アールスローン戦記4
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
ハイケルが言う
「おかしいな…」
1班隊員たちが驚き振り返る ハイケルが言う
「ペジテの姫である陛下は 毎夜竪琴を奏でる事が役目だ 例え 事件が起きていようとも その陛下の前で 音を立てるとは… 気に入らん」
隊員たちが言う
「ペジテの姫… アールスローン戦記?」
「確かに… 陛下の兵士である 防長閣下や攻長閣下は 現代も居るけど…」
「その防長閣下が 軍曹だったりもするけど…」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルはTVを見据えている 隊員たちがこっそり言う
「少佐って あーいうの信じるタイプだったのか?」
「意外だな?」
隊員たちがハイケルをこっそり見る
【 皇居 女帝の間 】
オーケストラが用意を進めている ラミリツが表情を強張らせて思う
(き… 来たっ!?…どうしようっ!?)
ラミリツが軍曹を見る 軍曹は不満そうにオーケストラたちを見つめている ラミリツが俯き強く目を閉じて剣を握り締める
【 皇居 前 】
再びトラックがやって来る 13部隊員が気付き 運転手へ向かい言う
「あんたらも さっきのオーケストラの人か?」
運転手が言う
「…ああ そうだ 荷台の確認なら もう終わっている ほら、マーレー少佐のサインだ」
運転手が書類を見せる 13部隊員が一瞬呆気に取られて言う
「え?あ、ああ 確かに…」
13部隊員が周囲を見渡して言う
「少佐… いつの間に?」
運転手が言う
「じゃ、行かせてもらう」
13部隊員が困りつつ言う
「あ… ああ…」
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】
1班がTVを見つめている TVの映像が切り替わり レポーターが言う
『あ、たった今 もう一台のトラックが…』
隊員たちが言う
「あれもオーケストラか?」
「そうかもな?」
ハイケルがTVを見ていると ハイケルの鼓動が急に高鳴る ハイケルが目を見開き左胸を押さえ 俯いて僅かに声を出す
「…クッ」
隊員たちは気付かずTVを見ている TVからレポーターの声が届く
『…どうやら あちらも同じく オーケストラのトラックだった様です 先ほどと同じ様に 皇居の玄関へと向かって行きました』
隊員が言う
「…う~ん けどよぉ?さっきの御所の映像だと 最初のトラックの人以上に オーケストラの道具やメンバーって 居なそうな感じだった様な…」
ハイケルが隊員たちの後ろで苦しんでいる
【 政府本部 】
シェイムがTVモニターを見ていて言う
「うん?もう一台…?どう言う事だっ!?」
シェイムが焦り 受話器を取る
【 皇居 エントランス 】
役人たちが驚いて言う
「なっ 何をする!?やめっ!」
役人たちが次々と殴り倒される ガイズのメンバーがイヤホンマイクへ言う
「よしっ 退避路は確保した …ターゲットへ向かう」
イヤホンから声が届く
『了解 御所では オーケストラの演奏が 間もなく開始される模様 演奏開始を待ち 同時に襲撃を決行しろ』
ガイズのメンバーが御所の入り口左右に待機する
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員の1人がふと気付き 振り返り驚いて言う
「少佐っ?」
隊員たちが声に驚き振り返る 隊員が言う
「少佐っ!?大丈夫ですかっ!?少佐っ!?」
隊員たちが慌ててハイケルの近くへ集まる ハイケルが身を折り息を切らせつつ言う
「はぁ…はぁ… 大丈夫だ… 問題 ない…っ」
隊員たちが心配して言う
「しかしっ」
「医務室へ向かわれた方がっ」
ハイケルがはっとTVへ顔を向ける 隊員たちが反応して思わずTVを見る
【 皇居 女帝の間 】
ラミリツが気付く 軍曹が疑問する 演奏を開始しようとしていたオーケストラのメンバーが 楽器を放り拳銃を向ける 軍曹が驚いて言う
「なっ!?」
ラミリツが剣を抜き声を上げて向かう
「やぁあああっ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちが驚いて言う
「なっ!?」
TVからキャスターの慌てた声が聞える
『なっ!何と言う事でしょうっ!オーケストラの演奏者たちが!』
TVの映像が一瞬乱れ 扉が乱暴に開かれ 人が押し入る 隊員たちが驚いて言う
「今度は何だっ!?」
ハイケルが目を見開き 即座に走り出す 隊員たちが驚き振り返って叫ぶ
「少佐っ!?」
TVの映像が戻り 女帝の間に ガイズのメンバーが入り込む キャスターが叫ぶ
『た、大変ですっ 陛下の御所に 今度は武装集団がっ!』
隊員たちが驚き見る
【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】
ハイケルが走って来て ジープに飛び乗り エンジンを掛けると同時にサイレンのスイッチを押す
【 国防軍レギスト駐屯地 正面入り口 】
警備兵がサイレンの音に疑問し振り返ると ジープが車両保管所のシャッターを吹き飛ばして出てくる 警備兵たちが驚き叫ぶ
「きっと ハイケル少佐だっ!」
「やばいぞっ!門を開けろーっ!」
警備兵たちが門を開けると 門ギリギリをすり抜け 正面のガードレールに当たりつつ ジープが走り去って行く 警備兵たちが呆気に取られる
【 車内 】
サイレンを鳴り響かせながら ハイケルが運転している 息を切らせ ハンドルを握る手を握り絞め言う
「く…っ なんだっ!?何故 俺は!?俺はっ!?」
ハイケルがアクセルを踏み込む
【 皇居 女帝の間 】
ラミリツが驚いて言う
「な、何っ?他にもっ!?」
軍曹が叫ぶ
「ラミリツ攻長!前をっ!」
ラミリツがハッと前を向くと ガイズのメンバーが銃を向け撃つ ラミリツが目を見開く 甲高い音が鳴り ラミリツが強く閉じていた目を開き驚く
「っ!?」
ラミリツの前に軍曹が盾を構えていて言う
「ラミリツ攻長っ!自分はっ!陛下をお守りしなければっ 自分に代わり 奴らを倒してくれっ!」
ガイズのメンバーが女帝の御簾へ向かう 軍曹がガイズのメンバーをタックルして倒れた相手を 盾で床に押し付ける ラミリツがガイズのメンバーを見る ガイズのメンバーが銃を向けるが銃がシャムる ガイズのメンバーが舌打ちしつつ銃を捨て ナイフを抜く ラミリツが剣を持ちながら怯え一歩後ず去る 軍曹が叫ぶ
「ラミリツ攻長!」
ラミリツが顔を上げると剣を構えて叫ぶ
「やぁあああっ!」
ラミリツがナイフを持ったガイズに剣を振り下ろす
【 皇居 前 】
13部隊員がイヤホンを押さえながら言う
「何だって!?聞えないぞっ!?…うん?」
13部隊員がふと顔を上げると マスコミたちが後方を見ていて 騒ぎが悲鳴に変わり 慌てて門の前を開ける その門を目掛け ハイケルの運転するジープが突っ込んで来る 13部隊員が驚き銃を向け叫ぶ
「なっ 何だっ!?止まれっ!止まらんと… のわぁああっ!」
13部隊員が飛び退いた所をジープが突っ込み 皇居前を固めていた隊員たちが慌てて退避する ジープが皇居玄関に突っ込む
【 皇居 女帝の間 】
ラミリツが悲鳴を上げる
「あぁああっ!い、痛いっ 痛いよっ やめてぇえ!」
ガイズがラミリツを押し倒し肩にナイフを刺している 軍曹が叫ぶ
「ラミリツ攻長っ!…ぐっ!」
軍曹にガイズたちが銃を乱射する ラミリツへ攻撃していたガイズが軍曹を見て ナイフを抜き軍曹へ言う
「そっちも やっちまえっ!」
ガイズが軍曹へ向かう 軍曹がハッとする ガイズが軍曹へナイフを振り下ろす 軍曹が顔を上げると 銃声が鳴り 軍曹へ振り下ろされていたナイフが弾け飛ぶ 軍曹が驚き顔を向けて叫ぶ
「しょ…っ!?」
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちがTVを見ていて叫ぶ
「「少佐ぁあーーっ!?」」
【 皇居 前 】
レポーターがカメラに向かって焦って言っている
「先ほど!一台のジープが 我々報道陣や 国防軍の隊員たちを抜け 皇居玄関に突っ込みました!これにより!」
マーレーが叫ぶ
「13部隊A班!皇居内へ向かえー!」
13部隊A班が皇居玄関へ向かう レポーターが言う
「た、たった今!国防軍の一部の隊員たちが!皇居内へと!」
【 皇居 女帝の間 】
ラミリツが肩を押さえて四つん這いになって顔を上げる 視線の先 ハイケルがガイズへ向かい 銃を乱射 体術も利用して次々にガイズのメンバーを倒して行く ラミリツが言う
「…なん なの… あいつ…」
ハイケルが走りながらガイズの撃つ銃弾を回避し 手にしている銃を撃つが 弾切れの音が響く ハイケルが舌打ちをして銃を捨て サーベルを抜く ハイケルが声を上げ ガイズのメンバーへサーベルで攻撃を繰り出す
「あぁああーーっ!」
ガイズがハイケルへ銃を向けるが ハイケルは銃弾を避けガイズを切り捨てる 軍曹がハッとして叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが振り返った先 ガイズが遠くから銃を撃つ ハイケルが瞬時に構え 銃弾を全てサーベルで弾く
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちがTVに釘付けになって叫ぶ
「でたぁー!」 「少佐お得意の!」 「銃弾サーベル弾き!!」
隊員Bが言う
「けどっ まずいぞ!少佐にはもう 武器がないっ!あれをやっちゃうと サーベルがっ!」
隊員たちがハッとして隊員Bを見る
【 皇居 女帝の間 】
ハイケルが銃を撃ったガイズへ向かい サーベルを振るう ガイズが悲鳴を上げ倒れる ハイケルに向け銃が放たれる ハイケルが走りガイズへ向かいサーベルを振りかざす ガイズが拳銃でサーベルを受け止める サーベルが音を立てて折れる ハイケルが目を見開く ガイズがハイケルへ銃を向ける ハイケルが一歩後ず去り周囲へ視線を巡らせハッと気付く ガイズが銃を放つと同時にハイケルが走ると ラミリツが自分に向かって来るハイケルに驚いて言う
「なっ なにっ!?来ないでっ!」
ラミリツが慌てて身を引くと ハイケルがその前にあったラミリツの剣を手にする ラミリツが驚く ガイズが銃を放つ ハイケルがラミリツの剣の刃身で銃弾を防ぎ立ち上がると 瞬時に剣を構えてガイズへ攻撃する ガイズが銃を撃ちつつ斬られ倒れる ハイケルが剣を構え周囲を見渡す ガイズが怯え後ず去る ハイケルがガイズに気付き向かい 叫びながら剣を振り上げる
「死ねぇえーっ!」
ガイズが怯え逃げようとする 軍曹が叫ぶ
「少佐ぁあー!」
ハイケルの剣が ガイズのギリギリで止まる ガイズが怯えてうずくまっている 13部隊A班が入って来て銃を構える ハイケルが13部隊A班を見る 13部隊A班のメンバーが銃を向けつつ呆気に取られてハイケルを見る 軍曹が叫ぶ
「少佐!」
ハイケルが数回瞬きをしてから正気に戻って言う
「…俺は?」
ハイケルが呆気に取られゆっくり後方へ向き 軍曹を見て言う
「…軍曹?」
軍曹が苦笑し 立ち上がるとラミリツを見て ラミリツの横へ膝を着き ラミリツの傷を確かめる ラミリツが隠そうとする 軍曹がラミリツの腕を掴むとラミリツが悲鳴を上げて言う
「痛いっ」
軍曹が13部隊へ向いて言う
「すぐに救護の者をっ!」
13部隊隊員がハッとして敬礼して言う
「…はっ!了解っ!」
13部隊隊員が外へ向かう 軍曹が13部隊A班へ向き直り言う
「何をしている!賊を拘束しろ!」
13部隊隊員たちがハッとして武器を下ろし敬礼して言う
「はっ!防長閣下!」
13部隊隊員たちがガイズや犯人たちを拘束する ハイケルが自分の持っている剣を見る 軍曹がやって来てハイケルへ言う
「そちらの剣は 自分が ラミリツ攻長へ お返しして置きます」
ハイケルが軍曹を見上げ一瞬驚き視線をそらしながら言う
「あ… ああ…」
ハイケルが軍曹へ剣を渡す 軍曹が柄と刃を持って剣を受け取り 微笑して小声で言う
「また 助けに来て頂きまして 自分は 嬉しいであります 少佐っ」
ハイケルが呆気に取られて軍曹を見る 軍曹が一瞬笑みを見せてから 姿勢を正し平然とラミリツの下へ向かって行く ハイケルが軍曹の背を見てから周囲を見渡す 周囲では13部隊A班が犯行者たちを拘束している ハイケルが間を置いて言う
「…俺が?」
軍曹がラミリツの下へ行くと 13部隊の隊員がラミリツの傷へ応急処置を施している 隊員が言う
「攻長閣下 治療の為 失礼致します」
隊員がラミリツの上着を開き 傷の様子を見る 軍曹が傷を見て一度表情を落とすと 隊員が応急処置を施す 上着がずれラミリツの左胸にあるアールスローンの刻印が見える 軍曹がそれを見て驚く
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちがTVを見つつ呆気に取られて言う
「す… すげぇ…」
「あれが… 俺たちレギストの 隊長…」
「俺ら 無敵じゃねぇ?」
隊員たちが溜息を付いて肩の力を抜く
「「はぁ~~…」」
隊員AがTVの映像を見て言う
「お?何だ 皇居の病院って 御所の中には無いのか?」
TVの映像に ラミリツが13部隊員に支えられながら移動している姿が映る 隊員Cが言う
「ああ、確か 御所にある医療施設は 陛下専用だから 他の奴は 同じ敷地内だけど別の建物にある 医療所へ行かないといけないらしい」
隊員たちが納得して言う
「へぇ~」
隊員たちがTV映像を見る ラミリツが運ばれる中無数のフラッシュが焚かれている ラミリツの右肩に包帯が見え 開かれた上着の下に 刻印が見え隠れする 隊員たちがTVを見つつ言う
「所で… これで事件は解決 だよな?」
「だな?俺ら…どうする?」
「…少佐 は?」
隊員たちが顔を見合わせTV画面を見る レポーターが言う
『あ!ハイケル少佐ですっ!先日のパレードに続き 今回も素晴らしい攻防を披露し 陛下をお守りした 国防軍17部隊レギストの隊長 ハイケル少佐が!今!』
TV画像にハイケルの姿が映る 大勢のマスコミにもまれる中 ハイケルが周囲を見渡し気付くとそちらへ向かう
【 皇居 前 】
マスコミたちが追いかけると ハイケルが 場所を移され置かれていたジープに乗り込む マスコミたちが衝撃を受け 慌てて道を空ける ハイケルがジープをゆっくり動かし去って行く マスコミたちが呆気に取られた後 慌てて追いかけようとするが ジープが走り去って行く
翌日――
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
ハイケルが休憩所で新聞を開いて驚いて言う
「なっ!?」
新聞には ハイケルの名前と 壊れた国防軍レギスト駐屯地のシャッターの写真 曲がったガードレール なぎ倒された信号制御機 壊れた皇居の玄関の写真が デカデカと掲載されている ハイケルが呆気に取られ困惑して言う
「…なんだっ?これは…っ?」
隊員たちが遠巻きにハイケルを覗き見ている ハイケルが頭を押さえて言う
「そう言えば 今朝方 あの見慣れたジープが なぜか半壊していた… あれは 俺が…?…おまけに 車両保管所のシャッターも…」
隊員たちが顔を見合わせて言う
「しょ… 少佐 もしかして…?」
「いや それは… 無いでしょう?」
「でも、あの様子って 覚えてませんが?…みたいな?」
隊員たちがぎこちなく視線をハイケルへ戻す ハイケルが言う
「…そう 言えば 記憶の奥底に 薄っすらと…」
館内放送が流れる
『ピンポンパンポ~ン♪17部隊隊長 ハイケル少佐 ハイケル少佐 』
ハイケルが衝撃を受ける 隊員たちが思わず伝染して衝撃を受ける 館内放送が続く
『大至急 会議室へお越し下さい 繰り返します 17部隊隊長 ハイケル少佐 ハイケル少佐 大至急 会議室へお越し下さい』
ハイケルが表情を強張らせつつ 新聞を片付け立ち去る 隊員たちがハイケルを目で追う
【 国防軍レギスト駐屯地 会議室 】
ハイケルが会議室前で気を引き締めドアをノックして言う
「17部隊隊長 ハイケル少佐であります!」
室内から声が返って来る
「入りたまえ」
ハイケルが言う
「はっ 入ります!」
ハイケルが唾を飲みドアノブを回す
室内
ハイケルが室内へ入りドアを閉め 室内のメンバーを確認し敬礼する アースが微笑して言う
「お早う ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「お早う御座います 総司令官」
アースが苦笑する バックスが言う
「ハイケル少佐 こちらへ来たまえ」
ハイケルが返事をして向かう
「はっ」
バックスが言う
「ハイケル少佐 何故呼び出されたのかは 分かっているな?」
ハイケルが一瞬間を置いて言う
「はっ …昨夜の事であると」
アースが静かに頷く ハイケルが視線を落とす バックスが言う
「分かっているのなら 説明は要らないだろう よって 単刀直入に言う 君は除名だ」
ハイケルが驚く バックスが言う
「当然だろう ハイケル少佐?昨夜 皇居並びに陛下の警護に付いていたのは レギストではなく 13部隊だ 更には 国防軍レギスト駐屯地の車両を無断で使用 同じく駐屯地の備品を破損 あまつさえ 公共の設備を破壊した上に あろう事か 皇居の正面入り口を破壊 更に言うならば たとえサイレンを鳴らしていようとも 公道の制限速度は60キロ厳守だ」
ハイケルが焦りの汗を流す バックスが顔を左右に振って言う
「とても庇いきれないっ むしろ 君1人の除名処分などでは 到底 まかない切れるものではない!分かっているのか!?ハイケル少佐」
ハイケルが俯く バックスが言う
「どう 責任を取るのかね?」
ハイケルが沈黙する アースが苦笑して言う
「…そろそろ 良いのではないか?バックス中佐」
バックスがアースを見てから苦笑して身を静める アースが言う
「バックス中佐が 今しがた説明をした …これが通常だ ハイケル少佐」
ハイケルがアースを見る アースが言う
「だが 今回は通常ではなかった 君があの時向かわなければ 陛下の御身へ危険があった事は勿論 ヴォール・アーヴァイン・防長閣下は 敵の刃に倒れていた」
ハイケルが呆気に取られる アースが言う
「そもそも君の事は 例え私が庇わずとも その防長閣下が全てを補ってくれるだろう 従って わざわざ国防軍の身内で 問題を広げるつもりは無い ハイケル少佐 今回の君の全責任は免除する」
ハイケルが驚くアースが苦笑する ハイケルが僅かにホッとして敬礼して言う
「はっ 有難う御座います 総司令官」
アースが微笑して言う
「いや、今回も 礼を言うのは私の方だ …とは言え、少々派手にやってくれたな?この騒ぎを収めるのは 私であっても容易ではない 次からはもう少し 控えめに頼みたい」
ハイケルが言う
「…申し訳ありません …自分でも 反省しております…」
ハイケルが視線を落とす バックスが咳払いをして言う
「うんっ ハイケル少佐 反省するのは勿論だが いくら全責任を免除すると言われても それなりに 果たさねばならない責任と言うものはある 例えば 君は以前にも 国防軍の所有物である あの車両No1のジープを 無断で使用したと」
ハイケルが衝撃を受ける バックスが言う
「おまけに今回は その車両の無断使用は勿論の事 半壊させた上 公共の器物破損に速度違反 この辺りの事は 国防軍としてと言うよりも 君個人の責任とも取られる よって!」
ハイケルが驚き目を見開く
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】
軍曹が叫ぶ
「遅くなりまして 申し訳ありません!少佐ぁー!」
昼食中の隊員たちが顔を向ける ハイケルがテーブルにコーヒーを置き言う
「…問題ない …私の国防軍における責任を 処理して来てくれたのだろう …感謝する」
軍曹が気付き 喜んで言う
「流石少佐っ!良くご存知で!しかしっ!自分にとって少佐はっ!命の恩人でありますっ!国防軍の責任など 正直言ってしまえば 自分が総司令官の兄貴に一言言うだけで 済む事でありますので!どうか お気になさらずにっ!」
ハイケルが言う
「…そうか 流石は防長閣下 …心強いな」
軍曹が気付き否定して言う
「…いえっ!少佐ぁっ!自分はレギストに居ります時には!アーヴァイン軍曹として 誠心誠意邁進すると 胸に誓っておりますのでっ!どうか この時にある自分には 防長である事を忘れ 少佐の部下である軍曹として 何なりと ご指示 ご命令をお願い致しますっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが言う
「そうか 分かった では 早速 そうさせて貰おう」
ハイケルが立ち上がる 軍曹が疑問して言う
「はっ!…はぇ?早速?」
ハイケルが叫ぶ
「軍曹っ!」
軍曹が気を引き締め敬礼して言う
「はっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルがテーブルに両手を着いて頭を下げて言う
「1千600万を 貸してくれっ!」
隊員たちが驚く
「なぁー!?」「少佐がっ」「軍曹にっ!」「って…金?」
軍曹が呆気に取られて沈黙している ハイケルが言う
「頼むっ 320回払いで返すっ」
軍曹が驚いて慌てて言う
