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アールスローン戦記3

保育園裏通り


警官たちが保育園を包囲している 武装集団1が機関銃を片手に見回りをしている 警察官たちの視線の先 武装集団1が移動し壁の影に隠れる 


壁の内側


ハイケルが身を屈めて隠れていた状態から瞬時に飛び出し 武装集団1がハッとした瞬間 ハイケルが武装集団1の口を押さえ 腹を殴り付ける 武装集団1が目を見開き気絶する


車内


モニターに 拘束される武装集団1の姿が映っている マスターが微笑して言う

「お見事」

スピーカーからハイケルの声が届く

『ターゲット1を拘束 建物への進入路へ向かう』

マスターが機械操作をして言う

「了解」

マリが心配そうに見つめている


保育園


ハイケルが建物を背に見上げる イヤホンからマスターの声が届く

『その場所の上部にある窓が 換気用に開かれている筈だ 確認出来るか?』

ハイケルが言う

「…目標を確認」

イヤホンからマスターの声が届く

『警察部隊の目に 気を付けてな?』

ハイケルが言う

「了解」

ハイケルが周囲を見てから 上部の窓を見上げる イヤホンからマスターの声が届く

『内部に熱源反応は無し』

ハイケルが中部分にある窓枠に飛び乗り 上部の窓を開けると同時に滑り込む 建物内に進入したハイケルが すぐ近くの物陰に隠れて言う

「進入した」

イヤホンからマスターの声が届く

『よし、ターゲットへ向けてのナビゲーションを開始する 通路を左へ 20メートル先にターゲット反応 …拘束しろ』

ハイケルが言う

「了解」

ハイケルが身を屈めて走り出す ハイケルが通路の手前で一度身を隠し 一瞬の後飛び出して 通路を歩いていた武装集団2の口を押さえ 腹を殴り上げる


車内


マリが怯えながらモニターを見ている モニターに武装集団2へ拘束を施している映像が見える ハイケルの声が届く

『ターゲット2を拘束』

マスターが言う

「そのまま通路を直進 角を曲がって23メートル先にターゲット反応 だが、そこまでの間に 外部から見える箇所が5メートル感覚である 通路の角で待ち伏せ カウントを待て」

ハイケルの声が届く

『了解』


保育園


武装集団3が外部と前方を交互に見ながら見回りをしている ハイケルのイヤホンにマスターの声が届く

『ターゲット3が接近 5・・4・・3・・2・・』

ハイケルが顎を引き 瞬時に角から飛び出す


車内


ハイケルの声が届く

『ターゲット3を拘束』

マスターが言う

「よし、それじゃ次は 園児たちの見張りをしている奴だ… 慎重に」

ハイケルの声が届く

『了解』


保育園 音楽室


園児たちが一箇所に集められている 園長が気を張っている 武装集団Aが苛立って言う

「…くそ 交代はまだか?」

園児がぐずって言う

「…うっうっ… お母さん… お母さ~ん…」

園児たちが伝染してぐずり始める 園長が園児たちへ向く 武装集団Aが苛立って言う

「うるせぇ!黙らせろ!」

武装集団Aが園長に銃を向ける 園長が武装集団Aを横目に見てから 園児たちへ言う

「さぁさぁ 皆 大丈夫だ もう少しだけ 頑張るんだ もう少しだけ…」

武装集団Aが舌打ちをしてふと出入り口を見る 出入り口に人影は無い 武装集団Aが気を取り直して園児たちを見る 園児が大泣きして言う

「おかーさんっ!おかーさぁ~~ん」

武装集団Aが怒って叫ぶ

「うるせぇええ!!」

武装集団Aが泣いている園児へ銃を向ける ハイケルが出入り口から駆け込んで来る 武装集団Aがハッとして ハイケルへ銃を向ける ハイケルが銃を手で押さえ 武装集団Aを力技で床へ叩き付ける 銃が床を滑る 武装集団Aが応戦する ハイケルと武装集団Aが肉弾戦を行い ハイケルが武装集団Aの首筋へ打撃を与えると 武装集団Aが目を見開き倒れる


車内


ハイケルの声が届く

『ターゲット4を拘束 …共に』

モニターの映像に 園児たちと園長の姿が映る マリが思わず言う

「皆っ!園長先生っ!」

マスターが一度微笑してから 気を取り直して言う

「よし、最後に ターゲット5へ案内する 進入路と同じ場所から外部へ」

マリが一瞬驚いてから言う

「…っ あ、外へ出るのなら 近くの通路に 非常口が」

マスターが機械操作をしてから言う

「今回の俺たちの作戦は 誰にも知られてはいけない …と、子供たちの口を止めるのは 難しいけど マリちゃん 園長先生には 後で言っておいて?この作戦を行ったのはレギストではなくて… そうだなぁ… お姫様のナイトだって?」

マリが呆気に取られた後苦笑して頷く


保育園


ハイケルが銃を用意する 園長が来て言う

「有難う御座いますっ!助かりました!貴方は一体?警察の方でしょうか?」

ハイケルが銃にサイレンサーを付け ホルダーに収納して言う

「…俺の事は 誰にも言うな …特に その警察に知られると 面倒になる」

園長が呆気にとられて疑問する ハイケルが立ち上がって言う

「犯人はもう1人 …そいつを処理する 合図の音が聞えたら 外へ向かい 警察へ無事を知らせろ」

ハイケルが立ち去る 園長が呆気に取られたままハイケルを見送る


車内


マスターが言う

「よし、外へ出たら 建物沿いに… 西側の側面から 対岸の樹木の陰へ移動 そこから狙撃してくれ」

マリが驚く


保育園


ハイケルが言う

「了解」

ハイケルが上部の窓から飛び降り 着地と共に身を屈め移動する


車内


マリが心配そうに言う

「狙撃って… 犯人を撃つのっ?」

マスターが苦笑して言う

「だ~いじょうぶ~ ハイケルの狙撃の腕は完璧!しっかり急所を外して撃てる筈さ 命を奪ったりはしないから 安心して?」

マリが一瞬驚いた後ホッとする スピーカーからハイケルの声が届く

『…簡単に言ってくれる』

マリが驚く


保育園


ハイケルが木に背を付けて後方を確認する イヤホンからマスターの声が届く

『お前にとっては 大して難しい事じゃないだろ?』

ハイケルが言う

「狙撃自体は問題ない 問題は… あの警察たちの目だ …突入するつもりも無いくせに 邪魔な連中だ」

イヤホンからマスターの声が届く

『まぁまぁ そう言ってやりなさるなって?あいつらだって 本当は突入したくて イライラしてるんじゃねーか?この間の… 誰かさんみたいに?…プククッ』

ハイケルがムッとして言う

「余計な事を言っている暇があるのなら 最終工程を急げ」


車内


マスターが機械を操作しながら言う

「はいはい そう急かすなって ちゃんとやってるよ?」

ハイケルの声が届く

『…本当か?…俺に言われて 今、やってるんじゃないのか?以前のお前なら…』

マスターが衝撃を受け慌てて言う

「だぁ~~っ もうっ!久しぶりで ちょっと忘れてただけだろぉ!?そう意地悪言うなって?」


保育園


ハイケルが微笑して言う

「伝説の マーガレット中佐 …情報部の連中が泣くぞ?」

イヤホンからマスターの慌てた声が届く

『あっ!お前っ!今 ここでその呼び方するっ!?』

イヤホンからマリの声が届く

『マーガレット?』

イヤホンからマスターの焦りの声が届く

『ああっ!いやっ!何でもっ!気にしないでっ?あ、ほらっ!作戦名とか~』

ハイケルが苦笑して言う

「早く花を咲かせて見せろ」

ハイケルが空を見上げる


車内


マスターが赤面しながら機械を操作しながら言う

「だぁあっ!もうっ!お前っ!何時からそんなおしゃべりになったんだぁ?昔のお前だったら もっと クールに!それこそ ターミネーターみたいだったのによ!」

スピーカーからハイケルの声が届く

『たーみねーたー?』

マスターが困り怒って言う

「もう良い!カウント行くぞ!5!4!3!」


保育園


ハイケルのイヤホンからマスターの声が届く

『2・・1・・』

ハイケルがサイレンサー付きの銃を握り 一度目を閉じてから マスターのカウント終了と同時に息を吸う 上空の熱源センサーが微動する


パーンッ! …パン パーンッ!


皆の視線が上空へ向く 上空に花火がきらめく 夜空一杯のマーガレットの花火 皆が呆気に取られている中 ハイケルがサイレンサー付きの銃を下ろして言う

「任務完了 …帰還する」

ハイケルが立ち去る 見張りを行っていた武装集団Cが倒れる


【 皇居 静養施設 】


軍曹が呆気にとられて言う

「花火…?」

軍曹の見つめるTVモニターに 夜空に広がるマーガレットの花火が映っている レポーターが言う

『…っ 花火… の様ですっ!一時は 銃声かとも思われ 辺りは緊張に…』

軍曹が不満そうに言う

「なんと不謹慎な… こんな時に花火など 一体何処の馬鹿者が…?」

TVからレポーターの驚いた声が聞える

『あっ ど、どうした事でしょう!?見張りを行っていた 犯行グループの1人が 倒れて… あっ!ああっ!』

TV画像に園長と園児たちが映る 軍曹が衝撃を受け驚いて言う

「ぬぉおおっ!?」

TVからレポー他の驚いた声が聞える

『子供たちです!たった今!人質となっていた 園長先生と園児たちが!』

軍曹がTVモニターを掴んで叫ぶ

「ぬあぁああ!?どっどう言うことかっ!?犯人グループはどうなったぁっ!?外の見張りだけではなく 奴らは内部にも居るとぉお …がぁっ!?」

軍曹が衝撃を受け 身を押さえてうずくまって言う

「うぐっ ぐぁ… き、傷がぁ…」

 

【 車内 】


マリがTVモニターを見てほっとして胸を撫で下ろし言う

「良かった… 皆 無事で…」

マスターが振り向いて言う

「行ってあげなよ?マリちゃん 子供たちも きっと会いたがっているよ?」

マリがハッとして言う

「で、でも…」

マスターが微笑して言う

「あいつには 俺から言っておくから ほら、行った行った」

マスターが荷台のドアを開け マリへ微笑する マリが微笑して言う

「本当に ありがとう!」

マスターが微笑む マリがドアを抜け 一度振り返ってから走って向かう マスターが微笑してドアを閉めると 運転席からハイケルが言う

「良いのか?行かせて」

マスターが驚き振り返って言う

「ハ、ハイケル!?いつの間に …お前、戻ったのなら 戻ったって言えよ!?」

ハイケルが間を置いて言う

「…戻った」

マスターが衝撃を受けて言う

「今言っても意味が無いだろうっ!?マリちゃんだって お前にも 礼が言いたかっただろうにっ」

ハイケルが運転席へ座り直して言う

「必要無い 彼女から依頼を受けたのは お前だ 俺は… そのお前から依頼を受けた …それだけだ」

マスターが呆気に取られた後苦笑して言う

「ハイケル…」

ハイケルが車のエンジンを掛けて言う

「100メートル先に お前の車を確認した 送ってやる」

マスターが助手席に座って苦笑して言う

「そら どーも」

無印のトラックが動き出す

 

