されない メルシ国の国宝と言われる恐竜だ 今を逃せば 次は無い」
隊員Bが地面に降り 恐竜へ振り返って言う
「ありがとな!チョー楽しかったよ!」
恐竜が隊員Bに顔をすり寄せる 隊員Bが笑んだ後 隊員Cへ言う
「お待たせ!サッちゃん!」
隊員Cが怒って言う
「さっきの仕返しかぁっ!?」
隊員Bが呆気に取られて言う
「えー?さっきのってー?」
隊員Aが降りてきて恐竜に触れて言う
「腰を抜かしたのは サッちゃんの方だったな?にひひっ」
隊員Cが衝撃を受け怒って言う
「アラン隊員っ!お前 裏切ったなーっ!?」
隊員Aが笑んで言う
「なんだよ?俺は最初っから バイちゃんの味方だって」
隊員Bが笑んで言う
「とーぜーん!俺とアッちゃんは ビフォアーバーストショットの仲だもんねー!」
隊員Aが衝撃受け苦笑して言う
「あ、うん… とりあえず 練習は… してみる…」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ」
隊員Fが恐る恐る恐竜の顔に触れる 他の隊員たちも触れ始める 隊員Bが言う
「それにしても 恐竜って ホントは こんな大人しいもんだったんだぁ?何か意外ー」
隊員Aが言う
「違うよ バイちゃん メルシ国の恐竜は 生まれた頃から 1人の主人に 大切に育てられるんだ それで」
隊員Bが驚いて言う
「えー!?恐竜を人が育てるのー!?あっ!それで 主人の言う事を聞いて 大人しくなるんだー!?スッゲー!」
隊員Aが苦笑して言う
「あ、ああ… そう言う事!別命 メルシ国の奇跡 とも言うんだぜ?」
スフォアが微笑して言う
「先ほども 良くご存知の様子でしたが 特別 何かを学んで居られるのですか?」
隊員Aが苦笑して言う
「あ… その…」
ハイケルが言う
「彼の父上殿は メルシ国の上流階級の方なのです」
スフォアが微笑して言う
「そうでしたか… 通りで」
隊員Aが慌ててスフォアに跪いて言う
「ご、ご挨拶が遅れ 失礼を…っ」
隊員Bが驚く スフォアが微笑し 手を差し伸べて言う
「我らメルシ国と アールスローン国との架け橋ですね 名を聞かせて下さい」
隊員Aが言う
「アラン・シュティールと申します Siスフォア」
隊員Aがスフォアの手の甲に口付けをする スフォアが微笑して言う
「アラン・シュティール 貴方の下に メルシのご加護があります事を」
隊員Aが礼をして立ち上がる 隊員Bが呆気に取られている スフォアがハイケルへ向いて言う
「では そろそろ 宜しいですか?」
ハイケルが頷く スフォアが恐竜へ向き ヴァイオリンを弾く 隊員たちが呆気に取られてそれを見ていると 恐竜が段々と睡魔を帯び やがてゆっくりと眠りに着く
一般客の入場が開始される
ハイケルの声が無線イヤホンから流れる
『イベント会場 メイン会場前 異常なし』
イヤホンに無線が入る
『こちら A地点 異常なし』 『B地点 異常なし』 『C地点 異常なし』 『D地点 異常なし』 『E地点 異常なし』 『周囲巡回 異常なし』
ハイケルの声が無線イヤホンから流れる
『了解 警戒態勢を維持しろ』
隊員Aが無線を聞き周囲を見渡す 隊員Bが言う
「さっきは スッゲー 驚いたぁ~」
隊員Aが隊員Bを見て苦笑して言う
「よく言うよ 流石って言うか バイちゃんらしいよな?初めて見る恐竜に乗って 遊べるなんてさ 他の連中は 最後になってやっと触れた位なのに」
隊員Bが疑問して言う
「えー?…あははっ 違うよ アッちゃん!」
隊員Aが疑問して言う
「え?違うって?」
隊員Bが苦笑して言う
「俺がびっくりしたのは アッちゃんがメルシ国とアールスローン国の ハーフだったって事!」
隊員Aが表情を落として言う
「あぁ… その事… …ゴメン」
隊員Bが衝撃を受けて言う
「えー?…何でアッちゃん 謝るのー?」
隊員Aが言う
「その… 出来れば隠しておきたかったんだけど 少佐にバラされちゃったからさ 白状するしかなくて うん… 実は そうなんだよ…」
隊員Bが不満そうに言う
「そーじゃなくてー!何で謝るのー?って俺は聞いてるの!」
隊員Aが言う
「だって… メルシ国って アールスローンの人からすると 裏切り者の国だろ?だから」
隊員Bが言う
「え?裏切り者の国?」
隊員Aが言う
「そう、だから 俺にとっては 昔から コンプレックスだったんだ」
隊員Bが言う
「メルシ国が裏切り者の国って あのアールスローン戦記にあるやつー?」
隊員Aが言う
「ああ… ペジテの姫が王子に負けたのは メルシ国の女王がペジテを裏切って 王子に秘密をバラしちゃったのが原因だろ?」
隊員Bが言う
「お姫様の兵士を倒す兵士を 神様と悪魔から貰えば良いんだーって 教えたってやつー?」
隊員Aが言う
「うん… おまけに、60年前には…」
隊員Bが間を置いて言う
「…ぷっ あははっ!アッちゃん チョー面白れー!」
隊員Aが驚いて言う
「え…?」
隊員Bが言う
「アールスローン戦記の話なんて 嘘かホントか分からないのに!それに もし本当だったとしても アッちゃんがバラした訳じゃないだろー?」
隊員Aが言う
「そ… そりゃ そんな大昔に 俺は生きてねーし…」
隊員Bが言う
「そうだよ!それに アッちゃんは俺や少佐と タメなんだから 60年前だって 生まれてない!だったら アッちゃんは どっちにも なーんにも関係なーいじゃーん!なのに 自分のもう1つの故郷の事隠したり 謝ったりするなんて チョー変なのー!あはははっ!」
隊員Aが呆気に取られた後 苦笑して言う
「そっか… そうだな 俺 変かもな?…チョー面白れーや」
隊員Bが笑顔で言う
「そうだよー!アッちゃんも 少佐も 変な所に拘って チョー面白い人たちだよー!あははははっ!」
隊員Aが苦笑して言う
「そっか… 少佐もそんな感じなのか なるほど?バイちゃんと仲良くなる訳だ」
隊員Bが微笑して言う
「うん!俺 少佐とも アッちゃんとも 仲良くなるよ!だって俺 2人とも 大好きだモン!」
隊員Aが衝撃を受け 苦笑して言う
「うっ… それは… バイちゃん 嬉しいけど ちょっと誤解を招くから その言い方は」
隊員Bが疑問して言う
「えー?」
隊員Aが苦笑して言う
「後さ バイちゃん… 折角認めてもらったのに 墓穴を掘る様な話なんだけど」
隊員Bが言う
「なに?なにー?」
隊員Aが苦笑して言う
「さっきのあれ… 嘘なんだ」
隊員Bが疑問して言う
「さっきのって?」
隊員Aが言う
「あの恐竜の話、どうして恐竜が大人しいのかって あれ」
隊員Bが微笑して言う
「恐竜が生まれたときから 1人の主人が大切に育てる メルシ国の奇跡って奴の事?」
隊員Aが言う
「うん、昔はその通りだったらしいんだけど… 今は違う あの恐竜は 一定の周波数を聞かせると 大人しくなるんだって」
隊員Bが驚いて言う
「え?周波数?…って いつも俺たちが無線で使ってる あれの事?」
隊員Aが言う
「そう、スフォア女王が 首にかけてる ちょっとゴツイネックレスがあるだろ?」
隊員Bが思い返して言う
「あーそういえば ちょっとゴツかったかも?」
隊員Aが言う
「あのネックレスは機械で 人の耳には聞えない 一定の周波数を放っていて それを聞かせている間は 動物たちの脳内にある 快楽中枢が刺激されて 大人しくなるんだって」
隊員Bが言う
「へぇー アッちゃん 物知りー!」
隊員Aが苦笑して言う
「っはは まぁ これはメルシ国では常識なんだけど アールスローンではあんまり知られて無いかもな?」
隊員Bが言う
「アッちゃん メルシ国に行った事あるの?」
隊員Aが言う
「ああ、父方の爺ちゃんや婆ちゃんも居るから たまに遊びに行ったりするよ」
隊員Bが言う
「あー!良いなぁー!ねぇねぇ 今度俺も連れてってよー!だめー?」
隊員Aが呆気に取られた後 苦笑し笑って言う
「ふ… あははっ バイちゃん チョー面白れー!」
隊員Bが呆気に取られて言う
「えー?何でー?俺なんか変なこと言ったー?」
隊員Aが微笑して言う
「バイちゃんが連れて行って欲しいなら 俺が駄目って言う訳無いだろ?」
隊員Bが表情を和らげて言う
「えー!それじゃ 良いのー?連れてってくれるのー?」
隊員Aが笑んで言う
「とーぜん!」
隊員Bが喜んで言う
「やったー!」
隊員Aが笑う
会場内別所
ハイケルが周囲警戒をしている 無線に軍曹の声が届く
『お疲れ様でありますっ!少佐ぁ!皆ぁ!』
ハイケルが反応するとイヤホンを抑える 隊員Bの声が届く
『軍曹だー!軍曹ー!お疲れ様でありますー!』
ハイケルが言う
「お疲れ 軍曹 無線は問題ない レギスト及び国防軍第1第2部隊の警備状況も 今の所 問題無い」
ハイケルが顔を向けると 遠くに隊員Aと隊員Bの姿が見える ハイケルがそれを見てから他方へ向かう
隊員Aと隊員B
2人のイヤホンに軍曹の声が聞える
『了解でありますっ!』
隊員Bが言う
「サブの無線も 問題ないでありますー!」
ハイケルの声が聞える
『バイスン隊員 了解だ 軍曹 レギストは引き続き 会場周囲の警備を続ける 何かあれば連絡を』
軍曹の声が届く
『それが… 早速なのでありますが 少佐』
