表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

アールスローン戦記6

隊員Bが言う

「って感じー!だから 少佐って 普段固い感じだけど 本当は結構やんちゃで面白いんだよ!アッちゃんも今度話してみなよー!」

隊員Aが言う

「へぇ~ そっかぁ …そう言われて見れば 少佐は任務中にも バイちゃんに色んな技教えてるよなぁ… あんな感じなのか」

隊員Bが言う

「そうそうー!だから俺 任務行くの楽しみだもんっ!少佐スッゲー強いし スッゲー面白いから!」

隊員Aが苦笑して言う

「でもって スッゲー技教えてもらえるもんなー?あんなの シャワーのお湯の出し方と違って 真似できねーってのに」

隊員Bが言う

「けど、今日教わった ビフォアーバーストショットは 俺 ちょっと出来そうな気がする!少佐にも お前にはこっちが良いって言われたし!」

隊員Aが言う

「少佐には出来ても バイちゃんには… いや、俺らがやるには まだまだ力不足じゃないかなぁ?少佐は 若いけど やっぱ14の時から… あれ?」

隊員Bが疑問して言う

「どうかしたー?アッちゃん?」

隊員Aが考えながら言う

「国防軍の入隊って16歳からだよな?」

隊員Bが呆気に取られて言う

「あー… そうだねー?でも 少佐14の時から あのシャワールーム使ってるって言ってたよ?」

隊員Aが言う

「うーん… 何か特別に入ったのかな…?バイちゃん 今度少佐に会ったら 聞いてみてよ?」

隊員Bが言う

「うん!聞いてみる!…て言うか アッちゃんも話せば良いじゃんー?」

隊員Aが言う

「俺はどっちかって行ったら シャワーは家帰ってから 浴びる派なんだよ …だから」

隊員Bが言う

「あー!アッちゃん… やっぱり 少佐が怖いんだー!にひひっ!」

隊員Aが衝撃を受け焦って言う

「そ、そんなんじゃっ!」

隊員Bが笑う

「アッちゃんの 怖がりー にひひっ」

隊員Aが怒って言う

「そんなんじゃないって!」


【 マスターの店 】


マスターが言う

「もちろん知ってるぜ?エルム少佐だろ?エルム・ヴォール・ラゼル少佐」

ハイケルが驚いて テーブルを叩いて言う

「知っていたのかっ!?何故 今まで言わなかったっ!?」

軍曹が困っている マスターが苦笑して言う

「何故も何も… エルム少佐は 30年以上前に国防軍を脱退されてるし 別に 話す必要もないだろう?」

ハイケルが言う

「俺よりも強かったぞ?」

軍曹が衝撃を受ける マスターがコーヒーを淹れながら言う

「ああ… そうかもな?」

ハイケルが言う

「”そうかもな?” どう言う意味だ?」

マスターがコーヒーを出して言う

「お前 何でレーベット大佐が お前をレギストへ入れたか 知ってるのか?」

ハイケルが一瞬呆気に取られ考えて言う

「…いや?俺は 俺の力を 大佐が ご考慮されたのだと」

マスターが微笑して言う

「その考慮の元になったのが エルム少佐だ レーベット大佐は お前がエルム少佐に似てるって事で 入隊資格の得られる16歳より前倒して お前を国防軍に入れたんだよ」

ハイケルが言う

「…知らなかった」

マスターが苦笑して言う

「まぁ 知ったって 俺とお前が入った時には エルム少佐は居なかったんだし 気にする事じゃないだろう?」

ハイケルがコーヒーを飲んでから言う

「…そう かもな」

軍曹がマスターとハイケルを見てからコーヒーを飲む マスターが言う

「しかし、その… とっくにレギストをご引退された エルム少佐に勝てなかったとはなぁ?ハイケル少佐の 最強説は 何処に行っちまったんだ?」

軍曹が衝撃を受け苦笑する ハイケルが言う

「根本的に 何かが違っていた… まったく手も足も出なかった やはり 悪魔の兵士は 人ではないのかもしれないな」

軍曹が反応して言う

「え?いえっ そんなっ!少佐は… 確かに前半は押されていた感がありましたが 後半は むしろ エルム少佐の方が 防戦を強いられていたかと…?少佐が失神してしまうまでは かなり良い状態に有ったのでは?と、自分は思うのでありますが?」

マスターが言う

「失神?」

ハイケルが衝撃を受け 視線をそらして言う

「…気付いたら 水浸しにされて床に寝ていたんだ」

マスターが驚く 軍曹が衝撃を受け慌てて言う

「あっ あの水は その… エルム少佐が 少佐の稼動限界を冷まそうと… も、申し訳ありませんでしたぁ 少佐ぁ!自分も 精一杯エムル少佐を 止めようとしたのでは ありますがっ 元々エルム少佐は 祖父上のご命令でなければ ご了承下さらない お方でありまして…」

マスターが噴出して笑う 軍曹が衝撃を受ける ハイケルがムッとしてコーヒーを叩き置く マスターが笑いを堪えて言う

「あーはははっ!戦って失神させられた上に 水を掛けられて起こされたのかぁっ 傑作だなぁ?ハイケル?プクククッ!」

軍曹が慌てて言う

「マ、マスターっ」

ハイケルが言う

「相手は ペジテの姫に 悪魔から与えられた 攻撃の兵士だぞっ!勝てる訳が無いだろうっ!?」

マスターが苦笑して言う

「…そりゃ そーかもな?」

ハイケルが顔を背けて言う

「ふんっ」

ハイケルがコーヒーを飲み干すと立ち上がって言う

「俺はレギスト機動部隊の兵士であって 悪魔の兵士でも それを倒す 王子の兵士でもないんだ エムル少佐に敵わなくとも 問題は無いっ」

ハイケルが歩き始める マスターが苦笑して言う

「ああ、それは問題無いね お疲れさん ハイケル」

ハイケルが店を出て行く 軍曹が呆気に取られた後 慌てて言う

「ああっ では 自分もそろそろ…っ」

マスターが言う

「アーヴィン君」

軍曹が疑問して言う

「は?」

マスターが言う

「1つ聞きたいんだが …そのエムル少佐は ハイケルと似ているか?」

軍曹が驚いて言う

「…え?えっと…それは?」

マスターが言う

「外見とか… その他 何でも良い 君はどう思う?」

軍曹が視線をそらして言う

「えーと…?外見は… 似ては いらっしゃらないかと…?」

マスターが言う

「そっか…」

軍曹がマスターを見る マスターが微笑して言う

「俺は… レーベット大佐から ハイケルをレギストへ入れた その理由を聞いた時から …そのエムル少佐こそ あいつの本当の家族なんじゃないか?って 思ってたんだ」

軍曹が驚く マスターが苦笑して言う

「それに もし そうだとしたら ハイケルは 現代の 本物の攻撃の兵士 攻長なんじゃないか… ってな?けど…」

軍曹がマスターを見る マスターが一息吐き ハイケルのコーヒーを片付けつつ言う

「まったく手も足も出なかった とはね?やっぱり 違ったかぁ…?それに 2人を知っている君から見て エムル少佐とハイケルは似て無いって言うなら 違うよな?」

軍曹が視線を落として考えながら言う

「は… はぁ…?そう… ですね?自分はその… あまりそう言った事は 分からないのでありますが… エムル少佐は ずっと祖父上の… あっ!自分が!物心付いた頃からの 話ではありますが …エムル少佐は 休暇なども まったく取られないお方でして …それこそ 毎日 一日中 祖父上の屋敷にいらっしゃるので 少佐にも言いましたが エムル少佐に ご子息などは 居られないかと…?」

マスターが言う

「うん… …いや、この位にしておこう」

軍曹が疑問して言う

「は?」

マスターが微笑して言う

「これはハイケルの問題だからな 俺がこれ以上深入りして 良いもんじゃない筈だ …もし あいつが調べたいって言うのなら 協力するが 勝手な詮索をして あいつとの絆を断ちたくはないんだ」

軍曹が微笑して言う

「はっ!マスターは 少佐の最もご信頼の寄せられる方でありますので そちらで宜しいかとっ!」

マスターが苦笑して言う

「そうだよな?ははっ 流石 年長者の アーヴィン君だ」

軍曹が衝撃を受けて言う

「はぇっ!?じ、自分が 年長者っ!?」

マスターが疑問して言う

「あら?言ってなかったっけ?俺は ハイケルと2つ違いだって」

軍曹が慌てて言う

「そ、それは 伺っておりましたがっ!じ、自分はその… 少佐の御年齢は 存じておりませんでしてっ」

マスターが苦笑して言う

「なんだ そうだったの?」


【 ハブロス家 】


軍曹が屋敷に入ってくる 使用人たちが頭を下げる中 執事が言う

「お帰りなさいませ アーヴァイン様 お食事の用意が整っておりますが 如何に御座いましょう?」

軍曹が歩きながら言う

「む?ああ、いつもの通り そのつもりだが?何故 わざわざ聞くのだ?」

執事が微笑して言う

「はい それでは そちらの様に 私からお伝えを致して置きますので どうか お着替えが終わりましたら お早めに 御越し下さいませ」

軍曹が言う

「うむ… 分かった」

軍曹が部屋へ入る 執事が去って行く


軍曹が着替えを終え歩いている 食堂の前に執事が居て礼をする 軍曹が言う

「なんだ?こんな時間に兄貴でも居るのか?」

扉が開けられると 室内からラゼルが言う

「お帰り アーヴィン」

軍曹が衝撃を受け驚いて言う

「お、祖父上っ!?」

ラゼルの前の席でエルムが食事を取っていて言う

「何を驚いている」

軍曹が衝撃を受け慌てて言う

「…と エ、エルム少佐…っ あ… ああっ い、いえっ し、失礼致しましたっ!」

軍曹が思わず敬礼していてハッとする エルムが食事を続ける ラゼルが微笑して言う

「ほっほっほ… そう言えば 今日は初めて お前のレギスト姿を目にしたな?アーヴィン」

軍曹が呆気に取られた後苦笑して言う

「は、はい!祖父上!」

エルムが言う

「君に似ていた」

軍曹があっけに取られる ラゼルが軽く笑って言う

「それは当然です 少佐 アーヴィンは 私の孫なのですから」

エルムが言う

「姿だけではなく 言動まで似るものなのか?」

ラゼルが笑って言う

「ほっほっほ… 同じ血が流れておりますので」

エルムが一瞬間を置いてから視線をそらして言う

「…ふんっ」

ラゼルが笑う 軍曹が呆気に取られている ラゼルが気付いて言う

「どうした?アーヴィン お前も座りなさい」

軍曹が慌てて言う

「は、はっ!それではっ!ご一緒させて頂きますっ!」

軍曹が席へ向かう


【 ハイケルの部屋 】


真っ暗意部屋の中 ハイケルがベッドに寝ている ノートPCから繋がったコードが付いたゴーグルを掛け ハイケルがゴーグルに映る映像を見ているが 考え事をしている 脳裏にエルムとの格闘が思い出されている ハイケルが意識を失うまでの格闘を思い出し終えると マスターの店での光景が蘇る


ハイケルがコーヒーを飲み干すと立ち上がって言う

『俺はレギスト機動部隊の兵士であって 悪魔の兵士でも それを倒す 王子の兵士でもないんだ エムル少佐に敵わなくとも 問題は無いっ』


ハイケルが怒りを押し殺し壁を殴り付ける 間を置いて言う

「…クソッ」

ハイケルが手を握り締める


【 国防軍レギスト駐屯地 正門 】


車が到着し 窓を開けると軍曹が警備兵へ向く 警備兵が敬礼をして相方へ合図を送る 相方が門を開ける 軍曹が敬礼して言う

「早朝から お疲れである!」

警備兵が敬礼を返して言う

「お早う御座いますっ!アーヴァイン軍曹っ!どうぞお通り下さいっ!」

軍曹が言う

「うむ!…あ、すまんが 少佐はもういらしているか 分かるだろうか?」

警備兵が言う

「はっ!ハイケル少佐でしたら 既にご出隊されております!」

軍曹が言う

「そうか!伝達を感謝する!」

警備兵が敬礼する 軍曹が車を出す


【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】


ハイケルがノートPCを見ている ドアがノックされ 軍曹の声が届く

「アーヴァイン軍曹でありますっ!」

ハイケルが視線を向けないまま言う

「入れ」

軍曹が言ってドアを開ける

「はっ!入りますっ!」

軍曹が入室して敬礼する ハイケルが言う

「早いな どうかしたのか?」

軍曹が言う

「はっ 実は… 少佐にお伝えする様にと 伝言をお預かり致しまして…」

ハイケルが言う

「誰からだ?」

軍曹が間を置いて言う

「…その エルム少佐から なのでありますが…」

ハイケルが一瞬驚き 表情を険しくしてから軍曹へ視線を向ける 軍曹がためらって言う

「あぁ…っ し、しかしっ あのっ …自分と 致しましては…っ」

ハイケルが言う

「私宛ての伝言なのだろう?ならば君は ただ それを伝えれば良いだけだ 何を躊躇う?」

軍曹が困って言う

「うぅう~… そ、それがっ と、とてもっ 自分には… 口に致し難いっ 御言葉で ありまして…」

ハイケルが軍曹を見つめて言う

「聞こう 心使いは不要だ 私はエルム少佐に敗北した それなりの覚悟を持って 聞くつもりだ」

軍曹が言い辛そうに言う

「…で …ではっ」


【 回想 】


エルムがラゼルに続き 食堂を立ち去ろうとして 立ち止まり言う

『ヴォール・アーヴァイン・防長閣下』

軍曹が衝撃を受けて言う

『は、はっ!エルム少佐っ』

エルムが言う

『現国防軍レギスト機動部隊の隊長は お前の上官だったな』

軍曹が言う

『はっ!自分ら レギスト機動部隊の隊長は ハイケル少佐でありますっ!』

ラゼルが立ち止まりエルムへ向く エルムが軍曹へ顔だけ向けて言う

『では 伝えろ』

軍曹が言う

『は…?』

エルムが向き直り 無表情に言う

『”お前はレギスト機動部隊の隊長として 失格だ 現状を続けるのであれば レギストを去れ”…以上だ』

エルムが立ち去る ラゼルが苦笑し 軍曹を見てから立ち去る 軍曹が驚き呆気に取られている


【 回想終了 】


【 マスターの店 】


軍曹が表情を落として言う

「やはり …自分は お伝えをしない方が 宜しかったので ありましょうか?」

マスターが皿を拭きながら言う

「う~ん…」

軍曹が言う

「少佐は 一言 ”伝達を感謝する”と 仰っておられましたが…」

マスターが言う

「うん…」

マスターが皿を置き 別の皿を拭き始める 軍曹が間を置いて言う

「あ… あのぉ… マスター?」

マスターが気付き苦笑して言う

「ん?あぁ 悪い悪い アーヴィン君が伝言を伝えた事は 良かったと思うぜ?そう言う所で 変に気を使うと 後で面倒な事になったりするからな?」

軍曹がホッとして言う

「有難う御座います マスターにそう言って頂けると 自分は とても救われるであります」

軍曹がコーヒーを飲んで一息吐く マスターが微笑して言う

「俺は、エルム少佐の その言葉の方を考えていたんだ」

軍曹がマスターを見て言う

「はい、伝言を預かった自分も 納得が行きませんでして 少佐がレギストの隊長として 素晴らしい事は 自分は良く知っているのでありますっ 隊員のあいつらだって 少佐の事は 自分たちの良き指揮官として とても頼りに思っている筈であります ですから 自分は… やはり あの時のエルム少佐と少佐との一騎打ちが原因なのかと」

マスターが言う

「うん… エルム少佐は 元国防軍レギスト機動部隊の隊長だ それが、現隊長であるハイケルへ助言をしたと考えて エルム少佐とハイケルとの接点は 今の所それしかない訳だし …それとも?アーヴィン君は 普段から エルム少佐とハイケルの話をしていたりするのか?」

軍曹が言う

「いえっ!自分は…っ正直言いますと エルム少佐には 幼少の頃から近寄り難い認識が 強くありまして… 会話らしい会話と言う物は 余り…」

マスターが言う

「近寄り難いか …まるでハイケルみたいだな?」

軍曹が気付き不満そうに言う

「はぇ?…いえっ!少佐にはっ その様な人を寄せ付けない感覚は まったく無いでありますっ!」

マスターが呆気に取られて言う

「へ?」

軍曹が疑問する マスターが気を取り直して言う

「おいおいっ 冗談だろう?あいつの人を寄せ付けないオーラは それこそ天性の物って言うか… 子供の頃から全開で お陰で俺だって 孤児院に居た頃は あいつとは ろくに口を利いた事無かったんだぜ?」

軍曹が言う

「はぇ?そうでありましょうか?自分には… 分からないのでありますが?」

マスターが言う

「アーヴィン君だって あいつと話すより 俺と話す方が 話し易いだろう?だから 今日だって」

軍曹が言う

「ああっ いえっ その… マスターの場合は 自分にも分かり易く お話を頂けるので …失礼ながら 自分はそれを頼りに」

マスターが苦笑して言う

「ハイケルだって 特に難しい話はしないだろう?ただ、無愛想だから その辺りで話し辛いってのは あるかもしれないが」

軍曹が苦笑して言う

「そ、その~… 少佐の場合は …いえ、ラミリツ攻長もそうなのでありますが 何と言いますか 自分が相談をするのではなく 受ける側であらなければ ならない様な その様な感じがしてしまうもので…」

マスターが一瞬呆気に取られた後考える 軍曹が言う

「ああ!そ、それで 自分が思います 人を寄せ付けないオーラと言うのは まさに エルム少佐の様な感覚ではないかと!」

マスターが言う

「うーん… そうかぁ …よし、それじゃ 伝言の方も気になるからな?そうとなれば 元情報部員の俺は まずは 大元となるエルム少佐の事を調べ上げるか」

マスターがPCへ向かいキーボードを操作する 軍曹が思い出して言う

「あ、マスター 実は エルム少佐のデータは」

マスターが言う

「もちろん 知ってる 国防軍のデータベースからは 全て抹消されちまってるって言うんだろ?」

軍曹が言う

「はい 流石マスター 良くご存知で」

マスターが言う

「ああ …まったく 残念だねぇ~?噂にしか聞けないが 歴代のレギスト機動部隊隊長として1、2を誇ったって話だ レーベット大佐からその名前を聞いた頃には もう調べられなかったが …けど、こんな時は アナログにだって調べ上げるのが 伝説のマーガレット中佐だ ってな~?」

PCモニターに名簿一覧が出る 軍曹が疑問して言う

「そちらは… 国防軍の名簿でありますね?一般軍階の隊員から… のわっ!?マ、マスターっ!?何故っ!?」

軍曹が思わず立ち上がっている マスターが笑んで言う

「何で中佐階級までしか行かなかった… おまけに その国防軍を脱退した俺が 最上軍階のリストを見られるかって?フッフ~ン 伝説と言われるだけの事はあるだろ~?」

軍曹が呆気に取られる マスターがキーボートの操作を終えて言う

「よしっ これで完了」

モニターに数人の名前が表示されている 軍曹が見つめる マスターが言う

「これが 過去国防軍レギスト駐屯地にて エルム少佐が在籍していた同時期に ご活躍されていた 俺たちの先輩方だ 今でも数人は現役だが 殆ど脱退されているな… この方々に 話を聞いて来る エルム少佐がどの様な隊長だったのか …をな?」

軍曹が言う

「おおっ!流石マスター!」

マスターが苦笑して言う

「とは言え 俺が情報部に居た頃に接点があったのは この中の数人しか居ないから 何処まで話を聞けるかは 分からないが」

軍曹が言う

「マスター!自分もっ!その… 接点などはまったく御座いませんが 是非とも そちらへ挑戦してみたいでありますっ!」

マスターが言う

「いや アーヴィン君は わざわざこんな遠回りをする必要は無いだろう?」

軍曹が呆気にとられて言う

「はぇ?」

マスターが微笑して言う

「それこそ、俺が話を聞きに行けない 一番有力な方と話が出来るんだからな?…ほら?」

マスターがモニターを指差す 軍曹が呆気に取られる


【 ハブロス家 別邸 】


軍曹が言う

「国防軍の総司令官を お勤めであられた 祖父上が まさか 同時に レギスト機動部隊の隊員でもあられたとは 自分は驚いたでありますっ!」

ラゼルが軽く笑って言う

「ほっほっほ… 私も驚いたさ まさか あの泣き虫なアーヴィンが レギスト機動部隊の軍曹になったと 聞いた時にはな?」

軍曹が衝撃を受けて言う

「お、祖父上っ!自分はっ!泣き虫などではっ ないでありますっ!」

ラゼルが微笑し首を傾げて言う

「そうだっただろうか?昔は良く 私に会いに来ては この屋敷の前で泣いていたではないか?」

軍曹が慌てて言う

「あっ!あれはっ!屋敷の警備に付いていらした エルム少佐が怖く… て…っ」

軍曹がハッとして視線を向ける エルムが軍曹を見ている 軍曹が衝撃を受け ぎこちない動きで視線を戻す ラゼルが笑う

「ほっほっほ…」


エルムが部屋を出てドアを閉めると言う

「…ふんっ」

エルムが立ち去る


ラゼルが紅茶に角砂糖を1つ入れて言う

「それで 私に話というのは何かな?アーヴィン?」

軍曹がドアへ向けていた視線を戻して言う

「は、はいっ!その… 祖父上も昨夜 耳にされていたものと 思われますが…」

ラゼルがスプーンを止めて言う

「ああ… 少佐が仰った 伝言の事かな?」

軍曹が言う

「はいっ 自分は… エルム少佐がレギストにおいて どの様な隊長であったのかは存じませんが 現レギスト機動部隊の隊長であられる ハイケル少佐は 自分にとっても隊員たちにとっても とても素晴らしいお方であると!自分はっ!その様に思うのでありますっ」

ラゼルが紅茶のカップを持って言う

「ふむ…」

ラゼルが紅茶を一口飲む 軍曹が言う

「しかしっ エルム少佐が とても優秀な少佐であられたと言う事も 自分は存じております次第でしてっ その… そうであるなら!少佐のっ 自分たちの少佐の 何処が悪いと仰るのか それを 教えて頂きたくっ!」