【 マスターの家 】


マスターが風呂上りの姿でTVモニターを見て微笑して言う

「子供たちはもちろん マリちゃんも… 本当に安心したって顔だ やっぱり… ずっと無理してたんだな…」

マスターが苦笑する マスターの家の前 来客が訪れる インターホンが鳴り マスターが疑問して言う

「ん?こんな時間に?」

マスターが時計を見上げてから玄関へ向かう マスターが上着を着ながら言う

「はーい?どちら様で?」

マスターが言いながらドアを開ける ハイケルが立っていて マスターが一瞬驚いて言う

「っと ハイケル!?ど、どうしたぁ?」

ハイケルが言う

「報酬を貰いに来た」

マスターが衝撃を受けて言う

「えっ!?い、今っ!?」

ハイケルが踏み入る マスターが慌てて言う

「って おいっ そんな 急に言われても せめて 明日まで待って」

ハイケルが言う

「明日まで 待てないから来たんだ 時間が遅すぎて 駐屯地のは閉められてしまった」

マスターが疑問して言う

「…は?駐屯地の?」


シャワーの音が聞える マスターが苦笑して言う

「何が報酬だよ~ シャワー貸して欲しいなら そうと言えば良いのに… 脅かしやがって~」

マスターがコーヒーを飲みつつ 気付いて言う

「うん?…待てよ?駐屯地のシャワールームが閉められたって シャワーなんて家で… んじゃっ まさかっ 本当に報酬っ!?」

マスターが慌てて財布を捜して言う

「…っつぅ~ 今日買出しで 思いっきり使っちまったから 頭金程度すら 残ってねーわ…」

シャワーの音が終わり マスターが頭を掻いて言う

「参ったな… こりゃ」

足音がして ハイケルがタオルで髪を拭きながら来て言う

「タオル 借りたぞ」

マスターが苦笑して言う

「ああ、そんなのは 構わねーけど」

ハイケルがマスターの横を過ぎ ベッドに軽く置いておかれていた 制服とシャツの下へ向かう マスターが言う

「あのよ~ ハイケル 本当に悪ぃんだが…」

ハイケルが言う

「心配するな 泊まり込むつもりは無い」

マスターが一瞬疑問してから改めて言う

「いや、そうじゃなくてだな?」

ハイケルがタオルを近くの椅子の背へ置き シャツを取って袖を通す マスターが言う

「今回の報酬は、ちゃんと支払う!…けど、今は本当に 持ち合わせが無いんだ 明日 下ろして置くから 明日の部隊訓練が終わったら… まぁ 急ぎだって言うなら 昼休みでも良いからよ?その時に店に… あぁ こう言う時は 俺が渡しに行くべきか?」

ハイケルがボタンを止めようとしていた手を止め 疑問して振り返って言う

「…何を言っている」

マスターが呆気に取られ 困惑して言う

「何って… 報酬の話だ」

ハイケルが言う

「報酬なら もう受け取った …シャワーを借りただろう?…後タオルも」

ハイケルが横目にタオルを見る マスターが困惑して言う

「…は?それだけ?」

ハイケルがマスターを見て言う

「それだけだ 他に何がある?」

ハイケルがシャツのボタンを閉めて行く マスターが呆気に取られて言う

「ほ… 他に何がって?情報部の車両を借り出させた上 お前に ランクAの任務をやらせたって言うのに その報酬が!?」

ハイケルがネクタイを締め終え 制服を手にとって言う

「帰るぞ」

ハイケルが制服を羽織り 帽子を手に取って出て行く マスターが慌てて言う

「あっ!おいっ!」

ハイケルが立ち止まり言う

「それから…」

マスターが疑問する ハイケルが顔を向けて言う

「明日はパレードの振り替えで 部隊訓練は休みだ ついでにレギストも 大半が休みとなっている お陰で… シャワールームも開かれないんだ …助かった」

ハイケルが出て行く マスターが呆気に取られた後 苦笑して言う

「ああ… そう言う事… なるほど、今日も明日もシャワールームが使えないんじゃ 今、シャワーを…」

マスターが一瞬微笑した後 気付いて慌てて言う

「…って だから おいっ!?ハイケルっ!?」

玄関のドアが閉まる


【 マスターの店 】


老紳士がコーヒーを飲み 一息吐いて言う

「うん… 結構結構」

マスターが微笑する 老紳士がマスターへ向いて言う

「マスター 今日も、とても良い塩梅ですね?」

マスターが言う

「有難う御座います そう仰って頂けるのが 何よりで」

老紳士が頷いて もう一口コーヒーを飲んで 一息吐いて言う

「…最近は 臨時休業が 少し多い様ですが?」

マスターが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う

「申し訳ない 懐かしい顔ぶれが遊びに来るようになり 少々振り回されている次第でして」

老紳士が軽く笑って言う

「フォッフォッフォ… 結構結構 若い内は 何でもやって行くべきでしょう …とは言え ここのコーヒーが飲めないと 私の一日が 少々 味気なくなってしまうのだが… マスターは最近 とても良い表情をされている …きっと その懐かしい方々の お陰でしょうな?」

老紳士が微笑を向ける マスターが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う

「ええ そうですかと」

老紳士が軽く笑う

「フォッフォッフォ…」


店の来客鈴が鳴り 老紳士が出て行く マスターが言う

「またのお越しを」

マスターがカップを下げ カウンターから出て言う

「さて 午後の仕込みを… 今日の天気は~」

マスターが店のドアへ向かって行くと 店の前を高級車が通り過ぎる マスターがドアを開け 準備中の札を掛けると 近くに人の気配がやって来る マスターが振り向いた先 マリが微笑する マスターが一瞬驚いてから微笑して言おうとする

「ああ、マリちゃ…」

マスターが言い掛けた言葉を止め マリの後ろに居る見るからに富裕層の男lメルフェスに気付き向き直る メルフェスが微笑する



ハイケルが店の前に来て ドアを開けようと手を伸ばして疑問する ハイケルの視線の先 準備中の札が掛かっている ハイケルが首を傾げ 一息吐いてから立ち去ろうとする ハイケルの携帯が着信する ハイケルが立ち止まり携帯を取り出し 相手を見て店のドアを見る


店内


コーヒーが注がれる カウンター内に居るハイケルがポットを置き コーヒーカップを手に言う

「では マリーニ・アントワネット・ライネミア・アーミレイテスは 既に 婚約済み だったと言う事か」

ハイケルがコーヒーに口を付ける カウンターテーブルに突っ伏しているマスターが言う

「…ああ …今日 その婚約者と一緒に… 店に来たんだ…」

ハイケルが口に入れたコーヒーの味に衝撃を受け コーヒーを噴出す マスターが言う

「昨日の作戦の お礼に来たんだってさ…」

ハイケルが口を拭って言う

「…苦い」


【 回想 】


メルフェスが封筒をカウンターテーブルへ置いて言う

『これを』

マスターが視線を向ける メルフェスが言う

『マリーニから 話は聞きました 彼女の為を思って 貴方の個人的にお付き合いのある 特別な部隊の方に力を借り 昨夜の保育園での事件を 解決して下さったと …これは そのお礼です』

マスターがメルフェスを見る メルフェスが微笑して言う

『私が居れば 私も個人的に付き合いのある者を 動かせたのですが 生憎 2週間ほど外国へ出ていましたもので …その間も マリーニの良き話し相手になって下さったと聞きました …ですので こちらは その分の追加で 貴方へのお礼に…』

メルフェスが更にもう1つの封筒を出す マスターが目を伏せ軽く息を吐く マリが言う

『あの… 本当に ありがとう… 私っ …とっても 嬉しかった… ずっと… ずっと 前からっ!あのっ』

メルフェスが言う

『私とマリーニは 今週末に式を挙げる予定です 籍の方は既に入れてあるのですが 私の仕事がひと段落するまで 後回しにしていまして …もし宜しければ マリーニの友人として ご出席頂けると言うのでしたら 私も マリーニも とても嬉しく思いますが …なぁ?マリーニ』

マリが一瞬困って言う

『えっ?は、はい…』

マスターが苦笑してから言う

『素敵なお誘いを 有難う御座います …しかし、申し訳ない 店を閉める訳には 行きませんので』

メルフェスが微笑して言う

『そう仰らずに お店の方は その一日だけ 従業員の方へお任せするなどして …どうか ご無理を押してでも』

マスターが笑んで言う

『残念ながら こんな小さな店なんでね 従業員は 私1人ですよ』

メルフェスが苦笑して言う

『…それは失礼 愛する我妻 マリーニの為とあれば 私に出来る事は ご協力します …ではどうでしょう?その日一日の利益を 私が』

マリが困って言う

『メルフェスっ お願いっ それ以上 失礼な事は 言わないでっ』

メルフェスがわざとらしく驚いて言う

『っと… 驚いた マリーニが声を荒げるとは どうやら… そうとう貴方の事を気に入っている様子だ 宜しければ 私と手を組みませんか?街中へ幾つか置く 小さな喫茶店と言う事業も 中々面白そうだ』

マスターが言う

『生憎 コーヒーって奴は そんなに簡単なものじゃないでね 金を積んで 店を作れば それだけ儲かるってモンでも無いんですよ』

メルフェスが微笑して言う

『ほう… それは興味深い それなら 尚更』

マスターが封筒を2つメルフェスへ突き返して言う

『それから 俺は 報酬が欲しくて 彼女に協力した訳じゃない …彼女の 子供たちを思う気持ちに 共感したから …彼女の持つ保育園内の知識を借りて 一緒に事件を解決しただけだ …ですので こちらは 受け取るつもりは有りません』

メルフェスが悪笑んで言う

『ほう… 良いんですか?例えば レギスト程度の部隊を動かすとしても 最低報酬は この位掛かるでしょう?それとも 報酬を必要としない様な その様な者たちにでも依頼をしたのですか?』

マスターが言う

『アンタには関係の無い事だ 俺の個人的な知り合いなんでね 報酬は払うとしても この金を渡すつもりは無い それに 相手も 受け取ってはくれないでしょう』

メルフェスが笑んで言う

『そうですか… それは残念だ 私の個人的な知り合いと共に そちらの方とも 良い仕事が出来ると思ったのですが』

マスターが視線を強めて言う

『悪いが そろそろ帰ってもらえないか?午後の仕込みがあるので』

メルフェスが苦笑して言う

『…ふふっ そうですか お忙しいとあっては しょうがない また 次の機会にでも』

メルフェスが立ち上がる マスターが言う

『この店は 貴方の様な高位富裕層のお方には似合わない 二度と来ないでくれ』

マリが驚いて表情を落とす メルフェスが軽く笑って言う

『確かに… 少々 色が合わない様ですね マリーニは 気分が落ち着く 良い店だと 言っていましたが』

マスターが言う

『昔の好で 気を使ってくれたのでしょう』

マリが悲しそうにマスターを見る メルフェスが微笑して言う

『そうですね 彼女が 一時でも 孤児院と言う 惨めな場所で 時を過ごさねばならなかった折も 貴方にはお世話になったとの事だが …どうか 貴方のその御記憶も 私と共に 消えてくれる事を願います』