「しょ 少佐ぁー!?い、一体何がっ!?と、とりあえずっ お顔を上げて下さいっ 少佐ぁーっ」
隊員たちが顔を見合わせる
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】
軍曹が叫ぶ
「通常訓練の1 開始ぃーっ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解!」
隊員たちと軍曹が腕立てをする 隊員が軍曹へ言う
「軍曹!質問を宜しいでしょうか!?」
軍曹が腕立てしながら気付いて言う
「おおっ!腕立てをしながら 会話が出来るようになったとはっ!成長したなっ!お前たちっ!」
隊員が言う
「はっ! これも全ては軍曹の ご指導のお陰でありますっ」
軍曹が言う
「何を言う!全ては少佐のご指導の賜物なのだっ!自分は少佐のご命令を お前たちへ伝達しているに 過ぎないのであるっ!」
隊員が言う
「で、その少佐なのですが お姿が見えないようで ありますが…」
隊員が言う
「もしや 借金を集める為 何処かを走り回っているのでは…?」
軍曹が言う
「何を馬鹿な事を言うのかーっ!お前たちっ!お前たちも昨夜の事件は かいま見て居ったのだろうーっ!?少佐には 借金を背負う責任などは 微塵も無いのであるっ!それなのに バックス中佐と総司令官が 少佐の首に縄を掛けたいなどと!そのような事を企んで居ったので 自分がー!」
【 国防軍レギスト駐屯地 バックスの職務室 】
バックスが呆気に取られている 机の上に 1600万の請求書があり ヴォール・アーヴァイン・防長のサインが入っている バックスが言う
「…やり返された…」
バックスがガクッとうな垂れる
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】
隊員と軍曹が腕立てをしながら 隊員が言う
「おぉおー!」「流石軍曹!…いや、防長閣下!」
軍曹が言う
「違ぁーうっ!自分はーっ!防長としての権力など 使いたくは無いのだっ!だがっ!権力を振りかざす者には!断固 その権力を持って 戦うのであるーっ!」
隊員たちが言う
「すげぇー」
「あの少佐と 防長閣下の軍曹が居る このレギストって…」
「もしかして 国防軍最強っ!?」
隊員が言う
「では… 借金を背負わなくて済んだ少佐は… 一体どちらに?」
隊員たちが疑問する 軍曹が腕立てを終えて言う
「うむっ!少佐は 権力による支配から免れはしたが 御自分がなさった事には しっかりと御反省をなさりたいとっ!少々頭を冷やしてくると 仰っておられたっ!流石は少佐ぁっ!御自分の事を しっかりと律するとはっ!少佐はやはり!素晴らしきお方なのであるーっ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルが机に突っ伏している 頭の上に氷嚢が乗っている ハイケルが言う
「…助かった」
ハイケルが深い溜息を吐く
【 車内 】
アースが新聞を見ている ハイケルの記事がデカデカとある アースが苦笑してページをめくると ラミリツの記事がある ラミリツの胸にある刻印が写された写真がある アースが目を細めて言う
「本当に神の刻印などがあったとは これで彼が 攻撃の兵士… いや、神の刻印を持った 悪魔の兵士である事は 確かなものとなった …しかし」
アースが助手席へ視線を向けて言う
「彼の兄であり 政府長長官である シェイム・トルゥース・メイリス 奴が何を企んでいるのか …そろそろ ハッキリさせなくてはな?我々との格の違いと言うものを」
助手席の執事が微笑して言う
「心得ております」
車が向かう
【 政府本部 】
シェイムがTVを見ている TVではニュースが流れていて キャスターが言う
『…この様に 昨夜の皇居襲撃事件は 攻長閣下、防長閣下のお二方を始め 国防軍13部隊と 同じく17部隊の隊長ハイケル少佐の尽力により 襲撃犯は全てその場で捉えられ 現在彼らの身柄は警察省長に 拘留されているとの事です 尚 この事件の際 お怪我を負われた ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 皇居内の施設で治療を受けられた後 現在はご本人の希望により メイリス邸にて ご静養されているとの事です』
映像にはラミリツの刻印を確認するようにアップにされている シェイムが微笑して言う
「予定外ではあったが これで 攻長閣下は アールスローン戦記の 悪魔の兵士として 受け入れられた筈だ これからは その攻長閣下をどうやって…」
電話が鳴る シェイムがボタンを押すと 電話から声が届く
『国防軍のアース・メイヴン・ハブロス総司令官がお越しです 第1応接室へご案内します』
シェイムが驚き言う
「…分かった すぐに向かう」
【 政府省長 応接室 】
アースが言う
「攻長閣下のご容態は?」
シェイムが言う
「ご心配なく 防長閣下と同じく 彼もまた ペジテの姫の為つかわされた 悪魔の兵士 彼の命を奪えるのは 防長閣下か 何処かの王子の兵士だけかと」
アースが微笑して言う
「なるほど… しかし、攻長閣下の身に 神の刻印があると言う事は 少なくとも 防長閣下との攻防を行うと言う事は 無いのでしょう?」
シェイムが言う
「仰る通りかと」
アースが軽く笑む シェイムが言う
「それで、国防軍総司令官ともあるお方が わざわざ攻長閣下の容態を聞きに こちらへ?」
アースが言う
「いえ」
シェイムが微笑して言う
「では どう言ったご用件で?」
【 マスターの店 】
ハイケルがカウンターテーブルに突っ伏している マスターが笑って言う
「あっはははっ 馬鹿だなぁー ハイケルー そんなもん 最初からちょっとした冗談だって 分かるだろう?」
軍曹が困って言う
「マ、マスターっ」
ハイケルが突っ伏したまま言う
「…分かる訳がないだろう 向こうは総司令官をバックに 総責任者不在の 国防軍レギスト駐屯地における 最上軍階 中佐なんだ 例え冗談であっても 奴の命令であれば従うざるを得ない」
マスターが苦笑して言う
「う~ん… だとしてもだなぁ?いくらなんでも1600万を 今日中に用意しろとは 言わないだろう 普通? …なぁ?」
マスターが軍曹へ同意を求める 軍曹がハッとして慌てて言う
「え?あ… えっと…?」
ハイケルが身を起こして言う
「それこそ お前の常識違いだ 富裕層の連中にとって 1600万など それこそポケットマネーで 今すぐにでも払えるのだろう」
マスターが衝撃を受け軍曹へ言う
「えっ!?そうなの?」
軍曹が慌てて言う
「はえっ!?い、いえ 流石に ポケットマネーとは行きませんが 今すぐに用意しろと言われれば…」
マスターが衝撃を受け呆気にとられる ハイケルがコーヒーを飲んで言う
「ほらみろ 富裕層の連中に 慣れて居ないのは お前の方だ」
マスターが不満そうにハイケルを見る 軍曹が2人を見て困る マスターが気を切り替えて言う
「とは言え、お前~ いくらなんでも 部下たちの前で アーヴィン君へ借金を願い出るだなんて 折角の英雄振りが 台無しじゃねーか?」
ハイケルが言う
「そんなもの 壊れて消えてくれた方が 清々する」
軍曹が驚く マスターが苦笑して言う
「まったく 相変わらずだなぁ?可愛くないの!」
ハイケルが言う
「可愛くなくて結構だっ」
ハイケルが立ち上がって言う
「行くぞ 軍曹」
軍曹が慌てて立ち上がって言う
「あっ は、はいっ!少佐ぁ!」
マスターが皿を拭きながら言う
「今日から夜間訓練か?」
ハイケルが言う
「正確には明日からだが やる気のある連中が 今夜から泊り込むと言う …折角だ 少ししごいてやろうかと思ってな」
マスターが微笑して言う
「とか何とか言っちゃって 本当は 本人が脱力して 指揮を取れなかった 昼間の埋め合わせなんじゃねーのか?ハイケル?」
ハイケルが衝撃を受け怒りを殺す 軍曹が慌てて2人を見る ハイケルが歩き出して言う
「行くぞっ!軍曹っ」
軍曹が慌てて言う
「はっ はいっ!少佐ぁー!それでは マスター 本日も美味しいコーヒーを ご馳走様でありましたぁっ!」
マスターが言う
「ああ!また来いよー!今度は一杯1千万のブルマンNo1を 用意しておいてやるからな!」
ハイケルが顔を顰めて言う
「二度と来るかっ!」
ハイケルが怒って出て行く 軍曹が困りつつ言う
「で、ではっ!また お邪魔させて頂きます!失礼致しますっ マスターっ!…少佐ぁー!お待ち下さいーっ 少佐ぁーっ!」
軍曹が追いかけて行く マスターが軽く笑う
【 マイルズ地区 郊外 】
ハイケルが言う
「これより 少人数編成による 夜間 実戦模擬訓練を開始する」
1班メンバーが敬礼する ハイケルが言う
「状況は 犯人1名が 人質1名を取って篭城 人質の救護を優先するため 犯人の射殺も厭わない ただし…」
隊員たちが集中する ハイケルが言う
「現場には 多数のトラップが仕掛けられている模様 犯人を刺激しない為にも それらのトラップを回避する事が重要とされる」
隊員たちが顔を見合わせる 隊員Aが言う
「こんな暗いのに トラップまであるのか…」
隊員Bが言う
「回避するって言っても 見えないのをどうするんだ?」
隊員Cが考えて言う
「この間の16部隊みたいに ライトを…」
ハイケルが言う
「あれでは駄目だ」
隊員たちが驚いてハイケルを見る ハイケルが言う
「そもそも16部隊の敗因は 犯人たちに自分たちの行動を 知られていた事が要因する …従って 今日はお前たちに そのための訓練をさせる …軍曹」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!少佐!」
軍曹が敬礼を解除して持ってきたザックを前に下ろし開ける ハイケルが言う
「全員暗視ゴーグルを着用 光を使わず 音を立てぬ様 トラップを回避し 可能であれば犯人を拘束 人質を解放しろ 以上だ」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解っ!」
施設内
暗視ゴーグルの映し出す風景 隊員Aが慎重に周囲を確認しつつ進み ふと気付いて上部を見上げ言う
「あ… あそこに 何か…?」
隊員Bが背を向けて進み 後方を見渡していると その背が隊員Aに当たり隊員Aが慌てて言う
「のわっ」
隊員Bが疑問して振り返って言う
「え?」
ガッシャーンと盛大に音が鳴る 隊員Aが四つん這いで顔を上げると 目の前に金バケツが転がっている 隊員Bが慌てて言う
「ぎゃーっ アッちゃんが 水浸し~っ」
周囲に水がばら撒かれている 隊員Aが衝撃を受け 振り返って言う
「お前が押すからっ!トラップに引っかかったじゃないかっ!」
別部隊1
ガッシャーンと音が聞える 隊員Cが反応し言う
「なんだっ?」
隊員Dが言う
「何か近くで…」
2人が疑問した瞬間 後方に一瞬風が吹き 2人が振り返った瞬間 2人の胸に蛍光弾が放たれる 2人が呆気に撮られて言う
「なっ!?」「あっ!」
ハイケルが言う
「他者が発動させたトラップであっても 近く居れば自分たちにも危険が及ぶ 忘れるな」
隊員Cと隊員Dが敬礼して言う
「は、はいっ 少佐っ」
ハイケルが蛍光弾を仕込みながら言う
「お前たちは犯人に撃たれた 訓練が終わるまで そこで寝ていろ」
隊員Dが言う
「りょ、了解」
ハイケルが立ち去る 2人が床に寝て 隊員Cが言う
「少佐が犯人役だったのか…」
隊員Dが言う
「…うん?それじゃ 人質は?」
別部隊2
隊員Eが警戒しながら向かう先 足元のロープに引っかかると 上部で鈴が鳴り響く 隊員Eが衝撃を受け慌てて上を見ると 沢山の鈴がぶら下がっている 隊員Eがほっとして言う
「なんだ…鈴かぁ びっくりした」
隊員Eが一歩進みハッとする 胸に蛍光弾が打ち込まれる 隊員Eが呆気に取られると ハイケルがやって来て言う
「油断をするな 小さな物音でも 実戦ではそれが命取りになる」
隊員Eが敬礼して言う
「も、申し訳ありません 少佐…」
ハイケルが言って立ち去る
「お前は撃たれた 訓練が終わるまで そこで寝ていろ」
隊員Eがハイケルを振り返り言う
「は、はい…」
別部隊1
隊員Bが衝撃を受けて言う
「ぎゃーっ アッちゃんっ ここに死体がっ!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
隊員Cが怒って言う
「おいっ 勝手に殺すな」
隊員Bが言う
「にひひ バレた?」
隊員Dがリラックスしながら言う
「けどまぁ、お前らが来るまでの時間で考えれば 俺たちもう 死んでるかもな?」
隊員Cが苦笑して言う
「まぁな…」
隊員Aが蛍光弾入りの銃を構えて言う
「よし、それじゃ お前らの仇は 俺たちが取ってやるぜ!」
隊員Bが頷いて銃を構える 隊員Cと隊員Dが顔を見合わせてて苦笑すると 隊員Dが言う
「ああ、それならお前ら 1つだけ 教えといてやるよ」
隊員AとBが疑問する 隊員Cが頷いて言う
「”他者が発動させたトラップであっても 近く居れば自分たちにも危険が及ぶ 忘れるな”だぜ?」
隊員AとBが顔を見合わせ微笑して頷く 隊員Bが言う
「そういえばさっき アッちゃん この近くでトラップ発動させちゃったもんね?」
隊員CとDが衝撃を受ける 隊員Aが怒って言う
「あれはバイちゃんが 押したからだろっ!?」
隊員CとDが怒って言う
「「お前らのせいかっ!」」
隊員AとBが慌てて逃げて行く
別部隊2
隊員Aと隊員Bが走って来る 隊員Aが気付いて言う
「バイちゃんっ あそこにも死体がっ!」
隊員Bが驚いて言う
「えぇえっ!?」
隊員Aが隊員Eへ言う
「おいっ 大丈夫かっ!?」
隊員Bの足がロープに当たる 上部で鈴が鳴る 隊員AとBが上部を見上げ 隊員Bが言う
「今度は鈴だぁ」
隊員Eがハッとして言う
「油断をするな!小さな物音でも 命取りになるぞ!」
隊員Bが呆気に取られて言う
「へ?」
隊員Aがハッとして隊員Bの手を引いて走りながら言う
「バイちゃんっ 逃げろーっ!」
隊員Bが言う
「えぇえー!?」
隊員AとBが逃げ去ったところに ハイケルが銃を向けたまま現れ言う
「死体が喋るな」
隊員Eが衝撃を受け言う
「も、申し訳…」
ハイケルが苦笑して言う
「まぁ 良い」
ハイケルが隊員Eへ蛍光弾を撃つ 隊員Eが衝撃を受ける ハイケルが言う
「確実に仕留める これも重要な事だ 今度こそ死んでいろ」
隊員Eが苦笑して敬礼し言う
「りょ、了解っ」
別部隊3
隊員M、N、Vが階段を見上げ言う
「人質は上にいるって事も 考えられるよな?」
「そうだな」
「犯人も 上にいるかもしれねーぜ?」
3人が顔を見合わせ苦笑して言う
「けど、行かねーわけにも だよな?」
「よし、周囲をよく見て トラップに気を付けろ?」
3人が頷き合い 同時に足を踏み出す 途中の階段に大量のワックスが塗ってあり 3人が滑って悲鳴を上げながら転び落ちる
「おわーっ」「のわーっ」「とっとっとっとっとーぉ!」
3人が下段まで落ちて来て 各々体を擦りながら言う
「いってぇ~…」
3人の体に蛍光弾が1発づつ打ち込まれる 3人が衝撃受け振り返る ハイケルが呆れて言う
「潜入時における移動術を学んでいないのか?階段は上体を下げ 前傾姿勢で上がり 複数人の場合は 横に並ぶな」
3人が慌てて敬礼して言う
「りょ、了解っ」 「す、すみませんっ少佐」 「うっかり 忘れてました…っ」
ハイケルが言う
「3人とも その場で倒れ 反省していろ」
ハイケルが去る 3人が言う
「はっ 了解…」
3人が倒れる
隊員AとBが恐る恐るやって来る 隊員Bが衝撃を受け 小声で慌てて言う
「ぎゃーっ アッちゃんっ アッちゃんっ」
隊員Aが振り向いて言う
「んー?」
隊員Bが言う
「階段の前にも死体がっ!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「げーっ!ほんとだっ!」
隊員AとBが3人を見る 3人が横一列に並んで倒れている 隊員AとBが顔を見合わせてから階段を見上げ 隊員Aが疑問して言う
「落ちてきたのか?」
3人が衝撃を受ける 隊員Bが言う
「そうみたい」
隊員Aが3人を見て言う
「おまけに落ちたところを 犯人に撃たれたって感じだな?」
隊員Bが笑って言う
「にひひっ かっこわる~」
3人が衝撃を受け怒りを堪える 隊員AがBへ言う
「んじゃ、俺たちも そーならねー様に 気をつけようぜ」
隊員Bが頷いて言う
「そうだねー …うん?」
隊員Aが疑問して言う
「どうした?バイちゃん?」
隊員Bが表情を顰めて言う
「この屋敷 廃墟の癖に なんだか ワックスの匂いがしない?」
隊員Aが周囲の匂いをかいで言う
「ん~ そういえば 確かに」
隊員Bが笑んで言う
「わかった こいつら きっと それに滑って落ちたんだ そうと分かれば」
隊員AがBを見る隊員Bが言いながら階段を昇り言う
「アッちゃん 俺が先に行くから 少し後から来て」
隊員Aが言う
「よしっ 安心しろ!もしバイちゃんが落ちても 俺が受け止めてやる!」
隊員Bが言う
「うんっ 下敷きにするから 大丈夫!」
隊員Aが衝撃を受け 不満そうに追って言う
「珍しく先行すると思ったら そう言う事かよっ!?…お前が言うと 本当にやりそうだよなー」
隊員Bが進みながら言う
「にひひ バレた?」
隊員Aが追いながら言う
「もう ばればれー」
隊員Aと隊員Bが去った所に ハイケルが来て言う
「お前たちよりは 合格だ」
3人が衝撃受け言う
「も… 申し訳…」
「あのお笑いコンビに負けた…」
3人がガクッとうな垂れる ハイケルが微笑する 遠くで ガッシャーンと金バケツの落ちた音が鳴る ハイケルが振り向き向かう 3人が振り向き言う
「ところでさぁ 気になってたんだけど…」
「ああ、俺も」
施設外
施設から金バケツの落ちた音や鈴の音が聞えてくる 人影が視線を細め歩き出す
別部隊4
隊員Fが金バケツを頭にかぶっている 隊員Gが爆笑して声を抑えている 隊員Fが金バケツを外し 怒って言う
「これがトラップかよっ」
隊員Gが笑いを収めて言う
「っはは はぁ まぁまぁ 訓練なんだから しょうがねーだろ?」
施設上部
軍曹が双眼鏡で外を見ていてハッと気付き 慌てて無線に言う
「むっ!?あれは!…少佐っ!少佐ぁーっ!」
施設2F
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「どうした 軍曹」
イヤホンから軍曹の声が届く
『少佐っ!緊急事態 発生でありますっ!』
ハイケルが言う
「そうか 分かった …全隊員へ告ぐ!」
別部隊4
隊員Gがイヤホンを押さえて言う
「ん?何だ?訓練中止か?」
隊員Fが立ち上がり言う
「あぁ?」
隊員Fへ猟銃がむけられて ブロッドの声が聞える
「動くなっ」
隊員FとGが振り向き 猟銃を見て驚いて言う
「なっ!?」
「は、犯人か?」
ブロッドが猟銃を突きつけて言う
「誰が犯人じゃっ 勝手に人の家に入り込みおってぇ!」
隊員Fと隊員Gが衝撃を受け 驚いて言う
「えぇええっ!?」
「ひ、人の家ってっ!?」
隊員FとGがイヤホンを押さえて言う
「しょ、少佐っ!?」「少佐っ!緊急事態でありますー!」
ブロッドが言う
「何が少佐だっ!子供がこんな時間に 戦争ごっこなど やっているんじゃない!」
隊員Gが呆気にとられて言う
「えぇえ~っ!?」
施設外
ハイケルが言う
「事前に連絡が出来ず 申し訳ない」
ブロッドが笑って言う
「あっはっは 何 構わんさ 今日の夜からだろうと 明日の朝からだろうと 大して変わりない」
ハイケルが苦笑する 隊員たちが呆気に取られて顔を見合わせる ブロッドが言う
「じゃが、実は 悪戯防止にと あの屋敷には 今でも色々仕掛けを付けていてな?レギストの皆さんへ屋敷を明け渡す前に 撤去するつもりだったんじゃが その作業しようと思っていた昨日 あんな事件があったろう?わしゃ すっかりTVにかじりついてしまってな!」
ブロッドが笑う 隊員たちが顔を見合わせて言う
「それじゃ… あの屋敷にあった トラップって…」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルが言う
「いえ、むしろ その仕掛けが丁度良かったので 利用させてもらいました あの仕掛けの精度の良さは 身を持って確認済みなので」
ブロッドが笑って言う
「いやぁ~ あの戦争ごっこ好きな子供が レギストの少佐様とは わっはっはっ!昔は良く 見付けては しかりつけておったのにな?」
ハイケルが苦笑して言う
「いえ… ですから 何度も言いましたが あれは 訓練であって…」
ブロッドがハイケルへ向いて言う
「とは言え わしの悪戯小僧発見の為の仕掛けが役立って これほど立派な少佐様になってくれたんなら あの頃の不法侵入は 許してやるかの?」
ハイケルが苦笑して言う
「感謝します」
【 国防軍レギスト駐屯地 宿舎 】
1班と軍曹が雑魚寝している
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルがTVを見ている TVにニュースが流れていてキャスターが言う
『…では 次のニュースです 昨夜 皇居にて陛下を襲いその場で捕らえられた犯人たちは その後の調べで 以前 陛下の20周年をお祝いするパレードにおいて 襲撃を行った 反政府組織 ガイズを名乗っているという事が 政府警察の調べで』