ラゼルが微笑し紅茶を置いて言う

「ふむ それを伺いたいのなら 私ではなく 少佐へ 直接伺えば良いだろう?アーヴィン」

軍曹が衝撃を受け視線をそらして言う

「うっ!…そ、それは 真に持って その通りでは あるので ありますが…」

ラゼルが苦笑して言う

「とは言え 少佐は恐らく 教えては下さらないだろう」

軍曹が疑問してラゼルを見る ラゼルが言う

「つまりそれは 現レギスト機動部隊の隊長へ お前たちの少佐へ 自分で考えるように と言う事なのだよ アーヴィン」

軍曹が呆気に取られる ラゼルが微笑して言う

「お前は怖がってばかりいるが 少佐はお優しいお方だ それに、言葉で伝えて そのまま正す事が出来るような内容であるなら ハッキリとそれを仰るお方でもある」

軍曹が視線をそらして言う

「確かに… お話の仕方は その様な感じの… 少佐に似ていらっしゃるような」

軍曹がハッとする ラゼルが紅茶を一口飲んで言う

「しかし ちょっとした切欠のような事は 仰っては下さらないとも言えるな …アーヴィン お前がお前たちの少佐の手助けをしたいと言うのなら 私の方からそれとなく 伺っておいても良いが」

軍曹が言う

「あっ!いえっ!祖父上!」

ラゼルが軍曹を見る 軍曹が言う

「自分にも 少し分かった気がするでありますっ!ですので 祖父上!自分はっ 国防軍レギスト機動部隊 元軍曹であられた 祖父上から!エルム少佐のレギスト機動部隊がどの様な 部隊であったのかを お伺いしたいと存じますっ!」

ラゼルが一瞬呆気に取られた後微笑して頷く


【 国防軍レギスト駐屯地 バックスの職務室 】


バックスが苦笑して言う

「エルム少佐か… ッフフ そうだな 君に良く似ていると言えば その通りなんだが」

ハイケルが視線を細める バックスが言う

「しかし、部隊の動かし方に関して言うのなら 君の作戦は 今も レーベット大佐の ご命令の通りだろう?」

ハイケルが言う

「…厳密に言えば 大佐の案を受け 考案された 元情報部 中佐の作戦を 模しているつもりだ」

バックスが微笑して言う

「そうか 彼は君と同期にして 良き友人でもあったな …彼の復帰は望めそうに無いか?」

ハイケルが言う

「生憎」

バックスが苦笑して言う

「そうか やはり…」

ハイケルが言う

「バックス中佐」

バックスが言う

「ああ、エルム少佐が どの様な隊長であったか だったな?こちらも生憎 私が少佐の指導を受けられたのは ほんの一時であったが その間に受け持った レギスト機動部隊の任務を思い返して言うならば 今の君の作戦とは 大きく異なる部分がある」

ハイケルが視線を細める


【 喫茶店 】


マスターが言う

「…それは 意外ですね エルム少佐は とてもお強い方であると 伺っていたもので」

老人が微笑して言う

「ああ とてもお強い方だ それこそ わざわざ その様な作戦など立てずとも 少佐がお1人居さえすれば それで済んでしまう様な事件ばかりだった」

マスターが考える 老人が微笑して言う

「…それでも 少佐はいつも 我々と共にいらしたのだよ」

老人がコーヒーを飲む マスターが言う

「しかし、その作戦は 裏を返せば 無意味に力の無い隊員たちを 危険な場所まで引き込んでいる… とも 考えられると思うのですが もしや、エルム少佐は それら力の無い隊員たちへ 実戦を用いて戦い方を教えようとでも?」

老人が言う

「うーむ… そうであったのか なかったのかは 少佐ご自身ではない 私には分かりかねるが それでも 我々は 共に戦ったのだよ どの様な作戦であっても 常に 少佐と共にな?」

マスターが視線を落として考える 老人がコーヒーから口を放して言う

「そう言えば あのレギスト機動部隊には 後の防長閣下となられた ラゼル軍曹がいらしたのだが」

マスターが顔を上げる 老人が苦笑して言う

「良く 少佐の事を 悪魔の兵士と仰っていた その言葉の通り 少佐は あのアールスローン戦記の 攻撃の兵士のごとく 何度でも蘇るお方でもあった」

マスターが呆気に取られて言う

「何度でも蘇る…?それは… つまり、不死身であるかの様に 強かった… と仰る事ですか?」

老人が言う

「いや、そうではない …もちろん その様に例えられるほどに お強くもあられたが そうではなく …本当に蘇って来られたのだよ 我々も驚いた」

マスターが疑問する 老人がコーヒーを飲む マスターが苦笑して言う

「まさか…?そちらは ご冗談で?」

老人が軽く笑って言う

「ほっほっほ そうだな… この様な話をした所で つまらない冗談か 老人の耄碌とでも思うだろう だが… エルム少佐は 私と同い年だ それを聞いたら 君も驚くだろう?」

マスターが驚き呆気に取られる 老人が微笑して言う

「これ以上 私から話を聞いても 君はもう 私の話を信じられくなる ここからは 別の者からでも 聞くと良い…」

老人が伝票に金を置き 立ち上がり 杖を突きながら立ち去る マスターが真剣な表情でコーヒーを一口飲んで驚いて言う

「うっ!不味…っ」


【 マスターの店 】


マスターがコーヒーを飲み笑んで言う

「ふー やっぱり 俺の淹れるコーヒーの方が よっぽど美味い!」

ハイケルがカウンター席に座っていて言う

「それで?」

マスターが苦笑する ハイケルが言う

「一応 俺の方でも バックス中佐へ話を聞いてみたのだが」

マスターが苦笑して言う

「へぇ?お前が?それで?バックス中佐は 何だって?」

ハイケルがコーヒーを飲んでから言う

「奴の作戦は レーべト大佐の御命令を元に作った作戦とは 大きく異なると …俺の力を 最大限に使う事の出来る あの作戦の 何処が間違っていると言うんだ?」

マスターが言う

「うーん… そうだよな?俺も 任務の迅速なる完了と 隊員たちへの最小限の被害 この2つを兼ね備える 大佐と俺の作戦は 上場だと今でも思っているけどな?」

ハイケルが言う

「同感だ」

マスターが困って考える ハイケルが言う

「だが、これでハッキリした」

マスターが疑問して言う

「ん?」

ハイケルが言う

「エルム少佐と レーベット大佐の作戦の違いだ 俺は言うまでも無い 大佐の作戦を今後も続ける エルム少佐に何と言われ様が 問題ない 奴は …今更 レギストの隊長へ戻る事も出来ないだろう?」

マスターが言う

「うん… それはそうだろうが」

ハイケルが澄まして言う

「当然だ 奴は 最低でも50歳以上の年齢なんだ」

マスターが気付いて考える ハイケルがコーヒーを飲み干し立ち上がる マスターが気付いて言う

「ん?なんだ?もう帰るのか?」

ハイケルが言う

「奴に言われた事は 気に入らない 受け入れるつもりも無いが 奴との戦いで分かった事は有った」

ハイケルが歩く マスターが言う

「戦いで?…何が分かったんだ?」

ハイケルが立ち止まって言う

「スタミナの違いだ それを補う為 訓練を強化する事にした 元レギスト機動部隊隊長から 得られた事はそれだけだっ」

ハイケルが立ち去る マスターが苦笑し言う

「なるほどね…」

マスターが拭いていた皿を置くと PCへ向かう


【 国防軍レギスト駐屯地 正門前 】


車が到着する 警備兵が向かう 窓が開かれ 隊員AがIDを見せる 警備兵が敬礼して言う

「国防軍レギスト機動部隊 アラン隊員 よし 通れ!…なんちゃってな?」

警備兵が微笑する 隊員Aが軽く笑って言う

「っははっ いつもはそんな堅い挨拶なのか?正門の認証って」

警備兵が言う

「当たり前だろ?正門の警備は 駐屯地の顔とも言われるんだ 警備部の中でも 成績優秀な奴じゃないと 就けないんだぜ?」

隊員Aが言う

「へぇ~ リッちゃんがそんな成績優秀だなんて 知らなかったなぁ?」

警備兵が笑んで言う

「へっへ~ん 自分ん所の上官に期待されてるのは お前だけじゃないって事が 分かっただろう?」

隊員Aが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う

「あぁ… まぁな?」

警備兵が疑問して言う

「ん?どうした?この前まで ハイケル少佐からそう言われたんだって 大喜びしてたじゃないか?」

隊員Aが慌てて言う

「あ… ああっ!もちろんっ!レギスト機動部隊で成績優秀な俺は… そんな訳で 今日は自主的に朝トレだぜ!」

警備兵が微笑して言う

「へぇ ついにお前もか?」

隊員Aが疑問して言う

「お前もって?」

警備兵が言う

「ほら、お前がいつも つるんでる あの変な奴 えっと… バイスン隊員だっけ?」

隊員Aが苦笑して言う

「変な奴って 失礼だなぁ バイちゃんは確かに面白い奴だけど 結構 色んな事に気付く凄い奴なんだぜ?」

警備兵が苦笑して言う

「あぁ 悪い そうかもな?普段はちゃらけてる感じだけど 根は真面目なのかもな?大分前から 1人で朝トレやってるもんなぁ?」

隊員Aが驚いて言う

「えぇえっ!?バイちゃんがぁあっ!?」

警備兵が呆気に取られて言う

「うん?なんだ 知らなかったのか?あんだけいつも一緒に居て?」

隊員Aが呆気に取られて言う

「し…知らなかった そっか それであんなに射撃の腕とか 通常訓練とかも 余裕で軍曹に付いていけるもんな…」

警備兵が苦笑して言う

「それに レギスト機動部隊だけだよな?隊長が朝夕トレーニングしてるのって」

隊員Aが驚いて言う

「少佐がぁあっ!?」

警備兵が言う

「なんだよ それも知らなかったのか?警備部の方では結構有名だぜ?それにハイケル少佐は 普段の出退勤に車を使わないから 徹底してるって …しかも噂によると ハイケル少佐の自宅は ウェスト地区の210ストリート辺りだって話だから ここからだと 5駅位あるだろ?トレーニングしてる時間を考えると 電車なんかも止まってる時間だから その距離も走るなりなんなりで トレーニングしてるんじゃないかってさ」

隊員Aが呆気に取られて言う

「知らなかった… そっか そうだよなぁ そうじゃなったら 任務の時あんなに動けないよなぁ …よしっ!俺も頑張らねーと!」

警備兵が微笑して言う

「おうっ がんばれよ!」

隊員Aが微笑して言う

「ああ!ありがとな!ついでに その少佐はもう 来てるのか?」

警備兵が言う

「とっくにだ …それに 昨日からは今まで以上に早く来てるぜ?何かあったのか?」

隊員Aが一瞬呆気に取られ 考え気付く 警備兵が言う

「ん?」

隊員Aが慌てて言う

「あぁっ いやっ!それはー 俺は分からないが …俺もトレーニングに行くから!通してくれ」

警備兵が微笑して言う

「おう」

警備兵が相方へ合図を送る 門が開かれる 隊員Aが言う

「それじゃ!またな!」

警備兵が言う

「ああ!お疲れさんっ!」

警備兵が敬礼する 車が発進する


【 国防軍レギスト駐屯地 館内 】


隊員Aがロッカーを閉め 着替えた状態で言う

「よしっ」

隊員Aが歩く 隊員Aが通路を歩きながら言う

「…とは言ったけど 朝トレって何したら良いかなぁ?施設使う奴は上官の許可が必要だろうし …バイちゃん探してみるか?」


隊員Aが幾つかの場所を見て回る 隊員Aが首を傾げて言う

「居ない… 居ない… ここにも… う~ん ここ…は やっぱ居ないか」


【 国防軍レギスト駐屯地 屋外 】


隊員Aが困りつつ歩いて来て言う

「駄目だ見つからない しょうがない 通常訓練でもやるかぁ …うん?」

隊員Aが歩いているとサブマシンガンの銃声が聞える 隊員Aが顔を向け向かう


【 国防軍レギスト駐屯地 射撃訓練所2 】


隊員Aが施設を覗くと 隊員Bが真剣な表情で訓練をしている 隊員Aが驚く 隊員Aが身を隠して言う

「や… やばい あんな真剣なバイちゃん 見た事が無くて 俺… 声掛けらんねー…」

隊員Bがふと気付き出入り口へ顔を向ける 隊員Aが悩んで言う

「…しかも ここって 思いっきり上官の許可必要な所じゃんか それを 1人で貸切してるとか… もう俺」

隊員Bが顔を出して言う

「アッちゃん みっけー!」

隊員Aが衝撃を受け驚いて振り返って言う

「バ、バイちゃんっ!」

隊員Bが言う

「もしかして アッちゃんも 朝トレー!?」

隊員Aが困り苦笑して言う

「あ… あぁ そのつもりで来たんだけど… バイちゃん やっぱスゲーな ここの施設なんて 俺ら訓練でも使わせてもらった事無いのに それを 少佐に使わせてもらってるなんて」

隊員Bが喜んで言う

「そうそう!ここって いつも訓練では使わないけど 面白そうだったから少佐に聞いたら 良い設備なんだけど 一度に5人位しか使えないからって理由で 訓練では使ってないんだってー!けど自主的に訓練したいなら 勝手に使って良いってさー!これ チョー面白いよ アッちゃんも 一緒にやらないー?」

隊員Aが表情を明るめて言う

「え!?まじで 良いのっ!?」

隊員Bが言う

「とーぜんー って …あれ?アッちゃん 少佐には 挨拶したー?」

隊員Aが衝撃を受けて言う

「うっ …いや してない」

隊員Bが言う

「えー?そうなのー?少佐言ってたよー アラン隊員は一緒じゃないのかー?って」

隊員Aが驚いて言う

「え!?少佐がっ!?」

隊員Bが言う

「そうそう!だから 挨拶しておいでよー!」

隊員Aが表情を困らせて言う

「あぁ… けど 俺、少佐が何処に居るか 分からねーし」

隊員Bが笑んで言う

「じゃ 一緒に行こー!こっちこっちー!」

隊員Bが隊員Aの手を引いて走る 隊員Aが慌てて言う

「わわっ ま、待てって バイちゃんーっ」


【 国防軍レギスト駐屯地 室内トレーニング室 】


隊員Bが顔を覗かせて言う

「少佐ぁー!アッちゃん 来ましたー!」

ハイケルが顔を上げ横目に見る 隊員Aが衝撃を受け慌てて敬礼して言う

「お、お早う御座いますっ!少佐っ!」

ハイケルが言う

「…遅かったな」

隊員Aが驚く ハイケルが言う

「就業時間外の敬礼は不要だ 施設は好きに使え 以上だ」

ハイケルがサンドバックへの攻撃を再開させる 隊員Aが呆気に取られる 隊員Bが笑顔で言う

「ねー!これで 施設は何処も使い放題ー!」

隊員Aが呆気に取られて言う

「あ、ああ…」

隊員Aがハイケルを見る ハイケルの脳裏に エルムの姿が思い出される ハイケルが怒りに任せた一撃を放つ サンドバックが壊れ砂が落ちる 隊員Aが衝撃を受ける ハイケルが言う

「…加えて 可能な限り 備品は壊さない様に」

隊員Aが衝撃を受けて呆気に取られる 隊員Bが言う

「少佐ぁー これで今月 2つ目でありまーす」

隊員Aが驚いて叫ぶ

「まじでーっ!?」

ハイケルが歩きながら言う

「安物を設置する方が悪いんだ」

隊員Bが爆笑する 隊員Aが呆気に取られる ハイケルが別の設備でトレーニングをしている 隊員Aが見つめている 隊員Bが言う

「アッちゃん!アッちゃん!さっきの所 一緒にやろうよー!俺先行くよー?」

隊員Aが慌てて言う

「あぁっ 俺も行くってっ!待てよ バイちゃーん!」

隊員AとBが走って行く


【 国防軍レギスト駐屯地 シャワールーム 】


隊員Aが言う

「良く考えたら この後から いつもの通常訓練が 始まるのかぁ… やばいな 俺 体力続かなそうだ…」

隊員Bがシャワーコックをひねりながら言う

「アッちゃん張り切り過ぎなんだよー ちょっと手抜く位にしとかないと 通常訓練の1でダウン決定だよー?にひひっ!」

隊員Aが個室に入りながら言う

「通常訓練の1でダウンしたら 訓練所周回30週が追加されて 俺ぶっ倒れるかも…」

隊員Bが言う

「だから もっと気楽にって言ったのにー」

隊員Aがシャワーコックをひねりながら言う

「そうは言っても 直前に少佐のあのトレーニング見ちまったら… あちっ 熱っ 熱っ!」

隊員Bが言う

「アッちゃん ほら 教えたじゃんっ 少佐直伝 ここのシャワールームを快適に使う技ー」

隊員Aがシャワーコックをひねりながら言う

「あぁ… そっか まず水を全開にするんだけ?それから…」

ハイケルがやって来て個室に入る 隊員Aがシャワーの調整に成功して微笑して言う

「お?スゲー!本当に丁度良くなった!」

隊員Bが言う

「でしょー!凄いよねー この技ー!」

隊員Aが苦笑して言う

「っはは そうだなっ お陰でこの少ないシャワールームも 少人数で使えるって訳か」

隊員Bが気付いて言う

「あ!そう言えばそうだよねー このシャワールームを全部隊の隊員が使ったら ちょー満員になっちゃうやー …ですよねー?少佐ぁー?」

ハイケルが言う

「そうだな」

隊員Aが衝撃を受けて言う

「しょ、少佐ぁっ!?」

隊員Aが慌てて言う

「お、お疲れ様で…っ!」

隊員Bが言う

「アッちゃん アッちゃんー だから 言ったじゃんー?就業時間以外は 敬礼も敬語も不要なのー」

隊員Aが衝撃を受けて言う

「あっ!そ、そう言えば…」

ハイケルが言う

「敬語が不要と 言った覚えは無いが」

隊員Bが気付いて言う

「あー!畏まらないで良いの 間違いでしたー 少佐ぁー」

ハイケルが言う

「そうだな」

隊員Aが考える 隊員Bが言う

「所で 少佐って 歳いくつなんですかー?」

隊員Aが真剣な表情になる ハイケルが言う

「今年で19だ」

隊員AとBが驚き声を合わせる

「「タメーっ!?」」

隊員Bが喜んで言う

「それじゃー 少佐ぁー!就業時間外は タメ口でも良いですかー?」

隊員Aが慌てて言う

「バイちゃんっ それは駄目だってっ!」

ハイケルが言う

「許可する」

隊員Bが喜んで言う

「いえーい!」

隊員Aが慌てて言う

「いやっ!駄目でしょっ!?」

隊員Bが言う

「えー?何でー?今年19って事は俺はタメだけど アッちゃんは半年くらい年上だしー 少佐が良いってー あー 許可するって言ってるんだから 良いじゃーん?」

ハイケルが個室を出て行く 隊員Aが言う

「いくら少佐が許可してくれてもっ 俺たちは部下なんだからっ そう言うのは駄目なんだよ バイちゃんっ」

隊員Bが言う

「えー 俺は良いと思うんだけどなぁ?」

隊員Bがシャワーを止めて個室を出る 脱衣所でハイケルが服を着ている 隊員Bがタオルで顔を拭いていると 隊員Aがやって来る 隊員Bが服を着ていてふと気付いて言う

「そう言えば 少佐 その胸のタテゥー カッコイイですよねー 何処で入れたんですかー?」

隊員Aが反応して顔を向ける ハイケルがシャツを着ている途中で一瞬作業を止め再開しながら言う

「入れたのではない 元からだ」

隊員Aが気付く 隊員Bが軽く驚いて言う

「元からー?生まれ付きって事ですかー?」

ハイケルが言う

「確かな事は分からないが 物心が付く頃にはあった」

隊員Bが言う

「へぇ~ 良いなぁ~ カッコイイー 俺も何か入れようかなぁー」

ハイケルが着替えを終え 帽子を被りつつ言う

「褒められたのは初めてだ 幼い頃は 悪魔の呪いと言われた」

隊員Bが笑って言う

「えーそうなんだぁ!あっははっ」

ハイケルが言って歩き始める

「集合時間に遅れるなよ」

隊員Bが敬礼して言う

「はーっ!お疲れ様でありましたぁー 少佐ぁー!」

ハイケルが言いながら立ち去る

「お疲れ」

隊員Aが考えている 隊員Bが仕度を終えて言う

「ん?アッちゃん どうしたー?」

隊員Aが顔を上げて言う

「あ、いや 何でも…」

隊員Bが言う

「早く服着て 朝飯いこーよ 俺 お腹空いたー 朝トレの後の朝飯 ちょー美味いよー!アッちゃん 早く早くー!」

隊員Aが急いで服を着ながら言う

「あ、ああ 分かったっ 分かったっ!」


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】


隊員AとBが食事をしている 隊員Bが言う

「ねーねー アッちゃん アッちゃん!」

隊員Aが言う

「んー?」

隊員Bが言う

「アッちゃんは 入れるなら どんな模様が良いと思う?」

隊員Aが食べながら言う

「入れるって?」

隊員Bが言う

「ほら、タトゥーだよぉ 俺も 少佐みたいに 何かカッコイイ奴 入れたいなーって!」

隊員Aが言う

「ああ、そう言えば バイちゃん あの時は言えなかったけど …左胸にタトゥー入れるのって 禁止なんだぜ?」

隊員Bが驚いて言う

「えっ?」

隊員Aが言う

「しかも 少佐のは モロに心臓の位置だっただろ?少佐も言ってたけど 心臓に近い位置に模様を入れると 悪魔の呪いが掛かるんだって」

隊員Bが呆気に取られた後笑って言う

「あっははっ!アッちゃん ちょー面白い!そんなの 子供じゃないんだから!」

隊員Aが言う

「いや… 悪魔の呪いは確かに 嘘かもしれないけど あの位置に模様を入れる事は 本当に禁止なんだ 法律で決まってる」

隊員Bが言う

「えー… そうだったんだ?知らなかったー」

隊員Aが表情を顰めて言う

「しかも 前に 少佐 胸の辺り掴んで 苦しんでた事があっただろ?ちょっと… 気味悪いな ってさ…」

隊員Bが呆気に取られて言う

「悪魔の呪い…?」

隊員Aが言う

「うん… だから、バイちゃんは 入れるなら 別の場所にしろよ?せめて右にするとか」

隊員Bが微笑して言う

「うん!分かった アッちゃん 心配してくれて ありがと!」

隊員Aが苦笑して言う

「当たり前だろ?バイちゃんは 俺の相方じゃないか?」

隊員Bが笑顔で言う

「うん!だから 俺、今日アッちゃんが 朝トレ来てくれて 嬉しかったぜ!」

隊員Aが苦笑して言う

「なんだよ それなら もっと早くに バイちゃんから誘ってくれれば 良かっただろ?」

隊員Bが苦笑して言う

「えー だってぇ~」


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】


軍曹が叫ぶ

「通常訓練の1!開始ぃーっ!」

隊員たちが叫ぶ

「はっ!了解!」

隊員たちが腕立てを開始する 隊員Aがあくびをして言う

「ふあっ… あぁ~ 眠い」

隊員Bが笑って言う

「あっはは アッちゃん さっきまで寝てたもんね~?にひひっ」

隊員Aが言う

「いや… マジで バイちゃんが起こしてくれなかったら アウトだったよ 助かった~」

隊員Bが言う

「俺も朝トレ始めたばっかりの頃 朝飯食べた後良く 休憩所で寝ちゃってさー?少佐に起こしてもらってたんだー」

隊員Aが衝撃を受けて言う

「えぇっ!?マジでっ!?」

隊員Bが言う

「マジでマジでー ほら、だから シャワールーム出る時に 少佐 俺に言ったでしょー?集合時間に遅れるなよーって!」

隊員Aが苦笑して言う

「あぁ… なるほど …けど、ほんと バイちゃん少佐と仲良いよなぁ?」

隊員Bが言う

「アッちゃんも 普通に話せば良いのにー」

隊員Aが言う

「俺は まだまだ 先が長そうだよ…」

隊員Aが顔を上げハイケルを見る ハイケルが軍曹と話している ハイケルが軍曹へ言う

「任務に関する 呼び出しを受けている ここは任せたぞ 軍曹」

軍曹が敬礼して言う

「はっ!了解致しましたっ!少佐っ!」

ハイケルが立ち去る 軍曹がハイケルを見送ってから 少し考え顔を左右に振って 気を切り替えると 叫ぶ

「よぉーしっ!自分はこれから腕立て650回を行う!自分が終了するまでに 腕立て600回を 終えておらなかった者にはっ!更に 腕立て50回を与えるのだっ!皆 気合を入れよーっ!」