マスターが視線を強める メルフェスが微笑して立ち去る マリが残り 手で顔を覆って悲しんで言う

『ごめんなさいっ こんな…っ こんなつもりじゃっ』

マスターが近くへ来て言う

『俺の方こそ 御免ね 折角 マリちゃんの事 大切にしてくれる 良い旦那さんを 紹介してくれたのに …変な意地張っちゃって』

マリがマスターを見上げる マスターが微笑して言う

『ご結婚 おめでとう』

マリが驚き表情を悲しませ 視線を落とす 店の外で高級そうなクラクションが鳴る マスターが苦笑して言う

『ほら、心配してるよ?早く行かないと』

マリが顔を上げて言う

『私にもっ!ハイケル君の様な 強い心があればっ 私っ 私 本当は…っ!』

店の外で高級そうなクラクションが痺れを切らすように高鳴る マリが叫ぶマスターが驚く マリが泣きながら逃げる様に店を出て行く マスターが驚き呆気に取られている


―私、貴方の事が ずっとずっと好きだったの!探していたの!…さようならっ!―


【 回想終了 】


ハイケルが持っていたコーヒーカップを握り潰して言う

「馬鹿か!お前はっ!」

マスターがカウンターテーブルにひれ伏して言う

「うわぁ~~ まさか まさかぁ~~ マリちゃんが 昔から 俺の事を好きで 探していた だなんてぇええ~~~っ」

ハイケルが足早にカウンターの外へ回り マスターの後ろを過ぎ様に言う

「行くぞっ」

マスターが驚き 顔を上げて言う

「い、行くって 何処に?」

ハイケルが立ち止まり 振り返って言う

「決まっている マリーニ・アントワネット・ライネミア・アーミレイテスを 奪還する!」

マスターが衝撃を受け 慌てて言う

「なっ ばっ 馬鹿 何言ってるんだよ!?お前っ!?」

ハイケルが言う

「馬鹿はお前だ お前は彼女を思い 彼女もお前を好いていると言った それなら 力ずくでも 取り返せば良いだろう」

マスターが呆気に取られてハイケルを見て言う

「ハ…ハイケル…」

ハイケルが言う

「高位富裕層の屋敷ともなれば それなりの警備はある筈だ 情報部の車両までは必要ないが 手持ちの武器だけでは足りない 一度駐屯地へ戻る」

ハイケルが歩き出す マスターが衝撃を受け 慌ててハイケルの腕を掴んで言う

「ばっ!馬鹿っ 本気で言ってるのか!?」

ハイケルが立ち止まり振り返って言う

「もちろん 本気だ 何故止める」

マスターが言う

「何故も 何も無いっ!相手は一般の高位富裕層なんだ そこに レギストのお前が乗り込んで 花嫁を連れ去るだなんてっ!」

ハイケルが言う

「一般の高位富裕層とは何だ?そんな言い回しは存在しない」

マスターが衝撃受け慌てて言う

「だっ だから!そりゃ 可笑しい言い回しだけど お前と比べて 一般の人だって事でっ」

ハイケルが言う

「ああ そう言う事か 言葉が間違っているぞ それから、通常屋敷に居るだけの女に 花嫁と言うのも 間違っている お前は まず落ち着け」

マスターが衝撃を受けて言う

「お前の行動の方を 落ち着かせてくれーっ!」


マスターが息を吐いて言う

「…マリちゃんと その旦那は …もう籍を入れているんだ お互い 夫婦だって認めているんだろ …今更それを どうこうしようだなんて 思えねーよ」

ハイケルが沈黙してから言う

「一度 他の男に寝取られたら それで」

マスターが衝撃を受け怒って言う

「おいっ!こらっ!ハイケルっ!何処で覚えて来たんだっ!?そう言う言葉を お前が使うなっ!…と、それから そんなんじゃ… ねーよ」

ハイケルが疑問する マスターが一息吐いて言う

「向こうは 超が付くほどの高位富裕層だぞ?マリちゃんだって お前が以前言った通り 4構想の名前をもつ高位富裕層だ …2人は お似合いなんだよ」

ハイケルが沈黙する マスターが肩の力を抜いて言う

「だから 良いんだ… 俺は そのマリちゃんたちを 祝福するよ…」

ハイケルが沈黙する マスターがハイケルの腕を掴んでいた手の力を抜く マスターの手が重力のまま ハイケルの腕から手を伝って落ちる マスターが間を置いてから気付いて言う

「…うん?」

マスターが自分の手を見て 驚いて叫ぶ

「ぬあぁあっ!?な、なんだ!?この血…」

マスターがハイケルの手を見て 気付いて叫ぶ

「あーっ!ハイケルっ!お前っ!」

ハイケルが自分の手を見て気付いて言う

「…ああ、すまん …先ほど カップを1つ割ってしまった」

マスターが振り返った先 壊れたカップの破片がある ハイケルが間を置いて言う

「…来月の給料で 弁償する」

マスターが叫ぶ

「いやっ!そーじゃねーだろっ!馬鹿っ!」

ハイケルがムッとして言う

「…馬鹿?」

マスターが立ち上がり 棚を探しながら言う

「まったく お前は… 何を考えているんだか 相変わらず 分からねー奴だよ …まぁ これでも大分」

ハイケルが手を見て言う

「…俺が 間違っていたのか?」

マスターが救急箱を持って来て言う

「ほら、手出せ …それから、そこ座って」

ハイケルが間を置いてから 言われた通りにする マスターがハイケルの手の手当てをする


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


ハイケルが包帯の巻かれた手でドアをノックして言う

「ハイケル少佐だが…」

ドアの内側からマイクの機嫌の良い声が届く

「あー!ハイケル少佐!どうぞ どうぞー!」

ハイケルがドアを開けて言う

「邪魔をする」

マイクが夢中になってPC作業をしながら言う

「いえいえ、邪魔だなんて飛んでも無い!ハイケル少佐!なんなら ここはハイケル少佐の部室と思って!これからは ノック無しで良いですよ!」

ハイケルが言う

「そうか… なら また そうさせてもらう」

マイクがハイケルへ向いて言う

「また?」

ハイケルがマイクの隣の席に座り PCにパスワードを入力しながら言う

「…ああ、以前にも その様にしていた頃が あった」

マイクが微笑して言う

「なるほど… それで そこのPCのパスワードをご存知だった訳ですね?」

ハイケルが気付き 間を置いて言う

「…すまん 勝手に使っていたな」

マイクが軽く笑って言う

「いえ、良いんですよ 実は そこのPCだけ パスワードが紛失しちゃってて 正直 今まで使ってなかったんです だから パレードの時 ハイケル少佐が 当然の様に使っているのを見て 驚いていたんですよ」

ハイケルが言う

「…そうか」

一瞬の静寂の後 ハイケルとマイクが同時に言う

「それと…」「所で ハイケル少佐」

ハイケルとマイクが驚き マイクが慌てて言う

「ああ!どうぞ どうぞっ!」

ハイケルが一瞬黙ってから言う

「…ああ、一昨日は 急な車両の借り出しを言って すまなかった」

マイクが一瞬 呆気に取られてから 慌てて言う

「ああ!そうそうっ!それで!ハイケル少佐!」

ハイケルが言い辛そうに言う

「それから… 熱源センサーのスイッチを …『間違って押してしまった』」

マイクが呆気に取られる ハイケルが言う

「…すまん」

マイクが微笑し ニヤリと笑んで言う

「『間違って押してしまった』んですか?ハイケル少佐?」

ハイケルが視線をそらして言う

「…ああ」

マイクが首を傾げて不思議そうに言う

「う~ん スイッチにはしっかり『熱源センサースイッチ』って書いてあるのになぁ?オマケに 蓋まで付いてるんですよ?押すまでには1手間2手間 ある様に思うんですが?」

ハイケルが衝撃を受け 苦し紛れに言う

「ふ、蓋が付いていたからっ 余計に 押してみたくなったんだっ …も、文字の方は …く、暗くて見えなくてっ」

マイクが呆気に取られた後 表情を困らせて言う

「…知ってます?ハイケル少佐 あのセンサー1発の お値段」

ハイケルが悔しそうに俯いて言う

「し… 知りたくは無いが …知っている …やはり 弁償か…?」

マイクが呆気に取られた後プッと噴出し笑い出す ハイケルが衝撃を受け 表情を歪めて言う

「な… 何が 可笑しい…?」

マイクが笑いを収めて言う

「あっはっはっはっは… いや、すみません ハイケル少佐… でも 私は 凄く嬉しいですよ!」

ハイケルが疑問して言う

「…どう言う意味だ?」

マイクが言う

「マーガレット中佐」

ハイケルが驚く マイクが微笑して言う

「ご一緒だったんですね?それで… うん!あの保育園の事件を こっそり解決した」

ハイケルが衝撃を受け言う

「なっ 何故知っているっ!?」

マイクが呆気に取られた後 爆笑する ハイケルが衝撃を受け 怒って言う

「おいっ マイク少佐っ」

ハイケルが怒りの視線を向ける マイクが気付き慌てて言う

「あわわっ すみませんっ 怒らないで…」

ハイケルが言う

「…何を知っている?」

マイクが苦笑して言う

「実は マーガレット中佐から メッセージが残っていたんです」

ハイケルが驚く マイクがPCを操作しながら言う

「それで、車両の使用と 熱源センサー1発の使用を謝罪すると共に 協力を感謝すると そして」

マイクがPCモニターにプログラムを映し出して言う

「見てください!このプログラム!」

ハイケルがモニターを見て疑問する マイクが大喜びで言う

「こんな凄い演算プログラムは ちょっとやそっとじゃ見られませんよ!これがあれば 今までの1.8倍の速度が出せます!これを残して行ってくれたんです!このプログラムを金額に換算したら!ざっと5000万は下らないですよ!?」

ハイケルが衝撃を受けて言う

「5000万っ!?」

マイクが言う

「ええ!ですから 熱源センサーの弁償なんて まったく!こっちは それ所じゃない 大喜びの 大騒ぎですから!」

マイクが笑む ハイケルが間を置いて言う

「…そうか」

マイクが嬉しそうに作業をしている ハイケルが言う

「…で、何故 保育園の事件に関わった事を マイク少佐が知っているんだ?まさか そこまで…?いや、今回の任務は 私が勝手にやった事だ それも 別の国防部隊の管轄で …この事が上に知られれば 私は勿論だが 車両を貸し出した お前だって ただでは すまないぞ?」