ハイケルが疑問して言う
「反政府組織 ガイズ…?」
ハイケルがノートPCに入力し検索する TVではニュースが流れ続けている
『そして、今朝早く その反政府組織ガイズのメンバーから 現在拘束中のガイズメンバー10人の釈放を要求する連絡が 警察省長へ送られていたとの情報もありますが 詳しい内容の方は明らかにされていません』
ハイケルがキー入力をする手を止めて疑問して言う
「釈放要求は10人だと?」
ハイケルが記憶を思い出す ハイケルの脳裏に事件後の皇居の映像が思い出される 女帝の間の中に倒れている武装したガイズメンバーと ラミリツの周囲に倒れている オーケストラの服装をし 手に銃を持っている者たち ハイケルが疑問し キー入力をやり直してエンターを打つTVではニュースが流れ続け キャスターが言う
『釈放要求は10人との事ですが…』
『変ですねぇ?襲撃犯はもっと大人数でしたが…』
ハイケルがTVを見てからノートPCへ視線を戻し マウスを操作するとモニターに記事が掲載される ハイケルが言う
「陛下を襲った人数は 20人… 間違いは無い 俺の記憶と同じ いや… そもそも あの様子は 監視カメラに映し出されていた 紛う筈は無い それなのに 10人と言う事は…」
ハイケルが目を細めて言う
「犯行は 2グループ」
【 メイリス家 】
シェイムが歩きながら言う
「エーメレス… いや、攻長閣下の御容態はどうだ?」
メイドが言う
「はい 熱の方は下がり 意識もしっかりとされておりますが…」
シェイムが言う
「他に何かあるのか?」
メイドが視線を落として言う
「…いえ ただ、もうこれ以上は 攻長閣下のお仕事は されたくないと」
シェイムが言う
「…言わせておけ」
メイドが言う
「しかし…っ」
シェイムが言う
「私が言えば 嫌とは言わない …いや 言わせはしない」
メイドが言う
「旦那様…」
部屋の前に立ち シェイムが言う
「もう良い お前は下がれ」
メイドが頭を下げて言う
「はい…」
シェイムがドアを開ける
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツが横目に見る シェイムが言う
「具合は 良いそうだな エーメレス」
ラミリツが視線をそらして言う
「良くないよ… 少し動かすだけでも 痛いし…」
シェイムが言う
「今日 私の所へ 国防軍のハブロス総司令官がいらしたぞ?お前の容態を聞かれたので 私の方から 心配は無いと伝えておいた」
ラミリツが視線を落として言う
「心配は無いんじゃなくて する気が無いの くせに…」
シェイムが微笑して言う
「防長閣下も パレードの襲撃でお怪我を負われたが すぐに回復されていた 同じく 攻撃の兵士であるお前も すぐに回復するのだろう?」
ラミリツが毛布に身を隠しながら言う
「僕は… あんな怪物みたいな奴とは 違うんだ…」
シェイムが言う
「昨夜の襲撃 私の策に紛れ 余計な者が入り込んだが お陰で お前はあの映像を見ていた全ての国民に お前が 攻撃の兵士… いや、神の刻印を持った 悪魔の兵士である事を 知らしめる結果となった 作戦とは異なったが 結果は成功だ 良かったな?エーメレス」
ラミリツが顔を向け言う
「ちっとも… ちっとも良くなんてっ!僕はもう こんな事をするのも 痛いのも嫌だっ …だから 兄上っ!」
シェイムが苦笑して言う
「何を言っているんだ エーメレス お前は 悪魔の兵士 アールスローン戦記にある 不死身の兵士だ 例え どの様な怪我を負おうとも」
ラミリツが起き上がって刻印を見せて言う
「こんな刺青で 不死身の兵士になれるんならっ!兄上がなれば良いよっ!僕なんかよりっ 兄上の方がずっと… うっ!」
ラミリツの傷に痛みが走る ラミリツが肩を押さえ 苦しそうにベッドに身を戻す シェイムが苦笑して言う
「とりあえず 今日と明日位は休んでいても良いだろう 明後日には 防長閣下の様に外へ姿を見せるんだ」
部屋の扉が叩かれ メイドが言う
「旦那様 少々問題が…」
シェイムが表情を顰めて言う
「うん?」
シェイムが立ち去る ラミリツが毛布に潜り込む
【 メイリス家 シェイムの部屋 】
シェイムが机を叩いて言う
「ガイズから仲間の釈放要求する連絡とは何だっ!私は聞いていないぞ!?」
シェイムの視線の先TVニュースが流れている シェイムが電話を掛ける
【 警察長官宅 】
警察長が電話に出ていて言う
「はいっ 我々政府警察も一切聞いておりませんっ!その様な事実はっ!」
受話器からシェイムの声が届く
『ではっ 何故 メディアに知られているっ!?奴らの仲間が釈放を求めているとっ それも 人数は10人!』
警察長が冷や汗を拭って言う
「私は知りませんっ!本当ですっ!」
【 メイリス家 シェイムの部屋 】
TVにニュースが流れていてキャスターが言う
『…昨夜 皇居にて陛下を襲い捕らえられた犯人たちは その後の調べで 以前 陛下の20周年をお祝いするパレードにおいて 襲撃を行った 反政府組織 ガイズを名乗っているという事が 警察の調べで』
シェイムがTVニュースを見てから言う
「そもそも 奴らが ガイズと名乗る 反政府組織であると言う事さえ まだメディアには伏せて置くようにとっ!」
シェイムがハッとする
【 回想 】
アースが軽く笑む シェイムが言う
『それで、国防軍総司令官ともあるお方が わざわざ攻長閣下の容態を聞きに こちらへ?』
アースが言う
『いえ』
シェイムが微笑して言う
『では どう言ったご用件で?』
アースが首をかしげて言う
『昨夜も…では ありますが 以前のパレード襲撃事件で捕らえ そちらへ身柄を引き渡した あの犯人ら …そろそろ何か 情報のようなものは 聞き出せたのでしょうか?何しろ 奴らは 我ら国防軍の代表とも言える 防長閣下を傷付けた者たちだ 我々としては』
シェイムが一瞬間を置いてから 微笑して言う
『生憎 彼らは今も 黙秘を続けています とは言え どの道陛下のお命を狙った者たちです 防長閣下の痛みと苦しみを拭って差し上げられるほどの刑を 架す事を約束しますよ?』
アースが苦笑して言う
『それは… 警察と言うのも 中々恐ろしいですね 我々国防軍は 防長閣下が示すように 防衛が主 私としても その襲撃犯たちを どう懲らしめてやりたい と言うよりも 何故 あの様な事を… 陛下のお命を奪おう等としたのか それを聞き出したいのです』
シェイムが苦笑して言う
『…それは失礼 少々言葉が荒かった様ですね 何しろ 彼らには 昨夜 我々政府の代表である 攻長閣下を傷付けられたばかりですので どうか お許しを』
アースが微笑して言う
『心情はお察し致します』
【 回想終了 】
受話器から警察長の声がする
『長官!?長官っ!?』
シェイムが気付いて言う
「”昨夜も…”だとっ!?では 奴は 反政府組織である 奴らガイズを利用してっ!?…あのパレードの時からっ!?」
シェイムが言う
「最初から奴は 政府長官の私を狙っていたのだっ そして 私を大罪人へ …おのれ ハブロス総司令官っ!」
シェイムが机を叩く 受話器から警察長の声がする
『長官っ!?メイリス長官っ!?』
シェイムが受話器を電話機へたたき付ける様に切る
【 ハブロス家 アースの部屋 】
アースがタバコを吹かして言う
「フー… 呆気無かったな」
TVにニュース映像が流れている
翌日――
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
1班と軍曹がTVの前で驚いていて 軍曹が言う
「なっ… 何と言う事か…っ!?」
TVの映像にシェイムが拘束され連行される姿が映し出されている レポーターが言う
『事件は急展開を迎えました!一昨日の 皇居襲撃事件には 反政府組織ガイズの他に 先日の人質2人を含む 国防軍16部隊隊員8名が犠牲となった あの事件の 犯行グループの一味が加わっていたとの事です!そして あろう事か それら犯行グループを 影で操っていたのは 政府長長官シェイム・トルゥース・メイリス容疑者であった事が判明!今朝早くに逮捕状が出され…』
隊員が言う
「それじゃ政府の長官が 事件を起こして 人質2人や 国防軍の隊員を…っ!?」
隊員が表情を顰めて言う
「酷い話だ」
隊員Aが言う
「何が攻長閣下だよっ 政府は… 人殺しじゃないかっ!」
皆が驚く 隊員Bが言う
「アッちゃんっ 落ち着けって 悪いのはコイツだけだよ」
隊員Aが隊員Bへ向いて言う
「けどっ コイツは あの攻長閣下の兄貴だろっ!?政府長の長官がこんな奴で!…16部隊の奴らは コイツに 殺されたんだっ!」
隊員Bが言う
「アッちゃんっ!」
隊員Aが悔しそうに俯き 頭を抱えながら言う
「…っ …ごめん…」
隊員Cが言う
「気持ちは分かるぜ 一歩間違えば 俺たちだったかもしれないんだ」
隊員たちが気付き顔を見合わせる TVが騒がしくなる 隊員たちが顔を向ける 映像が慌しく動き レポーターが言う
『あ!攻長閣下ですっ!今 警察へ護送される シェイム・トルゥース・メイリス容疑者を前に!』
軍曹が表情を悲しめて言う
「ラミリツ攻長…」
【 メイリス家 玄関前 】
ラミリツが言う
「兄上…っ」
シェイムが僅かにラミリツへ視線を向けるが 気付かれないように視線を正面へ戻し連行される ラミリツがハッとして踏み出し言う
「あ、兄上…っ うっ… うぅう… い、痛い…っ」
ラミリツが肩を押さえうずくまる シェイムが警察車両に乗せられ 車両が出て行く ラミリツにメイドたちが寄り添う
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちと軍曹がTVを見ている TVからレポーターの声が響く
『攻長閣下です あぁ… 一昨夜に負われた傷が痛むのでしょうか とても立っていられないと言った様子で 左の肩を押さえ うずくまってしまわれました 付き添いの方々に支えられるようにして 今 お屋敷の中の方へ…』
軍曹が視線を細め 立ち上がり立ち去る 隊員たちが疑問して言う
「軍曹…?」
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルがTVを見ている TVからレポーターの声が届く
『尚 ラミリツ・エーメレツ・攻長閣下は 既に陛下の剣である攻長として戒名されている為 シェイム・トルゥース・メイリス容疑者とは 家族・兄弟としての繋がりは無いものとされています』
ハイケルが沈黙する TVからレポーターの声が続く
『これにより シェイム・トルゥース・メイリス容疑者の罪状に関わらず 今後も ラミリツ・エーメレツ・防長閣下は 政府長攻長 陛下の剣として 攻長閣下の御使命に殉ずる事と…』
ハイケルがTVを消す
【 国防軍総司令部 総司令官室 】
アースが椅子に座っている ドアがノックされる アースが言う
「入れ」
ドアが開き 軍曹が居る アースが微笑して言う
「来ると思っていたよ アーヴィン」
軍曹が表情を落とす アースが立ち上がり言う
「そんなところに居ないで 中へ入ったらどうだ?…用件は これの事だろう?」
アースが応接テーブルに新聞を放る 新聞の書面にシェイムとラミリツの写真がある 軍曹がそれを確認して部屋へ入りドアを閉める
アースと軍曹が向かいのソファに座っている アースがタバコを吹かすと軍曹が言う
「やはり、兄貴が告発したのか?」
アースが苦笑して言う
「まさか?」
軍曹が言う
「だが、兄貴のその様子は… そうだと言っている」
アースが苦笑して言う
「相変わらず目ざといな アーヴィン?だが、本当だ 私が彼を告発した訳ではない 私はただ… 手を貸したまでだ」
軍曹が言う
「手を?」
アースが言う
「事件の概要はこうだ まず、最初に あの陛下のパレードにて襲撃を行った者 奴らは 反女帝組織ガイズと名乗った」
軍曹が呆気にとられて言う
「反女帝組織?TVでは 反政府組織と…」
アースが言う
「ああ、それは 政府がマスコミへそう言い換えさせている 何故なら、その反女帝組織の者たちは 政府の人間らしいからな?」
軍曹が言う
「え…?」
アースが言う
「政府の一部に 女帝陛下に逆らおうと言う 不届き者たちが居るのだそうだ その者たちが パレードを始めとした今回の一連の事件を引き起こした」
アースが言う
「では メイリス長官は その反女帝組織のメンバーであったと言う事か?」
アースが言う
「いや、そうではない 現に 彼は 彼の弟である ラミリツ・エーメレス攻長を 陛下の剣として 陛下へ付く側に身を置いていた」
軍曹が思案する アースが言う
「だが、彼は 攻長閣下を立て 自らが政府の長となった事で 今度は それ以上の力を …反女帝組織の力をも 手に入れようと企んだ様だ」
軍曹がアースを見る アースが言う
「そして 彼はパレードにて 我々国防軍が捕らえた 反女帝組織ガイズのメンバーと手を組み 彼らを政府警察から釈放した …その彼らが起こした事件が 後に続いた一連の事件だ」
軍曹が考えて言う
「そうであったのか… では 政府警察はメイリス長官の思うがままだったと言う事なのだな …レギストや15部隊が何度捕らえ様とも 奴らはメイリス長官によって釈放されてしまう …これでは事件は止まらんっ」
アースが言う
「ああ、だが メイリス長官のその考えは 流石に強引だったのだろう 彼と取引を行っていなかった 他のガイズのメンバーや 政府の者たちの目に止まり そして… 私の下へと話が舞い込んで来た」
軍曹がアースを見て言う
「で、兄貴は?」
アースが言う
「私としては もっと詳しい事を 特に その反女帝組織の者たちの話を 知りたかったのだが 深入りするには情報が少な過ぎる 従って 今回は彼らガイズや 他の政府の者たちへ協力し 貸しを作っておいた …16部隊で犠牲となった隊員たちの 仇を取ってやりたいと言う思いもあったしな?メイリス長官が操っていた ガイズの一部のメンバー… 皇居にて捉えられたその者たちからは 既に それらの犯行へ携わったという話が聞かれているそうだ 詳しい事が分かり次第 また連絡をくれるとも」
軍曹が視線を落として言う
「…では、犠牲となった人質や 16部隊の隊員たちの仇は 取られたと言って良いのだろうか?」
アースが言う
「15部隊と16部隊が携わった そちらの2件の事件に付いては 犯行グループと共にメイリス長官を捕らえた事で 事件は解決した事になる よって、仇は取ったと言っても 間違えでは無いのかもしれない だが… 反女帝組織と女帝推進組織と言うべきか 2つに分かれている政府の現状が変わらない限りは 再び同じ事件が起きる可能性も否めない」
軍曹が表情を顰めて言う
「…では どうしたら良いのだ?」
アースが言う
「私やお前は 国防軍の者であって 政府の者ではない そうとなれば この問題に口を出す事は難しいが その政府のせいで起きる抗争… 事件には 国防軍として巻き込まれる可能性が十分にある 従って 引き続き 私の方で調べを進め 何らかの術が見付かれば 防長であるお前か 軍曹であるお前 どちらかに動いてもらう事も考えられるが…」
軍曹が驚く アースが軍曹を見て言う
「その時は どちらのお前であっても 私に協力してくれるか?アーヴァイン」
軍曹が呆気に取られた後微笑して言う
「勿論なのだ 俺はどちらの俺であっても 兄貴の弟である事に代わりは無い!従って 協力するのは当たり前なのである!」
アースが微笑して言う
「そうか… そうだな?有難う アーヴィン」
軍曹が微笑する
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】
隊員Aが叫ぶ
「通常訓練の1!開始ー!」
隊員たちが腕立てを開始する ハイケルが隊員達を見ている 隊員たちが顔を見合わせ 小声で言う
「軍曹… 居ないな?」
「朝は居たのに 何処へ行ったんだ?」
「あれじゃねーか?女帝陛下に朝のご挨拶…とか?」
「ああ、そっか 軍曹忙しいんだな 防長閣下なのは嬉しいけど… ちょっと寂しい気もするぜ」
隊員Bが言う
「それにー? アッちゃんの号令じゃ なんか 気合入らないしねー?」
隊員Aが衝撃を受け言う
「仕方がないだろっ!?少佐にお前がやれって言われたんだから…」
隊員Cが言う
「え?そうなのか?」
隊員Aが笑んで言う
「へっへ~ん 俺は少佐に期待されてるからな!」
隊員Bが言う
「それか~ もしかしたら 名前順で明日は俺になるかも?」
隊員Aが衝撃を受ける 隊員Nが笑って言う
「っはははっ それ 有り得る~」
隊員Aが羞恥怒りしている ハイケルが隊員たちを見た後 軍曹がいつもやって来る側を見る 視線の先に人影は無い ハイケルが視線を戻し軽く息を吐く
【 皇居 玄関前 】
高級車が到着し 軍曹が降り立つ 警備をしている国防軍隊員やその他の者たちが敬礼や礼をする中 軍曹が歩いて行く
【 皇居 女帝の間 】
扉が開かれ 軍曹が中を見渡す 御簾に人影がある 他に人は居ない 軍曹が攻長の場を見てから 横に居る門兵へ言う
「ラミリツ攻長は 今日も見えていないのか?」
門兵が言う
「はっ 攻長閣下は 本日もご欠席なさるとの ご連絡を頂いております」
軍曹が言う
「そうか…」
軍曹の後ろに居る役人が言う
「防長閣下 配置にて 盾を御構えになって下さい 本日分のそちらの映像を納めましたら 以降はその映像を監視カメラへ流し続けますので」
軍曹が言う
「うむ …所で その監視カメラ自体の撤去は やはり出来ぬのか?」
役人が言う
「はい… 残念ながら あのような事が起きてしまいました故に 監視カメラは いざと言う時の為に これからも置き続けた方が良いと その様な意見が多く御座いますので 一応防長閣下からの御言葉として 伝えはして置きますが 返答は恐らく 思わしくないだろうと」
軍曹が言う
「…分かった では いつもの通り よろしく頼む」
役人が礼をして言う
「はい」
軍曹が進み入り 御簾の左へ立ち そこへ立て掛けてある盾を取り 前へ構える 役人が頷き監視カメラを見上げる 監視カメラが動き映像を録画している 軍曹は前を見据えたまま 僅かに横を見てラミリツの立ち位置を見て 表情を落とし考える
【 国防軍レギスト駐屯地 正門前 】
軍曹の車が来る 衛兵にIDを見せると 衛兵が敬礼して言う
「お疲れ様であります! …アーヴァイン軍曹!」
軍曹が一瞬疑問した後苦笑し敬礼して言う
「おおっ!お疲れであるっ!」
衛兵が苦笑し もう1人の衛兵へ合図を送る その衛兵が頷き門を開ける 衛兵が車から一歩離れ言う
「どうぞお通り下さい」
軍曹が言う
「うむ!…あ、レギスト機動部隊は まだ出ては居ないだろうか?」
衛兵が言う
「はい、先ほどまで 訓練所にてウォーミングアップをしていた様なので 今頃は恐らく 夕食後の休憩辺りかと 夜は 外の施設へ向かうと 連絡が入っています」
軍曹が言う
「そうか!了解した!情報伝達を感謝する!」
衛兵が敬礼して言う
「はっ!防長閣下っ!」
軍曹が一瞬呆気に取られた後苦笑して車を進める 車が過ぎ門が閉められると もう1人の衛兵が来て言う
「ハイケル少佐を 顔パスにしてるんだから これからは防長閣下もそうするか?」
衛兵が言う
「そうだな?そうするか?」
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
外部
軍曹がドアをノックして言う
「アーヴァイン軍曹でありますっ!」
室内からハイケルの声がする
「入れ」
軍曹が言う
「はっ!入りますっ!」
室内
軍曹が入り敬礼して言う
「遅くなりまして 申し訳ありませんっ!少佐ぁっ!」
ハイケルがノートPCから一度視線を上げノートPCを見てから再び軍曹を見て言う
「…問題ない」
軍曹が疑問する ハイケルが言う
「25分後に メイス地区郊外の屋敷跡にて 実戦訓練を行う …参加をするなら 5分前までに車両保管所へ集合しろ」
軍曹が一瞬疑問してからすぐに敬礼し言う
「はっ!了解いたしましたっ!」
軍曹がハイケルを見る ハイケルがノートPCを見ている 軍曹が敬礼を解除し少し考えてから言う
「…あ、あの 少佐?」
ハイケルが言う
「録画映像か…」
軍曹が疑問して言う
「はぇ?」
ハイケルが言う
「皇居が公開している 皇居御所の映像だ 昨日から今日に掛け ラミリツ・エーメレス・攻長閣下が居ない事は頷けるとしても こちらに居た筈の 防長閣下が ずっと御所に控えている」
軍曹が表情を困らせて言う
「は… はぁ その… 実は そうでありまして…」
ハイケルがPCマウスを操作しながら言う
「良く出来ている ただ録画した物をそのまま繰り返し流している訳ではなく 常に僅かながらの編集がなされている ただ見ている分では 録画映像だとは思えない出来だ」
軍曹が呆気にとられて言う
「そう… でありましたか」
ハイケルが軍曹を見て言う
「編集は何処が行っている?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えっ!?え、えっと…?」
ハイケルが苦笑して言う
「知らないのなら良い …もしこれが皇居の関係者が行っているのだとしたら あの襲撃の際 何故映像の配信を 処理しなかったのかと 考えていただけだ」
軍曹がハッとして言う
「あ、あのっ 少佐 その事件の真相なのですがっ」
ハイケルが軍曹を見る
ハイケルが言う
「…なるほど」
軍曹が言う