隊員たちが返事をする

「はっ!了解っ!」

隊員Aが表情をゆがめて言う

「や… やばい…」

隊員Bが笑う

「にひひっ」


【 マスターの店 】


店の来客鈴が鳴る マスターが顔を向けて言う

「お、やっぱり来たな?」

軍曹が苦笑して言う

「あ… マスター 自分が来ると お分かりに…?」

マスターが軽く笑って言う

「そりゃぁな?ハイケルの事を心配してるのは 何も 君だけじゃないんだぜ?アーヴィン君」

軍曹が言う

「少佐の事を 心配…?」

マスターが苦笑して言う

「ま、座ってくれ」

軍曹が気付き 表情を正し言う

「はっ 失礼致しますっ」

マスターが苦笑する


マスターがコーヒーを出しながら言う

「それで、ハイケルの様子はどうだ?」

軍曹が軽く頭を下げつつ言う

「様子の方は お変わりは無い かと見えますが …自分は そう言った事に鈍感でありまして」

マスターが苦笑して言う

「あいつの場合は 特に感情が分かり辛いからな …それでも 先日エルム少佐に負けた事は 相当悔しかったらしい」

軍曹が衝撃を受け慌てて言う

「で、ではっ!やはり 自分はっ 伝言を…っ」

マスターが顔を左右に振って言う

「いや、それはまた違う むしろ その伝言があったからこそ 何とか落ち着いたんじゃないのかな」

軍曹が疑問して言う

「はぇ?」

マスターが言う

「君から伝言を聞く前のあいつは 口では 悪魔の兵士であるエルム少佐に敵わなくてもしょうがない …ってな事を言ってたが 実際には かなりのショックを受けていた だが、翌日 君から伝言を聞いて 俺たちがエルム少佐の事を調べたってのは今更だが あいつも自分で エルム少佐を知る バックス中佐から話を聞いたらしい」

軍曹が言う

「少佐が バックス中佐に…」

マスターが言う

「ああ、それで エルム少佐がレギストの隊長時代に使っていた作戦は 今のハイケルが使う作戦とは 大きく異なる部分があって その部分は丸々 レーベット大佐の作戦との相違だったんだ それを知ったハイケルは エルム少佐の伝言に付いては 断固拒否 これからも レーベット大佐のご指示を元にした作戦を選ぶ事にしたらしい しかも、そのお陰で あいつのエルム少佐への意識は 良い意味で あいつのやる気を起こす結果になった」

軍曹が疑問して言う

「少佐の やる気と申しますと?」

マスターが苦笑して言う

「言っちまえば ライバル意識って奴かな?あいつは昔から 何でも出来る奴だったから それこそレギストに入ったばっかりの 何も分からなかった時は別として 一通りの事を経験して 少佐の軍階に落ち着いた頃には あいつの周りにライバルと呼べる存在は無かったんだ 君が以前言っていた通り 年齢制限すら通り越して 中佐の軍階に上れるかって程だった それが 久々にエルム少佐と言う とんでも無く強い先輩に伸されて 今はその再戦に燃えてるって所だ 訓練を強化するなんて 言ってたぜ?」

軍曹が衝撃を受け硬直して言う

「さ…っ 流石 少佐であります…っ あの目にするだけで恐ろしい エルム少佐に 真っ向再戦を望まれるとは…っ やはり少佐は 心身共にお強いお方でありますっ!」

マスターが軽く笑って言う

「ははっ 実は俺も意外… いや、思っていた以上に あいつが負けず嫌いなんだって事を知ったよ だから あいつが今度エルム少佐に 会うような事が有った時には 俺も協力したいと思ってね?久しぶりに俺も ちょいと訓練しちまったよ」

マスターが横目にPCを見る 軍曹が呆気にとられて言う

「マスターが訓練を?」

マスターが苦笑して言う

「あ~ いや、今のは 聞き流してくれ …所で もし可能であればで良いんだが アーヴィン君」

軍曹が疑問して言う

「はっ 何でありましょう?マスター!?」

マスターが言う

「以前 君から少しだけ アールスローン戦記の原本について 教えてもらっただろう?あの… ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の刻印の話で」

軍曹が言う

「あ… は、はい…っ」

マスターが苦笑して言う

「安心してくれ 誰にも話したりはしていない その約束はこれからも守る」

軍曹が微笑する マスターが言う

「あの時は ちょっとしたヒントみたいに教えてもらった訳だが その原本の内容って言うのは… やっぱり 一般の俺たちには 知られちゃマズイものなのか?」

軍曹が言う

「え?えっとぉ…」

軍曹が困る マスターが微笑して言う

「ああ 別に 無理に教えてくれなくても良いんだが エルム少佐の話を聞いて行く内に 元防長閣下であった ラゼル元軍曹が… 君の御爺様が エルム少佐の事を 悪魔の兵士として 認めていた と… しかも エルム少佐は  その悪魔の兵士さながらに 蘇った事がある …なんて話を聞いてね?」

軍曹が驚いてマスターを見る マスターが苦笑して言う

「もちろん 普通に考えたなら 有り得ない話だ …けど、本当にエルム少佐が 悪魔の兵士だったのなら?それも 有り得るのか…?なんてな?アールスローン戦記の原本になら その辺りの事も 詳しく書かれているんじゃないかと 思ったまでなんだが …どうかな?」

軍曹が視線を落として考えた後 マスターへ向いて言う

「で、では… 今夜にでもっ その辺りの部分を 読める様!努力してみるでありますっ!」

マスターが疑問して言う

「は?…努力?」

軍曹が慌てて言う

「は、はいっ そのっ アールスローン戦記の原本は実に難しく 中々思った所を 読む事が出来ないと申しますか… 少々 気分屋の性がありまして!」

マスターが呆気に取られた後言う

「は…?えっと… 気分屋…ねぇ?…まぁ良い もし、何か分かって それが俺に教えられるような事だったら 是非教えてもらえると嬉しいんだが」

軍曹が立ち上がって言う

「はっ!マスターには 常日頃から 大変お世話になっておりますのでっ!自分も精一杯 努力してみるでありますっ!どうか 朗報をご期待下さいっ!」

マスターが呆気に取られて言う

「あ、ああ… ありがとう …期待して 待ってるわ」

軍曹が敬礼して言う

「はっ!では 早速 行って参りますっ!また 明日にでも お伺いをさせて頂きますのでっ!」

マスターが敬礼を返して言う

「う、うん 頑張ってくれたまえ…」

軍曹が言う

「了解っ!それではっ!失礼致します!」

軍曹が立ち去る マスターが呆気に取られて言う

「何で ただちょっと本を読む事に 努力と敬礼が必要なんだ?」

マスターが疑問する


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】


ハイケルが訓練所周回を行っている 隊員Aが倒れて言う

「だぁっ はぁ…はぁ…はぁ… 無理… 無理だ… 全っ然っ!付いて行けねぇ…」

隊員Bが腹筋しながら言う

「だから 絶対無理だって 言ったのに~ アッちゃん 明日大丈夫ー?」

隊員Aが仰向けになって言う

「バイちゃんは この後… どうすんの?」

隊員Bが言う

「この後は シャワー浴びて帰るだけー 少佐はこれから トレーニング開始するみたいだけど」

隊員Aが衝撃を受けて言う

「これからってっ!?今までのはトレーニングじゃないのかよっ!?」

隊員Bが苦笑して言う

「少佐 前に言ってたけどー 通常訓練は 準備運動だってー」

隊員Aが脱力して言う

「やっぱり 無茶苦茶だ… 軍曹より酷い…」

隊員Bが笑う

「にひひっ 俺もそー思うー」


【 ハブロス家 軍曹の部屋 】


軍曹が音楽イヤホンを付けた状態で 目を閉じ気合を入れて本を見る 本に文字が浮かび上がってくる 軍曹が衝撃を受け叫ぶ

「ぬぅーー 違うのだぁっ!そこではなくっ!悪魔の兵士に付いて読ませて欲しいのであるっ!…よぉおし もう一度っ!」

軍曹が本から手を話す 本から文字が消える 軍曹が気合を入れて言う

「今度こそっ!マスターへの 日ごろの感謝を お返しすのだっ!ぬぅううっ せいやぁああっ!」

軍曹が本を開き覗き込む 文字が現れる 軍曹が衝撃を受け叫ぶ

「ぬあぁああっ!さっぱり分からんっ!何だこの医学書はぁあっ!?自分は医学や工学はさっぱりなのだぁあ!そんなページを見せられても 分からないのであるーっ!」

軍曹が同じ事を繰り返し 失敗している


軍曹が椅子に座ったまま居眠りをしている 扉がゆっくり開かれアースが部屋に入って来る アースが軍曹の様子を伺う 軍曹はすっかり寝入っている アースが机の上を見て視線を細める 脳裏にその本を持ってアールスローン戦記であると言っている軍曹の姿が思い出される アースが本に触れると 軍曹が寝言を言う

「むっ!…うむ~ も、もう一度…」

アースが驚き振り返るが ホッとしてもう一度本を見る


【 マスターの店 】


軍曹が頭を下げて言う

「申し訳ありませんでしたぁーっ!マスターぁーっ!」

マスターが呆気に取られて言う

「はぁ…?」


マスターが苦笑して言う

「へぇ… こいつはまた 不可解と言うかなんと言うか… ますますアールスローン戦記が 現実化して来たって感じだなぁ?」

マスターの視線の先 本から文字が消える 軍曹が表情を困らせて言う

「はぁ… しかし そのぉ… 昨夜から マスターから御指摘のあった 悪魔の兵士に関するページを開こうと 試みているのでありますが… 不甲斐なくも そのページに行き着きませんで… 真に 申し訳なく…」

軍曹が本を開きながら頭を下げる 本に文字が浮かび上がる マスターがページをめくりながら言う

「それにしても 信じられない話だよなぁ?音楽と白い紙… ねぇ?」

マスターが店のスピーカーを見上げる スピーカーからクラシックが流れている マスターが苦笑する 軍曹が表情を落として言う

「これが通常の本であったなら どれ程楽であろうかと思うであります それこそ あの複製のアールスローン戦記など 自分であっても数時間で読み終えたであります」

マスターが苦笑して言う

「あれは ハッキリ言っちまえば 子供用の童話みたいな物だからなぁ?こんな医学書みたいな物じゃ…」

マスターが言いながらページをめくり驚いて止まる 軍曹が気付かずに言う

「自分の様な者には そちらの方がよっぽど合ってると思うであります 正直 この原本は 自分が生きている間に読み終えられる気がしないで… む?如何したのでありますか?マスター?」

軍曹がマスターを見てから 本を見て言う

「ああ、これが 悪魔の兵士に刻まれた 神の刻印であります ご覧の様に ラミリツ攻長の物とは… マスター?」

軍曹が疑問する マスターが呆気に取られて言う

「こんな… 事が…っ!」

マスターが本から目を離し困惑する 軍曹がマスターの様子に疑問して言う

「あのぉ マスター…?」

軍曹の携帯が鳴る 軍曹が一瞬驚いた後 携帯を見て 慌てて着信させて言う

「おっ お待たせ致しましたぁーっ!少佐ぁー!」

携帯からハイケルの声が届く

『どうした 軍曹 今何処に居る?』

軍曹が疑問して言う

「はっ?ど、何処…と申されますと?」

軍曹がマスターを見る マスターは今も困惑から戻らない 軍曹が心配する 携帯からハイケルの声がする

『12時より マイルズ地区で行われるイベントの警備へ レギスト機動部隊が就く様 任務を受けていると伝え筈だ 忘れたのか?』

軍曹が衝撃を受け 慌てて言う

「のあーっ!?も、申し訳ありませんっ!少佐ぁーっ!」

ハイケルが言う

『現地集合で良い 直接向かえ 集合場所は覚えているだろうな?』

軍曹が言う

「はっ!集合場所は マイルズストリート101であると 記憶しておりますっ!」

ハイケルが言う

『よし、では今度こそ 忘れるなよ?』

軍曹が敬礼して言う

「はっ!直ちに向かいますっ!申し訳ありませんでしたぁーっ!少佐ぁーっ!」

軍曹が携帯を切り マスターへ慌てて言う

「で、ではっ!そう言うことでありまして!マスターっ!失礼致しますっ!」

軍曹が慌てて飛び出して行く マスターが長い間を置いて言う

「お前 なのか… ハイケル…」

マスターが視線を向ける 視線の先で白いページが風にめくられる


【 ハブロス家 別邸 】


アースが言う

「どうか 御教えを願えませんでしょうか 祖父上」

ラゼルが微笑して言う

「アールスローン戦記の原本 …その内容かな?」

アースが言う

「いえ、そちらも多少は気にはなりますが アールスローン戦記の原本は 本来 我らハブロス家の当主となるものが 代々託される物である と伺っておりました 祖父上はそれを 父上ではなく アーヴァインに与えたと」

ラゼルが頷いて言う

「うむ…」

アースがラゼルを見て視線を細める ラゼルが苦笑する アースが言う

「…それは即ち 祖父上は ハブロス家の次期当主に アーヴァインを選んだと そう申されるのでしょうか?」

ラゼルが言う

「いや、そうでは無い」

アースが疑問する ラゼルが言う

「メイヴィン お前は 原本の その内容の方には 興味は無いのかな?」

アースが言う

「内容… 私が聞きますのは かつてペジテと呼ばれた その小国が 帝国からの襲撃を 跳ね除けるだけの力を手に入れた …その力の正体となる物が書れているのではと まことしやかに囁かれているそうですが」

ラゼルが頷く アースが言う

「それよりも 私は… 私がこのハブロス家の次期当主に 選ばれないのではないか と言う事の方が 恐ろしいので御座います」

アースが視線を落とす ラゼルが微笑し言う

「メイヴィン… いや、アース・メイヴン・ハブロス お前に アールスローン戦記の原本を託そう」

エルムが視線を向ける アースが呆気に取られて言う

「祖父上…?」

ラゼルが微笑して言う

「メイヴィン 私の寿命も そろそろ尽きる… そうしたら 私の持つ アールスローン戦記の原本を お前の下へ運ばせる …少佐 私からの指令を 引き受けて頂けますでしょうか?」

エルムが言う

「了解」

ラゼルが微笑する アースが呆気に取られて言う

「祖父上…?それは 一体どう言う事で?アールスローン戦記の原本は この世に2つしかないと その1つを アーヴァインに与えたのではっ!?」

ラゼルが言う

「アールスローン戦記の原本は お前の言う通り 世界に2つ それは どちらも ハブロス家の 守りの兵士となるものが身に受け 後に 当主となる者へ託す 私が身に受けた物は本来であるなら アークへ… お前たちの父親へ託す筈だった しかし、どうやら そちらは変わりそうだ」

アースが驚く


【 マイルズ地区 】


周囲でイベントが行われている ハイケルが周囲を見渡しイヤホンを押さえて言う

「イベント会場 メインゲート前 異常なし」

イヤホンに無線が入る

『こちら A地点 異常なし』 『B地点 異常なし』 『C地点 異常なし』 『D地点 異常なし』 『サブゲート前 異常なし』 『メインストリート 異常なし』

ハイケルが言う

「了解 間もなくステージイベントが開始される 警戒態勢を維持しろ」

ハイケルがステージを見上げる


隊員Aがしんどそうに言う

「だぁ~… 筋肉痛で 立ってだけでも辛いぜ…」

隊員Bが笑って言う

「にひひっ 最初はそんな感じだって!」

隊員Aが言う

「今日はイベントの警備があってくれて ほんと助かったよ… これで午後まで軍曹のしごきがあったら まじで倒れてたって 俺…」

隊員Bが言う

「けどさぁー 今日のイベントは 何もなさそうだよねー つまんないのー」

隊員Aが苦笑して言う

「平和が一番だろ?俺らが警備に付く任務で いつも少佐が活躍するような事があったら それこそ大変だって」

隊員Bが苦笑して言う

「そっかー それもそうだよねー?」

ステージでイベントが開催される 周囲の盛り上がる中 レギスト機動隊が警備を行っている


【 国防軍レギスト駐屯地 館内 】


ハイケルと軍曹が歩いている バックスが職務室を出た所でハイケルたちと遭遇する ハイケルと軍曹が立ち止まり敬礼する バックスが敬礼を返して言う

「任務 ご苦労だった諸君 戻って早々に悪いが たった今 次の任務が決まった所だ ハイケル少佐」

ハイケルが言う

「はっ」

バックスが言う

「共に アーヴァイン軍曹」

ハイケルと軍曹が一瞬驚いてから 軍曹が言う

「はっ!」

バックスが言う

「両名ともミーティングルームへ集合せよ」

ハイケルと軍曹が言う

「了解」 「了解!」

バックスが立ち去る ハイケルが間を置く 軍曹がハイケルを見る ハイケルが言う

「先日の様に 君のご家族が… もしくは 皇居関連かもしれないが 軍曹として呼ばれている事から 前者であると推測される」

軍曹が言う

「あ… はぁ…?」

ハイケルが言う

「行くぞ 軍曹」

軍曹が言う

「はっ!少佐っ」

ハイケルと軍曹が歩いて行く


【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】


バックスが言う

「先ほど 総司令官より 我々国防軍レギスト駐屯地へ指令を受けた 明日13時から 政府による懇談会が再度催されるとの事」

ハイケルと軍曹が反応する バックスが言う

「そちらの懇談会に 再び我々国防軍からの代表として ヴォール・ラゼル・ハブロス様が 招かれているとの事だったのだが… 代行として ご子息であられる ヴォール・アーケスト・ハブロス様が向かわれる事となった」

軍曹が反応する ハイケルが軍曹を見る バックスが言う

「そこで 前回の事を考慮し 総司令官は 最初から国防軍の警備を付ける様命じられた …ハイケル少佐 私はそちらへ 君たち17部隊を向かわせようと思うのだが」

ハイケルが言う

「了解」

バックスが軍曹を見る 軍曹が敬礼する バックスが頷き言う

「では よろしく頼む 詳細は明日の午前中 恐らく10時には 連絡出来るだろう ハイケル少佐は その頃 私の執務室まで訪ねてくれ 以上だ」

ハイケルが敬礼して言う

「はっ」

バックスが立ち去る 軍曹が考えている ハイケルが一度軍曹を見てから続き 軍曹がハッとして続く


【 ハブロス家 】


軍曹が驚いて言う

「祖父上のご容態がっ!?」

アースが言う

「少し前から 余り調子が良くないと仰っていたんだ 医者にもそろそろ心の準備をしておけと …アーヴィン お前も 何か話しておきたい事 …お前が身に受けている アールスローン戦記の原本の事など 伺える事はしっかりと伺って置く様にしろ 分かったな?」

軍曹が視線を落として言う

「う… うむ…」

アースが立ち去る 軍曹が窓の外を見る


【 国防軍レギスト駐屯 訓練所 】


ハイケルが言う

「これより我々は 政府主催の懇談会を 警護する任務へと向かう」

隊員たちが顔を見合わせる ハイケルが言う

「この任務は先日事件の起きた 政府主催の懇談会を再度催するものである為 総司令官は 前回の事件を考慮し 予てより 国防軍による警護部隊を置く事を指令 それにより 我らレギスト機動部隊が配備される事となった …尚 今回の保護対象者は 前回とは異なり ヴォール・アーケスト・ハブロス様である」