マイクが思い出したように言う

「ああ、…はは それは きっと 大丈夫でしょう?恐らく誰にも気付かれてません」

ハイケルが疑問して言う

「では 先ほどのは…?」

マイクがハイケルへ向いて微笑して言う

「先ほどのは 失礼ながら ちょっとハイケル少佐に 鎌を掛けて見ただけですから」

ハイケルが僅かに驚いて言う

「なにっ?」

マイクが言う

「私が 戻ってきたあの車両を見て分かった事は 熱源センサー1発の使用 それから マーガレット中佐から残された プログラムとメッセージ」

ハイケルが言う

「メッセージ…」

マイクが言う

「ええ、そこには先ほども言ったように 車両の使用とセンサーの使用に関する事と共に…」

ハイケルが視線を強める マイクが笑んで言う

「”ハイケル少佐が 熱源センサーの使用を 『間違って押してしまった』と言ったら 彼は君を信頼している 思う存分 からかって 鎌を掛けて見るように” と!」

ハイケルが衝撃を受け怒って言う

「あの野郎ぉおっ!」

マイクが嬉しそうに言う

「私が知ったのは それだけです!いやぁ それにしても まさかのまさか!あの保育園の事件を解決したのが 我らレギストのハイケル少佐と 我ら情報部の伝説の中佐 マーガレット中佐だったとは!いやぁ~~ 声を大にして 言えないのが 心苦しいっ!」

ハイケルが机を叩き付け 立ち上がって言う

「車両の礼は言ったぞ 失礼するっ」

ハイケルが怒りながら立ち去る マイクが笑顔で言う

「またいつでも!今度はノック無しで いらして下さいね~?ハイケル少佐~!」

ハイケルが通路を怒りながら歩いて言う

「…クッ 情報部の主任になる奴は 皆 あんな奴らばかりなのかっ!俺をからかうのも 好い加減にっ」

ハイケルが一度立ち止まり 包帯の巻かれた手を見てから 一息吐いて軽く笑う

「まぁ… 良いか…」

ハイケルが歩いて行く


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】


ハイケルが立つ 隊員たちが敬礼して言う

「お早う御座います!少佐!」

ハイケルが敬礼を返して言う

「お早う」

隊員たちがハイケルの手の包帯に驚く ハイケルが構わず言う

「まずは 通常訓練を行え そして、終了次第 全員 第2訓練所へ向かえ」

ハイケルが立ち去る 隊員たちが一度顔を見合わせた後敬礼して言う

「はっ!了解!」「通常訓練の1 開始ー!」

隊員たちが腕立てを開始する ハイケルが立ち去ると 皆顔を見合わせ 腕立てをしながら言う

「少佐の手!見たか?」

「もちろん!どうされたんだろうな?」

「…もしかして?」

「…やっぱりか?」

「あの保育園の事件」

「だったりしてな?少佐なら有り得る!」

隊員たちが腕立てをしながら笑って話している


第2訓練所


ハイケルがやって来て周囲を見渡し苦笑して言う

「…懐かしいな」


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


マイクがPC操作を行っていた手を止め コーヒーを飲みつつプログラムの全体を見て言う

「いやぁ~… 素晴らしい これは本当に 伝説と言われるだけの事はある …これほどの技術をお持ちなのに マーガレット中佐は何故 レギストをお辞めになってしまったのか…?はぁ… 一目でも良い お会いしたい マーガレット… もしかして 女性だったり?まさか…?」

マイクが1人で笑う ハッとして言う

「あっ!けどっ!…あのハイケル少佐が マーガレット中佐には… なんだか お優しい様な…」

マイクの脳裏に ハイケルとの会話が思い出される


【 回想 】


ハイケルがコーヒーを飲んでから一息吐いて言う

『…あいつは 情報部には戻らないと言っている きっと 関わりたくも無いのだろう どうしても力を借りたい時には 声を掛ける事もあるが なるべくなら そっとしておいてやりたい』


【 回想終了 】


マイクが衝撃を受けて言う

「『そっとしておいてやりたい』!?い、今考えると とても とても 優しい言葉じゃないか!?はっ!ま、まさかっ!ハイケル少佐の こ、こ、こ… 恋人っ!?」

マイクが思わずキーボードに手を付く PCがエラーを起こす マイクが焦って叫ぶ

「あーーっ!」

マイクが慌てている


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】


ハイケルが吊るされているロープを確認して言う

「…問題ない」

ハイケルが全体を見渡し軽く頷く 後方に隊員たちがやって来て 周囲を見渡しつつ ハイケルに気付き 敬礼して言う

「少佐!集合しました!」

ハイケルが振り返り言う

「今までは行わなかったが これからは あらゆる場面を想定した訓練を行って行く」

隊員たちが返事をする

「はっ!」

ハイケルが視線で示して言う

「使い方を説明する必要は無いだろう?適当なグループに分かれ 訓練を開始しろ」

隊員たちが敬礼して言う

「はっ!了解!」

隊員たちがアスレチック式の訓練装置へ3グループに分かれて向かう


【 マスターの店 】


マスターが鼻歌交じりで コーヒーの仕込みをしている 作業がひと段落して言う

「よし、後は少し煮立てて… その間に~」

マスターが振り返り PCモニターへ向かい言う

「ハイケルの奴 以前よりずっと作業が素早くなってたからな 拘束に掛かる時間が1.9秒も短くなってるんじゃ しっかり入力しといてやらんと 演算に狂いが生じちまう」

マスターがPCを操作して 棚の奥に隠しておいたディスクケースを取り出す PCからROMを取り出し別のROMを入れてエンターを押す PCが作業中になる マスターがそれを見て微笑すると 何気なくディスクケースを覗き気付いて言う

「ん?あら?ディスクが1枚… うん?」

マスターがPC周囲を見て ディスクケースを再び見て 首を傾げて言う

「おかしいなぁ?何で1枚…」

マスターが考えた後 ハッとして言う

「あっ!思い出したっ!」


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


マイクが鼻歌交じりにPCを操作して言う

「よし!さっきエラーになった所も ばっちり!いやぁ~ マーガレット中佐 様様だ~ この速度なら 今まで処理し切れなかったかったプログラムも… お?」

マイクが思い出して デスクの引き出しを開けて言う

「そういえば マーガレット中佐の 伝説のデータファイル!」

マイクが1枚のディスクを取り出して 見て言う

「この演算スピードなら もしかしてっ 再生出来るんじゃないか!?」

マイクがPCにROMを入れ エンターを押す しばらくしてプログラムが流れ 切り替わって3D映像になる マイクが目を見開いて言う

「こ… これはっ!」


【 マスターの店 】


マスターがコーヒーを淹れながら言う

「そう言えば… 俺が辞める日だった あの日 当日だって言うのに 急な事件が起きちまって 即興であのデータを応用して 作戦に利用したんだった そのまま… PC本体の方に 入れっ放しにしちまったんだなぁ… まぁ あの頃の情報部の能力じゃ プログラムの再生すら無理だったろうから …もしかしたら 訳の分からねーファイルだって 破棄されちまったかもな」

マスターがコーヒーを味見して微笑して言う

「うん …上出来だ!」


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


マイクが驚き呆気に取られながら見つめて言う

「…こ、これは もしかしてっ ハイケル少佐のっ!?…こうしちゃ居られない!」

マイクが頷き PCを消して駆け出す


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】


マイクが走って来る マイクが息を切らせ 訓練をしている隊員たちを見渡し それを見ているハイケルに気付き 慌てて駆け寄りながら叫ぶ

「ハイケル少佐ーっ!」

ハイケルが振り返り 疑問して言う

「マイク少佐 どうかしたのか 慌てている様だが?」

マイクがハイケルの横に来て 息を切らせながら言う

「あ、あのっ ハイケル少佐っ し、失礼ながら ハイケル少佐ご自身は以前にでも この訓練所の設備を使った 訓練を行った事が!?」

ハイケルが疑問しつつも間を置いて言う

「勿論だが それがどうした?」

マイクが息を整えて言う

「その時は!やっぱり マーガレット中佐とご一緒に!ハイケル少佐の 能力データを取る タイムの計測なども!?」

ハイケルが言う

「ああ 良くやっていたが」

マイクが目を輝かせて言う

「すごいっ!では あの完璧な クリアデータは ハイケル少佐のデータなのですね!?凄いですよ!人間の限界とも言える!完璧なデータ!やはり 我らレギストのハイケル少佐は 超人!」