「これで メイリス長官が携わった事件に関しては 一応解決した と… そして、兄… いえ、総司令官は これからも政府の情報を調べると言っていました きっと 何か分かりましたら また 自分に教えてくれるものかと… そうしましたら!自分が再び 少佐へお知らせいたしますのでっ!」
軍曹がハイケルを見る ハイケルが考えていた状態から軍曹を見て言う
「で、具体的なところ 総司令官は彼らへ 何の手助けをしたんだ?」
軍曹が呆気にとられて言う
「は…?」
ハイケルが言う
「反女帝組織ガイズと女帝推進の政府 その2つのグループが 今回新たに3番目として出来てしまった そのメイリス長官の指揮するグループを潰すに辺り 先の2グループは 政府のその様な内情を知らせてまで 国防軍の総司令官へ協力を願い出た… 政府内のその様な抗争を まして 女帝陛下に関係する内容だ 表向きには政府と手を取り合っていると見せている国防軍だが その実、彼らにとっての最大のライバル そこへその様な重大事を晒してまで 必要とする協力とは何だ?」
軍曹が言う
「それは… 総司令官が協力したのは 皇居襲撃の際に入れられる オーケストラに化けた 犯人たちを見逃す事 そして、一通りの事が済むまで 13部隊を御所へ入れないことであったかと…」
ハイケルが言う
「それは そうであったとしても あの時… 13部隊が動かない状態の時に 私が飛び込んでいかなければ 陛下をお守りし 動けずに居た君は 間違いなく 敵の攻撃を受けていたっ」
ハイケルが視線を強める 軍曹が呆気に取られる ハイケルが言う
「それとも 私が行かなくても あの時 君を襲った敵の手を 止める術があったと?少なくとも 私には …そうは思えない」
軍曹がハイケルから視線をそらし考えて言う
「それは… そう ですね…」
ハイケルが言う
「総司令官は その事に対し 事件の前にも後にも 君へは何も言わなかったのか?」
軍曹が間を置いて言う
「…は …はい」
ハイケルが軽く息を吐いて言う
「まぁ… 良い」
軍曹がハッとして言う
「は?」
ハイケルが軍曹の横へ来て言う
「時間だ 私は隊員たちと共に 訓練施設へ向かう」
軍曹がはっとしてから気を入れて言う
「自分もっ 向かいます!」
ハイケルが間を置いて言う
「…そうか」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!」
ハイケルが部屋を出る 軍曹が続く
【 メイス地区郊外 屋敷跡 】
ハイケルが言う
「これより この施設を使った 実戦模擬訓練を行う 今回は 犯人や人質といった概念は持たない 2グループに別れた総力戦とする 昨夜 訓練を受けた者は 先に屋敷内へ入り 後に入る 後攻部隊を迎え撃て 後攻部隊も 今回は拘束ではなく 先に待ち構えている敵対グループを 殲滅する事を目的とする」
隊員たちが息を飲む ハイケルが言う
「使用武器は 訓練用蛍光弾を装填した銃のみとし 蛍光弾を受けた者はその場に倒れ 仲間の救護を待つ …ただし 倒れた者が 仲間へ言葉を発せられるのは3分間 3分を経過した者は 死亡したものと扱い 以後一切の言葉の使用を禁止すると共に 救護の対象から除外する」
隊員Aが表情を強めて言う
「敵の攻撃を受けて 生きていられるのは3分間だけ…か」
隊員Bが言う
「3分以内でも 自分の事は放っといて 敵を倒してくれーってのも ありかな?寝てられるし… にひひっ」
隊員Aが衝撃を受け 怒って言う
「お、お前っ 訓練がんばろーって気はねーのかよっ!?」
隊員Bが言う
「そりゃ 頑張るけどー やられちゃったら どの道アウトでしょー?」
ハイケルが言う
「自分の救護を拒否し 仲間の足を引かないと言う考えは有りだ ただし、訓練終了時は 生き残った人数は勿論だが 救護された者の人数も査定する 実戦においては 救護された者のみが生き残り 先へ進んだ者が全滅する事もある その際は 例え 途中までであっても その場までの情報を知る者として 有力な情報源とされる」
隊員Bが言う
「なるほど~」
隊員Aが言う
「けど、やっぱ やるからには 最後まで生き残る!…バイちゃん 眠くてもしっかり戦ってくれよ?」
隊員Bが笑って言う
「大丈夫ー 一発でも銃撃てば 目覚めるから」
隊員Cが笑んで言う
「一発打つ前に やられたりしてな?クフフッ」
隊員Bが不満そうに隊員Cを見る 隊員Aが言う
「それは無いね?この俺が居るんだ バイちゃんが最初の一発も撃たないで やられるって事は無いぜ?」
隊員Bが呆気に取られて隊員Aを見る 隊員Cが言う
「なんだー?少佐に少し褒められたからって 良い気になってると…」
軍曹が言う
「おいっ そこーっ!少佐のお言葉の途中だ!私語は慎まぬかぁーっ!」
隊員ABCがビクッと衝撃を受け 敬礼して言う
「「「失礼しましたっ!軍曹っ!」」」
軍曹が頷いて言う
「うむ!」
軍曹がハイケルを見る ハイケルが言う
「では、訓練を開始する 準備を済ませ次第 先行部隊は屋敷へ向かえ 後攻部隊は5分後に突入する 以上だ」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解っ!」
屋敷内1
隊員Bが物陰に隠れて言う
「ねぇねぇ アッちゃん」
隊員Aが疑問して言う
「んー?」
隊員Bが言う
「さっきのあれ どう言う事?」
隊員Aが蛍光弾を装填しながら言う
「さっきのあれって?」
隊員Bが言う
「ほら、さっき サッちゃんが 俺に言ったじゃん?俺が一発打つ前にやられたりーって」
隊員Aが言う
「ああ」
隊員Bが言う
「その時 アッちゃん言ったじゃん?俺が撃つ前にやられる事は無いって アッちゃんが居るから…」
隊員Aが言う
「しっ!静かにっ」
隊員Bが疑問する 隊員Aが銃を構えて小声で言う
「始まったみたいだ… 話は後でなっ」
隊員Bが銃を構えて言う
「んー 分かった じゃ 後で…」
隊員Aが顎を引いて小声で言う
「俺が先に出る バイちゃんは後からっ!」
隊員Bが言う
「…やっぱ そう言う事?」
施設内2
軍曹が銃を構えて小声で言う
「自分が先に行くっ お前たちは」
隊員が小声で言う
「いえっ!軍曹っ 自分が先に行きます!」
軍曹が驚いて小声で言う
「な、何を言うっ!?先に何があるやもしれぬ こう言う時は 上官が先頭に立つものっ!」
隊員が軍曹の前に出て小声で言う
「自分が行きますっ!」
隊員が通路の先へ飛び出す 軍曹が慌てて言う
「ま、待てっ」
施設内1
隊員Aが言う
「来たっ!」
隊員Aが物陰から飛び出し 蛍光弾を撃つ
施設内2
隊員Aの撃った蛍光弾が隊員の体に当たる 軍曹がハッとして言う
「モルト隊員っ!」
軍曹の後ろに控えていた隊員たちが一斉に飛び出し 蛍光弾を撃つ
施設内1
隊員Aが言う
「よしっ!…っとと!」
隊員Aが物陰へ身を隠すと 蛍光弾が隊員Aが元居た場所へ放たれる 隊員Aが振り返って言う
「軍曹の一団が来るぞ!バイちゃん!バイちゃんの銃さばき見せてやれ!」
隊員Bが言う
「うん!まかせろ!…でもあれ アッちゃんの死体が無いと出来ないんだけど?」
隊員Aが衝撃を受けつつ言う
「援護するから!死なせないでやってくれ!」
隊員Bが横へ来て言う
「うん じゃあ やってみる」
隊員Aが言う
「よしっ 俺が飛び出すから!」
隊員Bが言う
「おーけー!」
隊員Aが言う
「いくぞーっ!」
施設内2
軍曹が隊員を抱え言う
「自分はモルト隊員を救助するっ!お前たち ここは頼んだぞ!」
隊員たちが言う
「了解!」
軍曹が隊員を背負い走って行く 隊員たちが顔を見合わせ頷き 1人が言う
「次は 俺が飛び出す!」
隊員たちが頷く
施設内1
隊員Aが飛び出し銃を構える 隊員Aが構えている先に 隊員が飛び出し銃を向ける 隊員Aが瞬時に引き金を引く
施設内2
飛び出した隊員が銃を撃てずに蛍光弾を受け言う
「あっ」
隊員たちが飛び出し銃を向ける 隊員たちの視線の先隊員Aが瞬時に物陰へ向かう 隊員たちが隊員Aへ銃口を向けると 隊員Aが居た後ろの場所に隊員Bが居て 隊員たちへ銃を乱射させる 隊員たちが驚き銃を放ちつつ体に蛍光弾を受ける 隊員たちが驚いて言う
「う… 嘘だろ…?」
隊員たちが倒れる
施設内1
隊員Bが呆気にとられて言う
「あ…」
隊員Aが蛍光弾だらけになっている物陰から顔を覗かせ 自分の体と隊員Bの体を見てから 喜んで言う
「やったぞ!?バイちゃんっ!俺らの作戦勝ちー!」
隊員Bが隊員Aへ向いて言う
「酷いよ!アッちゃん!俺てっきり アッちゃんが死体になって 俺の盾やってくれると思ったのにー!」
隊員Aが怒って言う
「だからっ 俺を 殺そうとするなってっ!」
屋敷外
軍曹が隊員を下ろす 隊員が降り言う
「ご迷惑をお掛けして 申し訳ありません 軍曹…」
軍曹が言う
「迷惑などではない 気にするな …だが、何故さっきは 自分の前に出たのだ?自分は 自分が先行すると」
隊員が視線を落として言う
「すみません… ただ、もしこれが実戦だったとしたら… 自分はやはり!軍曹の前に出ます!」
軍曹が驚き怒って言う
「何を言うっ!実戦であれば尚更っ!お前は 本物の銃弾に倒れていたのであるっ!」
隊員が軍曹を見て言う
「しかしっ!軍曹は我々の上官にして 防長閣下でありますっ!自分は その軍曹をお守りしたいとっ」
軍曹が驚く 隊員がハッとして視線を落として言う
「…っ すみません 守る所か 守られておきながら…」
軍曹が苦笑して言う
「いや、すまん …謝るのは自分の方だ」
隊員が驚いて軍曹を見る 軍曹が苦笑して言う
「少佐にも言われている 実戦の際には 自分は投入しないと …少佐も 自分の事を防長として お考えなのかもしれない …残念だが」
隊員が呆気に取られた後微笑して言う
「し、しかし!軍曹があの後 敵を撃ってくれなかったら 自分は更なる敵の攻撃に 3分所か 致命傷を受けていたかもしれません 有難う御座います!軍曹!」
軍曹が呆気に取られた後慌てて言う
「お… おおっ!当然なのだっ!例え少佐にそうと言われておろうともっ!自分はっ!やはり レギストとしてっ お前たちと共に戦うのだ!従って 訓練には全力で向かうっ!」
隊員が言う
「はいっ!軍曹!どうか 自分の仇を お願いしますっ!」
軍曹が言う
「まかせよっ!お前はここで 朗報を待っておれーっ!」
隊員が敬礼して言う
「はっ!了解いたしました!軍曹!」
軍曹が屋敷へ走る 隊員が軍曹の後姿を見て微笑する
施設内1
隊員Bが言う
「ねーねー?アッちゃんー?そろそろ別の所に移動しない?俺飽きて来ちゃったー」
隊員Aが蛍光弾を装填して言う
「そうだな ここで俺らが倒してばっか居ると 他の連中も暇で寝ちまうかもしれないし 同じ訓練じゃ 意味も無いもんな?」
隊員Bが言う
「そうそうー もっと奥に行って寝てようよ?何か後攻部隊 弱過ぎー?きっと一番奥なら 1人も来ないんじゃないー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「それじゃ 訓練にならないじゃないか!?俺はもっと訓練したいんだ!」
隊員Bが言う
「違うよ アッちゃん 俺だって訓練したい だから この訓練が終われば また 俺らだけの 少佐特別訓練が待ってるかもしれないじゃない?」
隊員Aが喜んで言う
「おっ!そいつは良い!」
隊員Bが言う
「でしょー?だから 今の内に休憩取って 備えるのー!」
隊員Aが笑んで言う
「なるほど!よし!それなら 奥へ移動しよう!」
隊員Bが言う
「うん!」
隊員Aが物陰から周囲を確認し 隊員Bへ頷いて走る 隊員Bが続く
施設内2
軍曹と隊員たちがやって来て 驚いて言う
「なっ!?」
軍曹が慌ててやって来て 隊員たちの倒れた山へ言う
「何があったっ!?お前たちっ!?」
隊員たちが軍曹を見てから時計を見て黙る 軍曹がハッとして言う
「何と… 既に3分が過ぎたというのか …皆 アラン隊員1人にやられたと?」
隊員たちが言葉言いたげに悔しそうにする 軍曹が言う
「すまぬっ 皆… 本来であれば 助け出してやりたいが 今は 進まねばならんっ お前たちの仇は 自分らが取ってやるのだっ!朗報を待っておれ!」
軍曹が銃を抱え通路の先を伺い 走り去る 隊員たちが追う
施設内3
隊員Aと隊員Bが走りながら言う
「おーい 俺らは奥に行くから!後は頼んだぜー!」 「皆ちゃんと起きてるかー?」
物陰に隠れている先行部隊が居眠りから起きてハッとする 隊員Aが通り過ぎざまに言う
「後はよろしくー!」
先行部隊が銃を構えて言う
「やっべー すっかり寝てた」
ハイケルが物陰に居て様子を伺っている
しばらくの後 通路の手前に軍曹と隊員たちがやって来る ハイケルが顔を向ける 軍曹が隊員たちへ言う
「自分が先行するっ 皆 自分の後に続くのだっ」
隊員たちが言う
「了解っ」
軍曹が頷き 銃を構えてから 通路の先へ飛び出し通路の先へ銃を向ける 先行隊員たちが一斉に飛び出し軍曹へ銃を放つ 軍曹がハッとして銃を撃とうとするが指が動かない 軍曹が驚く 隊員たちが一瞬の後に飛び出し 銃を放つ 先行隊員たちが物陰へ身を隠す 数人が被弾し言いながら倒れる
「く…やられた」 「けど 敵の将を取ったぜ」 「へっへーん どんなもんだ アラン隊員」
ハイケルが沈黙して軍曹を見る 軍曹がハッとして自分の身を見て言う
「うっ!?や やられ…」
隊員たちが通路の手前へ身を隠していて言う
「軍曹っ」 「軍曹っ!」
軍曹が残念そうに倒れようとする 全隊員たちのイヤホンにハイケルの無線が入る
『…今回は特例として アーヴァイン軍曹は被弾しても 倒れない …不死身の兵士とする』
全隊員たちが衝撃を受け 呆気に取られる 軍曹が驚いて言う
「は…?はぇっ!?」
全隊員たちが噴出し 笑いを抑えながら言う
「確かに…」 「流石 防長閣下…っ」
ハイケルの無線が続く
『共に 既に被弾している後攻隊員たちは 現時刻をもって 訓練を再開 不死身の守りの兵士を盾としてでも 屋敷の奥まで到達しろ 以上だ』
軍曹が衝撃を受け 慌てて言う
「しょっ 少佐ぁーっ!?」
先行部隊が失笑する中 軍曹より 後方にいた隊員たちが軍曹の後ろに到着する
施設内 奥
隊員Bがイヤホンを聴きながら言う
「んー 残念ながら 今日の特別訓練は無さそうー?」
隊員Aが蛍光弾を装填しながら言う
「けど 面白そうじゃないか!後攻部隊の連中が 軍曹を盾にして来るんだ きっとここまで到達するぜ?どうする?」
隊員Bが笑んで言う
「それは勿論 今度こそ 俺も アッちゃんを盾にして 戦うぜー!」
隊員Aが苦笑して言う
「やっぱそーだよな?」
隊員Bが言う
「にひひっ バレた?」
隊員Aが言う
「最初っから ばればれ!…だから言っただろ?バイちゃんが一発も撃たないで倒される事はないって?」
隊員Bが呆気に取られた後言う
「あぁ… そう言う事?」
隊員Aが溜息混じりに言う
「ああ そう言う事」
隊員Bが苦笑して言う
「なんだ…」
隊員Aが疑問して言う
「なんだ って?」
隊員Bが蛍光弾を装填して言う
「何でもなーい」
隊員Aが疑問しつつ銃を構える
【 国防軍レギスト駐屯地 】
隊員たちが思い思いの休憩を取っている
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルがノートPCを眺めている 軍曹が敬礼して言う
「夜間訓練っ!お疲れ様でありましたっ!少佐ぁ!」
ハイケルがノートPCから目を向けないまま言う
「お疲れ 軍曹」
軍曹が敬礼を解除しハイケルを伺いつつ言う
「所で… 少佐?明日も… 同じ訓練を 行うのでありましょうか?」
ハイケルが視線を変えずに言う
「明日は先行後攻を入れ替え 行う予定だ」
軍曹が言う
「えーっと… その、自分も 再び 不死身の兵士として… で ありましょうか?」
ハイケルが言う
「そうだな 明日は入れ替わる 先行部隊が やはり今日と同じ様子であるなら それもあるだろう」
軍曹が苦笑して言う
「は… はぁ…」
ハイケルがPCマウスを操作してから 軍曹を見て言う
「それが どうかしたのか?」
軍曹が困りつつ言う
「は、はい… その 本当に それで良いものかと…?」
ハイケルが言う
「何が言いたい?」
軍曹が言う
「はっ その… 少佐のお考えの下 行っている訓練に口を差し挟むようで 申し訳無いのですが…」
ハイケルが言う
「問題ない」
軍曹が言う
「はっ では、自分の考えとしては 現在の先行後攻の隊員たちを 半数ずつ入れ替えるなどして 全体的な訓練をした方が 良いのでは ないかと… 現行では 自分と行動を共にする隊員たちが どんどん遅れを取ってしまうようで」
ハイケルが言う
「それで良い」
軍曹が驚いて言う
「え!?」
ハイケルが言う
「私は例え少数であっても 私と共に行動出来る隊員を作りたいと考えている …他の者は 後衛部隊 もしくは支援部隊として 別に備える」
軍曹が呆気に取られた後視線を落として言う
「しかし… それでは…っ」
ハイケルが言う
「君の言う様に半数を入れ替え 訓練を行っていけば 結果として 全体的に同じ戦力にはなるだろう だが 同時に一人一人の隊員たちの能力を 押さえ付ける事にもなる」
軍曹がハイケルへ向いて言う
「それは 確かに そうはなってしまうかと 思われますが しかし 部隊は複数の人数で 構成されるものであります そうである以上 隊員一人一人の能力が ある部分では押さえられ また、ある部分では補われると言うのは 至極当然であるかと」
ハイケルが言う
「それが国防軍の部隊において 当然であるのなら尚更 私のレギストは 特別な部隊にする」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「通常の部隊が必要なら 国防軍第1部隊からレギスト17部隊を除いた 20までの部隊が当たれば良い だが、それらの部隊では出来ない事を レギストは行う …その為の 部隊編成と訓練だ」
軍曹が呆気にとられて言う
「そうで… ありましたか」
ハイケルが軽く息を吐いて言う
「とは言え 君と行動を共にする隊員たちは 少々非力過ぎるな?あれでは 不死身の守りの兵士である君が居なければ 最初の戦闘で全滅だ」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「そ、そのっ 少佐ぁっ!その事なのでありますがっ!」
ハイケルが言う
「何だ」
軍曹が言う
「自分を盾とする事は… その事は全く持って構いませんがっ いくら 守りの兵士であっても 何十発もの銃弾を受けて居てはっ 自分としても生き続ける自信が 無いのでありまして… そ、それからっ 自分はレギストに居る間は アーヴァイン軍曹であって 守りの兵士では無いのでありますっ」
ハイケルが言う
「では、何故 攻撃をしない?」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「今日の訓練において… いや、先日の時もそうだ 君は 敵部隊へ銃を向けはするが 決して引き金を引かない」
軍曹が視線を落として言う
「そ… それは…」
ハイケルが言う
「…引き金は 引かないのではなく 引けないのではないか?」
軍曹が呆気に取られる ハイケルが見つめる 軍曹が表情を困らせ言葉に詰まる ハイケルが言う
「最初は君の 隊員たちへの思いから 心理的に引くのが遅れているのだと思ったが …その様子では どうやら違う様だな …実戦においては 致命的だ」
軍曹がハイケルを見る ハイケルが言う
「やはり 君は 実戦時には除外する… いや、もう既に 除外するべきなのか?」
軍曹が驚き言葉を失う ハイケルが言う
「このままレギストへ残り 訓練へ参加すると言うのなら それなりに考えはする だが どうするのかは 君に任せる」
軍曹が言う
「少佐…」
ハイケルがノートPCへ視線を向けて言う
「以上だ」
軍曹が視線を落とし 一度口を閉ざしてから言う
「失礼致しましたっ」
軍曹が部屋を出て行く ハイケルがノートPCから視線を上げ 軍曹の出て行った後を見る
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちが談話して居る 軍曹がやって来て隊員たちを見渡すと表情を落とす 隊員が軍曹に気付いて言う
「あ、軍曹!」 「軍曹!」 「お疲れ様であります!軍曹!」
軍曹が呆気に取られた後苦笑し笑顔になって言いながら向かう
「おお!皆!お疲れである!」
隊員たちが楽しそうに軍曹を向かえる 軍曹が人知れず表情を寂しがらせる
軍曹がソファに座っている 軍曹の周りに隊員たちが集まり談話している中 TVからキャスターの声がする
『それでは次の話題です 今朝早く逮捕状が出され 逮捕されたシェイム・トルゥース・メイリス長官は 現在も警察省長にて取調べを受けているとの事…』
隊員たちがTVのニュースに反応して皆がTVへ向く キャスターが言う
『…そんな中 今日も皇居御所では 攻長閣下の居られない状態のまま 防長閣下が陛下の警護に付いているご様子が伺えます 尚 シェイム・トルゥース・メイリス長官のご兄弟でもあられる ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 先日の皇居衝撃の際に負われた怪我が 治り次第 陛下の警護に復帰なされるとの…』
隊員が言う