隊員Aが言う

「ヴォール・アーケスト・ハブロス様…?聞いた事無いな?」

隊員AがBを見る 隊員Bが言う

「けど、ハブロス様だから 軍曹のご家族でしょ?」

隊員Cが言う

「確か お父様だぜ?」

隊員Aが言う

「へぇ~」

隊員たちがハイケルを見る ハイケルが言う

「では 2車両に別れ 現地へと向かう 作戦及び各班メンバーは 移動時間に説明する 全隊員無線イヤホンを装備しろ 以上だ」

ハイケルが横目に軍曹を見る 軍曹が考え事をしている 隊員Bが言う

「少佐へ敬礼ー!」

隊員たちが敬礼する 軍曹がハッとして敬礼する ハイケルが敬礼を返す 隊員たちが移動する ハイケルが言う

「軍曹」

軍曹がハッとして言う

「はっ!失礼を致しましたっ!少佐っ!」

ハイケルが言う

「どうした 何か問題か?」

軍曹が言う

「いえっ!申し訳ありませんっ!任務に集中致しますっ!」

ハイケルが軍曹を見た後移動する 軍曹が続く


【 カルメス邸 】


シェイムが言う

「再び懇談会へ誘う方も誘う方ですが 受ける方も… いえ、今度は彼らも万全を期して来るでしょう また、同じ事を繰り返すだけでは?」

メルフェスが言う

「誘う我々もだが それを受けると言う事は あちらも我々へ戦いの意志を向けてきたと言う事 そうとなれば 今回は 我々も本気で向かうまで」

シェイムが言う

「本気で…とは?」

メルフェスが笑んで言う

「真っ向勝負…とは 残念ながら まだ行う事は出来ない 従って 政府警察機動部隊はあちらと同じく 最初から警備に当てはするが 今回は 彼らへの攻撃は行わない その代わりに」

シェイムが言う

「また 偽のガイズを使うと言うのでは?それこそ 残念ながら 国防軍の あのレギスト機動部隊には敵わないでしょう」

メルフェスが苦笑して言う

「彼らの肩を持つおつもりかな?シェイム殿 …確か 貴方方を助け出したのが その」

シェイムが言う

「勘違いはなさらないように 私はただ 事実を言っているだけです」

メルフェスが苦笑して言う

「そうですか しかし、私も今回は本気なのですよ シェイム殿 そろそろ本国が動き出す その前に… 貴方から教わった この国の力を アールスローンの力を 奪わなければならない」

シェイムが言う

「本国?… メルフェス殿 何を仰っているのです?貴方は このアールスローン国の陛下を支える 名誉ある皇居宗主 その貴方が」

メルフェスが微笑して言う

「そう 私は皇居宗主 陛下へのお近づきを許される者 共に 陛下の代弁者としての指示を出せる者 従って…」

シェイムが驚く メルフェスが言う

「シェイム殿 私からも 貴方に1つお教えしよう アールスローン戦記の2つの原本 貴方は 防長であるハブロス家の者と 陛下がお持ちであろうと仰ったが 陛下はお持ちではなかった」

シェイムが驚いて言う

「それは どう言う意味ですっ!?まさかっ!?」

メルフェスが微笑して言う

「アールスローン戦記の原本など 歴史的な価値があるだけのものだと思っていたが… しかし、貴方からとても魅力的な話を伺えた 原本の在り処とその内容… 感謝していますよ シェイム殿」

シェイムが視線を細め立ち上がる メルフェスが笑んで指を鳴らす ドアから部下たちが入って来てシェイムに銃を向ける シェイムが唇を噛み締める


【 政府懇談会場 】


各階の警備にレギストと警機が居る 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせ 隊員Aが言う

「なんか… すげぇ気まずい…」

隊員Bが言う

「そうだよねー?…あっ!アッちゃん アッちゃんっ!」

隊員Aが言う

「ん?なんだよ バイちゃん?」

隊員Bがサブマシンガンの銃口で示して言う

「ほら、あの警機の隊員 この前俺が 手榴弾どっかーんで吹っ飛ばして アッちゃんが殴り飛ばした人だよっ!ほらほらっ」

隊員Aが衝撃を受け 隊員Bの示す方を見る 警機の隊員が隊員Aに怒りの眼差しを向けている 隊員Aが衝撃を受け言う 

「ゲェッ!ほんとだっ!俺も覚えてる!少佐直伝右ストレートが見事にヒットした…!…み、見ちゃ駄目だっ!それから バイちゃん 銃口は向けないでっ!」

隊員Aが慌てて隊員Bのサブマシンガンの銃口を変えさせる 隊員Bが笑んで言う

「チョー アッちゃんの事 見てるよー!きっと向こうも覚えてるって 挨拶しに来ようよ?」

隊員Aが慌てて言う

「するわけ無いだろっ!?ってか あの目は挨拶代わりに 一発殴らせろって目だよ!絶対っ!」

隊員Bが言う

「だよねー 俺もそう思う!にひひっ」

無線イヤホンにハイケルの声が届く

『間もなく懇談会開会の13時となる 全隊員警戒態勢を強化しろ』

隊員AとBが頷き合い周囲を警戒する 


【 政府懇談会場 6階 会場前 】


ドアの前にハイケルと軍曹が居る ハイケルがドアへ視線を向け イヤホンを押さえて言う

「マイク少佐 出席者は既に会場内に入場しているとの事だが 会場内の詳細は分かるか?」

イヤホンにマイクの声が届く

『会場内の熱源反応は58です その内 5名はホテル従業員 20名が警備の者だと言う連絡が入っています』

ハイケルが言う

「20名の警備の内訳は?」

マイクの声が届く

『確認が取られる範囲で 5名が政府警察機動部隊 10名が国防軍からの警備と言う事です 残り5名は不明ですが 恐らく懇談会に呼ばれたゲスト方のSPだと』

ハイケルが疑問して言う

「国防軍からの10名と言うのは何だ?聞いていないぞ?」

マイクの声が届く

『総司令本部から連絡が入っています ヴォール・アーケスト・ハブロス様の 私設自衛小隊であるとの事です』

ハイケルが軍曹を見て言う

「君のご家族は 各人が私設自衛小隊を構えているのか?」

軍曹が一瞬反応した後 表情を落として言う

「いえ… そう言う 訳では…」

ハイケルが疑問し 軍曹に問う

「軍曹?」

マイクの声が届く

『間もなく13時丁度です!皆さん 一層の警備強化を お願いします!では カウント 5・・4・・』

ハイケルが気を取り直し サブマシンガンを構え周囲を見渡す 対岸側の警機の警備2人が顔を見合わせ頷き合うと立ち去る ハイケルが気付き顔を向ける


【 政府懇談会場 5階 】


イヤホンからマイクの声が聞える

『・・3・・』

隊員Aが周囲を見渡している後方で隊員Bが気付いて言う

「あれー?アッちゃん?アッちゃんの殴った 警機の人… どっかいっちゃうよー?もう開会なのに」

隊員Aが顔を向けて言う

「なら 開会時に移動する作戦なんだろ?きっと」

イヤホンからマイクの声が聞こえる

『2・・』

隊員Bが言う

「なーんだ 残念…」

イヤホンからマイクの声が聞える

『1・・』

隊員Aが言う

「残念じゃなくて ラッキ… ん?」

隊員AとBの視線の先 天上からポロポロと時限爆弾が落ちてくる 隊員AとBが疑問すると 時限爆弾がカウントを終了させる 隊員AとBが驚いて 隊員Bが叫ぶ

「アッちゃんっ!」

隊員Aが叫ぶ

「伏せろーっ!」

隊員AとBが伏せると同時に 時限爆弾が爆発する


【 政府懇談会場 6階 】


ハイケルが床に伏せ目をつぶっている 軍曹がハイケルを庇って盾を構えた状態で振り返り叫ぶ

「少佐ぁっ!ご無事でありますかぁーっ!?」

ハイケルが身を起こし イヤホンを押さえて叫ぶ

「マイク少佐!各班の状況をっ!」

イヤホンからマイクの声が届く

『1階から6階 全ての階にて 爆撃を確認っ!各班無事ですっ!』

ハイケルが立ち上がって言う

「直ちに全隊員を 保護対象者の警護へ向かわせろ!私が先行す…」

ハイケルが驚き視線を上げると キラーマシーンがハイケルへ向く ハイケルが疑問すると キラーマシーンが銃撃を行いながらハイケルへ向かって来る ハイケルが瞬時に回避しながら言う

「軍曹っ!」

軍曹が振り返りキラーマシーンの銃撃を盾で防ぎつつ言う

「少佐ぁっ!後方から 同じ物がっ!」

ハイケルが顔を向けると 対通路からもキラーマシーンが銃撃を行いながら向かって来る ハイケルが軍曹と背を合わせサブマシンガンを放つがキラーマシーンのボディーに弾かれる ハイケルが手榴弾を投げ叫ぶ

「回避っ!」

軍曹がドアを体当たりで壊し 部屋へ入りハイケルが続く 通路で爆発が起きる ハイケルが拳銃を準備して言う

「軍曹っ!君は 保護対象者の援護へ向かえっ!ここは私が食い止めるっ!」

軍曹が言う

「しかしっ!」

ハイケルが言う

「命令だっ!行けっ!」

ハイケルが部屋を飛び出す ハイケルが走りながら拳銃を放つ 銃弾がキラーマシーンの銃の付け根を破損させて行く ハイケルがキラーマシーンの側面へ回避すると同時にキラーマシーンの銃へ打撃を与え取り外す 他のキラーマシーンが銃撃を行いながら向かって来る ハイケルが振り返り表情を強張らせつつ回避する 軍曹がハイケルの前に盾を構える 銃弾が盾に防がれる ハイケルが軍曹へ向く 軍曹が視線を向けずに居る ハイケルが視線を細め立ち上がると拳銃を放つ ハイケルの銃弾が再びキラーマシーンの銃を破損する 軍曹が立ち上がると ハイケルが言う

「保護対象者の救護へ向かうぞ!軍曹っ!」

軍曹が言う

「了解」

ハイケルが会場のドアを蹴破る 会場内に武装集団と警機の隊員が倒されている ハイケルが一瞬驚いてから振り向くと 側室のドアからゲストたちが覗き見ている ハイケルがそれを確認してから正面へ視線を向ける エルムβリーダーが立ち上がりハイケルを見る ハイケルが呆気に取られて言う

「エルム少佐…?」

エルムβリーダーの後方に サングラスをした9人のエルムβがサブマシンガンを構える ハイケルの後方に隊員たちがやって来て 隊員Bが叫ぶ

「少佐ぁー!」

ハイケルがハッとして顔を向けて叫ぶ

「総員っ 撤退しろっ!」

隊員Bが呆気に取られて言う

「え?」

隊員Aが疑問する ハイケルがエルムβリーダーへ顔を向ける エルムβリーダーが顎を引くと エルムβたちがサブマシンガンを放つ 軍曹がハイケルの前に盾を構える ハイケルが表情を怒らせる エルムβリーダーがサブマシンガンを放ちながら向かって来る ハイケルがサブマシンガンを放ちながら言う

「総員!撤退だっ!」

エルムβリーダーが軍曹の盾を踏み台にハイケルへ攻撃を仕掛ける ハイケルが応戦 回避する 軍曹が振り返ると エルムβたちがサブマシンガンを放つ 軍曹が慌てて盾で防いで言う

「少佐ぁっ!」

ハイケルがエルムβリーダーと対戦し 顔を向き合わせて言う

「どう言うつもりだっ!エルム少佐!?」

エルムβリーダーが言う

「『お前はレギスト機動部隊の隊長として 失格だ』」

ハイケルが驚くと エルムβリーダーがハイケルを蹴り飛ばす ハイケルが押され構え直すと エルムβリーダーがハイケルを見る ハイケルが表情を顰めて言う

「余計なお世話だ!」

ハイケルがサブマシンガンを放ち エルムβリーダーへ向かう エルムβリーダーが回避し後退する ハイケルがサブマシンガンの弾倉を変える 隊員たちが言う

「少佐っ!」

ハイケルが言う

「何をしている お前たちでは力不足だ 撤退しろっ」

隊員Fが言う

「しかしっ 相手は複数ですっ 少佐お1人ではっ」

ハイケルが横目に隊員Fを見る その視界にキラーマシーンが映り ハイケルが瞬時に拳銃を取り出し撃つ キラーマシーンが銃撃を行う ハイケルが叫ぶ

「総員!前室へ回避しろっ!」

隊員たちが驚き慌てて部屋へ逃げ込む 軍曹がハイケルと対側を見て言う

「少佐っ!後方にもっ!」

ハイケルが焦る 軍曹がハイケルの後方へ盾を構える ハイケルが自分側のキラーマシーンへ拳銃を放つ エルムβリーダーがM82を放つ 重い銃声2発でキラーマシーン2台が破壊される ハイケルが驚く エルムβリーダーが言う

「『帝国が動き出した M82ー16径 強化弾を用意しろ』」

ハイケルが言う

「何の話だっ!?」

エルムβリーダーがハイケルを見る ハイケルがエルムβリーダーへ拳銃を放つ エルムβリーダーが銃弾を最小限の動きで避ける ハイケルが呆気に取られる エルムβリーダーがハイケルに襲い掛かって来る ハイケルが防戦した後 一瞬の後 攻撃に転じる ハイケルがエルムβリーダーと格闘していると エルムβたちがサブマシンガンを放ちつつ 隊員たちへ向かう 隊員たちが驚き慌てて逃げ出す ハイケルが隊員たちへ向くと エルムβリーダーがハイケルを殴り飛ばす ハイケルが表情を顰め 体勢を立て直しサブマシンガンを放ち言う

「軍曹っ!隊員たちをっ!」

軍曹が隊員たちの前に盾を構える キラーマシーンが再びやって来る ハイケルが視線を向けると エルムβリーダーがM82を放ち次々にキラーマシーンを破壊する ハイケルが悔しがりつつ ハッとして隊員たちを見る エルムβ9人から1人が飛び出し 隊員たちへ向かって行く ハイケルが向かおうとすると エルムβリーダーがハイケルを攻撃する ハイケルが慌てて応戦する 隊員たちがエルムβへサブマシンガンを放つ エルムβが回避して隊員らへ向かって来る 隊員Bが視線を強め 立ち上がって言う

「このーっ!」

隊員Bがマシンガンを放つ エルムβに当たりエルムβが倒れる 隊員たちが驚き 隊員Aが言う

「やったぁっ!」

隊員Fが言う

「俺たちもやるぞっ!」

隊員たちが武器を構える エルムβたちが動き出す ハイケルが慌てて言う

「お前たちでは 無理だっ!撤退しろっ!」

エルムβたちが銃撃する 隊員たちが驚き慌てて軍曹の影へ隠れる エルムβリーダーが言う

「『お前はレギスト機動部隊の隊長として 失格だ』」

ハイケルが言う

「黙れっ」

ハイケルがエルムβリーダーを攻撃する エルムβリーダーが回避する エルムβたちが隊員たちへ襲い掛かって行く 隊員たちが焦る 軍曹が叫ぶ

「少佐ぁーっ!」

ハイケルが叫ぶ

「あぁああーーっ!」

ハイケルがトランスしてエルムβリーダーを攻撃し倒すと 続いて 隊員たちへ向かっているエルムβたちを攻撃する ハイケルが次々とエルムβたちを倒して行く 隊員たちが呆気に取られて言う

「す… すげぇ…」

隊員Aがハッとして ハイケルの視界に入っていないエルムβに気付き 慌てて叫ぶ

「少佐!後ろにっ!」

隊員Bが駆け出し サブマシンガンを放ちつつ叫ぶ

「このぉーーっ!」

隊員Bの攻撃に エルムβが倒れる 隊員Aが言う

「やったぜっ!バイちゃ… 危ないっ!」

隊員Bが驚いて言う

「え?」

隊員Bが振り返った先 隊員Aが隊員Bを押し倒す 隊員Aの肩に銃弾がかする 隊員Aが悲鳴を上げる

「ぎゃあっ!」

隊員Bが慌てて叫ぶ

「アッちゃんっ!?」

隊員Bが慌ててサブマシンガンを放つ エルムβが回避する 隊員Bが隊員Aへ焦って言う

「アッちゃんっ!何でっ!アッちゃんっ!」

隊員Aが傷を押さえつつ苦しそうに言う

「気付いたら 勝手に… っはは …バイちゃん 今こそ 俺の… 盾の出番…」

隊員Bが言う

「ばかぁっ!そんなのっ 出来る訳無いじゃないっ!」

隊員Bがハッとして顔を上げる エルムβがサブマシンガンを構える 隊員Bがサブマシンガンを放とうとすると弾切れている 隊員Bが叫ぶ

「しょ… 少佐ぁーーっ!」

軍曹が隊員Bを見て ハイケルへ叫ぶ

「少佐ぁっ!バイスン隊員をっ!」

ハイケルがエルムβを倒すと振り返り 隊員Bへ向かっていたエルムβへサブマシンガンを放つ エルムβが被弾して倒れる 最後のエルムβがハイケルへ襲い掛かって来る ハイケルが怒りを押し殺して言う

「良くも俺の…っ 許さんっ!」

ハイケルが怒りの一撃を放ち エルムβに圧し掛かる エルムβのサングラスが破損して顔が見える ハイケルが驚いて言う

「なっ!?」

軍曹がハイケルの後方へやって来て言う

「少佐っ!」

ハイケルが呆気に取られたまま立ち上がって言う

「これはっ!?…一体どう言う事だっ!?」

ハイケルが改めて周囲を見渡す エルムβたちが身を起こしハイケルへ向く エルムβリーダーが立ち上がりハイケルを見る 隊員たちが驚き言う

「エ、エルム少佐が!?」

「じゅ… 10人っ!?」

ハイケルが表情を険しくして言う

「軍曹 これはどう言う事だ?」

軍曹が視線を落として言う

「エルム少佐は… 悪魔の兵士であります 何度でも…」

ハイケルが言う

「何度でも蘇る …こう言う事かっ」

エルムβリーダーが言う

「『お前はレギスト機動部隊の隊長として 失格だ 現状を続けるのであれば レギストを去れ』」

ハイケルがエルムβリーダーを見て言う

「それを知らせるために 私の部下を攻撃したのか?」

エルムβリーダーがハイケルを見る ハイケルが言う

「言った筈だ 許さん と」

ハイケルが拳銃を向け エルムβリーダーを撃ち抜く エルムβリーダーが撃たれた箇所を見る ハイケルが言う

「何度でも蘇るのなら 1度の死を持って償え」

エルムβリーダーがハイケルを見て言う

「『任務完了』」

エルムβリーダーの体が青い炎に包まれる ハイケルが驚く エルムβリーダーの体が瞬時に燃え尽き白い粉になって落ちる ハイケルが呆気に取られる 隊員Bの声が響く

「少佐ぁーっ!」

ハイケルが振り返る 隊員Bが隊員Aの傷を押さえている ハイケルがイヤホンを押さえて言う

「マイク少佐 救護班を呼べ」

ハイケルが隊員Bの下へ駆け寄る イヤホンからマイクの声が届く

『了解っ!直ちにっ!』

ハイケルが隊員Aの傷を見る 隊員Bが慌てて言う

「少佐っ!?アッちゃん 大丈夫ですよねっ!?少佐!?」

ハイケルが拘束布を用意しながら言う

「心配ない かすり傷だ」

隊員Bが呆気に取られて言う

「へ?」

ハイケルが隊員Aの肩に拘束布を巻きながら言う

「他の者たちは 武装集団の拘束と ゲストの保護を」

隊員たちが慌てて言う

「はっ!了解っ!」

隊員たちが散る ハイケルが隊員Aの肩を縛り上げる 隊員Aが悲鳴を上げる

「いてぇっ!」

ハイケルが処理を施しながら言う

「軍曹」

軍曹が言う

「はっ 少佐っ!」

ハイケルが言う

「君は 保護対象者の下へヴォール・アーケスト・ハブロス様の保護へ向かえ」

軍曹が一瞬驚き表情を落として言う

「…申し訳ありません 少佐っ」

ハイケルが振り返って言う

「どうした」

軍曹が言う

「ヴォール・アーケスト・ハブロスは… 父はこの会場には来ていません …恐らく エルム少佐が代行を」

エルムβたちが立ち去っていく ハイケルがそれを目で追ってから言う

「…了解」

救護班が駆け付けて来る ハイケルが交代し 立ち上がり周囲を見渡す キラーマシーンの残骸が残っている ハイケルが視線を細める


【 国防軍レギスト駐屯地 バックスの職務室 】


ハイケルが言う

「任務完了 負傷者 国防軍17部隊隊員1名 保護対象者及びゲスト、会場従業員においては0名 襲撃犯と思われる武装集団10名を拘束 以上」

バックスが言う

「了解 国防軍17部隊 この度の任務評価は Aランクと認定する 他に連絡事項はあるか?」

ハイケルが言う

「…帝国の…」

バックスが疑問して言う

「うん?何だ?」

ハイケルが言う

「元国防軍レギスト機動部隊隊長 エルム少佐より ”帝国が動き出した M82ー16径 強化弾を用意しろ” …との伝達が」

バックスが驚く ハイケルが視線を細めて言う

「バックス中佐 何か知っているのか?」

バックスが間を置いて言う

「ハイケル少佐 任務の達成 ご苦労だった 下がって良い」

ハイケルが一瞬間を置いた後 敬礼してから立ち去る


ハイケルが部屋を出ると 軍曹が立っている ハイケルが軍曹を見ると 軍曹が頭を下げて言う

「申し訳ありませんでしたっ!少佐っ!」

ハイケルが間を置いて言う

「エルム少佐の作戦か?」

軍曹が言う

「いえっ!」

ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う

「自分がっ!了承致しましたっ!」

ハイケルが間を置いて言う

「…そうか」

ハイケルが歩き出す 軍曹が顔を向け追って歩く 軍曹が言う

「アラン隊員には 自分から 侘びを致しますっ!」

ハイケルが言う

「アラン隊員の負傷は 私の責任だ 私が謝罪をする」

軍曹が一瞬驚いた後言う

「いえっ!自分がっ!」

ハイケルが言う

「エルム少佐の 言う通りだった」

軍曹が驚く ハイケルが言う

「アラン隊員やバイスン隊員が居なければ 他の隊員たちを守れなかった …隊員たちを守れなかったと言う事は 保護対象者の警護も同じ …それは 任務の失敗を意味する …認めたくは無かったが …エルム少佐の言った事は …正しい」