ハイケルが疑問して言う

「おい、ちょっと待て …恐らくお前は 何か勘違いをしている」

マイクが疑問する 隊員たちがハイケルの前に集合して言う

「少佐!第2訓練所の 設備を使った訓練!全員完了しました!」

ハイケルが隊員たちを見て頷く マイクが隊員たちを見てからハイケルへ言う

「ハイケル少佐!是非 ここの施設を使った レギスト隊員の能力数値も 我ら情報部へ!」

ハイケルがマイクへ顔を向けて言う

「この施設を使った訓練は 彼らにとっては 今日が初めてだ データを取るにしては まだ早過ぎるんじゃないのか?」

マイクが言う

「いえ!むしろ 初期と後期 …出来れば中期も取れれば 一人一人の成長能力データともなります これは 良い機会です!」

ハイケルが少し考えてから言う

「…そうか では 少し時間も余っているからな マイク少佐がそこまで言うのなら 協力しよう」

マイクが笑んで言う

「おおっ!有難う御座います!ハイケル少佐!」

ハイケルが言う

「礼は不要だ 情報部と機動部隊は レギストの要 両者の協力は惜しまない事が 鉄則だ」

マイクが喜ぶ ハイケルが隊員たちへ向いて言う

「…と言う事だ 全員2人一組で 互いのタイムを計測しろ」

隊員たちが敬礼して言う

「はっ!了解!」


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】


ハイケルが1人で食事を食べている 隊員たちが他方で集まりハイケルを見ながら言う

「あれ?さっきまで一緒に居たのに…」

「今日は マイク少佐と一緒に食べないのかな?」

「って言うか マイク少佐が居ないって感じだけど…」

隊員たちが顔を見合わせてからハイケルを見る


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


マイクが残念そうにPCを操作し眺めながら言う

「大体4分ぐらい…かぁ おかしいなぁ このクリアデータなら 大体で言っても 2分半なのに…」

マイクが疑問する マイクの脳裏に記憶が戻る


【 回想 】


隊員Aが倒れて言う

「ぜぇ…ぜぇ… た、タイムは?」

隊員Bが言う

「5分58秒02… ほとんど6分だね?」

隊員Aが衝撃を受け 慌てて言う

「お、おいっ ちゃんと58秒って書けよ!」

隊員Bが笑って言う

「あ、バレた?にひひっ」

マイク少佐が軽く笑って言う

「そうそう 例え0.2秒だって プログラムの中では ものすごく重要なんだから しっかり頼むよ?」

隊員Bが呆気に取られ困りながら訂正して言う

「あ、は、はい 失礼しました マイク少佐…」

マイクが微笑して振り返り ハイケルに言う

「あ!そうだ!訊き忘れてました ハイケル少佐!」

ハイケルが言う

「何だ」

マイクが言う

「ハイケル少佐の 以前ので宜しいので この施設を使ったタイムの方は いくつ位だったか 覚えていらっしゃいますか!?」

ハイケルが間を置いて言う

「…回数が多すぎて 確かな数字は言えないが 平均して大体4分くらいだ」

隊員AとBが喜んで言う

「おお!」「流石少佐ぁ!」

マイクが疑問している ハイケルが言う

「そうでもない 恐らく 計測をすれば アーヴァイン軍曹の方が速いだろう」

隊員AとBが呆気に取られて言う

「「えっ?」」

ハイケルが微笑して言う

「だから あいつが戻ってくる前に お前たちに やらせておいてやろうと思ったんだ また しごかれるだろうからな?」

ハイケルが軽く笑う 隊員AとBが呆気に取られた後 敬礼して言う

「はっ!有難う御座います!少佐!」


【 回想終了 】


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】


ハイケルが食事を終え 食堂を後にする 隊員たちが見つめ 隊員Aが言う

「それにしても 今日の少佐!」

隊員Bが頷いて言う

「うんうん!俺 チョー驚いちゃったよー!」

隊員Aが微笑して言う

「少佐って あんなに優しかったっけ?」

隊員Bが笑顔で言う

「ねー?少佐があんな風に笑うのってー?俺初めて見た気がするー」

他の隊員たちが驚いて言う

「えっ!?」


【 マスターの店 】


店の来客鈴が鳴る マスターが出入り口へ向き言う

「いらっしゃいませ …お?アーヴィン君!」

軍曹が微笑して言う

「お疲れ様であります マスター」

マスターが苦笑して言う

「流石に まだ 調子は出ないみたいだな?」

軍曹が苦笑して言う

「は…っ お恥ずかしながら…」

マスターが微笑して言う

「いやぁ?4発も食らって 3日で歩けるだけでも 大したもんさ …さぁ とりあえず座り給え」

軍曹が苦笑しつつ頷いて言う

「はっ 有難う御座います マスター それでは 失礼致します」

マスターが軽く笑って言う

「喫茶店に来て 失礼致します はないだろ?相変わらずだな?君は」

軍曹がカウンター席に座り 微笑して言う

「自分にとって マスターは 少佐と同じ位 尊敬するお方で ありますので」

マスターが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う

「まぁね 俺が居てやらなけりゃ ハイケルは実力の半分程度しか 出せねーもんな?」

軍曹が疑問して言う

「はぇ?半分…?」

マスターが冷蔵庫を開けて言う

「さて?静養中のアーヴィン君は オレンジジュースとミルク どっちが良い?」

軍曹が疑問して言う

「え?えっと… 自分は… コーヒーで…?」

マスターが微笑して言う

「残念だけど 今の君の体に コーヒーは禁止だ 刺激物になるからな?うーん やっぱりミルクにしとくか 早く部隊に復帰したいだろ?」

軍曹がハッとして慌てて言う

「は、はいっ!それはっ!もちろんでありますっ!」

マスターがミルクをコップに入れながら言う

「きっと 部隊の連中も ハイケルも 君を待ってるだろう …今日はこれから 顔を出すのか?」

軍曹が視線をそらし苦笑して言う

「いえ… 自分としては レギストへ向かいたいのでありますが… あいつらや 少佐のお顔を見てしまうと 自分は静養中の身である事を 忘れてしまうと 思われますので… 少し気分転換に 散歩をして ついでにこちらへ」

マスターが軍曹の前へミルクを出して言う

「ああ、良い判断だね 自分自身の性格を 正しく理解しての行動だ」

軍曹が苦笑して言う

「あ… 有難う御座いますっ マスターにお褒めの言葉を頂き 自分は とても励みになるでありますっ」

マスターが軍曹を見る 軍曹が出されたミルクのストローを吸い上げる マスターが苦笑して言う

「面白いなぁ あんた」

軍曹が疑問してマスターを見て言う

「はぇ?」

マスターが微笑して言う

「この前のパレードで見た時には 紛れも無く 高位富裕層の防長閣下だったのに ここで見る君は やっぱり いつもの アーヴィン君だ …安心したよ」

軍曹がはっとする マスターが言う

「…と、安心した は ちょっと失礼か?ごめんな?」

軍曹が言う

「い、いえ!そのっ …少佐にも 同じ事を言われました」

マスターが呆気に取られて言う

「え?ハイケルが?」

軍曹が視線を下げて言う

「はい… 自分はっ その… 馬鹿で無知な為 少佐やマスターの仰る その ”安心した” と言うお言葉の意味する所が 分かりかね… 嬉しいような 不安な様な?その…っ!出来れば 詳しい意味の方を 教えて頂けないかと」

マスターが間を置いて苦笑して言う

「いやぁ 分かってるじゃないか?」

軍曹が言う

「はぇ?」

マスターが言う

「君が今 言っただろ?俺やハイケルに そう言われる事で 『嬉しいような 不安な様な』 …俺たちの言ってる事は そう言う事だ」

軍曹がマスターを見つめる マスターが苦笑して言う

「俺たちみたいな 最下層の人間から見て …高位富裕層の方ってのは 不安の対象なんだよ」

軍曹が驚く マスターが言う

「もちろん 君や レーベット大佐の様に 分け隔ての無い お優しい方も居る けど… 大半が違うだろ?だから、パレードが終わって 防長閣下じゃない …俺たちと仲良くしてくれる 軍曹の君の状態に 俺もあいつも 嬉しくて …安心したんだ」

軍曹が呆気にとられて言う

「あの少佐が… 自分を見て 不安になど…」

マスターがコーヒーを淹れ 自分で飲んで 一息吐いてから言う

「君とハイケルが 初めてこの店に来た時の事 覚えてるか?」

軍曹が反応して言う

「は、はっ!もちろんでありますっ!」

マスターが言う

「その時 俺が君の正体を ハイケルに教えてやっただろ?あの時の あいつの様子も 覚えてるか?」

軍曹が一瞬呆気に取られ 思い出して言う

「あの時は…」


【 回想 】


ハイケルが表情を怒らせて小声で怒って言う

『どう言う事だっ!?』

ハイケルが密かに隠し持っている拳銃を軍曹の胸に突き付ける 軍曹が慌てて言う

『い、いやっ それはっ それは…っ!』

ハイケルが視線を険しくして言う

『クッ… さては俺を探る 国防軍の回し者だったかっ』

ハイケルが変わらず軍曹へ鋭い視線を向けて言う

『何故 隠していた?』


【 回想終了 】


マスターが苦笑して言う

「あいつは 嘘や裏切りってのが 許せないタイプだ… けど、それだけじゃない あの時あいつは… 君を恐れていた …ふふっ 中々珍しいハイケルを 見せてもらったよ」

軍曹が表情を困らせて言う

「マ、マスター…?」

マスターが苦笑して言う

「あぁ 悪い悪い ま、そう言う事だ 俺は この店のお陰で 大分富裕層の方々にも慣れて来たけど あいつはまだ… 修行中かな?防長閣下の君に慣れるのは まだまだ先かもしれないが… 少なくとも 軍曹の君には 気を許しているみたいだから そう心配しなくても 大丈夫だろう」

軍曹が困って言う

「しかし… 自分は 出来れば そう言う事は… 自分もっ その… 富裕層だとか 違うとかって言うのは 好きでは無いので ありますので…」

マスターが言う

「なら、それで十分 慣れようと思って すぐ慣れるってモンでもない 気長に行けば良いさ」

軍曹が言う

「は… はぁ…」


【 国防軍レギスト駐屯地 】


軍曹が正門前を遠くから見て言う

「うぅ~… 来てはいけないと 分かっていつつも… ついっ」

軍曹が周囲を見てから言う

「す、少しだけ… 遠くから ひ、一目だけでも…?あいつらや 少佐のお姿を~…っ」

軍曹が徐々に場所を変え 結局 金網越しまでやって来る 警備兵が疑問して話す

「あれ… アーヴァイン軍曹だよな?」

「だな?…何やってるんだ?」

「…さぁ?」

軍曹が疑問して言う

「むっ!?何故だ!?」

軍曹が金網にしがみ付き 駐屯地内をきょろきょろ見て言う

「こ、この時間ならっ 昼休憩を終え ここで午後の訓練を行っている筈!?何故 誰も居らんのだっ!?皆!何処だっ!?少佐!?少佐ぁー!?」

警備兵たちが呆れている


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】


隊員たちがアスレチック式設備で訓練を行っている 隊員Aが倒れて言う

「ぜぇ…ぜぇ… た、タイムは?」

隊員Bが言う

「5分32秒05… ん~ 四捨五入すれば やっぱり 6分だね?」

隊員Aが衝撃を受け 慌てて言う

「お、おいっ ちゃんと32秒05って書けよ!」

隊員Bが笑って言う

「にひひっ 分かってるって!」

隊員Bが記入をしてから言う

「…けど、あれから3回やって 26秒も縮まったのか~」

隊員Aが笑んで言う

「後6回くらい練習したら4分台になるかも!?そしたら…」

隊員AとBがハイケルを見る ハイケルは他方を見ている 隊員Bが言う

「少佐と同じ4分台?」

隊員Aが笑んで言う

「やる気出てきたぞ~~!」

隊員Bが笑んで言う

「ま、四捨五入すれば まだ6分だけどね?」

隊員Aが怒って言う

「だからっ!ちゃんと32秒05って書けよ!夢が遠ざかっちまうだろっ!?」

隊員Bが笑ってから言う

「にっひひっ 分かってるって!それじゃ 次は俺の番!しっかり計測してくれよー!?」

隊員Aがストップウォッチを受け取って言う

「大体の計測だろ?」

隊員Bが衝撃を受け怒って言う

「あぁーっ!」

隊員Aが笑む


ハイケルが隊員A、Bの様子を見る マイクがやって来て言う

「ハイケル少佐 どうです?」

ハイケルが言う

「ああ 大分 設備に慣れて来た様子だ タイムの方も 順調に上がっている」

マイクが隊員たちの様子を見てから言う

「ふ~む… 確かに 午前中の様子だと まだ 一つ一つの設備の越え方が 手探り状態って感じでしたからね?感覚が掴めて来た この辺りから 隊員たち一人一人の実力の差が 出てくるって感じでしょうか?」

ハイケルが視線を向けないまま言う

「…そうだな」

マイクが表を見てから気付いて言う

「ん?そうか…!?ハイケル少佐!」

ハイケルがマイクを見て言う

「何だ?」

マイクが微笑して言う

「私に1つ提案が!」

ハイケルが言う

「提案?」

マイクが言う

「5分!いや、10分ほど!隊員たちの練習を 中断させても良いでしょうか?」

ハイケルが言う

「…ああ、構わないが?」


【 皇居 静養施設 】


軍曹がベッドに寝ていて言う

「はぁ~… 暇だ… ここではギターの訓練も出来ん… それに…」

軍曹が思い出す


【 回想 】


警備兵Aが言う

「ああ、機動部隊の訓練は 今第2訓練所の方で 行われているらしいですよ さっき 食堂で 機動部隊の友人から聞きました」

軍曹が衝撃を受けて言う

「なっ!?」

警備兵BがAへ向いて言う

「第2訓練所って 中庭辺りにある あのアスレチック系の奴だよな?ちょっと 面白そうだって思ってたんだよな~」

警備兵Aが言う

「いや、俺もそー思ってたけど 実際やってみると かなりキツイらしいぜ?腕とかパンパンになるってさ」

警備兵Bが言う

「へぇ~ 機動部隊の連中って いつも腕立てやってるから その連中がキツイって言うなら かなり かもな?」

警備兵Aが言う

「ああ」

軍曹が悔しがって言う

「ぬおぉお~~!皆が新たな訓練を開始しているというのにっ!自分はっ!自分は… ぐあっ!」

軍曹が身を屈めて苦しがる 警備兵A、Bが驚いて言う

「だ、大丈夫ですか!?アーヴァイン軍曹?」

「無理しない方が良いですよっ?しっかり 治された方が…」

軍曹が苦しそうに言う

「な… なんの これしきぃ…」


【 回想終了 】


軍曹が溜息を吐いて言う

「いや… 彼らの言う通りなのだ マスターにも お褒めを頂いたと言うのに 自分は 結局レギストへと… ぐぅう~~っ 自分でも 分かってはいるのだっ とは言え やはり 一目だけでも 皆の姿を 目にしたかったというのに… 第2訓練所だけは 外からでは伺えん…」