ハイケルの声が届く
『どうした』
隊員Aと隊員Bが顔を見合わせる 軍曹が言う
『ラミリツ攻長より 政府の… 政府警察の動きが怪しいので 注意をする様にと …あのマシーナリーと言う機械を 使用する恐れがあるとの 忠告を』
隊員Bが隊員Aへ言う
「マシーナリーって この前 政府の懇談会の時に入って来た あの危ない機械の事ー!?」
隊員Aが言う
「それだけじゃない つい先日 政府警察の新勢力だって言われて使われた あの大型の機械だって マシーナリーって奴の一種だ」
ハイケルが言う
『マシーナリーの使用は 国民からの抗議デモにより 政府内にて次に行われる重役会議まで 凍結するとの決定がなされたばかりだ そもそも このイベント自体 政府の信用を取り戻す その為のものと言っても 過言ではない』
軍曹が言う
『…しかしっ 少佐』
隊員Aと隊員Bが心配げに顔を見合わせる ハイケルが言う
『だが それら政府の代表である ラミリツ・エーメレス・攻長閣下より 我ら国防軍の防長閣下へもたらされた助言だ 従って』
隊員Aと隊員Bが微笑する ハイケルが言う
『その助言を受けた 防長閣下の命の下であるのなら 我々国防軍レギスト機動部隊には マシーナリーに対応するだけの 備えを行う準備がある』
隊員Aと隊員Bが笑み 隊員Bが言う
「流っ石!少佐ぁー!」
軍曹が言う
『おおっ!ではっ 少佐っ!是非ともっ!』
ハイケルが言う
『但し』
隊員Aと隊員Bが疑問する
遠くに隊員Eと隊員Fの姿が見える ハイケルがそれを確認しつつ微笑して言う
「その費用は 全て防長閣下が 自費で受け持つ事になるが?」
隊員Aの衝撃を受けた声がイヤホンに聞こえる
『げっ!…もしや その備えと言うのは…』
隊員Bの疑問した声がイヤホンに聞こえる
『えー?アッちゃん 何か知ってるのー?』
軍曹が言う
『は?自分が 自費で?』
ハイケルが隊員Eと隊員Fから 他方へ視線を向け歩みつつ言う
「こちらは 全て非公式な物となる 従って」
隊員Aと隊員B
2人のイヤホンにハイケルの声が聞こえる
『国防軍の予算では 落とす事が出来ない だが、物は確かだ 私と共に 元国防軍レギスト機動部隊隊長 エルム少佐が認定している』
隊員Aが衝撃を受けて言う
「やっぱりーっ!」
隊員Bが呆気に取られて言う
「えー?」
軍曹が疑問して言う
『は?エルム少佐が…?』
ハイケルが言う
『最も、そこまでの備えをするかどうかは 君に任せるが… 私に紹介された エルム少佐が信頼を向けるける者からは 可能な限りの備えを との助言を受けている だが、特注品であるため決して安くは無い それを1個部隊で揃えればそれなりにはなる …とは言え ハブロス家の君からしてみれば 大した額ではないだろうが?』
隊員Aが表情をゆがめて言う
「…悪魔の囁きが」
ハイケルが言う
『何か言ったか?アラン隊員』
隊員Aが衝撃を受けて言う
「げっ!?無線マイク入ってたのかっ!?」
隊員Bが言う
「うん!入ってるよー?軍曹に挨拶したしー 少佐にサブ無線良好の お知らせをしたしー?」
隊員Aが言う
「終わったら 切っといてくれよ バイちゃんっ!」
隊員Bが言う
「えー?だってー …にひひっ」
ハイケルが言う
『どうする 軍曹 備えるのなら急がねば 間に合わなくなるぞ』
軍曹が言う
『…え、えっと わ、分かりましたっ 正直 自分には 分からない部分も多いのでありますが… 少佐にお任せ致します!可能な限りの備えをっ …と言う事で?』
ハイケルが微笑して言う
『了解』
隊員Aが苦笑して言う
「悪魔の勝利…」
ハイケルが言う
『聞えているぞ』
隊員Aが衝撃を受けて隊員Bへ慌てて言う
「バイちゃんっ!」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
【 車内 】
ロンドスが携帯で話している
「はい 新作のM80サブマシンガンタイプと M90ライフル どちらも20丁ずつ 御用意出来ます 銃弾も相応に」
携帯からハイケルの声がする
『了解 では 急な無理を言って すまないが 宜しく頼む』
ロンドスが言う
「とんでも御座いません 有難う御座います」
ロンドスが携帯を切る ザキル運転しながら言う
「ハイケル少佐から依頼されてた M80まで用意しておいて ホント良かったね 爺ちゃん」
ロンドスが微笑して言う
「ふぉっふぉっふぉ 私自身では そのハイケル少佐の御用命であった M80サブマシンガンだけを用意する予定だったが M90に関しては 少佐からのご用命が無ければ 20も余分に用意するつもりは無かった …可能な限りの備えを 改めてその御言葉を痛感しております 少佐」
ロンドスが振り返ると トラックの荷台にエルムがM90の準備をしながら言う
「M90は 私が必要としていたから 伝えたまでだ 奴からの依頼で試作していた物を 必要数揃えていた事こそ お前ならではの仕事と言えるだろう」
ロンドスが微笑して言う
「有難う御座います 少佐」
ザキルが言う
「所でエルム少佐?本当に MT90を使うんですか?」
エルムが言う
「必要とあれば 使用する そうでなければ 何の為に製作を依頼する?」
ザキルが表情を落として言う
「それは… そうですけど 同じ90と言っても MT90はM90ライフルの 約30倍もの火薬を使ってるんですよ?ハッキリ言って 撃った人は…」
エルムが言う
「即死だな」
ザキルが衝撃を受け黙る ロンドスが苦笑して言う
「っふぉっふぉ …相変わらず 歯に衣着せぬ物言いですね 少佐」
エルムが言う
「悪かったな」
ロンドスが笑う
「ふぉっふぉっふぉ いいえ お懐かしい限りです」
ザキルが不満げに言う
「もう少し 衣を着せても良いと思うんですけど?その点やっぱり ハイケル少佐は 優しいと言うか 丸みがあるって言うか…」
エルムが言う
「甘いと言うんだ」
ザキルが表情を落として言う
「ですからぁ…」
エルムがM90の設定を確認しながら言う
「戦闘時に 余計な言葉は邪魔になる 命令は単純に 極めて正確に伝える必要がある」
ザキルが不満そうに言う
「それじゃ エルム少佐は それをやったら 死んじゃうかもしれない命令をする時も 『お前は死んでも 確実に撃て』ってハッキリ言うんですか?」
エルムが言う
「当然だ」
ザキルが一瞬驚いた後息を吐いて言う
「もう良いです」
エルムが作業を続けている ロンドスが苦笑する ザキルが言う
「俺、爺ちゃんの代の銃技師じゃ無くて ホント良かった!やっぱ 銃火器も 悪魔の兵士も どっちも新しい方が良いや!」
ロンドスが言う
「ザキル 失礼を言うではない」
ザキルが言う
「わざとだよ爺ちゃん エルム少佐には こっちの方が良いんでしょ?」
ロンドスが表情を顰める エルムが言う
「お前の意志は理解した しかし、新たな銃火器が 必ずしも良いとは限らない 作り手の技術次第と言える」
ザキルがムッとしてから言う
「そうですねっ 俺の技術じゃ まだ 爺ちゃんのM90を越える 強力な銃を作る事は出来ないですっ エルム少佐の言う方が 正しいですよ!」
エルムが言う
「更に言うのなら 悪魔の兵士も同じだ」
ザキルが言う
「ハイケル少佐は エルム少佐より きっと強くなります」
エルムが作業を続けながら言う
「それは有り得ない」
ザキルが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「…へぇ?それは ハイケル少佐に負けない 自信があるって事ですか?」
エルムが言う
「自信ではない 私は奴の後継だ 奴の欠点を補って作られた私が 奴より弱い筈が無い」
ザキルが言う
「え…?それって?」
ロンドスが言う
「ザキル そろそろ市街地に入る 時間が無いんじゃ 道を間違えぬよう しっかり見て運転するのじゃ」
ザキルが前を見直して言う
「あ… うん そうだね イベントで道も混んでるから 1本間違えたら大変だ」
ロンドスが言う
「うむ」
ザキルがバックミラーでエルムを見る エルムがM90を置き MT90を手に取る ザキルが視線を正面に戻す
【 イベント会場 西ゲート付近 】
ハイケルが歩きながら携帯に話している
「…早いな もう着いたのか?」
携帯からロンドスの声がする
『はい、もう間もなく 北西のゲート案内へ到着致します』
ハイケルが言う
「了解 では西ゲートへ 警備の政府警察には話を通してある レギストの依頼で来たと伝えてくれ」
携帯からロンドスの声がする
『畏まりました では 後ほど』
ハイケルが携帯を切り イヤホンを押さえて言う
「各班1名は 直ちに西ゲートへ集合しろ」
ハイケルが歩いていると 横を数名の兵士(エルムとエルムβたち)が去って行く ハイケルが立ち止まり振り返る 兵士たちが去って行く ハイケルが視線を細めて言う
「…警機の隊員 …では無い」
ハイケルが兵士たちへ向く ザキルが遠くから叫ぶ
「ハイケル少佐ぁーっ!」
ハイケルが反応しザキルへ向き直り 兵士たちを気にしつつザキルの下へ向かう ザキルがホッとして言う
「あっぶなかったぁ~」
ロンドスが苦笑する
「ふぉっふぉっふぉ…」