軍曹が言う

「少佐…」

ハイケルが一度目を閉じてから言う

「…以上だ」

軍曹が言う

「はっ!」

ハイケルが歩みを続ける 軍曹が視線を落とし続く ハイケルが言う

「…それで?」

軍曹が言う

「は?」

ハイケルが振り返って言う

「他に用があるのか?」

軍曹が呆気にとられて言う

「えっ?…あ、いえっ …その」

ハイケルが言う

「何かあるのなら言え 無ければ今日の任務は終了している 訓練も同じだ」

軍曹が視線をめぐらせつつ言う

「りょ、了解っ その… 少佐は この後の ご予定は?」

ハイケルがシャワールームへ向かいながら言う

「シャワーを浴びて帰宅するだけだ」

ハイケルがシャワールームに入って行く 軍曹が呆気にとられてシャワールームを見上げてから言う

「む?…そういえば この様な所が… いつか使おうと思っていたのだが すっかり忘れていた」

軍曹が中を覗き見る ハイケルが脱衣を行っている 後方から隊員Bが現れて言う

「あ!軍曹!任務お疲れ様でありまーす!」

軍曹が言う

「お?おおっ バイスン隊員っ!お疲れであるっ!」

隊員Bがシャワールームへ入り脱衣しながら言う

「軍曹も シャワーでありますかー?軍曹と一緒になったのは 初めてでありますー って言うか このシャワールームで一緒になるのって 少佐とアッちゃんだけかもー?」

軍曹が呆気にとられて言う

「なぁ!?そ、そうであるのか?何故…」

隊員Bが個室に入りシャワーを出す ハイケルが言う

「バイスン隊員か アラン隊員の具合はどうだ?」

軍曹がハッとする 隊員Bが言う

「はー!3針縫って終了でありますー!3日後には抜糸出来るとかでー?あー でも 訓練の参加は5日待てって 言われたそうでありますー!」

軍曹が表情を和らげる ハイケルが言う

「そうか」

隊員Bが言う

「でも アッちゃんはやる気満々なんでー 様子見て出来そうなら 朝トレに来るって言ってましたー!」

軍曹が疑問する ハイケルが言う

「…折角来るようになった所 すまなかったな バイスン隊員」

軍曹が表情を正す 隊員Bが言う

「えー?」

ハイケルが視線を落として言う

「お前にも悪かったと思っている… だが、助かった 礼を言う…」

隊員Bが呆気に取られた後 微笑して言う

「…あははっ!やっぱ面白いやー!少佐ぁー!はははっ!」

ハイケルが疑問する 隊員Bが言う

「俺たちは 同じレギスト機動部隊の 仲間じゃないですか!だったら 一緒に戦うのは当然なのにー!悪かったとか お礼言うとか チョー面白れー!ははははっ!」

ハイケルが呆気に取られる 隊員Bが笑んで言う

「それに!俺 今日、スッゲー嬉しかったです!あ、もちろん アッちゃんが怪我しちゃったのは 嬉しくなかったけど… けど、俺 今日は 初めて 少佐と一緒に 戦ってるって感じがして!」

ハイケルが驚く 隊員Bが続けて言う

「それにっ!アッちゃんともっ!…あ、ついでに軍曹ともー!」

軍曹が衝撃を受けて言う

「つ、ついでっ!?」

隊員Bが笑んで言う

「にひひっ」

ハイケルが微笑して言う

「…そうだな」

軍曹が視線を落とし苦笑している ハイケルが個室から出て脱衣所へ向かう 隊員Bが続いて個室から出ながら言う

「あ、それから!アッちゃん 早く朝トレとか訓練に戻って 自分も少佐や俺と一緒に戦えるように 訓練しまくるーって言ってましたー!アッちゃんやる気満々ですよー 軍曹に負けない位ー!」

軍曹が反応し笑んで言う

「自分も やる気なら!アラン隊員には 負けないのであるっ!」

ハイケルが体を拭きながら言う

「それで銃が撃てれば 何も言う事は無いのだがな」

軍曹が衝撃を受け慌てて言う

「うっ!…そっ それはっ!真に 申し訳ないと思っており…っ」

隊員Bが言う

「えー?でも 俺、少佐が羨ましいですー あの時アッちゃんが 軍曹みたいに盾持ってたら アッちゃん怪我しないで済んだしー アッちゃんの死体の盾じゃなくて 最初っから 盾持っててくれたら良いのにーって 思ってますもんー 少佐ぁー?」

ハイケルが言う

「盾の所持は確かに有効だが その1名が攻防を同時に行う事は難しい それと アラン隊員には 別の役が合っていると 私は思っている」

軍曹と隊員Bが反応し2人がハイケルを見て 隊員Bが言う

「えー?それって どんな役でありますかー?少佐ぁー?」

ハイケルがシャツを着ながら言う

「アラン隊員は…」

軍曹がふと気付きハイケルの胸にある刻印を見て驚く 隊員Bが言う

「アッちゃんはー?」

ハイケルが言う

「瞬発力に秀でている部分がある それを特化し攻撃に生かせば 拳銃による先制射撃が行える筈だ だが 今回のように 他の隊員の保護を… 盾を所持し 軍曹の様に 防御に徹っしてしまうとなれば…」

ハイケルが気付き軍曹を見て言う

「どうした 軍曹?」

隊員Bが疑問して言う

「軍曹ー?」

軍曹がハッとして慌てて言う

「あ!じ、自分はっ その…っ た、たった今!急用を思い出しました為っ …失礼致しますっ!お疲れ様でありましたぁっ!少佐ぁっ!」

軍曹が敬礼する ハイケルが疑問して言う

「…そうか お疲れ」

軍曹が走って行く 隊員Bが言う

「任務の後にも用事があるって… やっぱ 防長閣下は忙しいんですかねー?少佐ぁー?」

ハイケルが言う

「…そうかもな」

ハイケルがシャツのボタンを閉める 刻印が隠れて行く


【 メイリス家 隠し別荘 】


ラミリツがソファに膝を抱えて座りTVを見ている TVに政府懇談会場の映像が流れ レポーターが言う

『…尚、懇談会に出席した方々にお怪我などは無く 前回に引き続き起きた この政府主催懇談会襲撃事件も 国防軍と警察機動部隊の 迅速なる…』

ラミリツが溜息を付いて言う

「国防軍… アイツも居たのかな…」

ラミリツが視線を落とす メイドが部屋に来て言う

「ラミリツ様 皇居宗主メルフェス・ラドム・カルメス様より お電話が入っておりますが」

ラミリツが疑問して言う

「メルフェス・ラドム・カルメス… あぁ… 僕じゃなくて 兄上でしょ 聞かなくても分かれよ」

メイドが言う

「いえ、ラミリツ・エーメレス・攻長閣下へ お話があると」

ラミリツが不満そうに言う

「怪我が治ってないから 出れないって言って」

メイドが言う

「かしこまりました」

メイドが部屋を出て行く ラミリツが溜息を吐く メイドが戻って来て言う

「ラミリツ様」

ラミリツが言う

「所で 兄上何処行ったの?行き先ぐらい 聞いとけよ」

メイドが言う

「その… 旦那様の 件であると…」

ラミリツが驚いて言う

「え…?」

メイドがやって来てトレーに乗せた受話器を差し出す ラミリツが戸惑いながらも受話器を取り 保留を解除して言う

「…兄上の件で話って どう言う意味 カルメス殿」

ラミリツが驚き目を見開く


【 マスターの店 】


店の来客鈴が鳴り ハイケルが入って来る マスターが振り返り言う

「よーう!ハイケルー!会いたかったぜー?」

ハイケルが疑問して言う

「どう言う意味だ?」

ハイケルがカウンター席に向かう マスターが苦笑して言う

「相変わらず無愛想だなぁ 嘘でも ”俺も会いたかったぜー”とか 言ってみろよ?」

ハイケルが言う

「嘘は嫌いだ それに もし仮にそうと思ったとしても 俺は その様な言い方をするつもりは無い」

ハイケルが椅子に座る マスターが苦笑して言う

「まぁな?良く考えたら お前がそんな風に言ったりしたら 世界の終わりみたいで 気持ち悪いか?プククッ」

ハイケルがムッとして言う

「会いたかった のではなく 怒らせたかった の間違いか?」

マスターが笑って言う

「っははははっ!まぁ そうかもな?この所 お前 強化訓練のお陰で 全然来ないから たまにはこうやって からかって 怒らせてやらないと つまらないんだよ」

ハイケルが言う

「…俺はアラン隊員か」

マスターが言う

「ん?アラン隊員?」

ハイケルが言う

「何でもない」

マスターが言う

「そう言えば 今日 この前襲撃があった 政府主催の懇談会が また催されたんだって?」

ハイケルがマスターを見て言う

「…知らなかったのか?今回も レギストが任務に当たっていたんだ」

マスターが苦笑して言う

「おいおい、俺はもう 情報部の主任じゃないんだぜ?レギストの任務を 全て見てる訳じゃないんだ それに 今は マイク少佐が頑張ってるんだろ?」

ハイケルが言う

「ああ…」

マスターが疑問して言う

「うん?浮かない顔だなぁ?またマイク少佐や情報部の事で 何かあったのか?」

ハイケルが言う

「いや そちらは問題ない」

マスターが首を傾げて言う

「それじゃぁ どうした?」

ハイケルが言う

「M82ー16径 強化弾 と言うのは 何処で手に入る?」

マスターが表情を顰めて言う

「M82?おいおい 本気で 警空の空撃機と 銃撃戦でもやるつもりかぁ?大体 そんな強力な銃弾なんて 普通の銃じゃ撃てたモンじゃないだろう?1、2発撃ったらシャム決定だぞ?」

ハイケルが言う

「リボルバーを使っていた」

マスターが驚く ハイケルが言う

「エルム少佐だ」

マスターが言う

「まさか… また 懇談会場で会ったのか?」

ハイケルが言う

「ああ…」

店の来客鈴が鳴る マスターが顔を向けると 軍曹がハイケルを見て一瞬驚いた後 マスターを見て微笑する マスターが頷いて言う

「いらっしゃい アーヴィン君 ハイケルも来てるぜ?」

軍曹が言う

「はっ!少佐っ お疲れ様でありますっ!」

軍曹が敬礼する ハイケルが言う

「急用ではなかったのか?」

軍曹が苦笑して言う

「あ、はい…っ それが!自分の勘違いでありました!」

マスターが軽く笑って言う

「そそっかしいなぁ?アーヴィン君は ほら こいつも!」

マスターが言って白い本を見せる 軍曹が呆気に取られた後苦笑して言う

「はっ 申し訳ありません マスター 実はそちらを回収に」

マスターが微笑して言う

「まぁ 折角来たんだ コーヒーでも飲んで 今日の任務の話でも 聞かせてくれよ?今丁度 その話をしていたんだ」

軍曹が呆気に取られてからハイケルを見る ハイケルがコーヒーを飲んで言う

「伝説のマーガレット中佐からの 誘いだぞ 軍曹」

軍曹が呆気に取られてマスターを見る ハイケルが言う

「それに 私も君に話がある」

軍曹が反応し言う

「…はっ!そでは お邪魔をさせて頂きますっ!」

軍曹がカウンター席に向かう


マスターが言う

「何度でも蘇る 悪魔の兵士に 通常弾が利かない 銃撃ロボット?…お前ら 良く生きて戻って来たなぁ?」

ハイケルが言う

「銃撃ロボットは 何とか処理出来なくもなかったが 数が増えれば それも難しくなるだろう …だが、エルム少佐の銃は 一撃であのロボットの機体を破壊していた 恐らくあれが」

マスターが言う

「M82ー16径 強化弾 か… うん、なら 簡単だ 直接エルム少佐ご本人に 伺えば良いんだろ?」

マスターが軍曹を見る 軍曹が衝撃を受け視線を落として言う

「は… はっ では… 何とか エルム少佐に お伺いを…」

ハイケルが言う

「あの会場に居たエルム少佐は 全て偽物だった 以前会ったあのエルム少佐より 遥かに弱かったからな」

マスターが言う

「それでも お前1人じゃ倒し切れず アラン隊員1名が負傷した… 本物のエルム少佐が居たら やばかったよな?ハイケル」

ハイケルが視線をそらして言う

「分かったさ… エルム少佐が 俺に何を伝えたかったのか …それに 隊員たちが 教えてくれた …共に 戦うと」

軍曹が微笑する マスターが微笑する ハイケルがマスターへ向いて言う

「だが俺は 完全に奴の作戦を 模すつもりは無い」

マスターが疑問し軍曹と顔を見合わせる ハイケルが言う

「奴の様に 力の無い隊員たちまで 引き連れて行くつもりは無い 従って これからも 以前の作戦を元とし 先行隊員ではなく 先行小隊として 向かう事とする そして俺は」

ハイケルが視線を強めて言う

「その先行小隊を引き連れ エルム少佐率いる私設自衛小隊が守りを固める ヴォール・ラゼル・ハブロスの屋敷を …襲撃するっ!」

軍曹が衝撃を受けて言う

「なぁあーっ!?」

マスターが呆気に取られて言う

「は…?はぁ?お、おい ハイケル?」

ハイケルが軍曹に言う

「軍曹っ!」

軍曹が慌てて言う

「は、はっ!少佐ぁっ!?」

ハイケルが言う

「ヴォール・ラゼル・ハブロスの屋敷は ハブロス家の同じ敷地内にあるのだろう?だとすれば 多少君の方にも被害が及ぶかもしれないが その際は”了承”してくれ」

軍曹が衝撃を受け慌てて言う

「えぇええっ!?い、いえっ そのっ!お、祖父上の屋敷は祖父上の物でありますしっ ハブロス家の屋敷の所有者は 父上でありますのでっ 自分が了承を致しましてもっ!?」

ハイケルが言う

「屋敷の修理ぐらい 高位富裕層であれば 大した事では無いだろうっ!?こっちは任務中に 2度も襲撃されたんだ 3度目はこちらから襲撃するっ!そして 今度こそ… 偽者も含め 本物のエルム・ヴォール・ラゼル少佐を ぶっ倒すっ!」

ハイケルがテーブルを叩いて立ち上がる マスターが呆気に取られる ハイケルがマスターを見て言う

「と、言う事だ 何か良い作戦が有れば 製作を頼む それと 屋敷の見取り図をっ …とは言え アラン隊員の復帰や 先行小隊メンバーの確定もまだ済んではいない 更にそれらの者たちの訓練もまだだ 従って 準備は喫茶店のマスターをやりながらで良い 以上だっ!」

ハイケルが立ち去る 軍曹が慌てて言う

「しょっ 少佐ぁーーっ!?」

店のドアが閉まる マスターが呆気に取られた状態から苦笑し 笑って言う

「あっははははっ あれが 悪魔の兵士ねぇ?ただの 負けず嫌いな 戦争ごっこ好きの 子供のままじゃねぇか?」

軍曹がはっとしてマスターへ向く マスターが苦笑する 軍曹が視線を落とす マスターが言う

「アーヴィン君は やっぱり 知っていたのか?」

軍曹が白い本を見て言う

「その… 原本には 守りの兵士の命が 危険に晒される時に 攻撃の兵士は その敵を討つ為に 呼び寄せられる… と書かれていて …少佐は 自分の命が危険に晒された時に 2度も… いえ 他の時もっ 自分を助けてくれました それに…」

マスターが言う

「神の刻印…だろ?」

軍曹が言う

「はい… 先ほど 偶然に… …し、しかしっ!自分はっ!」

マスターが軍曹を見る 軍曹が苦笑して言う

「そんな事はっ!どうでも良いのでありますっ!」

マスターが笑んで言う

「ああ!同感だね!」

軍曹がホッとする マスターが笑んで言う

「それに あいつは それこそずっと以前から 悪魔の兵士みたいな奴だったんだ それが ”本当にそうだった” ってだけの話だ 何も変わらんよ?」

軍曹が笑んで言う

「はっ!少佐は やはり変わらず レギストの頼もしい隊長にして 指揮官でありますっ!」

マスターが言う

「よし!それじゃ 俺は そんなあいつのために ヴォール・ラゼル・ハブロス邸 襲撃作戦を立ててやらないとな!」

軍曹が衝撃を受け慌てて言う

「なぁあーっ!い、いえっ それはっ!そちらはっ!?あ、あのっ マ、マスタぁーーっ!?」

マスターが笑っている 軍曹が慌てている


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】


ハイケルが隊員たちの前で言う

「諸君も任務に慣れて来た頃だろう そこで これからは より本格的な作戦の実行 及び 確実なる任務の達成を目指すために 諸君一人一人の能力に見合った装備を固定し そちらの訓練を行って行く」

隊員たちが顔を見合わせる ハイケルが言う

「今までの訓練、任務においての各人のデータを参考に 諸君のメインアームを決定した 正し これは暫定であり 能力は本人の意思によっても左右されるものだ 従って この決定に不服がある者は 申し出てくれて構わない」

隊員Cが言う

「メインアーム?なら皆が別々の武器を使うって事か?」

隊員Gが言う

「俺、命中率低いんだよなぁ 拳銃に固定されたらどうしよう…」

隊員Fが言う

「俺は一発入魂が好きなんだ 逆のサブマシンガンとか 固定されたら やる気無くなるなぁ…」

隊員Bが言う

「2人ともー そしたら 別のにしてーって 少佐にお願いすれば良いじゃん?」

隊員Gが言う

「少佐が決めたのに 反論出来る訳無いだろう?」

隊員Bが言う

「えー?」

ハイケルが言う

「では 指名を行う バイスン隊員、エレス隊員、ハックス隊員、ガルム隊員、ヴェイル隊員 お前たちは サブマシンガンを使用した突破能力に秀でている そちらをメインに 拳銃もしくはデリンジャーを副武装に携帯 それらの訓練を強化しろ」

名を呼ばれた隊員たちが敬礼して言う

「はっ了解っ!」

隊員Gが言う

「良かったぁ~」

隊員Bが笑う

「少佐はちゃんと見てるから ガッちゃんが命中低いのは知ってるんだよー?にひひっ」

隊員Gが焦って言う

「げっ まじか…っ!?」

隊員Gがハイケルを見る ハイケルが言う

「続いて サキシュ隊員、フレッド隊員、イリアス隊員、マシル隊員は 小銃をメインに拳銃の訓練も同時に行い 命中能力を更に向上させろ」

名を呼ばれた隊員たちが敬礼して言う

「はっ了解っ!」

隊員Fが笑んで小さくガッツポーズをする 隊員Mが笑む 隊員Bが言う

「ねー?」

隊員Fが頷いて言う

「ああっ …けど 選んでもらったからには もっと頑張らなきゃな!」

隊員Mが頷き言う

「俺もだっ」

隊員FとMが腕を組む

ハイケルが言う

「続いて、ドルト隊員ジャフ隊員ナクス隊員…」

ハイケルが指名を続けている 軍曹がハイケルを見て微笑し頷く 隊員たちが周囲と話し合っている ハイケルが言う

「最後にゼクス隊員」

隊員Xが敬礼して言う

「はっ!」

ハイケルが言う

「お前は命中率も悪くない 更に言えば 体力や筋力も評価されている 従って これと言った欠点も無いが 逆に 秀でている部分も見え辛い お前自身は 何が得意だと認識している?」

隊員Xが言う

「はっ 自分は… 銃火器の知識に乏しい為 どの様な武器が自分に合っているのかが 判りかね…」

ハイケルが言う

「直接どの武器が得意だと 言ってくれなくても構わない 何になら自信があるのか 抽象的な事でも良い 答えろ」

隊員Xが視線を落として言う

「はっ 自分は…」

軍曹が隊員Xを見る 隊員たちが顔を向ける 隊員Xが軍曹を見てから ハイケルへ言う

「自分はっ 持久力や忍耐力には 自信がありますっ!」

ハイケルが言う

「分かった では お前は 他の隊員たちとは異なり その2つを最も必要とする箇所へ就いて貰う 上手くすれば お前の方が万能である事から 上位へ評価される可能性もある 期待している」