軍曹が溜息を吐いて周囲を見渡し 消沈して言う

「はぁ~… それに、いくらなんでも 声を張るだけで倒れるようでは 少佐の下にも あいつらの前にも行けんのだ… こんな時 少佐なら… 如何なされるのだろうか?自分とは違い 少佐なら… 少佐なら… 何を…?」

軍曹が考え 普段のハイケルの様子を思い出す ハイケルの職務室 ハイケルが椅子に座り ノートPCを眺めている 軍曹がハッとして言う

「そういえば…」

軍曹が周囲を見渡しノートPCに気付く 軍曹がノートPCを起動させながら言う

「少佐は普段 こうして…」

ノートPCが起動する 軍曹が間を置いて焦りの汗を掻き言う

「とは言え 自分は 少佐がこれで 何をなさっているのか?までは 知らんのだったっ …う~ん 少佐の事だ きっと何か とても 有意義な…」

軍曹が間を置いて 疑問する


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】


マイクがモニターの前で言う

「これから皆に見てもらう映像は この訓練施設を使ったデモ映像だ 各設備の最も適した使用方法を算出し それを表現している… うん、言い換えれば 最も速いクリア方法だと思ってくれ ちなみに、このデモンストレーションに沿った方法で ここの設備を全てクリアして出るタイムは 2分28秒08」

隊員Aが驚いて言う

「2分っ!?」

隊員Bが言う

「四捨五入すれば 少佐の半分…」

マイクが言う

「ああ、それから このデモに使われている人物データは 身長169.8センチ体重55.4キロと 男性で考えれば 少々小柄なタイプだから」

ハイケルが密かに衝撃を受ける マイクが苦笑して言う

「もし、身長体重が これより上回る 君たちが このデモと同じ要領で ここの施設をクリアすれば タイムはもっと縮まる可能性もある」

隊員たちが静かに歓喜の声を上げる

「おお~っ」「すげーっ」

マイクが残念そうに言う

「う~ん 本当に この人物データに 後.2センチの身長があれば もっと良いデータが取れるんだが…」

ハイケルが怒りを忍ばせ静かに言う

「…悪かったな」

マイクが衝撃を受ける 隊員たちが汗を掻く マイクが機械を操作すると モニターに映像が映し出される マイクが言う

「それじゃ しっかり見ていてくれよ?」

マイクがエンターを押す 隊員たちが密かに唾を飲む モニターに3D映像が映し出され 各設備をクリアする様子が流れる 隊員たちが食い入る様に見つめ 口々に言う

「あっ あのロープ あんな風に使うのか」「手よりも足の動きが重要だったんだな?」「お、おいおい いくらなんでも3回で あそこまで上るは 無理だろう!?」

ハイケルが隊員たちと共に 映像を見ている


映像を見終わった隊員たちが 俄然やる気を出して言う

「よっしゃ!」「なんだかコツが見えてきた気分だ!」「俺もっ!ちょっと試してみたいのが出来た!」

隊員たちが立ち上がり敬礼して言う

「マイク少佐へ敬礼!」「有難う御座いましたー!」

マイクが笑んで言う

「何の何の!さ!頑張ってくれたまえ!」

マイクが敬礼すると 隊員たちが言う

「はっ!了解!」

隊員たちが設備へ走って行く マイクがそれを見て微笑してからハイケルへ言う

「ハイケル少佐 どうです?良い案だったでしょ?」

ハイケルが隊員たちを見て言う

「…lコンピュータグラフィック(仮想)の映像を 流して見せた後に それを何処まで再現が可能かは 分からんが …見ないよりは良いだろう …感謝する」

マイクが笑顔で言う

「何の何の!いや~ 私はてっきり あのデモはハイケル少佐のデータ そのものだと思っていたんですが マーガレット中佐が作った 最有力データって事だったみたいですね?」

ハイケルが言う

「ああ、他にも 様々な物がある筈だ ここの駐屯地にある設備の物から 他の駐屯地にある物 街中や 郊外の建物 山の中で採取した事も あったからな」

マイクが驚いて言う

「え!?そんなに…?あ、ああ そうか、私が手に入れたあのディスクは それらの1部だと言う事か…」

ハイケルが言う

「また、それらを基にした あいつ独自の物もあった …そして、全てのデータを 事件を解決する為の 作戦へ用いていたんだ」

マイクが疑問して言う

「これらのデータを用いて 作戦を?…う~ん それは… ああ、例えば どの程度の障害物なら あの設備と同じ位だから 同じ要領で越える事が出来る …など ですか?」

ハイケルが少し考えて言う

「…そう かもな 厳密に言えば そのデータを編集し その場所の設備に完全に置き換えたデータを こちらへ転送していた と言うのが正しいと思うが」

マイクが呆気に取られて言う

「…転送?」

ハイケルが言う

「ああ、映像を送ってもらい それを見ながら作戦を実行していた …以上だ」

ハイケルが隊員たちの方へ向かう マイクが疑問して考える

「映像を送って…か 確かに その映像を見る事で 感覚を掴む事位なら 今回と同じ様に 可能だとは思うけど… わざわざそんな事を …事件の度に?」

マイクが首をかしげてハイケルを見る ハイケルが隊員へ何か言っている


【 皇居 静養施設 】


軍曹がノートPCにIDを入力しながら言う

「…っと 少佐が普段これで 何をご覧になっていたかは 浅はかな自分には分かりかねるのだが きっと… いや、それよりも 自分は今…」

軍曹が叫ぶ

「どーうしてもっ!レギストの皆に会いたいのだぁああーーっ!」

軍曹が傷口に衝撃を受け 苦しみながら言う

「ぬぐぅ… …と、言う事で ぽちっと」

軍曹がエンターを押す モニターにログイン処理が映り 間を置いて 軍曹の写真と名前が出る 軍曹がはっとして衝撃を受けて言う

「ぬっ!?し、しまった!…つい うっかり アーヴァイン軍曹ではなく 過去のIDでログインを… まぁ 良いのだ 正直自分は 新しい方のIDを 未だ覚えていないのである」

軍曹が言いながら PCマウスを操作する 軍曹が表情を落とし気味に言う

「ふむ… ヴォール・アーヴァイン・防長か… こちらのIDの自分は 兄貴と同じ 国防軍の最上軍階に 設定されておるのだな?…これなら 過去には見られなかった 軍曹の軍階より上位の者のデータを 閲覧する事も… …お?」

軍曹が気付いてキー入力をしながら言う

「と言う事は?今なら自分は 少佐のデータを閲覧する事も 許されておるのではっ?…以前はご住所さえ閲覧が許されず 兄貴に頼ってしまったが 今なら…」

軍曹がエンターを押す モニターに検索表示が現れた後 ハイケルの写真とプロフィールが表示される 軍曹が衝撃を受け思わず敬礼して叫ぶ

「おっ!おおーっ!しょ 少佐ぁー!自分はっ 例え 画像であろうとも 少佐にお会いする事が出来て 光栄でありますーっ!」

軍曹が叫んだ後はっとして モニターに近付き 疑問して言う

「むっ!?な… なんだ?これは…?」


【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】


ハイケルが椅子に座り ノートPCを見ている モニターには柔道の試合映像が流れている ハイケルが無言で眺めた後 PCマウスを操作し 映像を切り替える モニターにK-1の試合が映り ハイケルが見ている しばらくすると 館内放送が流れる

『…本日は 駐屯地内の 清掃が入りますので 館内南塔は21時をもって閉鎖 …尚 東塔の施設も 全て21時をもって閉鎖されます 食堂、シャワールームの使用は 30分前を原則とし…』

ハイケルが顔を上げ 時計を確認すると PCを切り 机の引き出しに閉まって 立ち上がり 部屋を出て行く


【 皇居 静養施設 】


軍曹が困惑の表情でノートPCを見て PCマウスで画面をスライドさせている 軍曹が言う

「こんな事は… 何かの 間違えではあらぬのか…?あの博識な少佐が 一体 なぜ…?」

軍曹がノートPCに食い入っている


【 国防軍レギスト駐屯地 シャワールーム 】


シャワーのコックが閉められる ハイケルがタオルを被り 脱衣所へ向かう


【 マスターの店 】



ハイケルが店のドアを見る 営業中の札が掛けられている ハイケルが一度向かおうと足を向けるが それを止めて言う

「…今日は 止めて置くか」

ハイケルが向けていた足を戻し 店の前を立ち去る


店内


マスターが言う

「ああ… その事?」

軍曹が顔を上げて言う

「やはり マスターは ご存知で?」

マスターが皿を拭きながら言う

「まぁね… 良く知ってるよ …正直 俺以上に あいつの事を知ってる奴は この世に居ないだろうからね?」

軍曹が言う

「では何故っ あの少佐が… あの知識溢れる少佐が …全ての学位を 未修得 で あられるのか…」

マスターが言う

「うん…」

マスターが皿を置き コップを拭く 軍曹がマスターへ向いて言う

「…例え 最下層の方であっても 孤児院ご出身の方であっても… 中等学位試験までは 国の援助で 無償で受けられるものであります そして、その国が運用する 国防軍への入隊には 中等学位は必須項目となっているのであります …それなのに 少佐は 中等学位だけでなく 小等学位も 未修得 とは… これは 何かの間違えでは?」

マスターがコップを置いて言う

「いや、間違えじゃない あいつは 中等も小等も どの学位も取れていないんだ …同じ孤児院出身で 同じ最下層の人間である俺でさえ それらの学位は 国防軍の入隊前に取得していたけどね」

軍曹が驚いて言う

「で、では?」

マスターが言う

「あいつの優秀さは 君の言う通り …知識だけで考えれば レギストへ入隊して 博士学位まで取った俺と 同等か それ以上だ …けど、あいつには1つ 大きな欠点がある」

軍曹がマスターを見る マスターが言う

「あいつは… ハイケルは 文字が書けないんだ」

軍曹が驚いて言う

「え…?」

マスターが苦笑して言う

「もちろん 習ってないからだとか そう言う事じゃない …それに、何らかの入力装置を使っての入力なら 問題はない事から スペルを覚えていないとか そう言う事でもない …でも 書けないんだ」