「メイリス長官が逮捕されたのに いくら戒名してるからって 弟のラミリツ・エーメレス・攻長閣下が 攻長のままっていうのも 何か変な感じだよなー?」
軍曹が反応して隊員を見る 他の隊員が言う
「そうだよな?攻長は政府の代表なんだから その政府の長官が代わったら 攻長も替われば良いのにな?」
隊員Cが言う
「けど、ラミリツ攻長は 兄貴の長官がどうだろうと 神の刻印を持った悪魔の兵士 攻長なんだろ?むしろ 戒名がどーとかって言うより その攻長閣下の兄貴になった奴が たまたま悪い事をしちまった って事なんじゃねーのかな?」
軍曹がハッとして ラミリツの刻印を思い出し 視線を落とす 隊員Bが言う
「あれー?サッちゃんも少佐と同じ様に アールスローン戦記を信じるんだ?2人とも 意外とロマンチックだったんだね~?にひひっ」
軍曹が疑問して隊員Bを見る 隊員Cが頬を染めて言う
「なっ そ、そんなんじゃねーって!」
隊員Bが言う
「あー?否定すると 少佐の事も否定する事になるけど 良いのかな~?」
隊員Cが怒って言う
「なっ!?ならっ!バイスン隊員だって 俺のと一緒に 少佐を馬鹿にしてるって事になるだろっ!?」
隊員Bが言う
「俺は別に 少佐がアールスローン戦記を信じることに対しては 馬鹿になんかしてないもん サッちゃんが どっちとも言い切らないからー?」
軍曹が言う
「少佐がアールスローン戦記を 信じていると言うのは その… ラミリツ攻長が 神の刻印を持った悪魔の兵士である と言う話の事であるか?」
隊員Cと隊員Bが顔を見合わせた後 隊員Aが言う
「少佐が攻長閣下の事をどう思ってるのかは 知らないですけど 以前」
軍曹が言う
「以前?」
隊員Aが言う
「あの皇居襲撃の時だろ?ペジテの姫が… なんだっけ? とにかく その夜に オーケストラが目の前で音楽をやるのは 気に入らないとか なんとか…」
軍曹が気付いて言う
「ペジテの姫が竪琴を奏でる夜に… と言う事であるか?」
隊員Aが言う
「はい まさか 少佐の口から ペジテの姫って 言葉が出ただけでも 俺としては意外でしたけど」
軍曹が考えて言う
「うむ…」
隊員Bが言う
「それに今日も 軍曹の事 不死身の守りの兵士 って言ってたし~?」
隊員たちが笑って言う
「あっははっ!そうだよな!ペジテの姫の 2人の兵士は 不死身だもんな!」 「そうそう!」
軍曹が呆気にとられて言う
「は?何故 守りの兵士が 不死身なのだ?」
隊員たちが呆気にとられて言う
「え?何故って…」
隊員が軍曹へ問う
「軍曹 防長閣下なのに アールスローン戦記を読んだ事が無いんですか?」
隊員Eが言う
「お前馬鹿だなぁ 防長閣下や攻長閣下は 国防軍と政府の象徴であって アールスローン戦記の 神の兵士 と 悪魔の兵士 じゃねーんだよ」
隊員Bが驚いて言う
「え!?そうだったのっ!?」
隊員Aが言う
「全く無関係って言うんじゃなくて 一応 当てはめてはいるって話だろ?」
軍曹が言う
「いや、その話ではなく… 自分は アールスローン戦記の原本と言われる物を読んでいたが ペジテの姫の 守りの兵士が不死身だ などと言う事は 書いていなかったと思うのだが?」
隊員たちが顔を見合わせ言う
「え…?俺は… 確か不死身だって読んだ気が…」 「俺も…」
隊員Aが言う
「ペジテの姫の2人の兵士は 一度 お互いに戦って死んでしまうけど その後 ペジテの姫が神様に願って 2人は生き返らされて… その後は 何度でも生き返るから 不死身って言われるんだろ?」
隊員Bが言う
「ついでに また 喧嘩を始めちゃうから お姫様が 神様にお願いするんだよね?守りの兵士は攻撃の兵士を 攻撃の兵士は守りの兵士を守るようにして下さいーって!」
隊員Cが言う
「それで 攻撃の兵士の胸には 神様の刻印があるんだよな?守りの兵士を攻撃しないようにって」
隊員Aが言う
「そうそう!」
隊員Bが気付いて言う
「あ、それじゃ 軍曹」
軍曹が呆気に取られた状態からハッとして言う
「むっ?」
隊員Bが軍曹へ向いて言う
「あの攻長閣下に神様の刻印があるってことは 軍曹にも神様の刻印があるんですかー?」
軍曹が呆気に取られる 隊員Aが苦笑して言う
「バイちゃん 違うって 刻印があるのは 悪魔に作られた 攻撃の兵士である 攻長閣下だけー」
隊員Bが言う
「えー?何でー?」
隊員Cが言う
「元々 神様に作られた守りの兵士である 防長閣下は 神様の兵士なんだから 刻印なんてしなくても 神様の言いつけを守るんだろ?…たぶん」
隊員たちが笑う 隊員が軍曹へ向いて言う
「守るんですかー?軍曹?」
隊員たちが笑う 軍曹が呆気に取られる 隊員が言う
「おい、こら いくらなんでも 失礼だろ お前ら 軍曹は軍曹でも 防長閣下なんだぞ!?」
隊員たちがハッとして言う
「ああ…」 「そ、そうでした…」
軍曹がハッとして言う
「い、いやぁ!自分は 軍曹である時は!…いや、たとえ防長であろうとも!お前たちと一緒に居る時は 畏まった事はしたくないのであるっ!」
隊員たちが一度顔を見合わせた後楽しそうに笑って言う
「やっぱり 軍曹は俺たちの軍曹だ」 「それを言うなら 俺たちの防長閣下だろ?」 「いや、防長閣下の軍曹だ!」
隊員たちが笑う 軍曹も呆気に取られた後段々と綻び笑う
翌日――
【 車内 】
軍曹が高級車の後部座席に乗って外を眺めて考えている
【 回想 】
ハイケルが言う
『では、何故 攻撃をしない?』
『…引き金は 引かないのではなく 引け ないのではないか?』
『最初は君の 隊員たちへの思いから 心理的に引くのが遅れているのだと思ったが …その様子では どうやら違う様だな …実戦においては 致命的だ』
【 回想終了 】
軍曹が表情を落として思う
(少佐の仰る通りだ… 戦闘時に銃の引き金を引けないなど… その様な兵士は レギストに… いや、機動隊員として 失格だ…)
軍曹が外を眺めつつ思う
(少佐は俺に レギストに残っても良いと… だが、俺にだって分かっている あれは少佐の… 防長閣下の俺へ対する社交辞令 俺がただの軍曹であったなら きっと少佐は何の迷いも無く 俺を切り捨てるだろう 俺は… 少佐のためにも レギストの皆のためにも レギストを辞めるべき…)
軍曹の脳裏に隊員たちとの記憶が蘇る
【 回想 】
軍曹が言う
『い、いやぁ!自分は 軍曹である時は!…いや、たとえ防長であろうとも!お前らと一緒に居る時は 畏まった事はしたくないのだっ!』
隊員たちが一度顔を見合わせた後楽しそうに笑って言う
『やっぱり 軍曹は俺たちの軍曹だ』 『それを言うなら 俺たちの防長閣下だろ?』 『いや、防長閣下の軍曹だ!』
隊員たちが笑う 軍曹も呆気に取られた後段々と綻び笑う
【 回想終了 】
軍曹が強く目を閉じ俯いて思う
(そうだっ 俺は…っ 軍曹であろうと防長であろうと あいつらと一緒に居たいっ!あいつらと一緒に… 少佐と共に 戦いたいのだっ!なのに!)
軍曹が手を握り締める 車が赤信号で止まる 軍曹が閉じていた目を開き顔を上げ窓の外を見る 窓の外歩道を親子が歩き その後ろに書店が見える 軍曹がハッとして思い出す
【 回想 】
隊員Cが言う
『けど、ラミリツ攻長は 兄貴の長官がどうだろうと 神の刻印を持った悪魔の兵士 攻長なんだろ?むしろ 戒名がどーとかって言うより その攻長閣下の兄貴になった奴が たまたま悪い事をしちまった って事なんじゃねーのかな?』
隊員Bが言う
『あれー?サッちゃんも少佐と同じ様に アールスローン戦記を信じるんだ?2人とも 意外とロマンチックだったんだね~?にひひっ』
軍曹が疑問して隊員Bを見る 隊員Cが頬を染めて言う
『なっ そ、そんなんじゃねーって!』
【 回想終了 】
軍曹が思う
(ラミリツ攻長は 恐らく 御自分が攻長である事を嫌っていた 俺も… 俺も防長などで なければ…っ)
軍曹がハッとして思う
(うん…?そうだ 俺は 何故?…いや、何時から銃が撃てなくなった?以前は… そう 以前は撃てていた なのに急に…っ!?守りの兵士である 防長になってから?)
車が走り始める 軍曹が思い付き 表情を正して言う
「止めてくれ」
高級車が路肩に止まる 執事がドアを開けると 軍曹が降りて言う
「先に戻ってくれ 少し寄りたい所がある」
執事が礼をして言う
「畏まりました どうかお気を付けて」
軍曹が言う
「うむ」
軍曹が歩き去る
軍曹が書店で本を探している 棚を見ていてふと気付き 手を伸ばす
【 公園 】
軍曹がアールスローン戦記を開き ページをめくる
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】
隊員Bが食事の手を止めて言う
「んー 今日も軍曹は 防長閣下のご公務かなー?」
隊員Aが食事を食べつつ周囲を見渡し 飲み込んでから言う
「そう言えば居ないな 朝から見て無いや」
隊員Bが言う
「忙しいんだねー …アッちゃんと違って!…にひひっ」
隊員Aが言う
「あー 言ったなぁ?言っとくけど俺はな?今朝は自主的に 通常訓練の1から3を1人でやってたんだぜ?」
隊員Bが言う
「えー?そうなんだ?」
隊員Aが笑んで言う
「へっへ~ん 何と言っても俺は 少佐の期待を受けているからな!?」
隊員Bが笑んで言う
「あ でもー もしかしたら俺も 期待されてるのかも!俺 今朝 少佐に 射撃場使わせてもらっちゃったもんね!」
隊員Aが驚いて叫ぶ
「なぁー!?ひでぇ!バイちゃん!何で俺に声掛けてくれなかったんだよっ!?」
隊員Bが言う
「だって アッちゃん 朝から居ないんだもん 声掛けたくても掛けれ無いじゃん?そっちこそ ちゃんと何処へ行くか 声掛けてから行けよなー?」
隊員Aが悔やんで言う
「あぁ~~っ 起きたらたまたま気分が良くて そのまま 何となく始めちまったんだよっ 声掛けとけば良かったぁ~~っ!」
隊員Bが笑う
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルがノートPCを見ている モニターに隊員たちのプロフィールが映し出されている ハイケルがマウスをクリックすると終了し 目次へ戻る 隊員数と 隊長名 副隊長名が表示される ハイケルが反応し 軽く息を吐き 軍曹の名前をクリックする 画面にはアーヴァイン軍曹のプロフィールが現れる ハイケルがPCマウスを操作し画面をスクロールさせ 一通り眺めると キーボードを軽く操作してエンターを押す 画面が切り替わり 皇居女帝の間の映像に切り替わる 映像には攻長を欠いた映像が映されている ハイケルがしばらく眺めた後 ノートPCの電源を切る
【 公園 】
軍曹がアールスローン戦記の本を閉じる しばらく表紙を眺めた後 顔を上げ立ち去る
【 皇居 通路 】
軍曹が通路を歩居ている 役人が続いていて言う
「もしや 防長閣下まで お越しになられないのではと… 私どもも 少々肝を冷やしました」
軍曹が言う
「すまなかった 私用で外へ出ていて 遅くなったのだ」
役人が微笑して言う
「左様で御座いましたか とは申されましても 防長閣下は陛下の下へお越し下さいましたので 私どもも とても嬉しく思っております」
軍曹が役人へ振り返り苦笑して言う
「何を言う 少し遅れただけで 随分と大げさな そんなに心配であったのか?」
役人が言う
「そちらは 勿論に御座います 我々にとって防長閣下及び攻長閣下は 陛下の次に お慕い致します お方に御座いますので」
軍曹が言う
「陛下の次に…?いや、自分とラミリツ攻長は 陛下をお守りする 守りの兵士と攻撃の兵士 …言ってしまえば ただの兵士である その自分たちを お前たちがその様に慕う必要は あらぬのではなかろうか?」
役人が苦笑して言う
「確かに アールスローン戦記におかれましては そうで御座いますが…」
軍曹が気付いて言う
「ああ すまん その様な おとぎ話の事ではなく 政府と国防軍の代表として と言う意味か」
役人が呆気に取られてから苦笑して言う
「そちらも御座いますが おとぎ話におかれましても 神より与えられた兵士である 防長閣下は 我々からすれば 神から人への賜り物 正しく 神の巫女たる陛下にも お近いお方に 御座いましょうかと?」
軍曹が呆気にとられてから言う
「…なるほど そう言う解釈もあるのだな アールスローンの神より与えられた守りの兵士 防長と アールスローンの… 悪魔より与えられた攻撃の兵士が 攻長 …であったな?」
軍曹が考える 役人が微笑して言う
「はい、例え 悪魔より与えられた兵士であられましても 攻長閣下には 神に与えられた刻印があられます 言い換えれば 神に認められた悪魔の兵士と言う事にもなりましょう?」
軍曹が視線を細めて言う
「神に与えられた刻印…」
役人が微笑んで言う
「はい 私も 失礼ながら 新聞書面等で ラミリツ・エーメレス・攻長閣下がお持ちの 神の刻印を確認させて頂きました そうとなりませば 例えその攻長閣下の 御兄弟であられましても あちらの方と 攻長閣下は無関係であると」
軍曹が言う
「では もし、ラミリツ攻長に神の刻印が無ければ 彼の兄が行った事を理由に ラミリツ攻長を下ろしたいと …皆は そう考えるのだろうか?」
役人が一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「それは 勿論そうでは御座いせんかと?恐れ多くも かの者は陛下の御命を狙われたのですから 陛下にお慕いする者として このアールスローンに生きるものとして メイリス長官の行った事は 到底許せるものでは御座いません」
軍曹が視線を落として言う
「…そうか」
役人が時計を見てから言う
「防長閣下 宜しければ そろそろ御仕度の方を…?」
軍曹が気付き言う
「うむ そうであった …貴重な意見を感謝する」
役人が呆気に取られてから礼をして言う
「滅相も御座いません 防長閣下」
役人がドアを開ける 軍曹が入り ドアが閉められる
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】
隊員Bが言う
「通常訓練のいちー 開ー始ー!」
隊員たちが腕立てを開始する ハイケルが隊員たちを見ている 隊員たちが腕立てをしながら言う
「今日も軍曹 通常訓練に居ないな?」
「じゃぁ昨日と同じで 夜になったら来るのか?」
「そうかもな?…にしても やっぱり軍曹の号令じゃないと 気合入らないなー?」
隊員Aが言う
「バイちゃんが言うと 余計だよな?」
隊員Bが言う
「えー?それって どう言う意味ー?アッちゃん?」
隊員Cが言う
「言い方に 覇気がねーって事だよ」
隊員Bが言う
「あー なるほどー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「自分で納得かよっ!?バイちゃん!?」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
隊員たちが呆れる ハイケルが隊員たちを見た後 軍曹がいつもやって来る側を見る 視線の先に人影は無い ハイケルが視線を戻し軽く息を吐く
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちがTVの前に集合し談話している 隊員Aが何となく周囲を見渡す 隊員Bが気付いて言う
「アッちゃんどうしたー?さっきっから キョロキョロしてない?」
隊員Aが心配そうに言う
「うん… 何か 軍曹が居ないのが 気になってさ…?」
隊員たちが気付き表情を落とす 隊員が言う
「そういや 昨日はこの時間 もう居たよな?」
隊員が言う
「この時間って言ったって 夜間訓練前に一緒に居たのは5分程度だっただろ?だったら今日は 車両保管所に もう 行ってるんじゃないか?」
隊員Aが言う
「そっか… そうだな?悪ぃ!」
隊員たちが一度苦笑した後 表情を落とす
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルがノートPCを見ていて 時計を見る ハイケルが間を置いてノートPCの電源を切り立ち上がると 出入り口へ向かいつつ言う
「…ふんっ」
ハイケルが部屋を出ようとドアを開ける サイレンが鳴る スピーカーからアナウンスが流れる
『緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
【 国防軍レギスト駐屯地 武器管理室 】
『繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
隊員たちが言う
「17部隊…って」
隊員たちが顔を見合わせ衝撃を受け言う
「俺たちだ!」
「緊急指令って… まじかよっ!?」
隊員たちが顔を見合わせてから 慌てて用意する
【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】
バックスが言う
「17時10分 先ほど 警察並びに政府関係者から 我々国防軍へ応援要請がなされた」
アルバート、ハイケル、マイクの前にバックスが立っている ハイケルが反応し言う
「政府関係者…」
バックスが言う
「犯人グループは政府関連施設 複数を占拠 館内に居た社員その他を人質に取り 現在 政府警察へ複数の要求を行っている 政府警察は政府警察機動隊の導入と共に 我々国防軍へ協力を要請した 我々国防軍はこれを受託し 政府関連施設が複数点在するメイス地区一体を管轄する 国防軍メイス駐屯地の 3部隊を向かわせる事にした …だが」
アルバート、ハイケル、マイクが疑問しバックスを見る バックスがハイケルを見て言う
「政府関係者から要請を受けた 総司令官は それら複数の施設の1つ 政府第2省長への作戦へ 国防軍17部隊レギストを 向かわせるよう命じられた」
ハイケルが驚く アルバートとマイクが驚きハイケルを見る バックスが言う
「よって ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「はっ」
バックスがハイケルへ向いて言う
「総司令官からの命令はこうだ 政府第2省長の局長 ランドム・ハウル・エリックを拘束し 彼の持つ 機密データを記録したディスクを奪還せよ …出来るか?」
ハイケルが言う
「はっ 出来ます!」
バックスが言う
「では、ハイケル少佐 この任務へ 国防軍17部隊 及び 国防軍レギスト駐屯地 情報部を使用し 直ちに取り掛かれ」
ハイケルが言う
「了解」
アルバートが呆気に取られたままハイケルを見る ハイケルがマイクへ向いて言う
「マイク少佐 17部隊の作戦へ 実働参加を頼めるか?」
マイクが一瞬驚いた後 気合を入れて言う
「はいっ!もちろん!」
ハイケルが言う
「では作戦を立てる マイク少佐 情報部へ」
マイクが笑んで言う
「了解!」
ハイケルが歩き始める マイクが続こうとして ハッとしてバックスを見る バックスが微笑して言う
「行きたまえ マイク少佐」
マイクが笑み敬礼して言う
「はっ!失礼致します!」
ハイケルがドアを出て行く マイクが走って追いかける アルバートが呆気に取られている バックスがアルバートへ向いて言う
「以上だ」
アルバートがハッとして敬礼して言う
「はっ!」
バックスが部屋を出て行く
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
ハイケルが言う
「政府第2省長の内部構造を 出せ」
マイクがPCを操作しながら言う
「了解!」
モニターに政府第2省長の内部構造が3D表示される ハイケルが考えながら言う
「階数は地下1階及び地上6階… 地上階の出入り口は何箇所だ?」
マイクがPCを操作し モニターの映像を回転させながら言う
「地上階の出入り口は 南側ストリート沿いにメインとなる物が1つ 北側に裏口と 東西に非常口の 計4箇所です」
ハイケルが言う
「上下階へ通じる階段は何箇所ある?」
マイクが言う
「メインにエレベータを3台使用しているので 建物中央エレベータ横にある通常非常用階段の1つだけです 外には無し!」
ハイケルがモニターを見つめる マイクがハイケルを見る ハイケルが言う
「よし、現地へ向かう マイク少佐」
マイクが言う
「はい!」
ハイケルがマイクへ向いて言う
「4箇所の出入り口から突入する作戦を展開させる メインの他に4つの専用無線回線を用意出来るか?」
マイクが言う
「この地域では 他の部隊も作戦を展開しているので 使える回線はメインを含めて4つまでです」
ハイケルが言う
「分かった では メインと3つの回線を個別に担当する情報部員を用意しておけ それから情報部の車両を必要部員と共に向かわせろ 先に行っている」
ハイケルが立ち去る マイクが立ち上がって言う
「了解!」
マイクが情報部員へ向いて言う
「4つの無線回線の処理を!それから」
情報部員たちが呆気に取られた状態からハッとして 各々作業を開始する
【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】
隊員たちが武装し緊張しながらトラックに待機している ハイケルがやって来る ドライバー担当の2人の隊員が敬礼する ハイケルが言う
「時間が無い 作戦の説明を移動中に行う 全隊員へ無線イヤホンを装着するよう伝えろ 出動だ」
隊員たちが敬礼し各々のトラック運転席へ向かう ハイケルがトラックへ乗り込む
【 皇居 女帝の間 】