隊員Xと軍曹が疑問する 隊員たちが顔を見合わせ言う

「俺たちとは異なり… だって?」

「持久力と忍耐力を必要とする武器って 何だ?」

隊員たちがハイケルを見る ハイケルが隊員Xへ何かを言っている


ハイケルが言う

「では これより それぞれのメインアームを使用した訓練を行う 小銃をメインへ固定された隊員は 第1射撃場へ向かい訓練を行え」

一部の隊員が敬礼して言う

「はっ!了解っ!」

ハイケルが言う

「バイスン隊員」

隊員Bが敬礼して言う

「はーっ!少佐ぁー!」

ハイケルが言う

「お前と同じ武器を使用する隊員たちを 第2射撃所へ案内し そちらで訓練を行え」

隊員Bが言う

「はーっ!了解しましたー!」

隊員たちが驚く ハイケルが言う

「軍曹」

軍曹がハッとして敬礼して言う

「はっ!少佐ぁっ!」

ハイケルが言う

「君はゼクス隊員を連れて行け 訓練内容は君に任せる」

隊員たちが驚き隊員Xを見る 隊員Xが軍曹へ敬礼して言う

「軍曹っ!宜しくご指導を お願い致しますっ!」

軍曹が言う

「うむっ!了解したっ!自分に付いてくるのだっ!ゼクス隊員っ!」

隊員Xが言う

「はっ!了解っ!」

隊員たちが言う

「もしかして…」

「ゼクス隊員は…」

ハイケルが言う

「その他の者たちは 私が案内をする バイスン隊員 そちらは頼んだぞ 行け」

隊員Bが敬礼して言う

「了解しましたー!少佐ぁー!よーし!お前たち 私に付いて来いーっ!」

隊員Bが走って行く 隊員たちが衝撃を受け慌てて付いて行く 残った隊員たちが呆気に取られる 軍曹が言う

「よーし!では 我々も向かうのだっ!まずは…」

軍曹が90キロの重りを背負って言う

「体力強化のため 重量物を背負って 訓練所周回200週だぁ!行くぞ ゼクス隊員っ!自分に続けーっ!」

隊員Xが60キロの重りを背負って叫ぶ

「了解っ!軍曹に続きますっ!」

軍曹と隊員Xが走って行く 隊員たちが呆気に取られる ハイケルが言う

「行くぞ」

隊員たちが慌てて敬礼して言う

「はっ!少佐に続きますっ!」

ハイケルが歩いて行く 隊員たちが続く


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】


隊員が言う

「いやぁ~ まさか 帰宅前のこの時間に この食堂で 夕食を食う日が来るとはなぁ~?」

「ああ!この食堂で食う位なら 帰宅途中の店に寄った方が よっぽど美味いもんなー?」

隊員たちが笑う 別の部隊の隊員が来て言う

「あれ?レギストの連中じゃないか?どうしたんだ 夜間訓練はとっくに終わったんだろ?」

隊員が言う

「ああ、そうなんだけど 今日から訓練内容が変わってさ?気合入れてやってたら こんな時間だったんだよ それで」

別部隊の隊員が言う

「へぇ~ 良いよなぁ機動部は 色んな訓練やるんだろ?警備部なんて 入隊当時から変わらないんだぜ?」

隊員が言う

「それじゃ メインアームも変わらないのか?」

別部隊の隊員が言う

「メインも何も 元々 警備部の装備は サブマシンガンと拳銃って決まってるんだよ 強いて言えば どっちをメインにするかは 個人次第だけどな」

隊員が言う

「へぇ~」

「メインアームと言えば まさか 少佐が俺たち一人一人の能力を 全員分見てるなんて思わなかったよ」

「見てるっていっても きっと情報部の取った データ表でも見たんだろう?」

「けど、ゼクス隊員への話とか… あぁ言うのはやっぱり 実際に見て無いと出来ない話だろう?」

「そもそも 少佐に名前呼ばれたのなんて 入隊時以来だったなぁ?」

「俺は今の部隊編成当初から入ってたから 呼ばれたのは初めてだったよ 何か新鮮だったなぁ~ はははっ」

「そのお陰で こんなにやる気が出たのかもな?」

隊員たちが笑う 別部隊の隊員が言う

「へぇ~ 俺らなんて交代の時は名前を呼ぶのが当然だから そんなんでやる気なんて起きないけど 確かに お前ら良い意味で ちょっと変わったって感じだよ」

隊員たちが顔を見合わせてから言う

「何処まで続くか分からないけどな?」

「おいおいっ」

皆が笑う 隊員が言う

「…変わったって言ったら 少佐も 変わったよなぁ?」

隊員たちが顔を見合わせ言う

「そう言えば… そうだな?以前は」

「ああ、以前は… あんまり 俺らの事仲間扱いしなかったもんな?」

「確かに、一緒に作戦に行っても 後衛の俺たちとは 会うこともなかったしな?」

「それじゃもしかしたら メインアームを使いこなせるようになれば これからは 後衛の俺たちとも一緒に戦ってくれるのかもしれないぜ?」

「よーし 折角 俺たちの事も視野に入れてくれたんだ 頑張るぞー!」

隊員たちが笑う


【 マスターの店 】


マスターが言う

「なるほど~ メインアームの固定ねぇ?」

軍曹が笑顔で言う

「はいっ!お陰であいつらも 士気を高めた模様であります!そして 自分もっ!メインアームを同じくする仲間が増え より一層の気合が入りました!…でありますっ!」

マスターが言う

「良く考え付いたものだよなぁ それこそ メインも何もお構いなく 何でもパーフェクトにこなすあいつが 一人一人の個性を考えるとはねぇ?」

軍曹が一瞬呆気に取られた後否定して言う

「いえっ!少佐は以前より 隊員たち一人一人の事をご覧になり 隊員たちを とても大切にされているお方であります 従って それらの個性を考え メインアームを固定されると言うのは 実に少佐らしいお考えであると 自分は思いました!…でありますっ!」

マスターが言う

「隊員たちを大切に… か、そうだなぁ 言われて見れば あいつが任務の際 自分が先行隊員になるのだって 元を正せば 隊員たちの安全を考慮しての事だもんなぁ」

軍曹が微笑して言う

「それに少佐は エルム少佐に 自分の隊員を傷付けられた際 とてもお怒りになられていました 少佐は真に 隊員思いな隊長であられます!」

マスターが苦笑して言う

「本人は 悪魔の兵士 なのになぁ?プクク…っ!」

軍曹が慌てて言う

「ああっ あの、マスターっ!その事はっ!どうか ご内密にっ」

マスターが苦笑して言う

「別に隠す必要は無いだろ?ラミリツ攻長じゃなくて ハイケルが本物の攻長閣下ですー!なんて言っている訳じゃ無いんだ そもそも 攻撃の兵士ならまだしも 悪魔の兵士だ なんて 普通の人が聞いたって 理解されるもんじゃないだろう?」

軍曹が表情を困らせて言う

「それは… 確かにそうでありますが その… 自分は 少佐のお心が 傷付かれるかと…」

マスターがコーヒーを淹れながら言う

「そうかぁ?それこそ ハイケルは気にしないと思うけどなぁ?生まれ付き 本物の神の刻印が刻まれていましたーって だけの話だろ?」

軍曹が驚いてマスターを見る マスターがコーヒーを飲みながら言う

「そういえば 見ただけで同じ事が出来る能力や 聞いた言葉を一字一句間違えずに覚えていられるって 能力も… もしかしたら そのお陰なのかもしれないが」

軍曹が言う

「あ、あの いえ… マスター?」

マスターが苦笑して言う

「それとも?本当は 片親が 黒い翼でも生えた 本物の悪魔なんです!とでも 言うのか?」

軍曹があっけに取られた後あわてて言う

「え?いえっ!そんな事は まったくもって 無い… 筈でありますが…」

マスターが苦笑して言う

「だろぉ?…まぁ、わざわざ 本人に伝えてやる必要も これと言ってある訳でもないから 言うなと言われれば言わないが… アーヴィン君?」

軍曹が顔を上げる マスターが言う

「どうした?なんだか 元気が無いみたいだが?」

軍曹が慌てて言う

「ああっ!いえっ じ… 自分は… はいっ!少々 訓練に気合を入れ過ぎて 眠くなってしまった様で!」

マスターが呆気に取られた後苦笑して言う

「ははっ なるほど それじゃ」

軍曹が立ち上がって言う

「はいっ それでは 本日はそろそろ おいとまさせて頂きますっ!お疲れ様でありましたっ!マスターっ!」

マスターが言う

「うん、お疲れさん!」

軍曹が去って行く マスターが少し考えてから言う

「俺が深入りする事じゃ ないのかもな… それこそ門外不悉 アールスローン戦記の原本に関する事じゃ 俺にはお手上げだ」

マスターがPCを見る


翌日――


【 国防軍レギスト駐屯地 外 】


軍曹の叫び声が聞こえる

「ぬおぉおーーっ!まだまだぁーーっ!」

隊員Aがやって来て金網越しに苦笑して言う

「お!やってるなぁ?…ん?」

隊員Aの視線の先 軍曹に続いて 隊員Xが追いかけて叫ぶ

「まだまだぁーーっ!」

軍曹と隊員Xが走っている 隊員Aが周囲を見渡して言う

「あれ?…どうなってるんだ?」

隊員Aが正門へ向かって行く


【 国防軍レギスト駐屯地 館内 】


ハイケルが歩いている バックスが現れ言う

「ハイケル少佐」

ハイケルが振り返り敬礼する バックスが敬礼を返し近くへ来て言う

「君がエルム少佐から受けた 言付けに関する者を紹介する 来たまえ」

ハイケルが一瞬驚いた後 言う

「…了解」

バックスが先行する ハイケルが続く


【 国防軍レギスト駐屯地 館内出入り口付近 】


バックスに続きハイケルが出て来る 隊員Aがハイケルを見かけて言う

「あっ 少佐…?」

隊員Aがハイケルと共に バックスが居る事に気付き疑問する 2人が車両保管庫へ向かって行く 隊員Aが疑問した後言う

「ま、いっか?バイちゃん探して 見つからなかったら 軍曹に聞けば良いもんな?」

隊員Aが立ち去る


【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】


バックスに続き ハイケルが入って来る ハイケルが気付き顔を向けると 見慣れないトラックからロンドスが降りて来て バックスを見てからハイケルを見て微笑して頭を下げる ハイケルが疑問し バックスを見る バックスが言う

「ハイケル少佐 こちらは 個人で銃火器の開発、製造を行っている ロンドス殿だ」

ハイケルがロンドスへ敬礼して言う

「国防軍レギスト機動部隊隊長 ハイケル少佐であります」

ロンドスが頷き言う

「陛下のパレードに続き あの皇居での映像を見た時から 気付いていました」

ハイケルが疑問する バックスが言う

「ハイケル少佐 ロンドス殿は エルム少佐から依頼を受け エルム少佐の求める 銃火器の開発を行って居られた方だ」

ハイケルが驚く バックスが言う

「私は そのエルム少佐から 来る時のために頼まれていた もし、再び 帝国との戦いが起こるような事があれば ロンドス殿を レギストの隊長へ紹介する様にと」

ハイケルがバックスを見る バックスが苦笑して言う

「以前も言ったが 君はあのエルム少佐によく似ている 君の力を知ったときから こうなるのではないかと 私は密かに思っていた」

ハイケルが言う

「私がエルム少佐に?…それは 私の能力が似ていると言う事か?」

バックスが苦笑して言う

「それも勿論だが… 君の雰囲気が とてもよく似ている まるで 悪魔の… いや 悪魔さえ驚かせる様な 気迫を持っているからな?」

ハイケルが言う

「…よく言われる」

バックスが笑う ロンドスが苦笑する バックスが言う

「では ロンドス殿 後は宜しいでしょうか?」

ロンドスが微笑して頷いて言う

「ええ 悪魔も 怒らせさえしなければ お優しいものですよ 良く存じておりますので…」

バックスが頷きハイケルの横を抜けていく ハイケルがムッとして言う

「…俺は悪魔か?」

ロンドスが荷台へ向かいながら言う

「ハイケル少佐 どうか こちらへ」

ハイケルが向かう


【 国防軍レギスト駐屯地 第2射撃場 】


隊員Aが言う

「へぇ~?メインアームかぁ~?」

隊員Bが言う

「そうそうー!俺はサブマシンガンがメイン!それで 拳銃かデリンジャーを予備に持て って言われてるんだけど~」

隊員Aが言う

「バイちゃんは正直 命中低いから デリンジャーで良いんじゃないか?軽いし」

隊員Bが言う

「うんうん!でもさー 俺 それよりも 手榴弾の方が 副武装に良いと思ってるんだけどー?」

隊員Aが呆気に取られて言う

「はぁ…?ってか 手榴弾は 副武装にはならないだろ?」

隊員Bが言う

「えー?駄目かなぁ?まぁ良いや 後で少佐にお願いしてみるつもりー!」

隊員Aが苦笑して言う

「相変わらずだなぁ?」

隊員Bが言う

「にひひっ それで!アッちゃんは もう怪我は大丈夫なの?」

隊員Aが苦笑して言う

「実は まだちょっと痛いっちゃ痛いんだけど… やっぱ 訓練したくてさ?怪我してない場所なら動かしても良いかなって 思ったんだけど…」

隊員Bが言う

「そっかー …あ、アッちゃん アッちゃんのメインアーム って何?発表の時 アッちゃん居なかったし 少佐も言わなかったからー」

隊員Aが言う

「あぁ まだ少佐に挨拶してないんだ だから、これから行って その時聞いて来るよ …けど 俺 バイちゃんと違う訓練になったら ちょっと つまらなくなるなぁ それに俺 サブマシンガンより…」

隊員Bが言う

「少佐は アッちゃんなら 拳銃による先制攻撃が出来るだろうって 前にそう言ってたから やっぱ 小銃メインのグループかもー?だとしたら 訓練はここじゃなくて 第1射撃場の方になっちゃうねー?」

隊員Aが言う

「だよなー?新しい訓練が始まったのは楽しみだけど 残念だよ」

隊員Bが苦笑して言う

「けどさ!どうせ この訓練終わった後の 夕トレの時は 一緒に出来るじゃん!」

隊員Aが笑んで言う

「そうだな!後 朝トレの時も!」

隊員Bが笑んで言う

「そうだよ!だから アッちゃん 聞いておいでよ!それで、お互い得意ウェポンマスターして 2人で最強コンビ組もうよ!」

隊員Aが笑んで言う

「おっ!そいつは良い!それじゃ 行ってくる!またな!バイちゃん」

隊員Bが言う

「うん!」


【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】


ハイケルが荷台へ向かうと ザキルが微笑して言う

「初めまして!ハイケル少佐!」

ハイケルがロンドスを見る ロンドスが微笑して言う

「私の孫です 私も見ての通りの歳ですので エルム少佐と共に開発して来た技術は 全てこの孫へ託すつもりです …とは言え まだまだ 技術が足りておりませんので 当分は助手のままとなりますが 基本的な説明などは させるようにしておりますので」

ザキルが荷台から飛び降りて言う

「それでは!早速!」

ザキルが荷物を用意する ロンドスが荷台に腰を下ろす ハイケルがザキルへ言う

「よろしく頼む」

ザキルが顔を上げ微笑して言う

「はいっ!名誉あるお役目を頂きまして!…えっと ふつ?ふつつ…ものですが?」

ハイケルが疑問する ロンドスが言う

「付け焼刃では 敬語も銃火器も役に立たんぞ?」

ザキルが苦笑して言う

「す… すんません…」

ハイケルが言う

「実力が伴っているのなら 他の事には目を瞑る 気にするな」

ザキルが笑んで言う

「はいっ!」

ロンドスが微笑する ザキルが箱を取り出して言う

「こちらが ご用命のM82ー16径 強化弾と 専用の拳銃です!射程距離は中距離まで可能ですが 威力が高い分反動は強いので ご注意を!」

ハイケルがザキルを見る ザキルが箱を向ける ハイケルが言う

「撃っても?」

ザキルが言う

「どうぞ!」

ハイケルが銃を取り回転式弾倉に一発弾を入れる ザキルが言う

「その銃は 試作品でシングルアクションを採用してますが エルム少佐がご利用の方はダブルアクションです どちらでも製作は可能なので ご用命の際にお申し付け下さい」

ハイケルが遠くの的を見つけ片手で銃を構える ロンドスが言う

「少佐」

ハイケルが引き金にかけていた指を止めロンドスを見る ロンドスが言う

「本来では拳銃に用いない火薬量の為 強力な威力とそれに見合った 反動を兼ね備えております 試し撃ちは両手の方がよろしいかと」

ロンドスがザキルを見る ザキルが頷き下がる ハイケルが無表情に持ち替えて構え直す 一瞬の後ハイケルが引き金を引く 重い銃声が響くと同時にハイケルが表情を顰めて言う

「うっ!」

ハイケルの体が銃撃の反動で後方へ弾かれる ハイケルの体が抑えられる ハイケルが振り返ると ザキルが抑えていて 苦笑して言う

「ね!凄いでしょっ!?」

ハイケルが体勢を立て直して言う

「…感謝する」

ザキルが微笑する ロンドスが微笑し頷いて言う

「しかし、この銃で この距離での命中とは …流石です」

ザキルがロンドスを見てから 的を見て驚いて言う

「す…げぇ~」


【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 外 】


隊員Aが後方を見ながら歩いて来て言う

「バックス中佐は館内に入っていったけど 1人だったもんな?って事は 少佐はまだ 車両保管所の中か?」

隊員Aが車両保管所の中を覗き込む 途端に 重い銃声が響き 隊員Aが驚いて身を強張らせる 銃声が消え隊員Aが周囲を見渡して言う

「今のは…?そうだっ!あの時 エルム少佐が使ってたっ!?」

隊員Aが走って行く


【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】


ザキルがライフルを見せていて言う

「そしてこちらが M90!ライフルスタイルになっている分 ハンドガンよりはマシですが この辺りが人の撃てる限界ですね これ以上だと」

ハイケルが言う

「威力はどの程度になる?先ほどのハンドガンであっても 厚さ10ミリの鉄を貫通出来るだろう?」

ザキルが喜んで言う

「M82だって 15ミリは行けますよ!それに こっちなんて!」

ロンドスが咳払いをする ザキルが慌てて言う

「え… M82の方であっても 厚さ15ミリの鉄を貫通出来ますぅ~… そして そちらですと 20ミリから23ミリは行けます!政府警察機動部隊の装甲車とか 余裕っすよっ!」

ロンドスが咳払いをする ザキルがハッとして苦笑する ハイケルがライフルを受け取り 眺めながら言う

「これなら 本当に警空の空撃機も 敵ではなくなるな…」

ロンドスが言う

「敵は 政府警察等ではなく マシ―ナリーですよ ハイケル少佐」

ハイケルがロンドスを見て言う

「マシーナリー?」

ロンドスが言う

「ええ… 先日のキラーマシーンなど 子供騙しです マシーナリーの力は あんな物ではありません」

ハイケルが言う

「キラーマシーン?」

ザキルが銃の組み立てをしながら言う

「帝国本土には 人間みたいに動けるマシーナリーまで居るらしいですよ?おっかないですよねぇ 悪魔の兵士の方が よっぽど」

ロンドスが怒って言う

「ザキル!」

ザキルが焦って言う

「あぁあっ!御免なさいっ!」

ハイケルが目を細めて言う

「悪魔の兵士… エルム少佐の事か?」

ロンドスが苦笑して言う

「いえ?我々は 何も…?」

ハイケルが疑う ザキルがMT90を見せて言う

「そして これはとっておき!まだ試作も試作で 火薬すら入ってないですけど 完成すれば 一発で戦車だって破壊出来ますっ」

ハイケルが言う

「そんな威力をライフルで放ては 反動が強過ぎて 全身の骨が折れるだろう 撃った奴が死ぬぞ?」

ザキルが苦笑して言う

「そぉなんですよね…?でも エルム少佐のご希望作ですよ?もうすぐご本人に納品です」

ハイケルが驚き 思い出してから 視線をそらして言う

「…何度でも蘇る奴になら 使えるのだろう」

ザキルがロンドスを見る ロンドスがハイケルを見て苦笑する 隊員Aが車両影に隠れて見ている ザキルがハイケルからMT90を返されながら言う

「それで 少佐は 本日はどちらをお求めですか?」

ハイケルが疑問する ザキルがMT90を分解しながら言う

「こちらはまだ お渡しできませんが ライフルやハンドガンの方でしたら 試作品であっても実戦でご利用頂けますので 正規の物が出来るまで そちらをご利用頂く事が可能です またキラーマシーンとか 襲ってくるかもしれませんから 何か1つくらい 備えて置かれた方が!」

ハイケルがロンドスを横目に見る ロンドスが静かに頷く ハイケルが言う

「…そうだな なら ハンドガンで良い」

ザキルが笑んで言う

「ですよね!?」

ロンドスが顔を顰めて息を吐く ザキルが反応しつつ頭を掻き荷物を取りに行く ハイケルが言う

「銃弾はどれほどある?」

ザキルが銃の箱と銃弾の箱を持って来て言う

「銃弾は5ダースほど持ってきましたけど これから銃の製作をしても 3日掛からないんで 正規の方をお持ちする時に持ってきますよ だから… とりあえず1ダースも有れば良いんじゃないのかなぁ?」

ロンドスが表情を顰める ハイケルが言う

「そうだな」

ザキルが微笑して言う

「それじゃ ハンドガンと銃弾1ダースで!あ、ハンドガンは正規の納品後で良いんですが 銃弾の方はそちらが正規の物になるので先にお願いします 1ダースで締めて50万です 今請求書書きますんで」

ハイケルが疑問して言う

「請求書?」

ザキルが請求書を探しつつ言う

「はい、これらの事は 国防軍との契約はされておりませんので ハイケル少佐と我々との 個人売買って事になりますから」

ハイケルが衝撃を受けて言う

「なっ!?個人売買…っ!?」

ザキルが困り探しながら言う

「あれ?じいちゃん 請求書無いよ?」

ロンドスが言う

「助手席のクロークのなかじゃ 荷台に等置く物ではない」

ザキルが言いながら向かう

「どうせ荷台で書くんだから良いじゃん…」

ロンドスが言う

「お客様の目に付く所へ置いてはならん 礼儀の1つじゃ しっかり覚えておくのじゃぞ」

ザキルが助手席を探りながら言う

「んなの 良いと思うんだけどなぁ… どうせ 渡す物じゃん… まったく 堅いんだから…」

ハイケルがロンドスへ向いて言う

「待てっ!?貴方方とは 国防軍の関連で付き合うのではないのかっ!?」

ロンドスが言う

「国防軍とは別の契約で 一部の銃火器の納品はしておりますが 対マシーナリーの武器弾薬に関しましては あくまで個人的にと言う事になっております」

ハイケルが言う

「何故だっ!?帝国との戦いは 国同士の戦いになるのだろう!?ならば アールスローン国 国防軍がそれを担うのが当然だっ!」

ロンドスが言う

「それは この戦いが公にされてはならないからなのですよ ハイケル少佐 従って エルム少佐も 個人的にと 私へお話を持ち掛けて下さったのが 我々との始まりでありました」

ハイケルが視線をそらして言う

「…確かに 国防軍の経費で落とすとなれば それは 政府との合同決算にて 公にされてしまう事となるが…」

ザキルが請求書を書きながら言う

「お支払いは 私どもの口座へ 1週間以内にお願いします 口座番号のご案内も一緒にお渡ししますから そちらに」

ハイケルがザキルの手元を見て言う

「ま、待ったっ!」

ザキルが疑問して言う

「え?」

ハイケルが言う

「1ダースで50万と言う事は 1発5千と言う事か いくら特注品でも たかがハンドガンの銃弾としては高すぎるだろう」

ザキルが微笑して言う

「はい!しかし ご安心を!こちらには初期開発料が加算されての金額なので 2ダース目からは3分の2 もしかしたら ハイケル少佐の代で それ以下にもなるかもしれません! …でも、今日は1ダース目なので」