軍曹が呆気に取られる マスターが言う

「学位試験に 入力装置なんかの持込なんて 出来ないだろ?だから あいつは全ての試験で 自分の名前さえ書けなくて …それで、全て未修得」

軍曹が呆気にとられて言う

「そんな事が…?一体 何故?」

マスターが皿を拭きながら言う

「うん… それが分からないんだが それでも ハイケルの状態を知った レーベット大佐のお陰で レギストへの入隊が特別に許され 昇格試験ではなく 実戦での活躍を評価されて 今の少佐の地位まで上ったんだ」

軍曹がコーヒーを見つめて言う

「…そう だったので ありますか…」

マスターが苦笑して言う

「幻滅した?」

軍曹が衝撃を受け 慌てて言う

「げ、幻滅だなんてっ!とんでもないっ!実力を持って 国防軍の!…レギストの少佐の地位まで上り詰めるとはっ!流石は少佐っ!正に!真の力を 評価され 上り詰めたお方でありますっ!」

マスターが軽く笑って言う

「…ははっ 良かった 俺があいつの秘密をばらした事で 君がハイケルの傍から居なくなってしまったら 俺の責任になるからな?…あいつに合わせる顔がなくなっちまう」

軍曹が一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う

「少佐は… 自分が少佐のお傍を離れても 少佐は…」

マスターが言う

「そうか?以前にも言ったと思うが あいつは君を信用しているし きっと 頼りにもしている… あいつがそこまで他人を認めるなんて 結構、珍しい事なんだぜ?」

軍曹が驚いてマスターを見る マスターが軽く笑んで言う

「後、あいつの欠点を教えちまった以上は その逆の 誰よりも秀でている事を 教えて置こう …もしかしたら あいつが文字を書けない事は この事が逆に 影響しているのかもしれない」

軍曹が言う

「そ、それはっ?」


【 ハイケルの部屋 】


暗い部屋の中 ノートPCの機動ランプが光っている ノートPCから配線が伸ばされた先 ハイケルがつけているゴーグルに K-1の映像が映し出されている ハイケルがそれを眺めている


【 マスターの店 】


軍曹が驚いて言う

「そ、そんなっ 馬鹿な…っ」

マスターが苦笑して言う

「そう思うだろ?けど 本当だ あいつがヴァイオリンを弾けるのも そう あのパレードで 前日に見たって言う 曲芸染みた技を披露出来たのも その能力のお陰だ …ハイケルは 一度見た 誰かの行動を 確実に再現する事が出来る それも 速度や位置的な変化を 限界まで補った上でね」

軍曹が呆気に取られる マスターが言う

「ただし、幾つかの条件はある 例えば 力だ 少し前のデータになっちまうけど ハイケルの機重力は86キロが限界だ 多分 筋力や体格が勝る君なら100は越えるだろう だから 単純に力だけの勝負なら ハイケルは君には勝てない けど あいつには それを補って越えるだけの技術がある もし仮に 君が正面から ハイケルに殴りかかったとしても あいつは君の力を応用して 確実に急所を狙って 討ち取るだろうね」

軍曹が驚き言葉を失っている マスターが微笑して言う

「どうだ?驚いただろう?」

軍曹がやっと声を出して言う

「…は… はい… とても…」

マスターが言う

「それから もうひとつある ハイケルは 人が言った言葉を 一字一句間違えずに 覚える事が出来る …だから これを応用して 作戦会議なんかでは メモを取らずに 間違いなく話を覚えていられる …ただ、これにも ちょっと条件が 言うまでも無く ”一字一句間違えずに”って事だから その言葉を応用して 自分の言葉に置き換えたり 敬語だったものを 標準語に直す事なんかは出来ない ま、レコーダーに録音したって感じだな?切り貼りする事位は 出来るみたいだ」

軍曹が納得した様子で頷く マスターが言う

「後、最後に1つ …こいつが凄い」


【 ハイケルの部屋 】


ノートPCの電源ランプの横バッテリーランプが点滅していて 次の瞬間消灯と共に ハイケルの付けていたゴーグルの映像が消える ハイケルが寝息を立てている


【 マスターの店 】


軍曹が慌てて思わず立ち上がって言う

「あ、あのっ マスター!」

マスターが言い掛けていた口を止め 疑問して言う

「ん?どうした?」

軍曹が表情を落とし椅子に腰を下ろして言う

「そ、その… せ、折角 少佐のお話を 頂いていると言うのに 恐縮なのでありますが… …自分は その… それ以上 少佐の個人的なお話は …まだっ 伺って良い者では 無いと思われ」

マスターが呆気に取られた後 苦笑して言う

「あぁ… 悪い悪い… 俺も~ おしゃべりだよなぁ?元情報部の中佐だってーのに 人のトップシークレットを ぼろぼろと…」

軍曹が言う

「い、いえっ 少佐が信頼を寄せるマスターに それほど 御信頼を頂け 自分は今 言葉に出来ないほど 感銘しておりますっ ただ、自分は これ以上は いつの日か 少佐ご自身から 伺いたいとっ」

マスターが微笑し頷いて言う

「ああ、…それが良い きっと近い内に その日が来るだろう」

軍曹がマスターを見てから微笑して言う

「はっ!少佐のご信頼を 更に得られますよう!自分は誠心誠意!頑張らせて頂きますっ!」

マスターが軽く笑って言う

「ああ!精進し給え!」


【 国防軍総司令本部 総司令官室 】


アースがノートPCを操作し気付いて言う

「ほう… なるほど… そう言う事だったのか これは ともすれば防長閣下へ 御協力を頂かなければな?」

アースが悪微笑する 扉が開き 執事がやって来て言う

「アース様 そろそろ お時間の様に御座いますが?」

アースが顔を上げ言う

「ああ、そうか 面白くて つい時間を忘れてしまった …すぐに向かおう」

執事が礼をして言う

「はい」

アースが立ち上がり 執事と共に立ち去る


【 皇居 静養施設 】


ラミリツが表情を困らせ通路を歩いている 手に持ったフルーツバスケットを見て 悔しそうに言う

「なんでっ 僕が…っ?」

ラミリツが病室の前で立ち止まり ドアを見てから視線を落とし 溜息を付いてからノックをしようとする 同時にアースの声が室内から聞える

「本当に大丈夫なのか?アーヴィン」

ラミリツが疑問して声に耳を傾ける


室内


軍曹が振り返って言う

「ああ 大丈夫なのだ 実は昨日から 外出もしていた 屋敷に帰る事くらい なんとも無いのである」

アースが言う

「まぁ 屋敷には医師も居るからな 傷の手当てなどの心配は無いが」

軍曹が荷物を持とうとする アースがそれを先に取って言う

「車まで 私が持とう」

軍曹が苦笑して言う

「兄貴…」

アースが言う

「これでも お前が銃弾を受けた際は 私自身が 身動きが出来なくなるほどの 衝撃だったんだ」


部屋の外


ラミリツがハッとして視線を落とす 軍曹の声が聞える

「俺が無事であったのは 紛う事無く 少佐のお陰なのだ 少佐は1度ならず2度までも 俺の命を救って下された まさに 命の恩人なのである」

ラミリツが視線を戻す アースの声が聞える

「そうだな 神に与えられた兵士 守りの兵士であるお前は 攻撃をする事が許されない …そして、そう お前とは逆の 悪魔に与えられた兵士 攻撃の兵士である あの攻長閣下だが」

ラミリツがハッとしてドアから飛び退く ドアが開かれ 軍曹とアースが出てくる 軍曹がラミリツに気付いて一瞬疑問した後微笑して言う

「お?おおっ!ラミリツ攻長!この様な場所で会うとは 奇遇な!」

ラミリツが呆気に取られた後 不満そうに言う

「…アンタ やっぱ 馬鹿?静養施設にアンタが居て 僕と会うとしたら …奇遇なんかじゃなくて」

ラミリツがフルーツバスケットを突き出す 軍曹が疑問して呆気に取られる ラミリツがムッとして言う

「何発も銃弾受けといて たった5日で退院するとか… どんな体してるんだよっ …普通 死ぬんじゃない?」

軍曹がフルーツバスケットを見て気付いて言う

「むっ!?これはもしや 自分を見舞いに来てくれたのであるか?ラミリツ攻長!」

ラミリツが不満そうに言う

「…だから 気安く呼ぶなって 言ってるだろ …とりあえず 重いから 受け取ってよ」

軍曹が受け取ろうとしながら言う

「では 有り難く 頂戴するのだ!わざわざ 自分を見舞いに来てくれて 感謝する!」

ラミリツが言う

「僕は全然 来たく無かったんだけどね」

軍曹が呆気に取られて言う

「うむ?では 何故…?」

アースが 軍曹が受け取ろうとしていたフルーツバスケットを取って言う

「防長閣下は お怪我を負われている身の為 私が代わって 頂戴致します」

ラミリツがアースにフルーツバスケットを渡すと言う

「じゃ… 見舞いはしたから…」

ラミリツが立ち去ろうとする 軍曹が呆気に取られつつ 思い出したように言う

「う… うむ…?あ、ああっ!では また!陛下のお傍で!」

アースが言う

「攻長閣下 …不躾ながら 1つ御伺い致しても?」

ラミリツが立ち止まり 不満そうに言う

「…何?」

アースが微笑して言う

「ペジテの姫が 悪魔から得た兵士である 攻撃の兵士… またの名を 悪魔の兵士とされる 攻長閣下の胸には 神の刻印が刻まれている… と言うのは …本当なのでしょうか?」

ラミリツが反応する アースがラミリツの背へ言う

「攻撃の兵士は 本来 政府の信仰書 アールスローン信書に置かれる親兵攻長とされますが ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は その刻印を持つが故に 国防軍の信仰書アールスローン戦記に置かれる 悪魔の兵士としても 認められていると 伺ったのですが?」

ラミリツが言う

「…だったら 何?」

アースが苦笑して言う

「いえ、申し訳ありません ただ、私は そちらのお話は 物語の中だけの事と 思っていたもので… もし事実なら 神の刻印とは 一体どの様なものかと…?」

ラミリツが振り返り言う

「今ここで 裸になって アンタに見せろって言うの?」

アースが言う

「…いえ、滅相も御座いません 不躾な発言を 失礼致しました」

ラミリツが不満そうに言いながら立ち去る

「ああ、凄く 失礼だよ 気を付けた方が 良いんじゃない?」

アースが頭を下げたままラミリツを見送る 軍曹が呆気に取られたまま2人を交互に見る


医療施設を軍曹とアースが出てくる 出入り口前で待っていた執事が頭を下げ アースから荷物を受け取り 2人が高級車に乗り込む 執事が乗り車が発つ


【 車内 】


軍曹がアースへ言う

「兄貴 さっきのは…」

アースが言う

「ああ あの様子では 判断はし兼ねるが もしかしたら本当に 神の刻印を刻んでいるのかもしれないな…」

軍曹が不満そうに言う

「そうではない あの様な事を尋ねれば ラミリツ攻長が気分を害するのは 分かっていた筈なのだ 何故あの様な言い方を?」

アースが苦笑して言う

「ふっ… 相変わらず 優しいな アーヴィン」

軍曹が疑問する アースが軍曹を見て言う

「確かに少し 言い方にトゲがあったかもしれないが それ位は 仕方が無いだろう?彼は あのパレードでの襲撃の際 お前を置いて 1人で逃げ出したんだぞ?」

軍曹が表情を困らせて言う

「それは… 致し方なかったのだ 俺の盾が作り物であった様に ラミリツ攻長のあの剣も作り物で 刃すらない物を持たされていたのだ 従って…」

アースが言う

「そうであろうとも お前は陛下を守るため それこそ役名の通り 身を盾にした そうであるならば あの攻長とて同じく 陛下をお守りしようと 身を持って戦うのが当然だろう?」