エルムが横目にハイケルを見てから言う
「到着した」
エルムのイヤホンにラミリツの声が届く
『遅いじゃないっ!?もうすぐ開演だよっ!?』
エルムが視線を戻して言う
「作戦通りだ」
エルムとエルムβたちが立ち去る
【 サーカス会場 】
会場が賑わっている 軍曹が周囲を見渡し エルムの小隊を見つけ 疑問して言う
「む?あれは…?あれも国防軍 第1機動部隊であろうか?なにやら様子が異なるのだが…?」
ラミリツが軍曹の言葉に視線の先を見てハッとして慌てて言う
「あっ!いやっ!あれはー そうだっ!政府警察機動部隊の 精鋭だって…!?」
軍曹が呆気にとられて言う
「む?おおっ!そうであるのか!ならば安心!…して良いものだろうか?」
軍曹が疑問する ラミリツが慌てて言う
「あああっ あいつ等に関してはっ ぼ、僕がっ …保障するっ!」
ラミリツが気合を入れて立つ 軍曹が呆気に取られてから微笑して言う
「お?…おお!そうであるのかっ!では 安心なのだっ!警機にもその様な信用の置ける者たちが居ったとは 実に良かったのである!」
ラミリツが気を抜いて言う
「はぁ… ほんと そんなのが居てくれると 良いんだけどさ…」
軍曹が疑問する ラミリツが溜息を吐く 開演のブザーが鳴る 軍曹とラミリツが正面を向く アナウンスが流れる
『本日は…』
【 A地点 】
隊員Bが走って来て言う
「アッちゃん アッちゃーん おっまたせー!」
隊員Aが苦笑して言う
「バイちゃん 何も走って来なくったって」
隊員Bが言う
「だって これ チョーすげーの!俺 早く アッちゃんに見せたくてー!」
隊員Aが苦笑して言う
「へぇー どれどれ?」
隊員BがM80を見せて言う
「ジャーン M80サブマシンガン!これ スゲーんだぜ!?M80なんて 普通セミオートのハンドガンでも難しいだろ!?それを サブマシンガンで撃てるなんて!流石ハンドメイドだよー!」
隊員Aが驚いて言う
「ハンドメイドなのかぁ へぇー そいつは凄いなぁ きっとかなり高いぜ?」
隊員Bが言う
「にひひっ だよねぇー!しかも これ 厚さ10ミリの鉄でも貫通するんだって!その代わり 少佐が いつも使ってる国防軍のサブマシンガンの 倍以上の反動だから気を付けろって」
隊員Aが言う
「倍以上の反動かぁ そいつは大変そうだ」
隊員Bが笑んで言う
「マシーナリー専用だってさ 弾も高いから 他では使うなって …あ、それから アッちゃんには」
隊員Aが言う
「M90のライフルだろ?少佐の期待に答えようと 拳銃ばっかり訓練してたけど ライフルの訓練もやっとくんだったぜ…」
隊員Bが笑んで言う
「にひ…っ ジャーン!」
隊員BがM82を見せる 隊員Aが驚いて言う
「え!?それはっ!」
隊員Bが言う
「アッちゃんには特別だよ!少佐から 期待している って!」
隊員AがM82を受け取り喜びを溜め込んでから叫ぶ
「くぅ~!少佐ぁーっ!有難う御座いますー!」
隊員Bが言う
「良かったねー!アッちゃん!…あ、でも それも マシーナリー専用だぞって 後 1発外したら 罰金5千だってさー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「なぁー!?ま、マジで…?」
隊員Bが言う
「にひひっ うそうそ!」
隊員Aが言う
「バイちゃんー その金額スゲーリアルだから 止めてくれよ?」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
【 サーカス会場 】
スフォアが言う
「…本日の このイベントが 我々メルシ国とアールスローン国 両国の新しい門出とならん事を!」
会場に拍手が渦巻く スフォアが女帝の御簾へ向き礼をする スフォアが礼を終え 御簾を見つめてから微笑して下がる アナウンスが流れる
『それでは 本日最初の演目となります メルシ国の…』
軍曹の視線が第1機動部隊の隊員たちを見て エルムの小隊を見てから 周囲を見渡す ラミリツが政府役人たちを見て警察長と長官が居ない事に気付く メディアカメラがステージを映す
【 政府警察本部 警察長室 】
TVにサーカスの映像が流れている メルフェスが言う
「盛大な盛り上がりだな この後に何が起こるかも知らず 幸せな奴らだ」
警察長が表情をゆがめて言う
「一体何を行うと言うのですか?長官」
メルフェスが苦笑して言う
「何を行う …とは ックク 随分物騒な事を言う 諸君は警察 国民を守るのが使命だろう?」
警察長が言う
「勿論その通りですが あのマシーナリーには国民かどうか… いえ、そもそも 人と動物との違いですらっ」
メルフェスが微笑して言う
「かまわないさ マシーナリーが導入される頃には 諸君の守るべき国民は 皆 居なくなっている」
警察長が驚いて言う
「そ、それはっ 一体っ!?」
メルフェスが笑んで言う
「居るとすれば 外国の… メルシ国の者位だ しかし、例え その者たちを マシーナリーが 間違って撃ってしまったとしても アールスローンの者は 誰も文句を言わない …その者たちのお陰で アールスローン国の多くの人命が 奪われてしまうのだからな?…ふっはははははっ!」
警察長が震えを堪える
【 サーカス会場 】
巨大なライオンが雄叫びを上げる 観客たちがおびえる メルシ国民が微笑し ライオンに手を差し出し指示を出すと ライオンが二足で立ち上がる 観客たちが歓声を上げ拍手をする 更にもう一匹の巨大ライオンと メルシ国民が現れ 2匹のライオンを使った芸をやる 観客たちが再び盛大な拍手をする
【 サーカス会場 周囲 】
会場内から歓声が漏れて来る 隊員Fが言う
「あぁー 何が起きてるんだろうなぁ?気になるなぁ~?」
隊員Dが苦笑して言う
「プログラム通りだと 今頃でかいライオンを使っての芸か何かだ」
隊員Fが言う
「でかいライオンかぁ~ どんだけでかいんだろうなぁ?」
隊員Dが言う
「うーん それは分からんが… 何にしても あの恐竜よりは小さいってもんだろ?」
隊員Fが苦笑して言う
「そりゃ 間違いない」
隊員Dが言う
「その恐竜を間近に見た上 触れたんだから 俺らの方がラッキーだったんじゃないか?」
隊員Fが言う
「そうだな 芸の方は 録画映像を帰ってから見るって事で やっぱり今日は 任務の方に付いて正解だったよ!」
隊員Dが苦笑して言う
「そうそう!」
会場内から再び歓声が上がる 隊員Fが言う
「ま、欲を言えば レギストが会場内の警備だったら もっと 良かったんだけどな?」
隊員Dが軽く笑って言う
「っはは そりゃ 違いない」
【 サーカス会場 舞台裏 】
スフォアが恐竜の前に来る 恐竜が眠っている スフォアが微笑してから視線をそらして言う
「アールスローン国の女帝陛下から 一言でも 頂けたらだなんて… いいえ これ位は当然ね 一度失った信頼を取り戻すのは これからだわ」
スフォアが恐竜へ向いて言う
「ソーファラー 気持ちよく眠っている所 ごめんなさい 私たち メルシ国のため 貴方の力を貸して頂戴」
恐竜が薄っすらと目を開く スフォアが微笑し ヴァイオリンを持ってから はっと気付いて言う
「あら… 私ったら」
スフォアが苦笑し 置いてあるネックッレスを付け髪を払って言う
「二度と間違いを犯さない為にも 不本意でも これは付けて置かなければいけないわ」
スフォアがネックレスに触れ苦笑してから 恐竜へ振り返って言う
「もうすぐ貴方の出番よ いつもの様に お願いね?」
スフォアが立ち去る 恐竜が再び目を閉じる 物陰から役人が現れ微笑する
【 サーカス会場 】
アナウンスが言う
『それでは 本日の最後を飾りますは メルシ国女王スフォアと ここに居ります全ての動物 そして クライマックスには!メルシ国の国宝!スフォア女王の最も忠実なる 動物の登場となります!皆様どうぞ お楽しみ下さいっ!』
観客たちが歓声を上げる スフォアがステージに現れ 女帝の御簾を見て礼をしてから 動物たちへ向き直る 観客たちが興奮の眼差しで注目する スフォアが動物やメルシ国民の皆を見て微笑してから ネックレスに触れ密かにスイッチを入れる
【 政府警察本部 警察長室 】
メルフェスが携帯を聞き微笑して言う
「そうか 良くやってくれた」
警察長がメルフェスを見る メルフェスが笑んで言う
「さあ… ここからが本当のショーの始まりだ」
警察長が表情を強張らせ TVを見る
【 サーカス会場 周囲 】
隊員Fが言う
「お、そろそろ クライマックスだ!あの恐竜が出るぞ!?」
隊員Dが言う
「その前に 全ての動物を使っての いっせい演技だ きっと凄い歓声が上がるぞ?」
会場から声が上がる 隊員Fが言う
「お!」
隊員Dが笑んで言う
「ほらな?」
会場から聞える声が 徐々に悲鳴に変わる 隊員FとDが顔を見合わせ 隊員Fが言う
「歓声っつーか 随分大げさに 脅かしてるのか?まだ 恐竜の出番じゃないのに この時点でこの…」
イヤホンにハイケルの声が届く
『第1機動部隊より緊急通達 異常事態発生 国防軍部隊は 直ちにサーカス会場内へ向かい 観客を保護せよっ!』
隊員FとDが驚き 隊員Fが言う