軍曹が盾を構えた状態で横目にラミリツの立ち位置を見る ラミリツが剣を構えて立っているが 視線を落として居る 軍曹が視線を落とし考えていると 女帝の間に13部隊隊員が現れ敬礼して言う
「失礼致しますっ!」
軍曹とラミリツが13部隊員を見る 軍曹が疑問すると13部隊員が軍曹の横に来て耳打ちをする 軍曹が僅かに驚いて小声で言う
「レギストが…っ!?」
13部隊隊員が敬礼して出入り口まで戻り 再び敬礼して言う
「失礼致しましたっ!」
13部隊員が立ち去る 軍曹が正面をむいたまま緊張の面持ちで視線を落とす ラミリツは気を抜いて溜息を吐く
【 車中 】
隊員たちがイヤホンに集中している イヤホンからハイケルの声が聞える
『概要は以上だ よって 我々レギスト機動部隊は 情報部からの無線指示に従い 政府第2省長長官 ランドム・ハウル・エリックを拘束し 彼の持つ 機密データを記録したディスクを奪還 更に 各階の犯人グループを拘束 同時に人質を保護する …と、言いたい所だが』
隊員たちが疑問する ハイケルの声がイヤホンに届く
『お前たちにとっては 今回が初めてのランクA任務だ よって Sランクの達成評価とされる それらの条件は除外する』
隊員たちが顔を見合わせる ハイケルの声がイヤホンに届く
『今回の任務は ランドム・ハウル・エリックの拘束 及び ファイルの奪還 その2点のみとし 犯人グループの拘束と 人質の保護は可能な限りと限定 任務に支障が出る場合は 犯人グループの射殺 及び 人質への被害も やむなしとする』
隊員たちが驚き緊張する イヤホンにハイケルの声が届く
『続いて 作戦を説明する 我々レギスト機動部隊は政府第2省長一階 4箇所の出入り口から突入する 突入と同時に施設内に居る犯人グループを撃破 人質に当たらないよう 可能な限りの対処を行え 次に 施設に唯一ある 施設内中央エレベータホールの横にある階段へ集結 以降は各班担当の情報部員と逐一連絡を取り 犯人グループと思われる ターゲットの数 及び所在のナビゲーションを参考にそれらを撃破しろ …マイク少佐 聞こえているか?』
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが通信マイクに詰め寄って言う
「はいっ!こちらマイク少佐 聞こえています!」
情報部員たちが真剣にPC操作を行っている 情報部のスピーカーから ハイケルの声が聞える
『準備は何処まで進んでいる?』
マイクが言う
「メイン及び各無線担当の部員の決定と 情報部の車両がそちらへ向かっています 到着までおよそ 8分!」
情報部のスピーカーから ハイケルの声が聞える
『了解、では 到着と共にに 必要数の熱源探知センサーを打ち上げろ』
マイクが言う
「了解!」
情報部のスピーカーから ハイケルの声が聞える
『次に今作戦における 各班メンバーを伝える 尚 最初に名を呼んだ者を その班のリーダーとする』
【 車内 】
イヤホンからハイケルの声が届く
『レギスト機動部隊A班 アラン隊員』
隊員Aが衝撃を受け皆の視線が集まる イヤホンからハイケルの声が届く
『バイスン隊員』
隊員Bが呆気に取られる 隊員Aが隊員Bを見て笑んでガッツポーズを向ける 隊員Bが微笑する イヤホンからハイケルの声が届く
『同じくB班 フレッド隊員 ガルム隊員』
隊員Fと隊員Gが驚き顔を見合わせ喜ぶ イヤホンからハイケルの声が届く
『同じくC班 マシル隊員 ナクス隊員 ヴェイル隊員』
隊員MとN、Vが驚き顔を見合わせる イヤホンからハイケルの声が届く
『…くれぐれも 階段は縦一列で進む様に』
隊員M、N、Vが衝撃を受ける 隊員AとBが噴出して笑いを堪える 隊員M、N、Vが赤面して隊員AとBへの怒りを抑える 他の隊員たちが疑問する イヤホンからハイケルの声が届く
『以上 3班だ …情報部 各班への専用無線周波数を伝えろ』
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが言う
「了解!」
マイクが情報部員たちへ視線を向ける 情報部員が頷き言う
「レギスト機動部隊A班 無線周波数45へ 同じくB班 無線周波数46へ 同じくC班 無線周波数47へセットして下さい」
マイクが言う
「ハイケル少佐 メインの周波数は44です」
スピーカーからハイケルの声が届く
『メイン周波数44 了解 全隊員へ告ぐ メイン無線周波数 44をセットしろ 各班隊員はメイン回線に44 サブ回線に各班の周波数をセットしろ』
【 車内 】
ハイケルの声がイヤホンに届く
『各班のメンバーは設定した 到着後は直ちに 各班 施設の出入り口へ向かえ A班は東 B班は南 C班は西へ 共に 班を支援する隊員を連れて行け』
隊員Aが言う
『…支援する隊員?』
隊員たちが顔を見合わせる ハイケルが言う
『各班メンバーに呼ばれなかった その他の隊員たちから 各班のリーダーが選んで連れて行け 人選は任せる』
隊員たちが衝撃を受けて言う
『えぇえっ!?』
隊員Fが困って言う
『え、選べって言われても…』
ハイケルが言う
『先行部隊には 少数精鋭部隊が好ましい よって 必要最低限の人数にて 意志の疎通が出来る者 仲の良い隊員を優先して選べ』
隊員Bが隊員Cを見て言う
「じゃ サッちゃんは除外~」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「お前っ!」
ハイケルが言う
『バイスン隊員』
隊員Bがびくッとする 隊員Cがニヤリと笑む ハイケルが言う
『お前はサブマシンガンの弾倉を 持てるだけ所持しろ …期待している』
隊員Bが呆気に取られる 隊員たちが驚き隊員Bを見る 隊員Aが呆気に取られた後喜んで言う
「やったな!バイちゃん!」
ハイケルが言う
『その他 各班のメンバーに選ばれた者も 基本装備に追加できる武器防具は 可能な限りを所持しろ 正し 先行部隊はスピードが重視される 忘れるな』
隊員Aと隊員Bが言う
「「了解っ!」」
隊員Fが慌てて言う
「りょ、了解」
隊員NMVが慌てて言う
「「「了解っ!」」」
ハイケルが言う
『尚 各班及び支援メンバーへ指定されなかった者は 後衛部隊と認定 潜入口は4箇所を使用 先行部隊の突入撃破を確認の後に潜入 人質の救護 犯人の拘束 及び退避路の確保を行え 先行部隊が逃した犯人グループが潜伏している可能性もある 十分に気を付けろ』
隊員たちが銃を握り締める ハイケルが言う
『間もなく到着する 人選と最終確認を行え』
隊員たちが言う
「『了解!』」
【 政府第2省長 近辺 】
レギストの車両が到着する 隊員たちが車両を降り 建物周囲へ回り込む
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
スピーカーから無線音声が響く
『レギスト機動部隊A班 配置に到着!』 『同じくB班 到着!』 『同じくC班 到着!』
ハイケルの声が届く
『了解、これより レギスト機動部隊 作戦を開始する 突入の合図と共に入り口を爆破 可能であれば突入しろ 無理な突入はせず 進入が難しいと判断された際は メインの無線へ救援を要請しろ …各班 出入り口へ爆薬をセット』
各班リーダーの声が届く
『了解!』
マイクが気付きはっとして言う
「ハイケル少佐!」
ハイケルの声が届く
『どうした マイク少佐』
マイクが言う
「突入箇所は4箇所!突入はそれぞれの班が担当するとの事ですがっ 残りの1班 北の裏口から突入するD班は!?」
ハイケルの声が届く
『D班は存在しない 北の裏口からの突入は 私が受け持つ』
マイクと情報部員たちが驚く ハイケルの声が届く
『私への指示は メインの無線を使用して行え』
マイクが慌てて言う
「りょ、了解!」
ハイケルの声が届く
『突入後の各班への指示を私が伝える 情報部は各班へ ターゲットへのナビゲーションを行え』
情報部員たちが言う
「「「了解!」」」
マイクが一瞬呆気に取られた後 微笑し頷く 各班隊員たちの声が届く
『A班 爆薬のセット 完了しました!』 『同じくB班完了!』 『C班完了!』
ハイケルが言う
『了解』
全ての者が息を飲む
【 政府第2省長 】
ハイケルが言う
「レギスト機動部隊 突入!」
政府第2省長の1箇所に続き 3箇所で同時に爆発が起きる 隊員Aが衝撃を受け振り向いて言う
「バイちゃんっ!フライングしただろっ!?」
隊員Bが隊員Aの後ろでスイッチを片手に言う
「あ、バレた?にひひっ」
隊員Aが視線を進入口へ向けると 大量の銃弾が飛んで来る 隊員Aが慌てて身を引き言う
「こらぁっ!お陰で 犯人たちにマークされちゃったじゃないかっ!どうするんだよっ!?」
隊員Bが苦笑して言う
「ごめーん だって 少佐に…」
メイン無線にハイケルの声が届く
『バイスン隊員 良くやった A班は援護を行う 待機していろ』
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?い、いつの間にっ!?」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ」
ハイケルが走りながらサブマシンガンを放ち 次々に犯人グループを倒し突入する 立ち止まり壁に背を向け 視線を周囲に向ける 各所で銃撃戦の音が聞える ハイケルが一瞬の後 反対側の通路へ飛び 東側の通路へ向けてマシンガンを放ちながら突入する
隊員Aが銃撃の隙を伺っていると 奥から悲鳴が聞える 隊員Aが疑問すると ハイケルの無線が届く
『東側通路を確保した A班 来い!』
隊員Aが言って立ち上がる
「了解!」
隊員AとBが突入する
ハイケルが中央エレベータルームへ向かう B班C班が階段の先を伺いつつ戸惑っている ハイケルが到着し 続いてA班が到着する ハイケルが言う
「マイク少佐!」
無線にマイクの声が届く
『情報部の車両が到着 共に センサー打ち上げ終了!』
ハイケルが言う
「2階 階段付近の ターゲット数を伝えろ!」
情報部員の声が届く
『2階 階段付近のターゲット数は4です!内2名は前衛 残り2名は階段から奥の通路 両脇に待機と思われます!』
ハイケルが階段に近付き上階へサブマシンガンを放ち退避する ハイケルが言う
「了解 2階へ向かう 到着と同時に A班は2階の東へ B班は西へ向かえ」
隊員Aと隊員Fが言う
「「了解っ!」」
ハイケルが言う
「C班は私と共に 3階へ向かう」
隊員Nが言う
「了解っ!」
隊員Bが階段を見上げて言う
「けど… どうやって…?」
ハイケルが言う
「私に続け」
ハイケルが階段へ向かう 隊員たちが慌てて追いかける ハイケルが階段上部へマシンガンを放った後 手榴弾を放り投げる 隊員たちがはっとした瞬間 ハイケルが軽く身を守る 2階で爆発が起きる 隊員たちが思わず防御体勢を取っている ハイケルが走り出して言う
「行くぞっ」
隊員たちが慌てて追いかけて言う
「了解っ!」
ハイケルが2階へ到着すると同時に 東西に隠れていた襲撃犯たちを撃ち倒す A班のイヤホンに無線が入る
『A班 ターゲットへのナビゲーションを行います!』
A班が一瞬はっとした後 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせ頷き合う 向かい側で B班が同様にしている ハイケルが言う
「任せたぞ」
A班とB班がハイケルへ向いて言う
「「了解!」」
A班とB班が東西へ向かう ハイケルが3階へ向けてマシンガンを放ち回避する C班たちが慌ててハイケルの左右後ろに付く ハイケルが言う
「情報部 3階の状況を確認!マイク少佐 他の隊員たちへ指示を頼む」
メイン無線にマイクの声が届く
『了解!既に後衛部隊は1階へ侵入!人質の保護と犯人グループの拘束を行っています!』
情報部員の声が届く
『3階 階段付近のターゲット数は3です!しかし 奥の通路では ターゲットが移動しています!』
ハイケルが3階への威嚇射撃を行いながら言う
「3階フロアの人質の配置 及び全体のターゲットの数はどうなっている」
情報部員の声が届く
『3階フロアの人質と思われる者は複数 全て建物外部へ寄せられている模様 階段奥で移動しているターゲットは2です!』
ハイケルが言う
「C班!3階へ突入と同時に3方向へ構え ターゲットを撃破しろ!行くぞっ」
C班が言う
「「「了解っ!」」」
ハイケルが手榴弾を3階へ投げ 爆発と同時に突っ込む C班が続く
【 皇居 女帝の間 】
軍曹が表情を固くしたまま正面を見据えている 13部隊隊員が現れ敬礼して言う
「失礼致しますっ!」
13部隊員が軍曹の横に来て耳打ちをする 軍曹が表情を険しくしつつ小声で言う
「…分かった 引き続き連絡を頼む」
13部隊隊員が敬礼して出入り口まで戻り 再び敬礼して言う
「了解!失礼致しましたっ!」
13部隊員が立ち去る 軍曹が盾を握り締める ラミリツが僅かに視線を向ける
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
情報部員が言う
「ハイケル少佐 5階へ突入」
情報部員が言う
「レギスト機動部隊A班 ハイケル少佐と合流」
情報部員が言う
「同じくB班 5階へ向かいます」
情報部員が言う
「同じくC班 メインメンバー1名が負傷 支援メンバーを当て 任務を続行します …4階フロアの処理を終了 先行隊員ハイケル少佐を追います」
マイクが必死の表情でモニターを見ている 外部通信が入る マイクがハッとして受話器を取って言う
「こちら国防軍レギスト駐屯地 情報部マイク少佐!」
受話器から13部隊員の声が届く
『こちら国防軍13部隊マリス隊員 防長閣下への伝達完了いたしました 防長閣下より伝達 引き続き連絡を頼む との事です』
マイクが言う
「了解 では…」
マイクがハッとする 受話器から13部隊隊員の声がする
『はっ 再び20分後に連絡いたします』
マイクが慌てて言う
「ああっ!待ってっ待ってっ!」
受話器から13部隊隊員の声がする
『は?…はっ!』
マイクが言う
「貴方にお願いがあります!」
【 政府第2省長 5階 】
ハイケルが5階へ駆け上る A班が続く ハイケルが5階の東へA班が西へ飛び出そうとする ハイケルが一瞬驚く ハイケルへ向かって手榴弾が向かって来る 隊員AとBが気付き 驚いて 隊員Aが叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが投げ付けられてきた手榴弾をキャッチして 瞬時に投げ返す 隊員AとBが驚き目を見開 隊員Aが叫ぶ
「投げ返したぁあっ!?」
手榴弾が東側で爆発する 隊員AとBが身を守る体勢から 銃声に慌てて目を開くと ハイケルが西側の敵を討ち取って言う
「キャッチアンドリリースと言うらしい 昨日映画でやっていた…」
隊員AとBが驚き 隊員Bが思い出して言う
「ああ!俺も昨日見てましたー!すげー 本当に出来るんだぁー!アッちゃんも一緒に見てたよね?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「見てたけど!出来る訳ねーってっ!」
ハイケルが無線を聞いてから言う
「…了解 6階へ向かう」
隊員Bが隊員Aへ言う
「けど 少佐 今やったよ?俺も今度やってみようかな?」
隊員Aが言う
「少佐はっ!」
ハイケルが隊員Bへ言う
「お前は不発弾での練習から始めろ」
隊員Bが敬礼して言う
「はーっ!了解しましたー!」
隊員Aが衝撃を受けて叫ぶ
「だから無理だってっ!」
ハイケルが言う
「行くぞ 付いて来い」
隊員Aが慌てて言う
「りょ、了解っ!」
ハイケルが階段を駆け上る 隊員AとBが続く B班C班が追いついて来る
【 政府第2省長 6階 】
無線に情報部員の声が届く
『前方 左右にターゲット反応 東に5西に5 前方通路の先 扉までに反応はありません』
ハイケルが言う
「了解 …A班」
A班の2人が反応し 隊員Aが言う
「はっ!」
ハイケルが言う
「カウントと同時に東西の敵を撃破する お前たちは西のターゲットを撃破しろ 東は私が受け持つ」
隊員Aが緊張して言う
「はっ!了解!」
ハイケルが言う
「バイスン隊員 カウントを」
隊員Bが言う
「はー!了解ーっ!いっせーの!」
隊員Aが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「せ!」
ハイケルと隊員Bが同時に飛び出す 隊員Aが遅れて飛び出す ハイケルと隊員Bがマシンガンを放つ 隊員Aが飛び出して西の奥に居たターゲットを拳銃で討ち取る 西側の他のターゲットが倒れる 隊員Aが呆気に取られる ハイケルが言う
「上出来だ」
隊員Bが敬礼して言う
「はーっ!少佐の真似をしてみましたー!でも サブマシンガンが弾切れになりましたー!」
隊員Aが西側通路を確認して衝撃を受けて言う
「バイちゃん!撃ち過ぎっ!どこが少佐の真似なんだよっ!?」
隊員Bが言う
「だってー 怖かったんだもんー」
隊員Aが呆気に取られる ハイケルが無線へ言う
「情報部 6階奥 所長室の状況を」
【 皇居 女帝の間 】
外にサイレンの音が聞える 軍曹が僅かに反応する 13部隊隊員が現れ敬礼して言う
「失礼致しますっ!」
13部隊員が軍曹の横へ来て言う
「防長閣下 少々失礼致します」
軍曹が疑問する 13部隊員が軍曹の耳にイヤホンを取り付ける 軍曹が疑問する イヤホンから無線が聞える
『6階奥 所長室のターゲット数共に人質の詳細は不明 熱源センサーの反応は7です』
ハイケルの声が届く
『了解 熱源センサーの反応を ターゲットとし その配置を詳しく伝えろ』
軍曹が思わず言う
「少佐…っ」
13部隊隊員が敬礼して出入り口まで戻り 再び敬礼して言う
「失礼致しましたっ!」
13部隊員が立ち去る 軍曹が視線を強める
【 政府第2省長 6階 】
ハイケルが武器を準備し 通路奥を見据えて言う
「A班からC班 お前たちは ここで待機していろ 私が1人で突入する」
隊員たちが驚き 隊員Fが言う
「少佐っ!ターゲットは7ですっ 皆で突入した方が!」
隊員たちがハイケルを見て頷く ハイケルが言う
「ターゲットの中には ランドム・ハウル・エリックが含まれているものと推測される かの者を射殺する訳には行かない 突入と同時に その他 犯人グループ6名が居る中において 目標を識別し 攻防を行うには 高い能力が要求される 今のお前たちでは無理だ」
隊員たちがハッとする ハイケルが言う
「必要とあれば 指示を出す それまで 全員 この場にて待機していろ 命令だ」
隊員たちが頷き言う
「了解っ」
【 官邸 女帝の間 】
軍曹がイヤホンに集中しつつ正面を見据えている ハイケルの声が届く
『突入する』
軍曹が視線を強める
【 政府第2省長 6階 】
ハイケルが手榴弾のピンを抜き 一瞬間を置いてから正面扉へ投げ付け 同時に走り出す 隊員たちが見つめる中 手榴弾が爆発し 隊員たちが身を守る ハイケルが手榴弾の爆発で破壊された扉へ ダイブすると 着地と同時に近くの物陰へ身を隠す 周囲からサブマシンガンが乱射される
隊員たちが通路の先を見据えている
ハイケルが手榴弾を左右に放り 物陰から飛び出す 手榴弾が爆発し ターゲットたちの悲鳴が上がる 爆煙の中 銃声が鳴り響く ハイケルがサブマシンガンを放ちながら走る エリックの左右に居たターゲットたちが 次々に被弾して倒れる エリックがジュラルミンケースを抱きかかえて焦る ハイケルがエリックへサブマシンガンを構えて言う
「ランドム・ハウル・エリック お前を拘束する 所持しているケースを床へ置き 両手を頭の後ろで組め」
隊員たちが無線を聞きホッとして顔を見合わせる
エリックが言う
「わ、分かった 言う通りにする」
エリックが腰を折りジュラルミンケースを床へ置き ハイケルを見る ハイケルがサブマシンガンを構えたままエリックを見ている エリックが間を置く ハイケルが疑問しふと気付いて言う
「…っ 情報部!」
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが驚き呆気に取られる スピーカーからハイケルの声が届く
『センサーを 外部映像モニターへ切り替えろ!何が近付いているっ!?』
マイクがハッとして慌てて通信マイクへ叫ぶ
「センサーの外部映像を モニターへ!」
情報部員が慌ててPCを操作する
【 政府第2省長 6階 】
エリックが急いで身を屈める ハイケルが咄嗟に物陰へ飛ぶ 所長室の窓が外部からマシンガンで打ち抜かれる 隊員たちが驚いて叫ぶ
「少佐ぁーっ!?」
無線にハイケルの声が届く
『17部隊総員 撤退しろっ!』
隊員たちが驚く
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが呆気に取られて言う
「こっ これは…っ 政府警察航空部隊の最新空撃機ですっ!このマシンガンはコンクリートの壁も撃ち抜きます!ハイケル少佐!逃げて下さいっ!」
情報部員たちが驚きモニターを見つめている モニターの映像に政府第2省長の建物と そこへ空撃している空撃機の映像が映し出されている スピーカーから隊員たちの声が聞える
『少佐ー!』 『少佐ー!早くっ!』
【 政府第2省長 6階 】