ザキルが請求書に記入しようとする ハイケルが焦って言う

「待てっ」

ザキルが疑問して言う

「え?」

ハイケルが視線をそらして言う

「帝国との戦いとやらは… まだ始まってはいない これは… 備えであって 私はまだ その様な戦いが起きるとは …認識していない」

ザキルが言う

「は?はぁ…?」

ザキルがロンドスを見る ロンドスが軽く笑って言う

「ふぉっふぉっふぉ 手に入る銃火器は何でも取り揃えたエルム少佐とは違い とても平和主義であられるのですね ハイケル少佐?」

ハイケルがロンドスを見る ロンドスが苦笑して言う

「しかし、既に帝国は動き始めています あのキラーマシーンはもちろん 政府の動きも それを象徴している 可能な限りの備えを… これは エルム少佐が良く仰っておられた言葉ですが そのエルム少佐と共に戦った 私からの警告でもあります 少佐…」

ハイケルが視線を細める ザキルが2人を交互に見た後 言う

「それじゃ 銃弾1ダースのご請求 50万を1週間以内に こちらの…」

ハイケルが焦って言う

「分かったっ!だが 待てっ!」

ザキルが請求書への記入を止め 顔を上げて言う

「えぇ?」

ハイケルが銃弾ケースから 銃弾を掴み取って言う

「俺はまだ 戦うつもりは無い だが 備えはする 従って… 銃弾は この1丁に収まる 6発で良い… 以上だ」

ハイケルが拳銃に弾を入れて行く ザキルが言う

「え…?6発だけ?」

ハイケルが装填を終わらせ銃を確認する ザキルがロンドスを見る ロンドスが苦笑して頷く ザキルが表情を顰めつつ言う

「はぁ… それじゃ 銃弾6発のご請求で 絞めて 3万円を一週間以内に こちらの口座へお願いしますー…」

ザキルがハイケルへ請求書を渡す ハイケルが請求書を見て軽く息を吐いて言う

「…了解」


【 国防軍レギスト駐屯地 正門 】


ロンドスのトラックが出て行く 


【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 外 】


ハイケルが歩いていると 隊員Aがやって来て敬礼して言う

「遅くなりましたっ!少佐っ!」

ハイケルが立ち止まって言う

「アラン隊員… 怪我はまだ 抜糸すら終えていないのだろう?」

隊員Aが敬礼を解除して言う

「はっ!しかし 寝てても立ってても あまり変わらないんで 出来る範囲で訓練をしたいと思い 出隊しました!」

ハイケルが言う

「…そうか」

隊員Aが微笑して言う

「それで バイちゃ… ああっ バイスン隊員から 伝え聞いたのでありますが 各隊員がメインアームを固定されたと… 俺の… あっ 自分は 何を?」

ハイケルが言う

「アラン隊員のメインアームは 小銃となる だが、お前の場合は 他の隊員たちとは異なり お前の持つ瞬発力を特に生かしたい 従って 訓練場所や内容は小銃グループと同じくなるが メインアームは 拳銃にする事を推奨したい しかし どちらをメインにするのかは お前へ任せる」

隊員Aが笑み敬礼して言う

「はっ!少佐のご期待に添えられますよう 訓練に励みますっ!」

ハイケルが微笑して言う

「訓練は第1射撃場にて既に行われている そちらへ向かえ」

隊員Aが言う

「はっ!了解!」

ハイケルが歩き出そうとして言う

「…それと」

隊員Aが走り出そうとした足を止めて振り返って言う

「はっ?」

ハイケルが言う

「先ほどの事は 非公式なものだ よって 他言無用とする」

隊員Aがハッとして表情を落として言う

「少佐…」

ハイケルが歩き出しながら言う

「…以上だ」

隊員Aがハイケルを見て言う

「あ、あのっ 少佐っ!」

ハイケルが立ち止まる 隊員Aがハイケルへ向き直って言う

「…少佐の 軍階の給料って そんなに…」

ハイケルが衝撃を受ける 隊員Aが気付いて言う

「じゃなかったっ …帝国とのって!…キラーマシーンって言うのは やっぱり あの 懇談会場に入ってきた あの機械の事ですよね?あんなのと 俺たち これから戦う事に… その為の訓練なんですかっ!?」

ハイケルが表情を顰めつつ再び歩き出す 隊員Aが再び呼び掛けようとして止めて立ち去る


【 マスターの店 】


マスターがテーブルに置かれたM82の銃を見ながら言う

「へぇ~… こいつが 厚さ15ミリの鉄さえ貫く 拳銃ねぇ…」

ハイケルが言う

「エルム少佐は片手で扱っていた あのキラーマシーンのスピードを考慮すると 片手での射撃は必須だ 場合によっては 2丁を打つ必要すら…」

マスターが苦笑して言う

「おいおい そんな事してたら 肩の脱臼所じゃなくなるだろう …大体 両手で撃って支えられた奴が 何言ってるんだ」

ハイケルがムッとしてコーヒーを飲む マスターがM82を手に取りながら言う

「そもそも お前の場合は… 重ぉ~」

ハイケルがコーヒーを置いて言う

「分かっている 俺はスピードを主にした作戦に秀でている よって 重装備や 強化火力の武器を持つ事は 推奨されない」

マスターが言う

「アーヴィン君に エルム少佐の事を少し聞いたんだが 体格はお前より大柄らしいな?」

ハイケルが言う

「俺よりは大柄かもしれないが 一般から考えれば普通と言われる範囲だ …悪かったな」

マスターが苦笑して言う

「別に悪か無いが …この銃を扱うには ちょっとハンデだったかもな?」

ハイケルがマスターから銃を受け取りながら言う

「考慮する 俺は奴と違って 何度でも蘇る訳では無いからな それなりの訓練を行い この銃を扱える腕にするつもりだ」

マスターが一瞬止まり ハイケルを見てから苦笑して言う

「例え 何度でも蘇ったとしても それは別のお前… いや、別のエルム少佐だったんだろう?そうとなれば やっぱり 不死身とは言わないのかもな?」

ハイケルが言う

「そもそも 奴らの中には 以前に会ったエルム少佐は居なかった …まるで同じ姿をした 動く人形だ やつらは人ですらない様子だった …もしや あれが帝国の 人型のマシーナリーと言う奴なのか?」

マスターが言う

「マシーナリー ねぇ…」

マスターがPCへ向かう ハイケルが言う

「聞いた事は?」

マスターがPCを操作しながら言う

「残念ながら …ただ、お前にその銃を提供した ロンドス殿は知っていた …って事は 帝国の情報ではあっても この国において既に知られている言葉だ となれば…」

ハイケルが言う

「エルム少佐の情報と共に 国防軍からは消されているのではないのか?」

マスターが言う

「国防軍には無い そっちは分かってる もしあったのなら とっくに情報部主任だった俺が知っている しかし、ここへ来て 政府が動いて そのマシーナリーの一部である キラーマシーンってのが 政府の施設へ入って来たんだろう?だったら」

ハイケルが言う

「政府のデータを覗く気か?…気を付けろ」

マスターが微笑して言う

「ご心配をどうも」

ハイケルがそっぽを向いて言う

「そもそも 国防軍レギスト駐屯地の情報部で調べるのなら 心配は無いんだ」

ハイケルがコーヒーを飲む マスターが苦笑して言う

「そんなに熱烈なスカウトを お前からもらえる日が来るとはね?」

ハイケルが不満そうに言う

「集中しろ」

マスターが苦笑して言う

「はいはい」


【 ハブロス家 軍曹の部屋 】


軍曹が音楽イヤホンを付け本を読んでいる 携帯が着信しバイブレーターで机が振動する 軍曹が一瞬驚き音楽プレイヤーを止め イヤホンを外しつつ携帯のモニターを見て疑問して言う

「む?知らん番号からだ?」

軍曹が携帯に出て言う

「失礼だが 誰であろうか?」

携帯からラミリツの声がする

『…アンタ 僕を …助けるって 言っただろ』

軍曹が驚いて言う

「その声は…」


【 カルメス邸 】


携帯から軍曹の声がする

『ラミリツ攻長であるか?』

ラミリツが苦笑して言う

「…でも そんなの嘘だよな …そうだって言えよ」

携帯から軍曹の声がする

『嘘ではないっ!自分はっ!』

ラミリツが悔しそうに言う

「嘘だって言えよっ!」


【 ハブロス家 軍曹の部屋 】


軍曹が呆気にとられて言う

「う… 嘘などではないっ!本当であるっ!自分は ラミリツ攻長が困っているのなら …助けを必要とするのならっ!いつでも助けに向かうのであるっ!」

携帯からラミリツの声がする

『…っ …な …んでっ』

軍曹が疑問し表情を強めて言う

「ラミリツ攻長!?」

携帯からラミリツの声がする

『僕は 悪魔の兵士じゃないって 言っただろっ!知ってるくせにっ!それなのにっ!何でだよっ!?』

軍曹が言う

「そんな事は関係ないと 自分は言ったのだっ!自分は何があろうと 貴君を助けに行くっ!その言葉に 嘘偽りは無いっ!」

携帯から沈黙の後 ラミリツの声がする

『…た …馬鹿だよ …やっぱ 大馬鹿だ…』

軍曹が慌てて叫ぶ

「ラミリツ攻長っ 何があったのだっ!?今何処に居るのだっ!?」

ラミリツが言う

『…なら 助けに来てよ …反政府組織 ガイズに捕まった』

軍曹が驚いて言う

「なんとっ!?何故 ラミリツ攻長が!?分かったっ では…っ 政府警察の者たちにも伝えてっ!」

ラミリツが言う

『っはは …少しは考えろよ 政府警察に助けを求められるんなら とっくにやってる…』

軍曹が呆気にとられて言う

「む?…そう言えば」

ラミリツが言う

『アンタじゃなきゃ駄目だから …だから連絡したんだよ …馬鹿 絶対 分かれよっ …アンタ馬鹿なんだから アンタだけで考えるなよっ!? …うっ!』

軍曹が疑問して言う

「ラミリツ攻長っ!?」

ラミリツが言う

『…場所は アイリム地区ロイドストリート101U30』

軍曹が慌てて白い本に住所を書く ラミリツが言う

『…けど 無理だろ だって… アールスローン戦記の原本と 引き換えなんだ いくらアンタでも』

軍曹が驚く ラミリツが言う

『…だから ははっ …最後に アンタに連絡する羽目になるなんて 最悪 …それから … …ゴメン』

軍曹が驚く 電話が切れる 軍曹が慌てて言う

「ラミリツ攻長っ!」


【 カルメス邸 】


メルフェスが言う

「余計な事は 仰らない様にと」

ラミリツが息を吐き 苦笑して言う

「…こうでも言わないと ばれちゃうと思ったんだよ 今まで悪態吐いてたのに 急に仲良くしたら 怪しいと思うでしょ?普通」

メルフェスが苦笑して言う

「演技でしたか っはは これはこれは 恐れ入りましたね?」

ラミリツの首に当てられていたナイフが外される 首に薄く血が滲んでいる ラミリツがそれを拭って後方の人を睨む ラミリツがメルフェスに向き直って言う

「それで どうする気?」

メルフェスが微笑して言う

「もちろん 防長閣下が貴方を助けるために 原本を持って来てくれるのを待ちますよ」

ラミリツが言う

「いくら馬鹿でも 持って来ないでしょ?僕は偽物だし…」

メルフェスが苦笑して言う

「しかし、貴方の見事な演技を聞いた様子では 持って来てくれそうでしたよ?」

ラミリツが視線をそらして言う

「アイツが持ってこようとしても きっと家族が止めるよ… ハブロス総司令官が」

メルフェスが言う

「構いません」

ラミリツが疑問して言う

「構わないって… 原本が手に入らなくても良いって事?」

メルフェスが言う

「いいえ そうではなく 今回の要求に 防長閣下や 国防軍総司令官が従わなくても と言う事です 我々には次の手段もありますので」

ラミリツが言う

「次のって…?」

メルフェスが微笑して言う

「例え貴方が偽物であっても良いのです 政府の攻長閣下を 国防軍の防長閣下が見殺しにする その映像を メディアへ中継出来ればね?」

ラミリツが呆気に取られる メルフェスが微笑して言う

「その時はまた 迫真の演技をお願いします そうですね 今度は 兄上ではなく 防長閣下へ助けを求め 悲鳴を上げる攻長閣下 …クックック」

ラミリツが表情を強張らせる メルフェスが立ち上がって言う

「まぁ そちらは次の手段ですので 今は今の作戦を確認に向かいましょう?我々と 御同行下さい 偽攻長閣下?」

メルフェスが笑う ラミリツが表情を顰める ナイフを持った男がラミリツを脅す ラミリツがムッとしてナイフを払って立ち上がる


【 ハブロス家 アースの部屋 】


軍曹が怒って叫ぶ

「何故なのだ 兄貴っ!以前の時は 協力してくれたではないかっ!」

アースが言う

「アーヴィン これは罠だ」

軍曹が言う

「罠っ!?」

アースが言う

「アールスローン戦記の原本を欲しているのは 反政府組織ガイズだけではない そもそも あのラミリツ・エーメレス・攻長が 個人的に お前へ助けを求めるなど 明らかに罠だと分かる」

軍曹が衝撃を受ける アースが溜息を吐いて言う

「アーヴィン…」

軍曹が表情を困らせて言う

「し、しかしっ!もしも本当であったならっ!?罠ではなく 本当に ラミリツ攻長が 反政府組織ガイズに捕まり 俺に助けを求めているのだとしたらっ!」

アースが受話器に手を掛けながら言う

「ならば 政府警察にお知らせをして 差し上げるだけだ」

軍曹が気付き慌てて言う

「だっ 駄目なのだっ!兄貴っ!」

アースが言う

「何故だ?」

軍曹が困り言う

「え?…えっと… ラミリツ攻長が 駄目であると…」

アースが言う

「何故 駄目なんだ?」

軍曹が考えて言う

「う?うむ…?お、恐らく?要求の原本を持つのが 俺である為… ではないかと?」

アースが受話器を置いて言う

「アーヴィン お前が… …いや 実に素直な弟であってくれて良かった お陰で犯人が分かったよ」

軍曹が衝撃を受けて言う

「えっ!?犯人がっ!?…いやっ!犯人は分かっているのだっ!ラミリツ攻長は 反政府組織ガイズに捕まったとっ!」

アースが言う

「いや、犯人は 反政府組織ではなく 政府そのものだ」

軍曹が驚いて言う

「えっ!?」

アースが言う

「その政府が作り上げた罠であるから 政府警察を起用されては意味が無い だから わざわざ 少し頭の回らないお前に 政府警察へ言うなと言ったのだろう 頭は回らずとも 素直に相談してくれるお前で良かった 下手に1人で動かれ お前まで捕まり 本当に原本を渡す羽目になっては 困るからな?」

軍曹が衝撃を受け表情を顰めて言う

「うっ… あ、頭が回らないというのは 俺が馬鹿であるという事か 兄貴…?」

アースが息を吐いてから言う

「…少しな?」

軍曹が衝撃を受ける アースが言う

「とにかく これで分かっただろう アーヴィン 要求は罠だ 攻長閣下は 捕まってなどいない これは全て 政府の自作自演だ」

軍曹が表情を困らせて言う

「し、しかし 兄貴 その攻長閣下は…」

軍曹がハッとする アースが疑問して言う

「攻長閣下が何だ?攻長閣下は… 防長のお前が 国防軍の代表である様に 国防軍の仲間である様に 彼は政府の代表であり 政府の仲間だ その彼が 政府の仲間と共に 国防軍のお前から 原本を奪おうとしている!」

軍曹が視線を落とし泳がせる アースが言う

「分かったか?アーヴィン …お前は人が良過ぎるんだ そもそも ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は…」

軍曹が顔を上げて言い掛ける

「兄貴っ ラミリツ攻長はっ!実はっ」

アース視線を強くして言う

「彼はメイリス家の人間だっ あのシェイム・トルゥース・メイリスの弟だ 汚い事だろうと 何でもするっ!」

軍曹が驚いて言う

「あ… 兄貴…?」

アースが苦笑して言う

「折角 お前や国防軍で助け出し 国防軍の駐屯地で 保護をして差し上げたと言うのに 勝手に出て行って 本当にガイズ等に捕まったと言うのなら それこそ… …フッ 目も当てられないな?」

軍曹が表情を顰め部屋を出ようとする アースが言う

「アーヴィン!分かっているのだろうなっ!?」

軍曹が一度立ち止まり振り返らずに言う

「…少し 頭を冷やしてくる」

アースが肩の力を抜く 軍曹が立ち去る


【 マスターの店 】


マスターが真剣にPCを操作し気付いて言う

「お?…よしっ!」

マスターが笑んでモニターを見ながら言う

「やったぞっ ハイケル!少なくはあるが マシーナリーの一覧をゲットだっ!流石は 元国防軍レギスト駐屯地 情報部の~」

マスターが言いながら振り返ると ハイケルがカウンターテーブルに伏して眠っている マスターが呆気に取られた後時計を見上げ苦笑して言う

「強化訓練でお疲れか?お前はいつも 何かに夢中になると 一直線で…」

マスターがハイケルの顔を覗き込む ハイケルが寝息を立てている マスターが苦笑して言う

「何処が悪魔なんだかなぁ…?ましてや マシーナリーなんかで あってたまるかよ?」

マスターがモニターに向き直ってモニターを見ながら言う

「にしても 酷いもんだ 帝国には人は居ないのかぁ?こんな機械が それこそ制御不能にでもなったら 敵も味方も関係無く 皆殺…」

ハイケルの携帯が鳴る マスターが反応する ハイケルが目を覚まし顔を上げ携帯を取り出す マスターが苦笑してモニターへ向き直る ハイケルが言う

「…軍曹?こんな時間に どうした?」

マスターが反応し振り返る ハイケルが言う

「問題ない …現在は 喫茶店マリーシアに居る …ああ 店は閉まっているが…」

ハイケルがマスターを見る マスターが頷く ハイケルが言う

「用があると言うのなら来い 待っている」


マスターが言う

「罠だって可能性は十分にあるが…」

マスターがハイケルを見る ハイケルが言う

「…それで?」

マスターがハイケルの視線の先 軍曹を見る 軍曹が視線を落として言う

「兄は 防長の自分が国防軍の仲間であり 攻長であるラミリツ攻長は政府の仲間である事から 今回の件は政府の仕業であると 自作自演であると言うのでありますが…」

マスターが言う

「まぁ 普通ならそう考えるかもなぁ …しかし」

軍曹が言う

「はい、ラミリツ攻長は 本物の悪魔の兵士… いえ、神の刻印を持った攻長では ないのであります ですので…」

マスターが言う

「それを政府の何者か… もしくは 政府そのものが知っていて ラミリツ攻長を利用すると言う事も考えられる そうとなれば ラミリツ攻長にとって 政府は敵にも仲間にもなりうる訳だ」

ハイケルが言う

「更に言うなら 政府以外のものにさえ その秘密が知られれば 利用される可能性がある 本当に反政府組織ガイズに 連れ去られたと言う可能性も 否定は出来ない」

マスターが言う

「偽りの刻印を持って国家家臣として認められたとなれば ラミリツ攻長は アールスローンの重罪法律まで犯したと言う事になる訳だし 極刑に架せられる 弱みを持ってるって言うのは 難しいな?本当に悪魔に呪われたと言っても 過言じゃないのかもしれない」

ハイケルが言う

「…くだらん 自分の身は 自分で守れば良いんだ 仮にも攻長だろう?」

マスターが苦笑する 軍曹が言う

「でしたら、自分も防長でありますっ 従って」

マスターが言う

「やっぱり アーヴィン君は 助けに行きたいんだよな?例え… 罠だと分かっていても」

ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う

「自分は 兄やラミリツ攻長の言う通り 馬鹿で何も分かりません 何が嘘で何が真実かも分からないでありますっ しかし 自分は ラミリツ攻長の言った言葉が 全て嘘であったとは …本当に 自分を騙そうとしていたとは 思えないのであります!」

ハイケルが軍曹を見て言う

「何故 そうと思う?相手が君を 罠に掛けようとしているのなら 言葉を巧みに操る事は可能だ」

マスターが苦笑して言う

「そうだなぁ アーヴィン君は優しいから 助けてくれって頼まれれば 信じちまいそうだかならなぁ?」

ハイケルがマスターを見て言う

「そこまで馬鹿ではないだろう?」

マスターが苦笑して言う

「馬鹿じゃなくて 優しいって言ってるんだよ 俺は」

軍曹が言う

「ラミリツ攻長は 自分が少佐やマスターの仰る様な者である事を ご存知であります そのラミリツ攻長が 自分を騙そうとするなら ”他の者に相談しろ” などと助言をくれるでありましょうか?」

ハイケルとマスターが軍曹を見る 軍曹が2人を見て言う

「自分は馬鹿でありますから 助けに来てくれ と言われれば その一言だけであっても 助けに向かいます!」

マスターが衝撃を受ける 軍曹が表情を顰めて言う

「ラミリツ攻長の言葉を 罠や嘘だなどとは 考えたく無いであります!そんな自分に ラミリツ攻長は 何度も”来るな”と… ”理由は他の者に尋ねれば分かる”と そう 助言してくれていたのだとっ …自分には そうと思えてなりませんっ!それにっ!」

軍曹の脳裏にラミリツの言葉が蘇る


『…だから ははっ …最後に アンタに連絡する羽目になるなんて 最悪 …それから … …ゴメン』


軍曹が表情を落として言う

「嘘で 最後などと… あのラミリツ攻長が 自分に ゴメンなどと」

マスターが苦笑して言う

「普通なら そこが一番怪しいと思うんだけどなぁ?」

ハイケルが言う

「こいつはそう言う男だ」

マスターが呆気に取られてハイケルを見る ハイケルがコーヒーを飲む マスターが言う

「それで アーヴィン君は どうするつもりなんだ?総司令官が許可を出していない以上 今回は 国防軍を使う事も出来ないだろう?だから…」

軍曹が言う

「はい、そこで マスターや少佐に ご相談をさせて頂きたいと 夜分遅くに失礼をさせて頂きましたっ!」

マスターが苦笑して言う

「そう言う時は ハイケルの方を先に」

軍曹が白い本をカウンターへ置いて言う

「いえっ!恐らく マスターの方が お詳しいかとっ!」

マスターが疑問してハイケルを見る ハイケルがマスターを見てから軍曹を見る 軍曹が言う

「一体どうしたらっ!?犯人たちへ原本を渡す事が 出来るのでありましょうかっ!?」

マスターが意表を突かれて言う

「そっちーっ!?」

軍曹が表情を困らせて言う

「要求の原本は 自分自身でありますっ しかし それを言った所で 犯人たちが了承してくれるのか!?そもそも 自分が原本であるなどと言って 分かってもらえるのか!?自分にはどうしたら良いのかが 分かり兼ねる為っ!お二方に お知恵をお借りしたいとっ!」