「異常事態だって!?」
隊員Dが言う
「まじかよっ!?」
【 A地点 】
隊員Aと隊員Bが会場へ向かい走っている イヤホンからハイケルの声が届く
『事態内容は メルシ国大型動物の暴動と認定 14時18分 総司令官より国防軍全部隊へ緊急指令発動 内容は この事件に対し 国防軍はアールスローン国民の保護を最優先とし 必要と判断された場合は メルシ国の大型動物の射殺を容認する』
隊員Aと隊員Bが驚き 隊員Bが言う
「そんなっ!」
隊員Aが隊員Bへ向いて言う
「必要とあれば やるしかない!アールスローンの国民を守る事が 俺たちの使命だ!」
隊員Bが言う
「それはっ そうだけどっ…!」
隊員Aが先行する 隊員Bが慌てて言う
「待ってよ アッちゃんっ!」
隊員AとBがサーカス会場に入って行く
【 サーカス会場 】
観客たちが悲鳴を上げて逃げ出している スフォアが驚いて言う
「そんなっ どうして…っ」
メルシ国民が慌てて叫ぶ
「陛下ーっ!」
スフォアが呆気に取られていると メルシ国民がスフォアを突き飛ばす 巨大像がメルシ国民を踏み潰す 観客たちが悲鳴を上げ 数人が失神する スフォアが腰を抜かしたまま驚き言葉を失っている 第1機動部隊隊員たちが銃を構え 動物たちを狙撃する スフォアがハッとして立ち上がって言う
「止めてっ!これは何かの間違えですっ!この子達を撃たないでっ!」
メルシ国民がスフォアへ叫ぶ
「陛下っ!ヴァイオリンをっ!」
スフォアがハッとして顔を向ける 視線の先にヴァイオリンがある 第1機動部隊隊員たちが後づ去りながら言う
「駄目だっ!動物がでかすぎて 通常弾じゃ 歯が立たないっ!」
「応援はどうなっているっ!?第2部隊もレギストも来ないぞっ!?」
隊員たちが出入り口を見る 出入り口に観客が押し寄せている
【 サーカス会場 出入り口外 】
レギスト隊員たちがドアの前に集まっている 隊員Aが走って来て驚き叫ぶ
「おいっ!何してるんだっ!?早く中へ!」
隊員Fが振り返って言う
「扉が開かないんだっ」
隊員Bが遅れて来て言う
「あーっ!そうだっ!少佐が言ってたっ!サーカス会場のドアは 緊急時のために強化されてるんだってっ!」
隊員Dが言う
「緊急時の為の強化で 緊急時にドアが開かないって なんだよそれっ!?」
隊員Aが言う
「バイちゃんの聞いた緊急時は 動物が外へ逃げ出さないようにって処置なんだよ!」
隊員Cが振り返って言う
「それじゃっ!中に居る観客は 見殺しにしろって言うのかっ!」
隊員Bがイヤホンを押さえて言う
「少佐に連絡を!少佐っ!少佐ー!緊急事態であります!」
隊員Aがイヤホンを押さえて言う
「少佐!強化扉のせいで 会場内へ入れませんっ!どうしたらっ!?」
会場内から 恐竜の叫び声が聞える 隊員たちが驚き 全員が扉から後づ去る イヤホンにハイケルの声が届く
『政府警察より通達 事態鎮圧の為 マシーナリーの導入を決定した 奴らは既に会場入り口へと向かっている!総員 回避だっ!』
ハイケルの無線が終わると同時に 隊員たちの後方に重い足音が響く 隊員たちが驚き呆気に取られ 皆が後ろを振り返ると マシーナリー1がマシンガンを向ける 隊員たちが驚き 隊員Bが叫ぶ
「回避ーっ!」
隊員たちが回避すると同時に マシーナリー1がマシンガンを乱射し 強化扉を撃ち 更にミサイルを放つ 爆発が起きる 隊員たちが地に伏せ身を守っている マシーナリー1が周囲を見渡し会場内へ向かって行く 会場内の人々が驚き顔を向けると 一瞬の後 一斉に出口へ向かう マシーナリー1が会場内の観客たちへ マシンガンを向け撃ち始める 観客たちが驚き逃げる 観客たちが会場の一箇所に集まり それを第1機動部隊が囲う 複数の出入り口からマシーナリー1が入って来る 第1機動部隊の隊員が言う
「お… お終いだ…」
第1機動部隊の隊員たちが後づ去る マシーナリー1たちが第1機動部隊隊員たちを見る 出入り口の一箇所から重い銃声が乱射され マシーナリー1が倒れる 第1機動部隊隊員たちが呆気に取られる イヤホンにハイケルの声が聞える
『こちら 国防軍レギスト機動部隊 第7ゲートを観客の退路として確保した 国防軍第1機動部隊は直ちに 観客の誘導を行え』
第1機動部隊隊員たちが第7ゲートへ顔を向ける ハイケルがM90を持っていて 隊員たちが周囲に立つ 第1機動部隊隊員たちが表情を明るめて言う
「第1機動部隊 了解!」
【 第7ゲート前 】
隊員たちが外から押し寄せてくるマシーナリー1を射撃している 隊員Xが盾を構え 度々来るマシーナリーのマシンガンを押し止める ハイケルが言う
「持ち堪えろ 間もなく もう一人が到着する」
隊員Xが歯を食いしばって言う
「了解っ!」
【 政府警察本部 警察長室 】
警察長が目を閉じ頭を抱えている TVにサーカス会場の様子が流れている レギスト隊員たちの銃撃で マシーナリーの手足が破損していく メルフェスがTVを見ていて 気付いて言う
「…そうか 国防軍にはマシーナリーを 破壊出来る装備があるのだったな …ならば こちらの戦力を増加するまで」
メルフェスが携帯を操作する 警察長が顔を上げて言う
「長官っ!もう十分ですっ!これ以上マシーナリーを増やしたら 折角 国防軍によって避難させられた 国民たちに危険がっ!」
メルフェスが携帯に言う
「私だ 国防軍の邪魔が入ったお陰で 始末する予定だった アールスローン国民たちが逃げ出した 直ちにキラーマシーンを導入し 処理を行わせろ」
警察長が驚く メルフェスが携帯を切りTVを見て言う
「さぁ マシーナリーよ 愚かなアールスローン国民を 根絶やしにするのだ!…くっははははっ」
警察長が表情を歪めて言う
「く… 狂っている この人は とても人とは思えないっ」
警察長が再びソファに身を落とし頭を抱える
【 サーカス会場 】
スフォアが叫ぶ
「止めてーっ!」
スフォアがマシーナリー1と動物たちの間に入って両手を広げる マシーナリー1がマシンガンを向ける ラミリツがプラズマセイバーを振りかざして叫ぶ
「やぁああーっ!」
プラズマセイバーがマシーナリー1の片腕を切り落とす ラミリツがスフォアの前に立ち叫ぶ
「援護をっ!」
エルムβが周囲に立ちマシーナリー1へM90を放つ マシーナリーが被弾して動作が止まる ラミリツがプラズマセイバーをマシーナリー1の右胸に突き刺す マシーナリー1が停止し力を失って倒れる スフォアが驚いて言う
「貴方はっ」
ラミリツが顔を向けて言う
「スフォア女王!直ちに ここを離れて下さい!」
スフォアが言う
「そうは参りませんっ この子達を放っては…っ いえ、私は メルシィ国の女王です アールスローンの皆さんへ ご迷惑をお掛けした今 その私が逃げ出すなど 許されません」
ラミリツが言う
「しかし 貴方がここで倒れれば 貴方の国が アールスローンの国民を憎むでしょう!この国の事を思うのなら 尚更 貴方自身が助かる道を お選び下さいっ」
スフォアが驚き視線を落とす ラミリツがハッと顔を向ける エルムβがマシーナリー1へM90を放つ ラミリツがプラズマセイバーを握り叫びつつ向かう
「やぁあーっ!」
【 政府警察本部 警察長室 】
メルフェスがTVを見ていて視線を細めて言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長… また我らの邪魔をすると言うのか 愚かなっ」
警察長が顔を上げTVを見る TVにはラミリツがマシーナリー1を倒している映像が映っている その後ろにスフォアが映っている 警察長がハッとして思い出し メルフェスを見る メルフェスがTVを見つつ携帯を掛けて言う
「キラーマシーンを会場内にも入れろ!邪魔な奴が多過ぎるっ!」
警察長が意を決し 立ち上がり部屋を出て行く
【 サーカス会場 】
軍曹が盾を構えている ハイケルがM90で狙いを付け マシーナリー1の右胸へ連射する 次々に全く同じ位置に着弾し 銃弾が3発押し込まれ マシーナリー1が力を失って倒れる ハイケルが他のマシーナリー1を同じ様に倒す 隊員たちが驚き言う
「す…凄い…」
「ただのジャストショットだって 凄いのに それを実戦で…」
「しかも 100発100中…」
隊員たちが呆気に取られる ハイケルがM90の弾倉を変え 狙いを付けようとすると 同じリズムの発砲音が響く ハイケルと隊員たちが視線を向ける 視線の先 エルムが客席に座り寛いだ状態で居る その両脇でエルムβたちが ジャストショットを行っている ハイケルが視線を細めて言う
「やはり 奴だった…」
軍曹が呆気にとられて言う
「しょ 少佐ぁ?奴 と… 申されますと?」
ハイケルが言う
「見たら分かるだろう?」
軍曹が疑問しながら ハイケルの視線の先を見て 衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?エ、エルム少佐…」
ハイケルが不満げに M90をエルムへ放つ 軍曹が衝撃を受ける エルムが最小限の動きで銃弾を回避し 横目にハイケルを見て言う
「貴重な銃弾だ 無駄撃ちをするな」
ハイケルが言う