空撃機が所長室へ横一線にマシンガンを乱射させる ハイケルが回避しながら通路の先へ逃げる マシンガンの追尾と共に ミサイルが放たれる ミサイルがハイケルへ向かって来る ハイケルが焦り 通路の先へダイブしながら防御体制を取る 爆発が起きる
【 皇居 女帝の間 】
軍曹のイヤホンに隊員たちの叫び声が聞える
『少佐ーっ!』
軍曹が表情を強張らせている ハイケルの声が聞える
『…くっ 何をしているっ 撤退しろと言っただろうっ!早く行け!』
軍曹がハッとする 隊員Bの声が聞える
『少佐も一緒にっ!』
ハイケルの声が聞える
『私は 残る お前たちは撤退しろ!これは命令だっ!』
軍曹が顔を上げ走り出す ラミリツが驚く
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが焦って言う
「ハイケル少佐っ!相手は警空の空撃機です!少佐も撤退をっ!」
ハイケルの声が聞える
『マイク少佐 教えろ 奴の持つケースには… データファイルには何が入っているっ!?』
マイクがハッとする 情報部員たちがマイクを見る マイクが間を置いて言う
【 政府第2省長 6階 】
ハイケルが負傷した足を縛る マイクの声がイヤホンから聞える
『確かな事は分かりません… しかし、恐らく… …先日 国防本部から盗まれた 国防軍レギスト駐屯地のデータファイルではないかとっ!』
ハイケルが視線を強める ハイケルが周囲に居る隊員たちへ言う
「お前たちは 撤退しろ これは最終命令だ 反するものは この場で射殺する」
ハイケルが立ち上がり 隊員たちへ拳銃を向ける 隊員たちが驚き 顔を見合わせた後言う
「少佐…」
隊員Aがハイケルの足を見て言う
「しかしっ 少佐は怪我をっ!」
ハイケルが床へ銃を放つ 隊員たちが一瞬驚く ハイケルが隊員Aへ銃を向けて言う
「撤退しろ」
隊員Aが困惑する 隊員Bが隊員Aの腕を掴んで言う
「アッちゃん 少佐の命令だよ 俺たちは撤退する」
隊員Bが隊員たちを見渡す 隊員たちが頷き言う
「少佐 必ずお戻りを!」
ハイケルが言う
「行けっ!」
隊員たちが退避路へ走る ハイケルが所長室へ走る
【 政府第2省長 1階外部 】
隊員たちが見上げて居る サイレンが聞えてきて 隊員たちが疑問すると 国防軍のジープが突っ込んで来てドリフトして止まる
【 政府第2省長 6階 】
ハイケルが走りながら拳銃を撃つ 銃弾が 空撃機へ向かおうとしていたエリックの近くへ当たり エリックが驚いて振り返る 空撃機からマシンガンが放たれる ハイケルが回避して走る マシンガンが絶え間なく放たれ ハイケルが近づけない ハイケルが舌打ちする ハイケルがハッとする 空撃機のミサイルが僅かに動くハイケルが再び通路の先へ逃げると見せかけ 部屋のギリギリで横へ回避する ミサイルが通路の先に被弾して爆発する ハイケルが爆風から身を守りつつ エリックを見る エリックが空撃機の風や爆風 周囲の状況に身動きが取れないで居る ハイケルが無線へ言う
「マイク少佐っ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが通信マイクへ詰め寄って叫ぶ
「はいっ!」
スピーカーからハイケルの声が届く
『総司令官へ連絡しろっ!ランドム・ハウル・エリックの拘束は不可能と断定!射殺許可をっ!』
マイクがPCを操作しながら慌てて言う
「了解っ!直ちにっ!」
【 政府第2省長 6階 】
ハイケルがエリックへ銃を放つ エリックが身を屈めて周囲に当たる銃弾に怯える 空撃機からマシンガンが放たれる ハイケルが回避するが 足に被弾し悲鳴を上げる
「…うっ!」
ハイケルが物陰へダイブする
【 政府第2省長 1階外部 】
隊員たちが焦りイヤホンを抑えつつ 表情を強張らせて上空を見上げている マイクの声がイヤホンに聞える
『ハイケル少佐っ!総司令官からの返答です!ランドム・ハウル・エリックの射殺を許可すると共に データファイルの奪還を命じる!奪還が不可能な際は 確実に破壊せよ!』
隊員たちが息を飲んでイヤホンに集中する イヤホンにハイケルの声が届く
『了解っ』
隊員たちが僅かに胸を撫で下ろし 顔を見合わせる
【 政府第2省長 6階 】
ハイケルが物陰からエリックを確認する マシンガンが放たれる ハイケルが回避し エリックへ銃を放つが弾切れになる マシンガンがハイケルへ向けられる ハイケルが目を見開く 軍曹が叫ぶ
「少佐ぁあーっ!」
ハイケルが驚き顔を向けた瞬間 軍曹がハイケルの前に盾を構えて身を屈める マシンガンの弾が盾を破壊しつつ防がれる ハイケルが驚いて叫ぶ
「軍曹っ!?」
マシンガンが一瞬止む ハイケルが叫ぶ
「回避っ!」
ハイケルと軍曹が外壁の影へ回避する マシンガンが追うが止まる ハイケルが少し離れた位置に居る軍曹へ叫ぶ
「何をしに来たっ!?」
軍曹が言う
「この盾の厚さならっ あのマシンガンの威力であっても しばらくは止めていられます!その間にっ!」
軍曹がハイケルへ拳銃を投げ渡す ハイケルが受け取り呆気に取られる 軍曹が苦笑して言う
「自分は撃てませんっ 少佐 お願いしますっ!」
ハイケルが微笑して言う
「任せておけ」
【 政府第2省長 1階外部 】
隊員たちが表情を喜ばせ顔を見合わせる イヤホンからハイケルの声が聞える
『行くぞ 軍曹っ』
軍曹の声が続く
『了解っ!少佐ぁー!』
隊員たちが上空を見上げる
【 政府第2省長 6階 】
ハイケルが飛び出し 拳銃を構える マシンガンがハイケルへ向けられ 銃撃が開始される 軍曹が飛び出しマシンガンの銃弾が盾に防がれる ハイケルが拳銃を3発放つ 銃弾がエリックを掠め マシンガンの砲撃者へ当たり 砲撃者が倒れる マシンガンが上方へ向けられる マシンガンの向きと共に 銃撃が盾を過ぎ ハイケルへ向かう 軍曹が瞬時にハイケルを押し倒し 自分とハイケルを盾で守る 銃弾が盾に弾かれる エリックが倒れた砲撃者に怯えつつ 空撃機の中で言う
「出せ!早くっ!」
軍曹が顔を上げ空撃機を見る ハイケルが走り出している 軍曹が驚いて叫ぶ
「少佐ぁーっ!?」
エリックが軍曹の声に顔を向けると 飛び立とうとした空撃機にハイケルが飛び乗る 軍曹が焦って向かうが 空撃機は既に建物から離れている
ハイケルがエリックを殴りつける エリックが慌てて空撃機内の設備にしがみ付く ジュラルミンケースが滑る エリックとハイケルが気付き ハイケルがジュラルミンケースを掴むと エリックが慌てて拳銃を取り出しハイケルへ向けて撃つ ハイケルが瞬時に身を伏せると 銃弾がその後ろに居たパイロットの頭に当たり パイロットが小さな悲鳴を上げると共に脱力する ハイケルが一度視線を向ける エリックがハッとして慌ててハイケルへ掴みかかる ハイケルがエリックを蹴り ジュラルミンケースで殴り付ける その衝撃でケースが開き 書類と共にディスクが落ちる ハイケルがディスクへ手を伸ばす エリックが慌てる 軍曹が叫ぶ
「少佐ぁーーっ!」
ハイケルがディスクを掴む (と同時に 空撃機から脱出する) 空撃機が墜落し爆発する 隊員たちが慌てて逃げ 爆風から身を守る
爆風が収まる 隊員たちが燃え上がる空撃機を見つめる 軍曹が6階から見下ろしていて言う
「しょ… 少佐…?少佐ぁああーーっ!」
隊員たちが呆気に取られる
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが呆気に取られてモニターを見つめている スピーカーから軍曹の叫び声が響く
『少佐ぁ!少佐ぁあーっ!』
情報部員たちが呆気に取られたまま モニターを見つめる スピーカーからハイケルの声が聞える
『…無線に叫ぶな』
皆が驚く
【 政府第2省長 6階 】
軍曹が驚き慌てて言う
「しょ 少佐っ!?少佐っ!?ど、何処でありますかっ!?」
軍曹が周囲を見渡し走り出す
【 政府第2省長 1階外部 】
隊員たちが 今も燃える空軍機へ駆け寄る イヤホンにハイケルの声が届く
『…任務達成 作戦を終了する』
隊員たちがイヤホンを抑えていた状態から 喜んで叫ぶ
「やったぁー!」
イヤホンに軍曹の声が聞える
『少佐ぁーっ!少佐ぁーっ!何処でありますかーっ!?』
隊員たちがハッとして周囲を見る イヤホンにハイケルの声が聞える
『…うるさいぞ 軍曹 無線に叫ぶなと 言っている』
イヤホンに軍曹の声が聞える
『し、しかしっ!』
隊員たちが顔を見合わせる
【 政府第2省長 5階 】
軍曹が階段を駆け下りつつ言う
「少佐の居場所が分からないとあってはっ!自分は叫ばずには居られませんっ!少佐ぁー!何処でありますかーっ!?お姿をお見せ下さいぃー!少佐ぁー!」
【 政府第2省長 3階 】
ハイケルが寝転びながらデータファイルを眺めて言う
「任務目標 データファイルの無事を確認 …救護班 迎えに来い 足を負傷していて動けない」
ハイケルのイヤホンに隊員の声が届く
『了解!直ちに!…えっと どちらまで?』
軍曹が現れ 衝撃を受け ハイケルの下へ駆け寄りながら叫ぶ
「しょっ 少佐を発見!少佐ぁーっ!ご無事でありますかーっ!?少佐ぁーっ!?」
ハイケルが呆れて言う
「足を負傷していて動けないと言っているだろう?従って無事ではないが 重症ではない 騒ぐな… それで ここは何階だ 軍曹 外部から飛び込んだため 階数が分からん」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「ぬあっ!?す、すみませんっ!少佐ぁ!自分は慌てていた為 階数の確認は しておらなかったでありますっ!」
ハイケルが衝撃受け呆れて言う
「…そうか では 恐らく 3階か4階… なっ!?」
【 政府第2省長 1階 】
救護班のイヤホンにハイケルの叫び声が聞える
『何をするっ!?』
隊員たちが疑問する 軍曹の声が聞える
『何階かは分かりませんが!自分がお連れした方が 救護班を待つより速いでありますっ!』
ハイケルの声が聞える
『や、やめろっ!軍曹っ 下ろせっ!…うっ!』
軍曹の声が聞える
『少佐!すぐにお連れ致しますので!もうしばらくのご辛抱をーっ!』
隊員たちが顔を見合わせる ハイケルの声が聞える
『痛みなどどうでも良いっ!下ろせと言っているっ!下ろせっ!軍曹ーっ!』
軍曹の悲鳴が聞える
『のわーっ!しょ、少佐ぁー!?どうか暴れないで下さいー!少佐ぁー!』
隊員たちが顔を見合わせ笑い出す
【 国防軍総司令部 総司令官室 】
アースが電話をしていて言う
「…そうか ご苦労 データファイルは 後ほど 私の部下が引き取りに向かう」
アースが電話を切り 微笑して言う
「政府警察航空部隊の 空撃機を相手に…か ふっ… 大した者だな」
アースがノートPCを見る モニターにレギスト機動部隊の名簿が表示されている
【 マスターの店 】
マスターが言う
「へぇ~ 警空の空撃機を相手にね~?通りで お前が任務で怪我するなんて 何年振りか… にしても 酷い怪我だなぁ?…アーヴィン君?」
軍曹が顔中に引っかき傷を付けて苦笑している マスターが言う
「敵は警空の空撃機を乗っ取った 猫の集団 だったのか?…プククッ」
マスターが笑いを堪える 軍曹が頭を掻きながら苦笑して言う
「い、いえ… その… 自分は作戦の最後の一部に 参加しただけでありましたので 怪我は なかったのでありますが…」
ハイケルがそっぽを向きながら言う
「ふんっ」
軍曹が苦笑して言う
「その~ お怪我を負われた少佐を 4階から」
ハイケルが言う
「3階だ」
軍曹が慌てて言う
「ああっ!は、はい 3階から 運んでおりました折…」
マスターが爆笑する ハイケルが怒って言う
「私は下ろせと命じていたのに 君が従わないからだ」
マスターが言う
「それで 散々ハイケルに引っかかれた上 階段で暴れられて 足を滑らせて落ちたと?」
軍曹が困って言う
「はい… し、しかし!何とか少佐を 庇う事は出来ましたので 良かったかと!」
ハイケルが言う
「良くなど無い 明日からその顔で 皇居御所の監視カメラに写るつもりか?」
軍曹が気付いて言う
「あ、ああ!その件なのでありますが どうやら 御所の監視カメラは撤去される事になりましたようで!明日からは今まで通り 自分はレギストの通常訓練から 参加できる事に なりましたでありますっ!」
ハイケルが反応して言う
「…そうか」
軍曹が笑顔で言う
「はっ!これでやっと 自分は少佐のご命令をあいつらへ伝える 伝達役に戻れる訳でありますっ!少佐にレギスト残留をお許し頂きました故 自分は今まで以上に張り切って あいつらをしごいてやるでありますっ!」
ハイケルが軽く息を吐いて言う
「そうだな あいつらも 君の号令が無い事で やる気が入らないと言っていた 私もこの怪我で しばらく部隊指揮には立てそうにない …丁度良かった」
軍曹が微笑する マスターが皿を拭きながら言う
「それにしても 防長閣下になった途端 銃の引き金が引けなくなるとはねぇ…?ますます アールスローン戦記が本物だって 言ってるみたいだ」
軍曹がマスターを見る ハイケルが言う
「アールスローン戦記が本物であるなら やはり君は不死身の兵士だと言う事だ 銃弾に撃たれても 剣で斬られても無事であった事が 頷ける」
マスターが軽く笑う 軍曹がハッとして視線を落とす マスターが気付いて言う
「うん?ははっ まぁまぁ?別に ハイケルはアーヴィン君を悪く言っている訳ではないんだから 何もそう落ち込まなくても…?」
軍曹が呆気に取られマスターを見る ハイケルが疑問して言う
「…?俺は悪気があって言ったつもりはないが もし そう取られたと言うのなら…」
軍曹が慌てて言う
「ああっ!いえっ!そうではっ!…その」
マスターとハイケルが疑問する 軍曹が表情を困らせて言う
「実は… あいつらの話を聞き… いえ、世間の話を と言うべきでありましょうか?自分は… 自分の知っているアールスローン戦記と皆が知る物とは 少々違うと言う事に気付きまして 先日 そちらの確認をしたのでありますが…」
マスターとハイケルが顔を見合わせ マスターが言う
「それで?」
軍曹がマスターとハイケルを見てから視線を落として言う
「はい… その…っ 幾つか違う点がありまして その中の1つとして ペジテの姫の2人の兵士でありますが… 自分が知る物では 不死身なのは… 悪魔の兵士だけであります」
マスターとハイケルが驚く 軍曹が2人を見て言う
「神の兵士 守りの兵士は 不死身ではなく 悪魔の兵士… いえ、攻撃の兵士が その敵を倒すから やられる事が無い…と」
マスターが言う
「へぇ~ そいつは 初耳だなぁ?」
軍曹が視線を強めて言う
「それから… その悪魔の兵士に施されている 神の刻印が…」
マスターとハイケルが注目する 軍曹が2人を見てから間を置いて言う
「ラミリツ攻長に施されている物とは 違うのであります」
マスターとハイケルが驚き マスターが言う
「それは…っ」
ハイケルが言う
「だが、ラミリツ攻長の 神の刻印は 皇居の者も確認している」
マスターがハイケルを見てから言う
「あ、ああ そうだったな?そうとしたら アーヴィン君が知っている そちらの方が…」
軍曹が言う
「それは 無いと思われます 何故なら ハブロス家は 由緒正しき防長の系統であるからであります 過去何度かその座を明け渡した事はありますが 元々ペジテの姫に… いえ、陛下にお仕えしていた 側近の兵士であった事は 確かなのであります 従って 世界に2つしかないとされている アールスローン戦記の原本を 保管していると」
マスターが考える ハイケルが言う
「では もう1つの原本は 攻撃の兵士の系統が所持していると言う事になるのか?」
ハイケルがマスターを見る マスターが言う
「ハブロス家が守りの兵士の系統だと言う話なら 俺も聞いた事がある だが、攻撃の兵士の系統って言うのは…」
軍曹が言う
「はい、攻撃の兵士の系統と言うのは 定まっていないのであります ですので もう1つの原本は 陛下がお持ちであると… 自分はその様に聞かされているであります」
マスターとハイケルが反応し マスターが言う
「それじゃぁ その陛下の居られる皇居の者に認められている 攻撃の兵士 ラミリツ・エーメレス・攻長の 神の刻印は…?」
ハイケルが視線を細めて言う
「なるほど そう言う事か」
マスターがハイケルを見る
マスターが言う
「反女帝組織と女帝推進組織ねぇ… なるほど?政府が分かれちまう訳だな」
ハイケルが言う
「だが、これで 暫定とは言え 反女帝組織は正しいと言う事になる 現女帝陛下は 我々一般の者が認識していた 偽者の神の刻印を 承認したと言うのだろう」
マスターが言う
「いや、そうとも言い切れないぜ?」
ハイケルがマスターを見て言う
「何故だ」
マスターが言う
「それこそ 本当に 攻長閣下の神の刻印を 陛下が了承したのかって問題がある …そもそも 陛下に関しては 俺たちは ご尊顔すら仰げないんだからな?」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う
「自分も お声は伺った事がありますが ご尊顔は…」
マスターが言う
「そうであるから尚更 反女帝組織ガイズは パレードでの陛下のお言葉を 再び頂けって 脅迫したのかもな?」
ハイケルが間を置いて言う
「…では 何故 パレードを襲撃した?」
マスターが言う
「うん?あぁ… そうか 確かに 襲撃が無ければ ご尊顔は仰げなくとも 御言葉は頂けた …ややこしくなってきたなぁ?」
ハイケルが言う
「政府の好きそうな事だ」
マスターが苦笑して言う
「そんなの 国防軍だって 裏じゃ何やってるか分からないぜ?」
軍曹が慌てて言う
「マ、マスター?そのっ 国防軍は自分の兄が…」
マスターが苦笑して言う
「あぁ 悪い悪い」
ハイケルが言う
「総司令官は やはり その事を知っているのか?」
軍曹が疑問して言う
「その事…と 申されますと?」
マスターが言う
「アールスローン戦記の原本と 複製の違いって奴さ …同じハブロス家の兄弟なんだ もちろん?」
軍曹が言う
「いえ 原本を引き継いだのは 自分であります ですので… 兄は 原本を読んでいない筈であります 現に… 兄は ラミリツ攻長の刻印が 原本と異なると言う事を 指摘していませんでしたので…」
ハイケルが言う
「何故伝えない?」
軍曹が表情を困らせて言う
「それは…」
マスターが言う
「攻長閣下を 庇ってるんだろう?」
ハイケルがマスターを見る 軍曹が視線を落として頷いて言う
「はい… 自分がこの事を兄へ伝えれば きっと兄は… そして、ラミリツ攻長は 恐らく 攻長の座を追われ…」
ハイケルが視線を強めて言う
「彼の兄 シェイム・トルゥース・メイリス長官のお陰で 人質を含む国防軍の隊員を合わせ 10名が命を落としたんだぞ?君はそれでもっ!」
軍曹が強く言う
「それはっ 自分にも分かっているでありますっ …しかしっ ラミリツ攻長は」
ハイケルが言う
「兄弟だろう?兄が悪事を働いていると言うのであれば 弟として 正そうとするのが勤めではないのかっ!?」
軍曹が言う
「それは…っ きっと ラミリツ攻長も それが出来るのであれば 行っていた …かもしれません しかし、彼は 御自分の兄君を 恐れていた気がありましたので…」
ハイケルが視線をそらして言う
「ふんっ …くだらん」
マスターが表情を困らせて言う
「まぁまぁ そう言ってやりなさるなって?」
ハイケルが言う
「兄弟と言うのは家族であり 自分に一番近い存在だろう?それへ意見する事も出来ない様な奴が 悪魔の兵士とは 聞いて呆れる」
マスターが苦笑して言う
「ハイケル~ 俺もお前も 兄弟や家族は居ないんだ それなのに そんな言い方は」
軍曹が言う
「兄弟であるからこそっ 一番近い存在であるからこそっ 失いたくないと…っ!ラミリツ攻長は 兄君へ怯えながらも 思っていたのではなかろうかと…」
マスターとハイケルが黙る 軍曹がハッとして慌てて言う
「なぁっ!?し、失礼致しましたぁっ!いえ、自分はっ!あのっ そのっ!」
マスターが苦笑して頷いて言う
「アーヴィン君がそうと言うのなら そうなんじゃないか?ハイケル?」
軍曹が疑問する ハイケルがそっぽを向いて言う
「ふんっ」
マスターが苦笑する 軍曹が2人を見て苦笑する ハイケルが立ち上がって言う
「時間だ 軍曹」
軍曹が立ち上がって言う
「はっ!はいっ!少佐ぁ!」
マスターが微笑して言う
「あんまり我が侭言うなよー?」
ハイケルがドアを開けつつ言う
「誰がだっ」
マスターが微笑して見送る TVでレポーターが言う
『では次のニュースです 昨日夕方に起きた 反政府組織ガイズによる 複数同時 政府関係省長 襲撃占拠事件により 被害を受けた施設の内の1つ 警察本部の調べが終わり 襲撃から丸一日たった先ほどの会見で 明らかにされました 報告によりますと 昨夜の事件により 警察本部に留置されていた 反政府組織ガイズのメンバー10名が 襲撃犯らの手により 脱走していたとの事 更に 政府関係者の個人データの一部が盗まれ 現在警察が総力を上げ 調査を行っているとの事です』
マスターがTVを見て言う
「反政府組織… 反女帝組織ガイズは 結局どちらも同じ政府の人間 それが… 仲間内の個人データを わざわざ盗んだって言うのか?」
マスターが考える
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】
軍曹が叫ぶ