ハイケルが言う

「…その前に」

マスターが苦笑して言う

「そうそう、まずは 原本を渡さない方法を考え」

ハイケルが言う

「犯人たちの射殺許可を」

マスターが叫ぶ

「駄目に決まってるだろっ!?」

ハイケルが言う

「こちらが少数である場合は 最も重要な事だ それが得られないとなれば 作戦は困難になる」

軍曹が呆気に取られて言う

「作戦…?」

マスターが微笑して言う

「ラミリツ攻長を お助けしたいんだろ?アーヴィン君」

軍曹が慌てて言う

「そ、それはっ もちろんっ!し、しかし… 作戦とは?それにっ 犯人たちの射殺許可をとはっ!?」

マスターがPCへ向き直って言う

「今回は目的地へ向けての ナビゲートが要らない分 情報部の車両までは必要ないが…」

ハイケルが立ち上がって言う

「単発センサーは90万だったな …軍曹」

軍曹が言う

「は、はっ!?少佐ぁー!?」

ハイケルが振り返って言う

「熱源センサーの費用 93万を用意しておけ」

マスターが気付いて言う

「んんっ?何ですかー?その上乗せ3万は?ハイケル君?」

ハイケルが背を向けて言う

「1週間以内だと 厳しいんだ… 再来週の給料日に返す」

ハイケルが数歩歩く マスターが言う

「ハイケル君 そう言うことは 誤魔化さないで しっかりと お願いをするようにっ」

軍曹が呆気に取られて2人を見ている ハイケルが背を向けていた状態から 軍曹へ向き直って言う

「軍曹!」

軍曹が慌てて立ち上がって言う

「はっ!少佐っ!」

ハイケルがカウンターテーブルに両手を強く着いて頭を下げて言う

「給料日まで 3万を貸して下さいっ!」

軍曹が衝撃を受ける マスターが笑んで言う

「はい、良く出来ましたー!」


【 アイリム地区ロイドストリート101U30 】


メルフェスがラミリツを見下ろし苦笑して言う

「良かったですね 攻長閣下」

ラミリツが表情を顰める ラミリツの腕が後ろ手に縛られている メルフェスが視線を正面に向けて言う

「防長閣下が 偽者の攻長である貴方を迎えに来てくれましたよ?」

ラミリツが小さく言う

「馬鹿…っ」

メルフェスとラミリツ その他部下たちの前に 軍曹とハイケルが居る メルフェスが言う

「攻長閣下と引き換えの アールスローン戦記の原本は?」

軍曹が白い本を胸に押し当てて言う

「ここにある」

メルフェスが言う

「それが本物であると言う証拠は?」

軍曹が言う

「それは 貴方方に見せて分かるかどうかは知らないが ここで中身を確認してくれ 自分に言えるのは 間違いなく原本を持って来たと言う事だけである」

軍曹が横目にハイケルを見る ハイケルのイヤホンにマスターの声がする

『よし、それじゃ ちょっとうるさいが 我慢してくれよっ ハイケル!』

ハイケルが首にかけているヘッドホンからメタルミュージックが音漏れする メルフェスが部下に目配せをする 部下が軍曹の下へ行く 軍曹が白い本を相手へ向けて開く 部下が来る前に文字が浮かび上がる 部下が音に気付き 一度ハイケルを見てから不満そうに表情を顰め 改めて軍曹の前へ向かう 部下が本を見て軍曹の顔色を伺ってからページを数枚めくり 振り返って言う

「恐らく 本物であるかと」

メルフェスが言う

「では 原本を受け取り こちらへ戻って来い」

軍曹が言う

「ラミリツ攻長を 離してくれ」

メルフェスが苦笑して言う

「ご心配なく 原本さえ手に入れば 攻長閣下に用はない」

軍曹が言う

「貴方を信用する事は出来ない 原本はそちらへ放る それと同時に」

メルフェスが微笑して言う

「良いでしょう …下がれ」

メルフェスが視線を向けると部下が下がる 軍曹が本を閉じメルフェスを見る メルフェスが微笑しラミリツの耳元で 小声で言う

「どうかお忘れになりませんように」

ラミリツが小声で言う

「うるさいな 分かってる」

軍曹が言う

「では カウントする 3・・2・・1・・」

軍曹が原本を放る ラミリツが走り出す ハイケルが拳銃を抜き 原本を打ち抜く メルフェスの部下たちが一斉に射撃を開始する ハイケルが軍曹へ収納型の盾を放って走る 軍曹が盾を装備しラミリツを守る ハイケルが拳銃を放ちながら走る イヤホンからマスターの声が届く

『上部4時方向!』

ハイケルが振り返り 2階から銃を向けていたメルフェスの部下を撃つ ハイケルが再びメルフェスの部下たちを撃つ イヤホンからマスターの声が届く

『12時方向!10時方向に2つ!』

ハイケルがナビに従って敵を次々倒して行く 軍曹が言う

「ラミリツ攻長っ 退避をっ!」

ラミリツが言う

「あれは 本物なのっ!?」

メルフェスの部下が原本を持ってメルフェスへ向く メルフェスが表情を顰めて言う

「本物の原本を撃ち抜く筈が無いっ!連れが1人と言うのも気に入らん きっと奴らの仲間が入り込んでいる ここは引くぞっ!」

メルフェスと部下たちが退避する ハイケルが倒れている部下を踏み付けて言う

「こいつらはどうする?拘束するか?」

イヤホンからマスターの声がする

『いや、どうせ雇われの用心棒か何かだろう 知ってる事は 雇い主の名前程度だ 今 映像の解析をしているが 先に そいつらの雇い主 さっきのボスの方は 声紋から… …っ』

ハイケルが言う

「何だ?…声紋解析は 得意中の得意だろう 44秒31の歴代トップ記録はどうした?」


施設 外


マスターが物陰に隠れノートPCを開いている 背景で メルフェスと部下たちが車に乗り込み逃げて行く マスターが視線を細めて言う

「対象は 政府皇居宗主 メルフェス・ラドム・カルメスと断定」


施設 内


ハイケルが驚く 軍曹がラミリツの手械を解く ラミリツが腕を擦り視線をそらす 軍曹が微笑を向けてから ハイケルを見る ハイケルが言う

「…作戦完了」


施設 外


マスターのイヤホンにハイケルの声が届く

『帰還する』

マスターが空を見上げて言う

「…了解」

マスターがノートPCを閉じる 上空でマーガレットの花火が散る


【 カルメス邸 】


車が到着する 花壇のマーガレットを手入れしていたマリが顔を向け立ち上がる 車のドアが開けられメルフェスが降りる マリが言う

「…お帰りなさい」

メルフェスがマリを見てから花壇のマーガレットを見て言う

「もっと高貴な花を植えろ 屋敷の花壇に 雑草など みすぼらしい」

マリが表情を落として言う

「…っ …ごめんなさい」

車から部下たちが降りる マリがメンバーを見た後 最後に屋敷へ向かおうとした部下へ言う

「あ、あの…っ」

部下が振り返る マリが怯えつつ言う

「ご一緒だった 攻長閣下は…?」

部下が笑んで言う

「心配ない 旦那様の作戦通りだ」

マリが視線を落とす 部下が屋敷へ入って行く


【 ハブロス家 屋敷 】


軍曹が言う

「必要な物があったら 何でも言ってくれ!自分の屋敷だと思って 自由にしてくれて構わないのだ!それから」

ラミリツが客室へ通される 軍曹が言う

「自分の部屋は 階段を挟んで向かい側なのだ 何かあったら いつでも来てくれ!あ、しかし 昼間はレギストの訓練に行っている為 殆ど居ないのだが…」

執事が軍曹へ言う

「アーヴァイン様」

軍曹が気付いて言う

「おお!そうだ レミック しばらくラミリツ攻長に付いてくれ 不自由が無いよう 宜しく頼む!」

執事が礼をして言う

「畏まりました 攻長閣下 執事のレミックと申します 何なりと御用命を」

ラミリツが横目に見て言う

「そ… なら 何か飲み物持って来て」

執事が言う

「畏まりました 只今お持ち致します」

執事が去る 軍曹が笑んで言う

「では ゆっくりして行ってくれ!」

軍曹が立ち去ろうとする ラミリツが言う

「何で助けに来たの?」

軍曹が一瞬呆気に取られた後笑んで言う

「それはもちろん!」

ラミリツが苦笑して言う

「まぁ、偽物の原本で 偽物の攻長を助けた位… 大した事無いか?」

軍曹が一瞬呆気に取られた後苦笑して言う

「あれは 偽物の原本ではないのだ それに 自分は ラミリツ攻長が 攻長であろうが無かろうが 関係ないのだ …何度も言っているのだが」

ラミリツが顔を向けて言う

「偽物じゃないって?」

軍曹が疑問して言う

「うん?」

ラミリツが向き直って言う

「なら 本物の原本を 部下に撃たせたの?そんな事したってっ!」

軍曹が困って言う

「う~ん… あれはその… 詳しくは言えぬのだが あれは本物の原本であったり なかったりするのだ つまり そのぉ~…」

ラミリツが視線をそらして言う

「僕には言えないんだ?」

軍曹が衝撃を受けて言う

「うっ …そ、それは」

ラミリツが言う

「アンタは僕の秘密を知っているのに 僕はアンタの秘密を知れない… 僕が不利な立場である事は変わらずって事 …あいつらから助けられたって 結局何も変わりはしない …だったら 最初から助けになんか 来なくて 良かったのにっ!」

軍曹が困って言う

「ラミリツ攻長…っ 自分は…」

ラミリツが言う

「ハブロス家の人間で 何もかも持っててっ …何でも出来るアンタになんか 分からないんだよっ!他人に命を掴まれてっ 生かされてる 僕の気持ちなんかっ!」

軍曹が言う

「ならばっ!自分が守るっ!」

ラミリツが軍曹を見る 軍曹が言う

「自分が!ラミリツ攻長をお守りするっ!だから 信じてくれっ!自分は何があっても ラミリツ攻長の味方であるっ!」

ラミリツが呆気に取られる


【 マスターの店 】


マスターが苦笑して言う

「あっちゃぁ~…」

ハイケルが言う

「それで 原本の秘密を ラミリツ・エーメレス・攻長閣下へ 話したのか」

軍曹が表情を困らせて言う

「は… はい… …やはり 自分は…?」

マスターとハイケルが言葉を合わせる

「「馬鹿だな」ぁ」

軍曹が苦笑して言う

「やはり そうでありましょうか…?」

マスターが苦笑してコーヒーを淹れながら言う

「まぁ… アーヴィン君 らしいというか 何と言うか… アーヴィン君は 優しいから…」

マスターがハイケルの前にコーヒーを出す ハイケルがコーヒーを持って言う

「”馬鹿だから” だろう」

ハイケルがコーヒーを飲む マスターが苦笑して言う

「そうハッキリ 言ってやりなさるなって」

ハイケルが言う

「お前もさっきは言っただろう」

マスターがコーヒーを淹れながら言う

「さっきのは なんと言うか ノリ的な… …なぁ?」

マスターがコーヒーを軍曹の前に出す 軍曹が軽く会釈をしながら言う

「ノリで… 少佐と 言葉を合わせられる というのも 少々 凄いと申しましょうか…?」

ハイケルが軍曹へ向いて言う

「君が それだけの男だと言う事だ」

マスターが汗を掻いて言う

「ハ、ハイケル…」

ハイケルがコーヒーを飲んでから言う

「それで?」

軍曹が言う

「とりあえず 今はハブロス家の屋敷に」

マスターが言う

「軟禁してるって事か?」

軍曹が言う

「特に軟禁と言う形は 取っておりませんが…」

ハイケルが言う

「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 政府やその他に狙われているのだろう?だったら 軟禁などと言わずとも 本人の方が出て行かれない状態だ」

マスターが苦笑して言う

「政府の代表を 国防軍の家で守るとはねぇ?…と、そうそう その政府の代表なんだが」

軍曹とハイケルが疑問し ハイケルが言う

「代表は 神の刻印を持つとされる 攻撃の兵士 ラミリツ・エーメレス・攻長閣下で変わりは無いだろう」

マスターが言う

「ああ、そっちは変わりない …が さっき長官の方が 新しい者に代わったんだ 知ってるか?」

軍曹が驚き ハイケルが言う

「いや、聞いていない」

マスターがPCへ向き直って言う

「正式発表が明日だからかもしれないが 既に政府のデータ上では変えられている」

ハイケルが言う

「また政府のデータベースへ 潜り込んでいたのか?」

マスターが言う

「まぁな…?」

ハイケルが言う

「気を付けろと言った筈だが?」

マスターが苦笑して言う

「ああ、分かってる 十分気は付けてるよ ただ、昨日の メルフェス・ラドム・カルメス皇居宗主の事が どうしても気になってさ?」

ハイケルが言う

「皇居宗主ともなれば尚更だ 個人で揃えられる程度の機材で 余計な危険を冒すな」

マスターが言う

「おいおい 俺を誰だと思ってるんだ?」

ハイケルが言う

「そのおごりが命取りになるんだ」

軍曹が呆気に取られる ハイケルが言う

「どうしても調べる必要があるというのなら 俺へ声を掛けろ 国防軍レギスト駐屯地 情報部のマイク少佐へ話を付け 一時的にシステムを借り受ける」

軍曹が言う

「少佐…」

マスターが苦笑して言う

「分かった 悪かったよ そこまで言ってくれるのなら もう危険を冒す事はしない 約束する」

ハイケルが言う

「…本当だな?」

マスターが苦笑して言う

「何だよ 俺を信じられないのかぁ?ハイケル?」

ハイケルが言う

「信じてはいるが 心配はする」

マスターが苦笑して言う

「そりゃ 矛盾だろう?」

ハイケルが言う

「そんな事は無い 信じる事と心配する事は 定義が異なる」

マスターが軽く息を吐いて苦笑する ハイケルがコーヒーを飲んで言う

「それで?そこまでの危険を冒して 何を見付けた?」

マスターが言う

「あぁ 聞いて驚け?2人とも?」


【 皇居 女帝の間 】


女帝の御簾がある その両脇に 軍曹とラミリツが立っている 御簾の前に メルフェスが跪いて言う

「メルフェス・ラドム・カルメス 政府長官の任 及び 政府皇居宗主の任 天上天下我らがアールスローン国女帝陛下の下 謹んで取り計らう事を 誓います」

メルフェスが御簾を見た後軍曹を見る 軍曹が視線を強める メルフェスが微笑した後 ラミリツを見る ラミリツは視線を向けずに居る メルフェスが御簾へ礼をする 軍曹がラミリツを見てから 女帝の間の出入り口を見る 出入り口から沢山のフラッシュと TVカメラが向けられている


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


隊員たちがTVに群がっていて 映像が映ると騒いで言う

「おお!軍曹だ!」 「軍曹ーっ!」 「何か久しぶりだなぁ!?」

隊員たちが笑う TV映像にメルフェスが映り キャスターが言う

『アールスローン史上初となります 攻長閣下と政府長官が 異なる名家から選出される形となった今回の就任ですが この度の政府長長官の選出は ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の任命にて行われたと言う事で 元より 皇居宗主であられた メルフェス・ラドム・カルメス皇居宗主の ご人徳を配慮されたものと…』

隊員Aが言う

「つまり 攻長閣下が 今回の長官を選んだって事か」

隊員Bが言う

「けど、普通はー 攻長閣下や防長閣下が 政府の長官や 国防軍の総司令官を やるんだよねー?なーんで別の人に やらせるんだろうねー?」

隊員Aが言う

「そりゃ、バイちゃん 両方やったら 大変だからじゃないか?防長閣下と攻長閣下は 常に 陛下の傍で陛下を守らなきゃ いけないんだからさ?」

隊員Bが言う

「あれー?でも 軍曹は普段 俺らと一緒に居るじゃん?だったら 軍曹じゃなくて 総司令官も出来そうな気もするけどー?」

隊員Aが衝撃を受ける 隊員Nが言う

「あぁ そう言えば そうだよな?何で総司令官じゃなくて 軍曹やってるんだ?」

隊員Bが隊員Aを見る 隊員Aが焦って言う

「そ、そりゃ… 何か理由があるんだろう?…たぶん」

隊員Nが言う

「ま、そうだろうな?」

隊員Bが笑んで言う

「それに 軍曹が軍曹じゃなくなっちゃったら 俺らと一緒に居られなくなっちゃうもんねー?」

隊員Aが笑んで言う

「ああ、なら やっぱり 軍曹には軍曹で居てもらわなきゃな!」

隊員Bが笑んで言う

「でもって 時々 防長閣下ー!にひひっ」

隊員Aが軽く笑って言う

「ああ!時々位で丁度良い!」

隊員Bが言う

「だよねー!」

隊員たちが笑う ハイケルが言う

「時間だ 全員 それぞれの訓練所へ向かい 訓練を開始しろ」

隊員たちが立ち上がりハイケルへ向いて敬礼して言う

「はっ!了解っ!」

隊員たちが立ち去る ハイケルがTVを見る TVモニターに軍曹とラミリツ メルフェスが映っている ハイケルが視線を細めた後 TVを消す


【 皇居 通路 】


軍曹に続きラミリツが歩いている軍曹が通路の角を曲がると ラミリツが向かう目前でメルフェスの部下に遮られる ラミリツが立ち止まり視線を細める メルフェスがやって来て言う

「攻長閣下 この度は 名誉ある ご任命を頂きまして 真に有難うございます」

ラミリツが向かずに言う

「…退いてくんない?」

メルフェスがラミリツの耳元に顔を近付けて言う

「例の物は?」

ラミリツが言う

「…分かったけど 僕が手に入れられるものじゃない 諦めれば?」

メルフェスが言う

「それはどう言う…」

軍曹の声がする

「ラミリツ攻長!」

軍曹がやって来る メルフェスの部下が道を空ける 軍曹がメルフェスを見て視線を強める メルフェスが微笑して言う

「攻長閣下へ この度のご任命へ対し お礼を申し上げていたまでです 先日は真っ白い 美しい本を頂き 有難う御座いました 防長閣下」

軍曹がメルフェスへ向き直る ラミリツが歩き出して言う

「ずっと立たされて疲れた 先行くから」

軍曹が横目にラミリツを見る メルフェスが苦笑して言う

「ご一緒に向かわれた方が宜しいのでは?彼は貴方への良い餌になります 他の連中にでも奪われないように くれぐれもお気を付け下さい っはははは」

メルフェスが立ち去る 軍曹が表情を顰める


【 車内 】


ラミリツが後部座席に座って外を見ている 軍曹が隣に座っていて横目にラミリツを見てから周囲を見渡す 信号が赤になり車が止まる 軍曹が自分側の窓の外を見ていると隣の車線に車が止まる 軍曹が僅かに反応しラミリツの側の窓の外を見る 路肩に人が通りその奥に公園が見える 軍曹が視線を細めると 信号が青になり車が発車する 軍曹がハッとして正面を見た後自分側の窓の外を見る 先ほどの車が通り過ぎて行く ラミリツ側の窓の外をバイクが通り過ぎて行く 軍曹が視線を落とす


【 公園 】


軍曹たちの乗った車が通り過ぎて行く 公園の片隅にマーガレットの花が植えられる マリが苦笑して言う

「ごめんね… 一緒のお家に置いてあげられなくて …私は 貴方たちの事 大好きなのだけど…」

マーガレットの花が風に揺れる 地面に涙が落ちる マリが涙を流しながら微笑して言う

「駄目だよね…?頼ってばかりじゃ… もう 戻れないんだから 私も 貴方たちも… それぞれの場所で 立派に咲いて行かないとね?」

マリが微笑し立ち上がり 立ち去る


【 カルメス邸 】


玄関先の花壇に高貴な花が植わっている 


室内


マリが扉を開けると メルフェスが振り返って言う

「何処へ行っていた?」

マリが一瞬驚いた後視線をそらして言う

「近くの 公園へ…」

メルフェスが作業をしながら言う

「今夜は 私の就任を祝う 政府のパーティーがあると 昨夜伝えておいた筈だが?」

マリが言う

「はい…」

メルフェスが言う

「さっさと仕度を済ませろ お前は政府長官の妻であり 皇居宗主の妻でもある そのお前が 下層な者たちが集う公園になど行くんじゃない」

マリが俯いて言う

「はい… ごめんなさい…」

メルフェスが気付き マリの近くへ来る マリがはっと驚き慌てて言う

「ではっ 仕度へ…っ」

メルフェスがマリの手を掴む マリが驚く メルフェスが視線を細めて言う

「何だ この薄汚い手は?」

マリが視線をそらして言う

「あ…っ マニキュアを塗れば 見えなくなりますから…」

メルフェスがマリを叩く マリが悲鳴を上げて床に倒れる

「キャッ」

メイドたちが駆け寄る メルフェスが表情を顰めて言う

「爪だけではないっ しっかり洗わせ手入れをさせろっ!上層の名を持っているからと妻にしてやったが 名前だけかっ!身分に合わせた行いをしろっ!婦人の指先は最も品位を表すものだ お前は お前を妻に持つ私の品位をも 落としめたいのかっ!?」

マリが怯え涙を抑えながら言う

「ご… ごめんなさい…っ」

メルフェスが怒って言う

「めそめそと泣くなっ!階級だけで選んだ事を 今更 後悔する羽目になるとはなっ!」

メルフェスがドアを乱暴に閉める マリが涙を抑える メイドたちが心配して言う

「さぁ 奥様 お仕度の方を…」

マリが言う

「はい…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