「これも貴様の作戦か?」
エルムが言う
「何の話だ?」
ハイケルが間を置いてM90をエルムへ構える 軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「しょっ 少佐ぁーっ!ど、どうか!今だけはっ!ご忍耐をぉおー!」
ハイケルが舌打ちをしてから マシーナリー1を撃つ 軍曹がホッとする ハイケルが言う
「近い内に 貴様の警護する ヴォール・ラゼル・ハブロス邸 襲撃作戦を決行する 覚悟しておけ」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「しょっ!少佐ぁあーっ!?」
軍曹の盾にM82の銃弾が打ち込まれる 軍曹が衝撃を受ける エルムがM82の銃口から上がる煙を前に 言う
「いつでも来い 歓迎する」
軍曹が慌てて言う
「エルム少佐ぁー!少佐ーっ どうか お二人ともっ!現状の再確認をーっ!そして どうか ご協力を!」
ハイケルとエルムが声を合わせて言う
「「却下する」」
ハイケルとエルムがM82を撃ち合う 2人の銃弾が中間で当たり散る 隊員たちが呆気に取られて言う
「す…」
「凄過ぎる…」
エルムがハイケルを見て言う
「うん…?」
ハイケルが微笑する ハイケルがM82を片手で撃った姿で居る エルムが正面を見て言う
「上出来だ」
キラーマシーンが会場に入り込んで来る ハイケルが言う
「余計なお世話だ」
ハイケルがM82でキラーマシーンを退治する 軍曹が2人を見て困っている 軍曹の盾にキラーマシーンの銃撃が当たり 慌てて盾を構え直す イヤホンに無線が入る
『こちら国防軍第1機動部隊!レギスト機動部隊へ応援を要請する!会場外に 小型のマシーナリーが現れた!我々の通常弾では歯が立たないっ!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「こちらレギスト機動部隊 了解だ レギスト機動部隊 A班からC班は 会場外の援護へ向かえ」
イヤホンに無線が入る
『A班 了解!』 『B班了解!』 『C班了解!』
ラミリツがプラズマセイバーを構え直し軽く肩で息をして顔を向ける 視線の先スフォアが周囲を見て不安がっている ラミリツが舌打ちをして小声で言う
「避難しろって言ってるのに どんだけ我が侭なんだよ まった…くっ!?」
ラミリツの顔ギリギリにキラーマシーンの銃弾が掠める ラミリツが驚き慌てて言う
「エ、エルムッ!?」
ラミリツが客席のエルムへ向く エルムが言う
「気が散った」
ラミリツが慌てて言う
「散らさないでよっ!」
マシーナリー1のミサイルがラミリツを掠める ラミリツが呆気にとられる 後方で爆発が起きる エルムが言う
「問題ない 最小限 当たらない物を 見逃している」
ラミリツが慌てて言う
「最大限で当たらないようにしてよ!怖いんだからっ!」
エルムが言う
「当たらないと言っている」
ラミリツが言う
「怖いんだって 言ってるのっ!」
エルムが言う
「当たらないと言っている」
ラミリツが言う
「僕はエルムじゃないんだから 怖い物は怖いのっ!」
エルムが言う
「問題ない お前は この程度の恐怖で 狂う事は無い」
ラミリツが言う
「それって どう言う…?」
ラミリツの携帯が着信する ラミリツが一瞬呆気に取られ 携帯を取り出しながら言う
「こんな時に誰だよっ?」
ラミリツが携帯に出て不満そうに言う
「悪いけど 今忙しいんだっ」
ラミリツのギリギリをミサイルが飛び去る
【 政府警察本部 警察長室 外 】
警察長が携帯に言う
「攻長閣下っ どうかお聞き下さい あの動物たちの暴動はっ」
【 サーカス会場 】
ラミリツが驚いて言う
「え?スフォア女王のネックレス…?」
ラミリツが振り向いてスフォアのネックレスを見る エルムが叫ぶ
「ラミリツッ」
ラミリツがハッとして正面を向くとエルムβがラミリツを突き飛ばす エルムβがM80を放つ ラミリツが立ち上がりプラズマセイバーをマシーナリー1の後方から突き刺す マシーナリー1が脱力してラミリツの携帯の上に倒れる ラミリツが衝撃を受けて言う
「あぁあーっ!?」
【 政府警察本部 警察長室 外 】
警察長の携帯から ツーツー音が聞える 警察長が視線を落として言う
「これで 何とかなってくれれば…」
警察長が警察長室を見てから立ち去る
【 サーカス会場 】
ラミリツがスフォアの前に立つ スフォアがラミリツを見る ラミリツが言う
「スフォア女王 無礼をお許し下さい」
スフォアが疑問すると ラミリツがスフォアのネックレスを掴む スフォアが慌てて言う
「それは 大切なっ」
ラミリツがネックレスを引っ張り取って床へ落とし 足で踏み付け壊す スフォアが慌てて言う
「何をするのですっ その機械が無ければ 動物たちがっ!」
ラミリツが動物たちを見る 暴れていた動物たちが止み周囲を見渡す 一頭の像がメルシ国民の亡骸に鼻をすり寄せ鳴き声を上げる スフォアが驚き呆気に取られる ラミリツが言う
「良からぬ者の手により すり替えられていたそうです 犯人は必ず捕らえ 必要な罰を与えると お約束します」
スフォアが周囲を見渡し顔を左右に振って言う
「いいえ… これが メルシ国の… 大きすぎる力の代償なのです 私どもは 再び 間違いを犯してしまった…」
スフォアが俯き顔を手で覆う 周囲には動物たちに攻撃された人々の亡骸がある ラミリツが表情を顰めて言う
「違う… 機械になんか 頼るからいけないんだ」
スフォアが顔を上げラミリツを見る ラミリツがマシーナリー1やキラーマシーンを見て 表情を怒らせる ラミリツがエルムへ叫ぶ
「エルム!動物たちの暴動は収まったっ 政府警察へ連絡して マシーナリーを 停止させる様に言って!」
エルムが言う
「その要求は受託されない事が 推測される」
ラミリツが言う
「それで良い 国防軍からの連絡が入っている事が 重要だ」
エルムが気付き言う
「そうだな それで国防軍の信用は回復する 対する 政府警察は壊滅するだろう」
エルムが携帯を操作する ラミリツが言う
「レギストだけで このマシーナリーを全部 止められたらの話だけどね?」
エルムが言う
「お前や 私も居る 可能だ」
ラミリツが言う
「…ふんっ 何で僕が」
エルムが携帯に言う
「こちらは国防軍レギスト機動部隊隊長 ハイケル少佐だ サーカス会場にて発生した メルシ国巨大動物たちの暴動は収まった 直ちに 政府警察機動部隊による マシーナリーの停止を要求する」
ハイケルがエルムを見てから 周囲を見渡して言う
「…動物たちが」
隊員たちが呆気に取られて言う
「あ、あれ?いつの間に…?」
エルムが携帯を切って寛ぐ ハイケルが言う
「おい」
エルムが言う
「お前の名を借りた」
ハイケルが言う
「先に言え …それで?」
エルムが言う
「不可能だそうだ 破壊処理の許可を得た」
ハイケルが言う
「…了解 お前も戦え」
エルムが言う
「戦っている」
エルムβがM90を放つ ハイケルが視線を細め イヤホンを押さえて言う
『国防軍全部隊へ通達 メルシ国巨大動物の暴動は収まった… 引き続き』
【 政府警察本部 警察長室 外 】
メルフェスが顔を顰めて言う
「私に歯向かえば どうなるのか… 分からせてやらねばな?」
メルフェスが通路を歩きながら 携帯を取り出す
【 サーカス会場 】
ラミリツがエルムへ携帯を返しながら言う
「ありがと 僕の壊されちゃったんだ 折角 最新のにしたばっかりだったのに」
エルムが言う
「奴へ何を要求した?」
ラミリツがエルムへ向いて言う
「要求じゃないよ 報告」
エルムが言う
「報告?」
エルムβがM90を放つ 続いてラミリツがプラズマセイバーを突き刺した状態で居る マシーナリー1が倒れる エルムが言う
「報告とは 作戦が終了した際に行うものだ」
ラミリツが言う
「分かってる けど、それじゃ 間に合わなくなっちゃいそうだったから」
エルムがラミリツを見てから マシーナリー1を見る ラミリツがプラズマセイバーを構える エルムが言う
「慣れたようだな 予想より早かった」
ラミリツが言う
「若いからね?」
エルムが無表情に怒り ラミリツのすぐ横を銃弾が掠める ラミリツが気にせずに言う
「さ、早く終わらせようよ 新しい携帯選ばなきゃいけないんだ」
エルムが言う
「銃弾が掠めるのは 怖いのではなかったのか?」
ラミリツが言う
「最小限で 当たらない様にしてくれてるんでしょ?さっき言ったのに もう忘れちゃった?ふふふっ」
エルムが目を細める ラミリツの頬に銃弾が掠め 頬が薄く切れる ラミリツが呆気に取られた後慌てて言う
「…って 痛っ!?痛いじゃないっ!?当たったよっ!エルム!」
エルムが言う
「慣れ過ぎるのも 良いとは言えない 回避の必要性は認識して置け」
ラミリツが不満げに言う
「とか何とか言って 今のホントは ちょっとミスったんじゃないの?もう歳なんだから あんまギリギリなのとか 止め…」
ラミリツがハッとしてミサイルに気付いて叫ぶ
「わぁあっ!ごめんっ!ごめんってばーっ!」
ラミリツがエルムに飛び付き回避する 後方で爆発が起きている