「通常訓練の1 開始ぃーっ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!」
隊員たちと軍曹が腕立てをする 隊員たちが笑んで言う
「これこれ やっぱ軍曹の号令だと 気合入るよなーっ?」
「だよな!昨日や一昨日なんて 全然気合が入らなくてよぉ」
「けど、少佐はあの二人の事 期待してるんだろ?」
隊員たちが 少し離れている隊員AとBを見る 隊員Bが言う
「アッちゃん アッちゃん やっぱ軍曹の号令だと 気合入るねー?」
隊員Aが言う
「ああ!そうだよな!少佐に号令を任されるのも 気分良かったけど やっぱ レギストはこうじゃなきゃって感じだな!」
隊員Bが笑んで言う
「うんうん!でもさー アッちゃん?」
隊員Aが言う
「んー?」
軍曹が立ち上がり叫ぶ
「どうしたーっ!お前たちっ!まだまだぁーっ!」
2班が腕立てをしている 軍曹の後ろに1班が立っていて叫ぶ
「まだまだぁーっ!」
軍曹が衝撃を受け驚いて振り返る 1班の面子が気合の入った表情で言う
「軍曹っ!自分たちも終了しましたっ!」
「軍曹っ!通常訓練の2が開始されるまでの間 自分たちへご指示をっ!」
軍曹が呆気に取られた後 強く笑んで言う
「よぉおし!お前たち!通常訓練の2に先んじて 駐屯地周回 40週を与える!自分に続けー!」
1班が敬礼して叫ぶ
「はっ!有難う御座います!軍曹っ!」「軍曹に続けーっ!」
軍曹と1班が走り 隊員Bが言う
「やっぱ こーなるじゃん?」
隊員Aが言う
「ああ そうだけど?」
隊員Bが走りながら言う
「軍曹は良いとしても 残りの奴ら どうなるんだろー?」
隊員Aが走りながら考えて言う
「うーん… まぁ、少佐が きっと 何か考えてるんじゃないか?」
隊員Bが言う
「あー そっかぁ …そうだねー?きっと 何か考えてるんだろうねー じゃないと あいつら 何時までも前線に出られないしー?」
隊員Bが2班を振り返る 隊員Aが言う
「ま、俺らは少佐に一目置かれている先行隊員なんだ …だから俺は これからも 張り切って行くぜ!?」
隊員Bが笑んで言う
「うん!そうだねー」
隊員Aが言う
「おうっ!それじゃ…」
隊員Aが速度アップして叫ぶ
「うおぉおおーー まだまだぁーー!」
隊員Aが軍曹を追い越す 軍曹が呆気に取られた後 気合を入れて言う
「おぉおお!アラン隊員!自分も負けないのであるーっ!まだまだぁーーっ!」
軍曹が速度アップして隊員Aを追い抜く 隊員Aが衝撃を受け軍曹を追いかける 隊員Bが呆気に取られた後笑いながら言う
「アッちゃん 気合入ってるー!」
軍曹が言う
「よぉーしっ!これで夜間訓練前の基礎訓練は終了だ!これより 1時間の休憩とする!夜間訓練へ向け 皆 しっかりと休んで置くのだぁっ!一時解散っ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!有難う御座いましたっ!軍曹っ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】
隊員たちと軍曹がTVを見ている TVに映像が流れキャスターが言う
『…尚 昨夜の事件で襲撃を受けた政府関係省長は 政府警察本部の他に 政府警察航空機動基地 政府第2省長の 3箇所であったと発表がありました 共に 被害の方は政府警察本部において 拘留中であった反政府組織ガイズのメンバー10名が逃走 共に 政府警察本部に保管されていた 政府関係者の個人データファイル 政府警察航空機動基地に置いても 保管されていた政府関係者の個人データファイルが盗まれたとの事で 現在政府警察がそれらの…』
軍曹が考える 隊員が言う
「じゃぁ 俺たちが行った 政府第2省長でも 政府関係者の個人データが盗まれてたのかな?」
「いや、あそこでは 国防軍レギスト駐屯地のデータを取り戻したんだろ?」
「じゃ 政府関係者のデータは取られて無いのか?」
「…さぁ?」
隊員たちが軍曹を見る 軍曹が考え事からハッと戻り 隊員たちの顔を見て疑問する 館内放送が流れる
『国防軍17部隊 機動隊員は 訓練装備を装着の上 15分後に車両保管所へ集合して下さい 繰り返します 国防軍17部隊 機動隊員は 訓練装備を装着の上 15分後に車両保管所へ集合して下さい』
隊員たちと軍曹が放送に注目してから 隊員Aが言う
「お、今日の夜間訓練後半も 外に行くみたいだな」
隊員Bが言う
「少佐も来るのかなぁ?基礎訓練には居なかったけど…?」
隊員たちが軍曹を見る 軍曹が微笑し立ち上がって言う
「よぉーし!皆!訓練装備を装着の上 15分後に車両保管所へ集合なのだ!遅れる事の無い様!早めに準備をしておくのだぞ!自分は少佐の下へ向かい 訓練の内容確認を行って来るっ!」
隊員たちが楽しそうに敬礼して言う
「了解!」 「了解ー!軍曹ぉー!」
軍曹が立ち去り 隊員たちもその場を後にする
軍曹がハイケルの職務室へ向かっていると ハイケルが執務室から出て来る 軍曹が気付き敬礼して言う
「少佐ぁ!お疲れ様でありますっ!」
ハイケルが声に顔を向け言う
「お疲れ」
ハイケルが僅かにびっこを引きつつ歩く 軍曹が続いて言う
「少佐 どちらへ?」
ハイケルが言う
「情報部だ 今日の郊外訓練では 先日の事件を元にした訓練を行う 既にマイク少佐に頼み 昨日の事件を再現出来るよう 準備を行っておいた」
軍曹がハイケルの足を心配しつつ言う
「そうでありましたか…」
ハイケルが軍曹を見て言う
「君も訓練に参加するのだろう?」
軍曹が慌てて言う
「は、はっ!勿論 参加するでありますっ!」
ハイケルが言う
「では 問題ない」
軍曹が疑問して言う
「と… 申されますと?」
ハイケルが言う
「君は 昨日の事件の際 支援隊員や後衛部隊となったメンバーから 同行する隊員を抜粋し 私の代わりに 施設北側から 施設へ潜入しろ」
軍曹が言う
「え!?は… はっ!了解っ!…しかし、少佐 自分は 不甲斐なくも 例え訓練用の蛍光弾でありましても…」
ハイケルが言う
「分かっている だが、良いんだ」
軍曹が疑問して言う
「はぇ?」
ハイケルが立ち止まり 軍曹へ向いて言う
「君は 訓練用の盾を所持して向かえ 攻撃は 君と共に向かうメンバーへ一任し 君はその隊員たちを守り 施設奥へと向かう様にしろ」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!了解っ!」
ハイケルが情報部の扉を開けようとして思い出して言う
「…と、それから」
軍曹が疑問して言う
「は?」
ハイケルが顔を向けて言う
「隊員たちには 実戦用の無線イヤホンを装備させろ 今回から レギスト機動部隊の訓練には 情報部が参加する そして、実戦と同じく 彼らのナビゲーションを元に 作戦を展開させる」
ハイケルが情報部のドアを開ける 情報部員たちが気付き 敬礼する 軍曹が驚く ハイケルがドアを開けきると マイクが微笑し立ち上がって敬礼して言う
「お待ちしてました!ハイケル少佐!」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「私も動けるようになれば 機動部隊へ同行するが しばらくは情報部から指示を行う …そちらは任せたぞ 軍曹」
軍曹が表情を明るめ 敬礼して言う
「はっ!了解致しましたぁ!少佐ぁ!」
ハイケルが微笑して頷いてから情報部室へ入りドアが閉まる 軍曹が笑み 一瞬間を置いて 張り切って通路を走って行く
【 メイス地区 郊外 】
無線が入る
『こちら国防軍レギスト駐屯地情報部マイク少佐 レギスト機動部隊 応答を!』
軍曹が言う
「こちらレギスト機動部隊 施設へ到着したぁ!」
隊員たちが軍曹の後ろに集合している
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
ハイケルが椅子に座りモニターを見ている マイクがPCを操作しながら言う
「了解 では、これより そちらの施設を使った 実戦模擬訓練を行います 施設内には犯人を模した 人形等が設置され 訓練用蛍光弾による攻撃を行います 機動部隊の皆さんは 我々情報部のナビゲーションによる誘導を元に それらを訓練用蛍光弾で打ち抜いて下さい」
スピーカーから軍曹の声が聞える
『了解っ』
マイクが言う
「では… えっと 訓練を開始します!」
スピーカーから隊員Bの声がする
『班は昨日と同じかなぁ?』
隊員Aの声がする
『昨日の実戦を基にした訓練って言ってたから そうなんじゃないか?』
隊員Fの声がする
『あれ?無線周波数って聞いたっけ?俺らいくつだ?』
ハイケルが横目にマイクを見る マイクが衝撃を受け慌てて言う
「ああっ す、すみませんっ!各班のメンバーと無線周波数の説明を先にっ」
【 メイス地区郊外 】
メイン無線にマイクの声が届く
『昨日の実戦を元に 各班のメンバーを再設定しましたので そちらをお伝えします A班が アラン隊員、バイスン隊員、サキシュ隊員の3名』
隊員Aが呆気に取られ隊員Bが言う
「えー サッちゃんと一緒ー?なんか任務 失敗しそうー」
隊員Cが怒って言う
「おいーっ!」
メイン無線にマイクの声が届く
『続いてB班は』
隊員FとGが笑んで銃を構える マイクの声が届く
『ドルト隊員、エレン隊員の2名』
隊員DとEが一瞬呆気に取られた後 笑んで腕を組む 隊員FとGがショックを受けうな垂れる マイクの声が届く
『C班は ハックス隊員マシル隊員ナクス隊員の3名』
隊員Vが衝撃を受ける 隊員MとNが手を振る 隊員Vが肩を落とす 隊員たちが顔を見合わせる マイクの声が届く
『そして D班が』
隊員たちが疑問して言う
「D班?」
マイクの声が届く
『アーヴァイン軍曹と先日支援隊員になったメンバーとなります』
一部の隊員たちが顔を見合わせて言う
「俺らの事か?」
軍曹が顔を向ける マイクの声が届く
『尚、D班に関しましては メンバーの補充、入れ替えなどは アーヴァイン軍曹へ一任するとの事ですので アーヴァイン軍曹 そちらはお願いします』
軍曹が言う
「了解したっ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが言う
「では次に 各班の無線周波数を」
マイクが情報部員へ視線を向ける 情報部員が頷きPCを操作しながら言う
「レギスト機動部隊A班 無線周波数22へ 同じくB班 無線周波数23へ 同じくC班 無線周波数24へ 同じくD班 無線周波数25へ セットして下さい 尚、メインの無線周波数は21です」
マイクが言う
「準備が整いましたら A班は東 B班は南 C班は東 D班は北の出入り口へ向かって下さい 各班 到着しましたら 連絡を…」
スピーカーから隊員Cの声が聞える
『おい 何処まで行くんだ?それ以上行ったら 南だろ?』
隊員Aの声が聞える
『あれ?出入り口なんてあったか?バイちゃんそっちはー?』
隊員Bの声が聞える
『軍曹たちと合流しちゃたー ねー 俺こっちじゃダメかなぁ?B班は アッちゃんとサッちゃんで良いでしょ?』
情報部員たちが呆気に取られる 隊員Aが叫ぶ
『おいーっ 相方の俺を置いてく気かー!?バイちゃん 薄情だぞ!?』
隊員Bが言う
『えー?どうせ中入ったら一緒だしー?』
隊員Hが言う
『マイク少佐!西側にも出入り口が見当たりませんっ』
マイクが慌てて言う
「ああっ!すみませんっ!そうでした!この施設の出入り口は2箇所しかないので 東西からの進入は窓からでお願いしますっ!えっと それから…っ それから~」
ハイケルがマイクへ向いて言う
「マイク少佐 落ち着け これは訓練だぞ?」
マイクがハイケルへ向いて言う
「ああっ はいっ そ、そうですね すみませんっ」
ハイケルがモニターを見ながら言う
「指示を出す者が落ち着いていられなければ 現場の隊員たちは不安に駆られる 例え 任務が不可能になろうとも 隊員たちの命が危ぶまれようとも それらを悟られない様指示を出すのが お前の役目だ」
マイクが呆気に取られた後言う
「はいっ!了解っ!」
マイクが一度大きく息を吸ってから 気を取り直して言う
「A班とD班は入り口へ爆薬をセット B班C班も出入り口を想定して爆薬をセットして下さい!」
スピーカーから隊員たちの声が届く
『了解っ!』
【 メイス地区郊外 】
隊員たちが施設の近くで待機している イヤホンにマイクの声が届く
『扉の爆破を想定します 爆破と同時に進入して下さい!扉の爆破まで 5秒前4・・3・・2・・』
隊員Bが言う
「どっかーん!」
隊員Cが衝撃を受けて怒って言う
「おいっ!訓練だからって ふざけるなっ!」
隊員Bが言う
「えー ふざけてないよー 少佐に言われたんだもん 出入り口の爆破の際は 4方同時じゃなくて 一箇所を先行する事で 犯人たちの注意をそちらに引きつけ 他の進入を手助けするんだーって!だから 今回も 俺たちが引き付け役ー!」
イヤホンにハイケルの声が届く
『良くやった バイスン隊員 それで良い』
隊員Aと隊員Cが呆気に取られる 隊員Bが笑んで言う
「はーっ!少佐ぁー!」
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
ハイケルが通信マイクへ言う
「他の潜入口から進入した班の内 最初に中央付近へ到達した班は A班の援護へ向かえ …軍曹」
【 メイス地区郊外 】
軍曹が盾を構えている 後方から隊員たちが銃撃をしている 軍曹が言う
「はっ!少佐ぁっ!」
イヤホンからハイケルの声が届く
『以降の現場の指示は 君に任せる』
軍曹が驚いて言う
「え!?し、しかしっ」
ハイケルの声が届く
『メインとなる指示はマイク少佐が出す 君は現地における指示を 昨日のメンバーが 先行出来る筈だ 君も可能な限り先行し 君の連れている隊員たちを 引率しろ』
軍曹が言う
「はっ!了解っ!」
軍曹が後方を見て言う
「よしっ!お前たち 自分に続けーっ!」
軍曹が走り出す 隊員たちが言う
「は、はいっ!軍曹に続けーっ!」
隊員たちが軍曹を追い駆ける
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
情報部員が言う
「レギスト機動隊B班 中央階段付近へ到着」
隊員Dが言う
『こちらB班 A班の援護へ向かいます!』
情報部員が言う
「B班了解 A班援護へのナビゲーションを行います 前方通路先20メートル 進行方向左にターゲット反応」
隊員Hが言う
『こちらC班 中央階段へ到着!』
ハイケルがマイクへ言う
「C班を D班の援護へ向かわせろ」
マイクが慌てて言う
「了解!…C班 D班の援護へ向かって下さい!」
隊員Aの声が届く
『こちらA班!B班と共に中央階段付近に到着!』
情報部員がハイケルを見る ハイケルが通信マイクへ言う
「軍曹 聞えているか A班とB班が空いているぞ 指示を出せ」
軍曹の声が届く
『了解っ A班B班は 先行してくれ!こちらもすぐに追い付く!』
隊員Aの声が届く
『了解!A班先行します!』
隊員Dの声が届く
『同じくB班先行します!…どうやって?』
隊員Aが言う
『えっと 確か… 撃つ!』
隊員Bが言う
『違うよ アッちゃん 手榴弾どっかーん だよー』
隊員Aが言う
『ああ、そうだった!』
隊員Cの声が届く
『えぇえ!?』
隊員Bの声が届く
『じゃ、俺が少佐の真似するー!付いて来いー!どっかーん!』
隊員Aの声が届く
『バイちゃん 全然似てねーってー』
隊員Bの声が届く
『えー?』
隊員Cの声が届く
『お前ら まじめにやれーっ!』
情報部員たちが呆気に取られる 情報部員の一部がハッとして言う
「A班 2階東通路のナビゲーションを開始します」
情報部員が言う
「B班 2階西通路のナビゲーションを開始します」
軍曹の声が届く
『こちらD班!C班と共に 中央階段へ到着っ!先行隊員を追うぞ!』
隊員たちの声が届く
『了解!』
情報部員が言う
「C班 3階階段付近のナビゲーションを伝えます ターゲットは…」
ハイケルがマイクを見て言う
「どうした?マイク少佐 指示が止まっているぞ?」
マイクがハッとして言う
「す、すみませんっ A班B班は 2階フロアのターゲットを制圧後 4階への進入路を確保して下さい C班D班は…」
【 メイス地区郊外 】
軍曹が階段の上部を見上げてから 振り返って言う
「よしっ!では自分が先行する!お前たちは自分の後方から 敵を撃つのだ!」
隊員たちが銃を構えて言う
「了解!」
軍曹が言う
「行くぞー!」
軍曹が走り階段の踊り場まで駆け上がり盾を構える 隊員たちが軍曹の影に隠れつつ銃を放つ 3階に置かれていた的に蛍光弾が被弾する 隊員たちが笑んで言う
「よしっ!」
隊員AとBが駆け上って来て 隊員Aが言う
「バイちゃん 東は頼んだ!」
隊員Bが言う
「了解ー!」
隊員Cが追いかけて来る 軍曹が慌てて言う
「あっ!待てっ!お前たち!通路の先にはターゲットが!」
隊員Bが蛍光ボールを振りかぶって言う
「キャッチアンドリリース!」
隊員Bが蛍光ボールを投げ付ける 隊員Aが衝撃を受けつつ言う
「バイちゃんっ!だからそれ 無理だって!」
隊員Bが言う
「えー?練習してるのにー」
隊員Cが息を切らせつつやって来て言う
「はぁ…はぁ… 何でお前ら そんな馬鹿やってるのに疲れないんだ?」
C班が駆け上って来る メイン無線にマイクの声が届く
『4階フロアの制圧は A班B班で行って下さい!C班とD班は5階へ!』
軍曹が言う
「了解っ!A班B班 ここは頼んだ!」
A班とB班が軍曹を見て言う
「了解!」
軍曹が言う
「C班D班は自分に続けー!」
C班とD班が言う
「了解!軍曹っ!」
軍曹が言う
「よーしっ!行くぞーっ!」
軍曹とC班D班が階段を駆け上って行く
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが言う
「アーヴァイン軍曹!5階フロアへ到着しましたら」
スピーカーから隊員MとNの悲鳴が届く
『おわーっ』 『とっとっとっとーぉ』
スピーカーから何かが落ちた音が響く マイクが呆気に取られる 軍曹の声が響く
『なにぃーっ!?マシル隊員!ナクス隊員 無事かーっ!?』
情報部員が言う
「マシル隊員、ナクス隊員が負傷」
ハイケルが呆れる 隊員Aの声が届く
『バイちゃん!あの辺り 一気に行くぞ!』
隊員Bの声が届く
『おーけー!サッちゃんもやるよー?』
隊員Cの声が届く
『一気にって!?ターゲットは俺たちの倍以上だぞ!ここはB班の援護を!』
軍曹の声が届く
『どうしたー!?A班!遅れているぞー!?援護が必要なら言うのだー!』
隊員Cの声が届く
『ああ!そうだ!軍曹!どうか 我々の援護を!』
隊員Bの声が届く
『大丈夫だよサッちゃん こっちにも 盾はあるからー』
隊員Aの声が届く
『俺を盾って言うなー』
隊員Bの声が届く
『あ、バレた?にひひっ 不死身の隊員A-!』
隊員Aの声が届く
『誰が隊員Aだ… あっ』
情報部員が言う
「アラン隊員の被弾を確認」
隊員Bの声が届く
『あー!アッちゃんが やられたー!』
隊員Aの声が届く
『やーらーれーたー…』
軍曹の声が届く
『何ぃーっ!?』
隊員Bの声が届く
『このーっ!よくも アッちゃんをーっ!』
隊員Cの声が届く
『おいっ!馬鹿!お前までやられるぞっ!』
軍曹が叫ぶ
『バイスン隊員っ!落ち着くのだっ!今援護にーっ!』
情報部員が言う
「アラン隊員の被弾を確認 アラン隊員の被弾を確認 アラン隊員の被弾を確認 アラン隊員の被弾を確認 アラン隊員の被弾を確認 アラン隊員の被弾を確認」
隊員Bが言う
『軍曹ー!敵を殲滅させましたー!』
軍曹が驚いて言う
『何とっ!?良くやったーっ!バイスン隊員ーっ!』
隊員Aが叫ぶ
『バイちゃんっ!だから 俺の死体を盾にするなって!』
隊員Bが笑う
『にひひっ』
情報部員が言う
「サキシュ隊員の被弾を確認」
隊員Cの声が届く
『げっ!?や、やられーたー…』
軍曹が驚いて言う
『ぬあっ!?い、一体 何処からっ!?情報部!?』
情報部員が言う
「す、すぐに確認を…っ」
隊員の声が届く
『軍曹ー お助けをーっ』
軍曹が慌てて言う
『おおっ!い、今行くっ!待っておれーっ!』
隊員Hの声が届く
『こちらC班!マイク少佐!指示をお願いします!』
マイクがハッとして 慌てて言う
「…は、はいっ!C班は…っ 6階手前の敵を殲滅して下さい!」
【 メイス地区郊外 】
隊員Hが銃を構えて言う
「C班了解!よし!いくぞ!?せーのっ!」
隊員Hが飛び出し 隊員Nが飛び出し 隊員Mが慌てて追いかける
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
情報部員が言う
「C班3名の被弾を確認」
隊員Hの声が届く
『おいっ 何で俺1人先行してるんだよっ!?』
隊員Nの声が届く
『さっき足くじいたから 遅れたんだよ』
隊員Mの声が届く
『その前に お前の号令が』
情報部員が言う
「D班 アーヴァイン軍曹を除く 全隊員の被弾を確認」
軍曹が叫ぶ
『何ぃー!?』
隊員Bが言う
『えー?なんか もう 終わりみたいー』
情報部員が言う
「レギスト機動部隊 アーヴァイン軍曹及びバイスン隊員を除く 全隊員が被弾 もしくは負傷しました」
マイクがモニターを見ながら困る ハイケルが呆れて言う
「国防軍レギスト機動部隊 及び 情報部 訓練を終了する」
軍曹が叫ぶ
『少佐ぁーっ!』