【 政府警察本部 外 】
ミックワイヤーが建物を出ると 警機が銃を構える ミックワイヤーが驚き目を伏せて言う
「そうか… 政府の長官へ逆らったのだからな 当然か…」
コートハルドが言う
「アロル・メイシュ・ミックワイヤー警察長 貴方を 逮捕します 罪状は…」
ミックワイヤーが言う
「分かっている 政府長長官への謀反 終身刑は勿論 相応の処罰を受けるだろう」
コートハルドが言う
「ミックワイヤー警察長… 何故…」
ミックワイヤーが苦笑して言う
「この一件を凌いだとしても 何も変わりはしない お前たちにも非難が来る 私の罪はどちらであっても変わらなかった だが… せめて 政府警察として 1人でも多くの人々を助けたいと… そうと 願ってしまった」
コートハルドが言葉を飲む ミックワイヤーが警機へ向き両手を出す コートハルドが視線を落とす 隊員が言う
「…隊長」
隊員が気付き空を見上げる 皆が気付き見上げると 国防軍輸送機が着陸し 国防軍11部隊が降り立ってミックワイヤーを守って警機へ武器を向ける ミックワイヤーが驚く 11部隊隊長が言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下より 国防軍総司令官へ 依頼を受けました 我々国防軍11部隊は 政府警察アロル・メイシュ・ミックワイヤー警察長 貴方を 保護します」
ミックワイヤーが驚いて言う
「国防軍が 私をっ!?」
コートハルドが言う
「ミックワイヤー警察長!」
ミックワイヤーがコートハルドを見る 11部隊隊長が言う
「我々国防軍は 武力を用いてでも ミックワイヤー警察長を保護する様 命じられている 諸君が攻撃を行うのならっ!」
ミックワイヤーが言う
「止めてくれ!私は 私の意志で 政府警察機動部隊へ投降を!」
コートハルドが言う
「行って下さいっ 警察長っ」
ミックワイヤーが驚き呆気に取られた後 慌てて言う
「何を言うっ 私を取り逃がしたなどとすればっ お前たちまで!」
コートハルドが11部隊隊長へ言う
「どうか 我々に代わり 我々の警察長をお守りしてくれっ!」
ミックワイヤーが驚く 11部隊隊長が頷いて言う
「引き受けた …行きましょう!ミックワイヤー警察長!」
ミックワイヤーが呆気に取られたまま言う
「お前たち…」
警機隊員たちが言う
「行って下さいっ 警察長!」 「どうか お早くっ!」
ミックワイヤーが11部隊長へ向いて言う
「よろしく頼む 私には まだ やるべき事があるっ」
11部隊長が頷く 国防軍の輸送機が飛び立つ 警機隊員たちが見送り 隊員たちがコートハルドを見る コートハルドが苦笑して言う
「我々にも やるべき事がある …お前たち まだ 私に付いて来てくれるか?」
隊員たちが笑んでから 言う
「我らの隊長へ 敬礼っ!」
隊員たちが敬礼する コートハルドが微笑して頷く
【 サーカス会場 】
ラミリツが言う
「もぉー やだぁ~ 僕疲れたよ エルムー」
エルムが言う
「問題ない お前の出番は完了した」
ラミリツが言う
「え?」
ラミリツが呆気に取られて周囲を見渡す ハイケルが周囲を見渡してからイヤホンを押さえて言う
「サーカス会場内のマシーナリーは制圧した レギスト機動部隊A班からC班 そちらの状況を報告しろ」
イヤホンに隊員Bの声が届く
『こちらA班!会場外のキラーマシーンを全て 排除しましたー!少佐ぁー!』
隊員たちが表情を明るめる ハイケルが言う
「上出来だ 会場外へ退避した観客たちの状況は?」
イヤホンに隊員Fの声が届く
『こちらB班 会場外へ退避した観客は 全員無事です!…しかし』
隊員たちが疑問する ハイケルが言う
「なんだ?」
スフォアの近くに居るレギスト隊員が言う
「…え 動物たちが…?」
スフォアがハッとして走り出す 隊員が気付いて言う
「あっ!スフォア女王!」
隊員の声に皆がスフォアを見る ラミリツが不満げに言う
「今更 避難したって 遅いっつーの!」
エルムが言う
「ラミリツ お前の…」
ラミリツが言う
「分かってる」
ラミリツが走って追い駆ける エルムが立ち上がり 追って歩く ハイケルがその様子を見て言う
「外の様子を確認してくる 国防軍第2機動部隊は 負傷者の救護に当たれ」
近くに居た第2部機動隊員が言う
「了解」
レギスト隊員たちが顔を見合わせた後ハイケルを追う
【 会場外 】
隊員Bが言う
「こいつら 皆… 観客たちの盾になってくれたんだ…」
隊員Aが言う
「動物たちが助けてくれなければ 観客たちの負傷は 免れなかった筈です スフォア女王」
観客たちが遠巻きに見つめている スフォアが倒れている動物に手を触れて言う
「そうですか… 機械の力など借りなくても この子達は 人々を守ってくれたのですね…」
周囲に動物たちの死体とキラーマシーンの残骸が散乱している ラミリツが視線を落とす スフォアが振り返り ラミリツへ微笑して言う
「貴方の仰る通りでした」
ラミリツが視線をそらす その視線の先にキラーマシーンが見え 視線を強める ハイケルと隊員たちがやって来て周囲を見る
【 車内 】
カーTVでサーカス会場の様子が流れている メルフェスが携帯を切り言う
「政府警察機動部隊と連絡が繋がらない… サーカス会場の件と言い …政府警察は無能ばかりかっ!」
メルフェスが表情を顰める 執事と運転手がメルフェスの様子を垣間見て顔を見合わせる メルフェスの携帯が鳴る メルフェスが携帯を見てから出て言う
「残念だが 全て失敗だ 何一つ… いや、君だけは良くやってくれた …うん?…ははっ そうか まだそれが残っていたか っははははっ!」
執事と運転手が顔を見合わせる
【 サーカス会場 舞台裏 】
役人が壁のスイッチを押す 恐竜の檻が開かれ 恐竜が雄叫びを上げる
【 会場外 】
隊員BとAが振り返り 隊員Bが言う
「今の声って… あの?」
ハイケルが振り返るとイヤホンに無線が入る
『こちら第2機動部隊!ステージ裏から きょ、恐竜がっ!うわぁああーっ!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「どうした?恐竜が何だ?」
スフォアが顔を上げる 隊員Cがおびえて言う
「まさかっ あの恐竜が檻から 逃げ出したのかっ!?」
スフォアが言う
「それはありません あの檻はとても強固な物で 恐竜の力を持ってしても 壊される事の無いように出来ています」
隊員Fが言う
「しかし 人がスイッチを押せば 開けられるのですよね?」
隊員Dが言う
「けど、今 それをやる奴なんて…?」
隊員たちがハッとする サーカス会場から恐竜の雄叫びが上がり 会場から恐竜が出てくる 隊員たちが驚き 観客たちが悲鳴を上げて逃げ出す スフォアが驚いて言う
「そんな… どうしてっ」
エルムが言う
「簡単だ 人が檻を開けた」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「だからっ 誰が檻を開けたんだって 問題でしょっ!?」
エルムが言う
「それは今の問題ではない」
ラミリツが言う
「じゃー 今の問題って?」
エルムが言う
「どうやって あの恐竜を始末するか だ」
ラミリツが言う
「あ… そっか マシーナリーは皆 壊しちゃった訳だし …ホント 必要な時に無いんだから」
隊員たちがハイケルへ言う
「少佐っ M90の銃弾は もう残り僅かです」
隊員Bが言う
「俺 M80全部使い切っちゃいましたー!」
隊員Aが言う
「少佐 会場外の担当になった A班からC班は 皆 弾切れです」
ハイケルが言う
「M90であっても 恐竜を射殺するほどの 殺傷力は持ち合わせていない」
エルムが言う
「そんな事はない 数を合わせれば 恐竜の心臓部まで届かせられる」
ハイケルが言う
「ジャストショットは3発が限界だ そこまでは届かない」
エルムが言う
「低能だな 私であれば5発は可能だった」
ハイケルがムッとして言う
「これから追い付く」
エルムが言う
「無理だな」
ハイケルが言う
「過去形で言っていると言う事は 現状は何発可能なんだ?」
エルムが言う
「恐らく4発だ」
ハイケルが言う
「では 俺と合同で行えば 5発を越える それで届かせる事が可能だ」
エルムが言う
「それで正しい」
スフォアが言う
「お待ち下さいっ 私は あの子を眠らせる事が出来ます きっと あの子は今 仲間たちの亡骸を前に 怯えているだけなのですっ 一度眠らせる事が出来れば その間に人を集め 檻を用意させる事が出来ます どうかっ」
隊員たちが表情を明るめる エルムが言う
「容認出来ない アールスローン国民を守る為 我々は 最も確実な方法を選択する」
エルムβがM90を構える 隊員たちがハイケルを見る ハイケルがエルムを見る スフォアがハイケルへ向いて言う
「ハイケル少佐…っ」
ハイケルがスフォアを見る エルムがハイケルを見て言う
「準備を急げ 間もなく奴が射程内に入る 確実な瞬間を見逃すな」
ハイケルが間を置いて言う
「…可能性があるのなら 試してみる価値はある」
隊員たちが喜ぶ エルムが視線を細める スフォアが微笑し頷くと恐竜へ向かって走る エルムがエルムβからM90を取り構える ハイケルが視線を向けるとエルムが言う
「失敗に備える必要がある 貴様も同じだ 構えろ」
ハイケルが視線を強めM90を手に取る スフォアがヴァイオリンを構え 恐竜を見上げて言う
「お願い 落ち着いて もう何も恐ろしくは無いのよ」
スフォアが一度息を吸い ヴァイオリンを弾き始める 恐竜がスフォアの前まで来て立ち止まる エルムが視線を細める ハイケルがM90を構えている 恐竜が周囲を見渡し雄叫びを上げる スフォアが一瞬怯え弓が止まる スフォアがハッとした瞬間 恐竜が吼え尻尾を振りかざすと周囲の木々に当たり 枝がスフォアの手に当たる スフォアが悲鳴を上げる
「キャァ!」
スフォアが腰を打ち手を押さえた状態で ヴァイオリンが地面に落ちる 恐竜が吼える エルムが視線を強めM90を4連射する ハイケルが視線を強める スフォアが叫ぶ
「止めてぇーっ!」
銃弾が4発打ち込まれると 恐竜が悲鳴を上げ暴れ出す エルムがハイケルへ視線を向けて言う
「何をしている」
ハイケルが言う
「…すまん」
エルムがM90を手放して言う
「流石は欠陥品だ」
ハイケルがエルムを見て言う
「何の話だ」
エルムが言う
「黙れ」
エルムが背負っていた包みを手にとって 封を外す ハイケルが呆気に取られて言う
「MT90… それを使う気か?死ぬぞ」
エルムがハイケルを見て言う
「この責任を取って お前が使うか?」
ハイケルが表情を顰めて言う
「生憎 命は大切にしたい」
エルムが言う
「愚かだな」
ハイケルが言う
「お前と一緒にするな」
エルムがエルムβへ持たせて言う
「マシーナリー以外の物に使用する羽目になるとは 不本意だ」
ハイケルが視線をそらす 視線の先にヴァイオリンが見える ハイケルが言う
「ならば それは使うな 俺は 俺のやり方で 責任を取る」
エルムが言う
「何だと?」
ハイケルが向かう スフォアが恐竜へ言う
「ソーファラーっ ごめんなさい 痛かったでしょう でも お願いっ 貴方が暴れてしまっては また 私たちはっ」
ハイケルがスフォアの横に立つ スフォアがハイケルへ向いて言う
「ごめんなさい ハイケル少佐…っ」
ハイケルがヴァイオリンを構える スフォアが驚く ハイケルがヴァイオリンを弾き始める スフォアが呆気に取られた後 恐竜を見上げる 恐竜が怯えている スフォアが気付き微笑し 恐竜に手を差し伸べる 恐竜がスフォアの手に顔をすり寄せゆっくりと眠りに落ちる スフォアが涙を流し恐竜に触れる ハイケルがヴァイオリンを終える 隊員たちが顔を見合わせ静かに喜ぶ ラミリツが呆気に取られてからエルムを見る エルムβがMT90を解除する エルムが言う
「その甘さが 欠陥だ いつか敗北する」
ハイケルがエルムへ向いて言う
「俺は お前とは違う 任務さえ達成出来れば それで良いんだ」
エルムが言う
「出来るならな?」
エルムが立ち去る ハイケルがエルムを見る
【 カルメス邸 】
TVにニュースが流れている キャスターが言う
『死者19名負傷者131名となった この大規模な事故は その後の警察の調べにより 何者かが 意図的に引き起こした事件である可能性があるとの事で 現在も政府警察と国防軍が 現場の検証を行っています また、この事故の中 会場に持ち込まれ使用された 政府警察機動部隊の新勢力 マシーナリーの使用に対しては 先日の事故を理由に凍結中であったものの 必要と判断され一時的に凍結を解除使用した との政府の発表がありました しかし、この発表者の名前は公表されておらず 一部関係者の話によると メルフェス・ラドム・カルメス長官の 独断であったとの…』
マリが表情を落とし視線を下げる メイドが心配して言う
「奥様」
マリがハッとして言う
「は、はいっ」
メイドが苦笑して言う
「どうか お気を確かに …もうすぐ 旦那様がお戻りになりますので」
マリが苦笑して言う
「はい… 有難う御座います そうですね しっかりしていないと 政府長官の妻として …みすぼらしい って言われちゃいますね」
マリが苦笑する メイドが微笑して言う
「奥様は とても素敵な方であると 私どもは思っていますよ」
マリが驚き慌てて言う
「えっ そ、そんなっ 私が 素敵だなんて…っ」
メイドが軽く笑って言う
「それに とても 愛らしくて…」
マリが驚き頬を染めて言う
「えっ?」
メイドがハッとして言う
「あっ し、失礼致しました 奥様へ対しなんと…っ」
マリが呆気に取られた後苦笑し 微笑して言う
「いいえ 有難う御座います!」
メイドが呆気に取られ微笑して言う
「それでは 私は旦那様のお迎えへ向かいますので」
マリが言う
「はいっ 私も心の準備をしておきますね!」
メイドが微笑し礼をして立ち去る
【 マスターの店 】
ハイケルが言う
「ヴォール・ラゼル・ハブロス邸 襲撃作戦を近々行うぞ お前へ依頼した 作戦の製作はどうなっている?」
マスターが表情を歪めて言う
「言うと思った…」
ハイケルが言う
「当然だ サーカス会場での事件は お前もメディアを通じ確認していただろう あの事故の最中 逃げ惑う人々の中 唯一 あの客席で寛いでいた人物 奴こそが 次なる作戦のターゲット 本物のエルム・ヴォール・ラゼル少佐だ」
マスターが苦笑し皿を拭きながら言う
「…ああ」
TVでニュースが流れている キャスターが言う
『…そして、こちらは未確認の情報となりますが この事故に関係する重要人物として 政府警察の警察長が 国防軍に保護されているとの情報が…』
マスターがTVを見る ハイケルが言う
「奴と戦うとなれば 相応の武器の使用は不可欠と認識している だが、その奴もまた M90の銃弾に対しては 貴重な銃弾だ と発言していた事も考慮すると マシーナリー以外の戦いへ それらの武器、銃弾は 使用しないものと推測される 従って こちらの武器も」
TVでニュースが流れている キャスターが言う
『尚、現在 政府警察本部周囲において 国民による大規模なデモンストレーションが予定されているとの情報もあり 政府は厳重な警戒を用いる様指示をしていると』
ハイケルが言う
「…だが、今回は 俺個人の作戦と取られるだろう よって国防軍も この作戦に対する武器弾薬の使用を 容認するとは思われない 従ってその費用は…」
マスターが言う
「政府警察本部周囲の警戒に 政府が指示を出した …か となれば 現行の この指示は」
ハイケルが一瞬呆気に取られた後言う
「政府警察は現在 警察長が不在だ その政府警察へ指示を出せるのは 政府の長である メルフェス・ラドム・カルメス長官であると推測される …で、先ほどの 費用の件なのだが」
マスターが言う
「その長官が指示を出すって事は 場合によっては マシーナリーを使用するって可能性もあるって訳だ」
ハイケルが間を置いて言う
「…警察本部の周囲は ビジネス街ではあっても 昼夜を問わず 多くの国民が在する場所だ デモの参加者のみに関わらず 全ての人間へ危害を加える マシーナリーなど使用出来る筈が無い …で、費用を」
マスターが怒りを押し殺して言う
「だが、メルフェス・ラドム・カルメス長官は その国民が多く居ると分かっていた サーカス会場へマシーナリーを最初から持ち込んでいたっ つまり これは 必要に応じて凍結を解除したんじゃなく むしろ 凍結を解除する事を前提に持ち込んだ …いや、そもそも マシーナリーの使用を容認させる為に 事件を引き起こしたっ」
ハイケルが呆気に取られてから 僅かに不満な表情をして言う
「…確かに その可能性は否定出来ないが その奴とてアールスローンの国民だ そして アールスローンの国民を守る政府の長官 そいつが 警察本部周囲で行われる 国民のデモを制圧するなどと言う事の為に …アールスローンの国民を攻撃する為に マシーナリーを使用するなど」
マスターが怒って言う
「ならっ あのサーカス会場の様子は何だっ!数百人の観客が居ると分かっている場所へ マシーナリーを持ち込む事自体 アールスローンの国民を 標的としているとしか 考えられないっ!」
マスターがテーブルを叩く ハイケルが呆気に取られる マスターがハッとして表情を落として言う
「…悪い ちょっと 考え事をしてた」
ハイケルが言う
「マリーニ・アントワネット・ライネミア・アーミレイテス」
マスターが目を見開く ハイケルが言う
「…いや 彼女は結婚をした そうとなれば 姓は変えられた 現在の彼女の呼称は マリーニ・アントワネット・ライネミア・カルメス」
マスターが怒って言う
「黙れっ」
ハイケルが言う
「お前に怒る資格は無い お前は彼女がその様になる事を 容認した」
マスターが言う
「容認したんじゃないっ!それが彼女の為だと!…大体 お前に何が分かるって言うんだっ!お前はただ 戦うだけの…っ!」
マスターがハッとする ハイケルが言う
「俺が 何だ?」
マスターが一歩下がって視線を落として言う
「何でも ねぇよ…」
マスターが息を吐く ハイケルが立ち上がって言う
「政府の事に 国防軍が動く事は 推奨されない まして 政府警察本部の周囲で行われる 国民のデモに対し 例え それが どれ程大規模になろうと 国防軍が動く事は 許される事ではないんだ …今日の所は退散する」
ハイケルが出口へ向かう マスターが言う
「ヴォール・ラゼル・ハブロス邸 襲撃作戦の話をしてやれなくて 悪かったよ …ハイケル」
ハイケルが立ち止まって言う
「ここは喫茶店だ 雑談の他に 部隊作戦を行う場所ではなかった その点においては お前の方が正しい 気にするな」
マスターが苦笑する ハイケルが言う
「但し」
マスターが疑問してハイケルを見る ハイケルが言う
「そうであるなら 友人として または 客として来た俺に コーヒーの1つも出さない 喫茶店のマスターは失格だ 改善しろ」
ハイケルがドアを開ける マスターが呆気に取られ ハイケルの座っていた席を見る テーブルには何も置かれていない ドアの閉まる音がしてマスターが顔を向ける 出入り口には誰もいない マスターが苦笑して言う
「最初から 俺が別の事を考えてるって 分かっていて 襲撃作戦の話をしていたのか… それなのに 俺は…」
マスターの脳裏に 記憶が蘇る
『容認したんじゃないっ!それが彼女の為だと!…大体 お前に何が分かるって言うんだっ!お前はただ 戦うだけの…っ!』
マスターが肩の力を抜いて言う
「取り返しの付かない事を 言う所だった… …改善 しないとな?」
マスターが苦笑しコーヒーを淹れる
【 警察本部 周囲 】
国民の大規模デモが行われている
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちがTVを見ている TVに映像が映っていてレポーターが言う
『こちらは 警察本部前です!ご覧の通り 今朝早くから行われている 国民によるデモは時間を追うごとに人が増え 規模は大きくなる一方です!しかし、この事態に対し 政府からは今の所 一切のコメントは出されていません』
隊員Bが言う
「アッちゃん アッちゃんー」
隊員Aが言う
「んー?何だよ バイちゃん」
隊員Bが言う
「こういう時って 俺たちの出番って あるのかなぁー?デモって言っても 一定の大きさを超えると 事件として扱われる事もあるって 少佐言ってたしー?」
隊員Aが言う
「規模だけじゃなくて デモのせいで 危険が伴われると判断された時なんかも 事件として扱われるけど …どちらにしても 元々 事件を扱うのは政府警察で その政府警察の力を超える様な時に 国防軍は委任を受けて動くんだ だから デモが事件として扱われても 最初に動くのは やっぱり政府警察だよ バイちゃん」
隊員Bが言う
「へぇー なるほどー アッちゃん やっぱ 物知りだねー!」
隊員Aが苦笑して言う
「俺が物知りって言うか …この辺りの事は 国防軍入隊試験の時に 出されただろう?」
隊員Bが疑問して言う
「えー?そうだっけ?」
隊員Cが言う
「そうは言っても 今回は分からないぜ?」
隊員AとBがCへ向き 隊員Bが言う
「分からないってー?それって どう言う意味ー?サッちゃんー」
隊員Cが衝撃を受け顔を顰めて言う
「サッちゃんは 止めろってっ」
隊員Bが言う
「えー?」
隊員Aが言う
「それより 何で分からないんだよ?サキ」
隊員Bが隊員Aを見る 隊員Cが言う
「このままデモが大規模になったり 暴力的になったりして 事件として扱われるようになったら 政府警察は法的に 武力を行使しても良いって事になる そうしたら もしかしたら…」
隊員Fが反応して言う
「まさか 政府警察がデモの制圧に マシーナリーを使うって言うのかっ?」
隊員Bが苦笑して言う
「まっさかー!いくら何でも そんな事にマシーナリーを使ったりしたら それこそ 政府警察や政府が アールスローンの敵になっちゃうよー?考え過ぎだよー!あははっ」
隊員Cが苦笑して言う
「うん… そうだなっ いくら何でも それはねーか?」
隊員たちが苦笑する 隊員Aが言う
「あ、そろそろ 午後の訓練開始時間だぜ?」
隊員Fが言う
「うん それじゃ皆 それぞれの訓練所へ向かおう」
隊員たちが頷き場を後にする
【 政府本部 長官室 】
メルフェスが言う
「ミックワイヤー警察長を取り逃がしたそうだな?」
コートハルドが言う
「いえ 自分の判断で国防軍へ 警察長の保護を 委任致しました」
メルフェスが視線を細めて言う
「保護を?…ふっ 何を言っている?私は君へ 政府に謀反を起こした 不届き者を捕らえるようにと命じた …よもや 言葉が通じなかった訳では有るまい?…何故 そのような 勝手な事をした?」
コートハルドが言う
「警察長をお守りできるのは 我々ではなく 現在攻長閣下の居られる 国防軍であると 判断を致しました」
メルフェスが目を細め言う
「政府の象徴である あの攻長が国防軍に保護されていると言うだけでも 政府の信用を失墜させていると言うものっ …その国防軍を 政府警察が頼ったと言うのかっ!愚か者めっ!」
メルフェスが机を叩く コートハルドが無反応にメルフェスを見据えている メルフェスが表情を顰めて言う
「これにより君自身が どの様な処罰を受ける事になるのか 分かっているのだろうな?」
コートハルドが言う
「どの様な処罰も 受け入れる覚悟にて 参りました」
メルフェスが言う
「言うまでも無いが 君は 解雇だ …だが、それだけでは済まさん 君のお陰で 捕らえるべき罪人であった 警察長を 国防軍に奪われたのだからな?…よって 君には 相応の処罰を受けてもらう」
コートハルドが目を細める メルフェスが視線を向けると メルフェスの用心棒たちが動く コートハルドが視線を向ける
【 マスターの店 】
マスターがコーヒーを淹れている TVでニュースが流れている キャスターが言う
『本日早朝から行われている 警察本部前における 国民によるデモは 時間を追う毎にその規模が広がり 先ほど午後1時の時点を持って この大規模デモは 事件として取り扱われる事になりました これにより 警察は 法の下 武力を用いての鎮圧を許可された事になり 警察はデモを行っている国民へ対し 対人武器を使用しての…』
奥の席で軽食を取っている客がTVを見て言う
「いくら法律上事件として扱われるって言ったって どうせ大した武力は使われないだろう デモの抑制所か 返って 悪化になるんじゃないのか?」
「とは言え 警察が国民に対して 本物の武器を使うんだろう?本来 陛下の脇に仕える 防長、攻長閣下たちが 本物の武器防具を持たない事だって アールスローンの平和を象徴していたんだ それが最近じゃ お二人とも本物の武器防具を所持しているって言うし …アールスローンは 今 平和じゃないのかねぇ」
マスターが視線を向ける 客が言う
「それ所か ひょっとすると 警察は このデモの制圧に あのマシーナリーを使うんじゃないか!?」
「おいおいっ 勘弁してくれ 警察本部の近くには うちの本社があるんだ デモのせいで被害を受けるだなんて 御免だよ」
客たちが笑う マスターが視線をそらしてから 溜息を付いて言う
「エルム少佐の言葉が本当なら アールスローンは国内所か 国外との戦い… 帝国との戦争になろうとしてる …平和なのは 国民たちの頭の中だけ なのかもしれないな」
マスターがコーヒーの味見をして言う
「ん?…う~ん ちょっと苦いか?あいつはお子様だから もう少し苦味は押さえてやら無いと この前の詫びには ならないかねぇ?」
マスターがコーヒーを置いて 棚を探る
【 政府本部 長官室 】
用心棒たちが居る メルフェスが電話をしていて言う
「デモは一定の規模を超えた 事件となった以上 政府警察は武力を用いる事を容認されている …構わん マシーナリーを投入しろ」
メルフェスが苦笑して言う
「大事の前の小事だ 私のやり方に逆らう者には 相応の報いを与えると言う事を 分からせてやるのにも丁度良い …うん?止める方法?」
メルフェスが軽く笑って言う
「っははは …そうだな その時には 国防軍にでも委任すれば良いだろう?彼らなら 喜んで戦いに来てくれる 国防軍… いや レギスト機動部隊 奴らこそ アールスローンの力 ペジテの姫の 戦いの兵士なのだからな!?っははは… いや、何でも無い 先ほどその様な情報を入手したものでね」
メルフェスが言う
「…と、それから 分かっていると思うが 先ほど解雇した 政府警察機動部隊の元隊長… 彼の様な 愚かな事は くれぐれも考えない事だ …どうなるのかは 検討が付くだろう?分からないとでも言うのなら 収容施設の地下3階へでも 行ってみると良い 今朝方まで 君が敬礼をしていた 元隊長が どうなったのか… …っククク そうか 君も中々物好きだな 隊長の任を引き継いだ その挨拶がしたいとでも言うのなら 行ってみるが良い その前に マシーナリーの起動を忘れてくれるな?」
メルフェスが電話を切ると立ち上がり言う
「政府警察本部前にマシーナリーを入れるぞ ここへも被害が及ぶ可能性がある 車を用意しろ」
用心棒が言う
「はい」
用心棒の1人が先行して部屋を出て行く メルフェスが歩き 用心棒たちが続く