軍曹が言う

「し、しかし 俺はレギスト… いや、国防軍の代表で あのパレードは国防軍が警護に当たっていたのだ だから 俺が陛下をお守りする理由はあるが 政府の代表であるラミリツ攻長は ご退避しても…」

アースが言う

「さっきの話を聞いていただろう?アーヴィン 彼は 確かに政府の代表ではあるが 同時に アールスローン戦記における攻撃の兵士だ 例え 国防軍が警護に付いていようとも 陛下を放って逃げ出すなどと言う事は 許されない」

軍曹が呆気に取られ視線をめぐらせつつ言う

「う…?え、えっと…?しかし その…」

アースが言う

「お前は確かに レギストでの訓練により あのような場面でも臆する事が無かったのかもしれない だが、彼がアールスローン戦記の記述を理由に 陛下の剣となったと言うのなら …神の刻印を持った 悪魔の兵士であるのなら 咄嗟の事態に 逃げるのではなく 戦うのが道理だ 違うか?」

軍曹がアースを見る アースが言う

「私のこの意見は 多くの者の意見でもある 現に あのパレードで 攻長が逃げ出した事は 皆が疑問し話題にもなった それでも、マスコミが騒がなかったのは 私がハイケル少佐への取材を止める手を打つ ずっと以前に 政府の者から 攻長閣下に関わる 全ての話題を取り立たさない様にと 多額の金が積まれていたとの事だった」

軍曹が呆気に取られる アースが軍曹へ向いて言う

「可能であるなら 本当に彼の胸に 神の刻印があるのか この目で確かめてみたいものだよ」

軍曹が視線を落とす アースが苦笑して言う

「まぁ… 難しい話だがな?」

車が走り去る


【 皇居 ラミリツの部屋 】


ラミリツが着替えをしながら溜息を吐いて言う

「はぁ… たく ホント めんどくさ… 何が神の刻印だよ こんなの…」

ラミリツがシャツのボタンを留めようとする手を止め 鏡を見る 鏡に映ったラミリツの姿 左胸心臓の近くにアールスローンの国印が刻まれている ラミリツが溜息を吐いて 着替えを続ける ドアノブが音を立てて開き シェイムが入って来て言う

「エーメレス 防長閣下の御見舞いには 行ったのか?先ほど その防長閣下が 御退院されたと」

ラミリツがシェイムへ向いて言う

「さっき行って来たー ちゃんと 兄上に渡された 見舞いのアレも渡してきたし」

シェイムが言う

「襲撃の際に お前が逃げ出した事への謝罪も してきたのだろうな?」

ラミリツが視線をそらし言う

「…それは」

シェイムがムッとして言う

「していないのか?」

ラミリツがシェイムを見上げて言う

「だってっ」

シェイムがラミリツへ平手打ちする ラミリツが悔しそうに顔を顰めてからシェイムへ向いて言う

「あれは 国防軍の!あいつの部下たちのせいだろ!?陛下や僕たちを守らなきゃいけないのに!あいつらが しっかりしないからっ!…それなのに 何で僕がっ!?」

シェイムが怒りラミリツに近付く ラミリツが怯え後ず去って言う

「…嫌だ ぶたないでっ」

シェイムが怒って言う

「お前のお陰で どれだけマスコミへ 金を積まされたのかっ 分かっているのかっ!」

ラミリツが言う

「だから 僕はっ お飾りの攻長になんか なりたくないってっ」

シェイムが強く平手打ちをする ラミリツが床に倒れる ラミリツが打たれた頬を押さえ涙を堪える シェイムが言う

「お前は 神の刻印を持つ 陛下の剣 攻長だっ …今後はお前に 本物の剣を所持させる もし、再び あのような事が起きた際は 今回の事を払拭するだけの働きをしろ 必ずだ!良いな!」

ラミリツが視線を落とす シェイムが出て行く ドアが閉められる


【 マスターの店 】


コーヒーカップを置いたハイケルが言う

「そうか …構わない」

マスターがコップを拭きながら言う

「だよな?お前なら そう言うと思った」

ハイケルが言う

「それより あいつの様子はどうだった?まだ 部隊には復帰出来そうに無いか?」

マスターが言う

「うーん 本人は相変わらず すぐにでも復帰したいって様子だったけどな 流石に 4発も食らってちゃ 声も張れない様子だった」

ハイケルが間を置いて言う

「…そうか …では当分先かもな あいつが叫ばない姿など 想像出来ん」

マスターが苦笑する ハイケルがコーヒーを飲んで立ち上がる マスターが言う

「もう戻るのか?」

ハイケルが言う

「あいつのお陰で 部隊の連中も やる気を出したらしい 昼休みも返上して 新たに始めた 第2訓練所の施設を 個人的に練習している 俺が遅れる訳には行かない」

マスターが微笑して言う

「第2訓練所の施設か~ あの施設は 割と良く出来てるよな 実戦でも 役に立つ事が多いし」

ハイケルが言う

「ああ…」

ハイケルがドアに手を掛けた時 マスターが思い出して言う

「あ、そうだ ハイケル」

ハイケルが疑問して振り向く マスターが言う

「その第2訓練所のデータを取った ディスクをだなぁ?どうやら俺は駐屯地を後にする時に 忘れて来ちまったみたいなんだが もし…」

ハイケルが気付き微笑して言う

「そのデータなら 今 マイク少佐が 大いに喜んで鑑賞している」

マスターが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う

「あらま …恥ずかしいねぇ 俺とお前の 熱い青春の1ページ」

ハイケルがうんざりして言う

「確かに あのデータを取るまでに行った 何千回という訓練には汗を掻いたが その言い方は止めろ …で、取り返して欲しいのか?」

ハイケルがマスターを見る マスターが少し考えてから顔を左右に振って言う

「う~ん… いや、そんなに喜んでくれているんなら 預けておいても良い ただ、少しデータの変更があるから… ん?ああ、そうか ハイケル」

ハイケルが疑問する マスターが微笑して言う

「これから言う俺の言葉を そのマイク少佐へ伝えてくれ お前自身は意味が分からないだろう C言語も入るが 良いか?」

ハイケルがマスターを見る マスターが何か言っている


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


マイクがキー入力をしている ハイケルが言う

「…それから 0100 001011 3684番目の プログラムも同じく変更 これで1.9秒のマイナス処理が成される」

マイクがPC処理を終わらせエンターを押す モニターに表示されているプログラムが更新され セット処理される マイクが言う

「よし完璧 …いやぁ それにしても 凄い!」

ハイケルが言う

「…良かったな そのデータファイルは マイク少佐に預けておいて良い と言っていたぞ」

マイクがハイケルへ向いて言う

「ああっ 失礼 それについては とても嬉しく有り難いと しっかり保管させて頂きますと お伝え下さい」

ハイケルが一瞬間を置いてから言う

「…了解」

マイクが言う

「私がさっき 凄いと言ったのは やはり ハイケル少佐の そちらの記憶力ですよ」

ハイケルがマイクを見る マイクが微笑して言う

「その言い方からして ハイケル少佐は C言語なんかは ご存知無いでしょう?」

ハイケルが言う

「ああ 管轄外だ」

マイクが苦笑して言う

「ええ、それなのに 難しいC言語は勿論 ただの数字と思っては 覚えきれない数字の羅列を 1つも間違えずに覚えていらっしゃるのですから」

ハイケルが言う

「…途中を変更しろと 言われる方が無理だ」

マイクが苦笑して言う

「本当に 凄い能力ですよ 羨ましい」

ハイケルが間を置いて立ち上がって言う

「…部隊の様子を見に行く 邪魔をした」

マイクが言う

「いえ とんでもない!重要な伝言を 有難う御座いました!…ああ、また 後で 隊員たちのタイムを取りに そちらへ伺いますので」

ハイケルが立ち去る マイクがPC操作を行う

 

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】


隊員たちがアスレチック式設備で訓練を行っている 隊員Aが倒れて言う

「ぜぇ…ぜぇ… た、タイムは?」

隊員Bが言う

「5分31秒44… ん~ 四捨五入すれば 6分だね?」

隊員Aが衝撃を受け 慌てて言う

「お、おいっ ちゃんと31秒44って書けよ!」

隊員Bが笑って言う

「にひひっ 分かってるって!」

隊員Aが起こしていた上体を倒して言う

「…けどよぉ」

隊員Bが記入をしてから言う

「うん?」

隊員Aが残念そうに言う

「…昨日は 初めてやってから3回で 26秒縮まったのに 今日は殆ど縮まらねーよ」

隊員Bが言う

「ああ… そうだねー?」

隊員Aが言う

「後6回くらい練習したら4分台になるかも!?だなんて 言ってたのにさ?未だに四捨五入したら6分だぜ?夢が遠ざかってく~」

隊員Bが苦笑して言う

「5分31秒44だろ?1秒ちょっと引いて 四捨五入すれば 4分台じゃない?がんばれって?」

隊員Aが呆気に取られ隊員Bを見る 隊員Bがストップウォッチを向けて言う

「次は俺の番だからなー?しっかり計測してくれよ?俺は少佐に追いつくより 軍曹と一緒に少佐を追いかければ良ーんだから!少佐に追いつけなくても 頑張るもんねー?」

隊員Aが苦笑して立ち上がって言う

「けど、少佐が言ってたのが本当なら 軍曹の方がタイムは速いって」

隊員Bが笑んで言う

「うーん それならー?俺たちは やっぱ少佐にも軍曹にも届かないけどー 軍曹はさー?なんか本人は速くても 俺たちに合わせて 一緒に走ってくれそうだからー?俺はその軍曹の足を 出来るだけ引っ張らないようにって したいんだよねー」

隊員Aが呆気に取られてから微笑して言う

「そうだな?軍曹なら そんな感じがする… うん、分かった 俺も もっと頑張るぜ!少佐に追いつくんじゃなくて 軍曹の足を引っ張らねー様に!」

隊員Bが笑んで言う

「そうそうー!」

隊員AとBが拳を突き合せ 隊員Bが向かいながら言う

「よーし!張り切って行くぞー!?」

隊員Aが苦笑して言う

「俺より遅いくせに…」

隊員Bが合図を送る 隊員Aが頷きストップウォッチを開始する 隊員Bが訓練を開始する 隊員Aが微笑して見ていると タイム計測ボードがスッと抜かれる 隊員Aが疑問すると ハイケルが隣に居てタイム計測ボードを眺めている 隊員Aが驚き慌てて言う

「しょっ 少佐ぁっ!?」

ハイケルがボードを見ながら言う

「そろそろ足止めの様だな」

隊員Aが敬礼して言う

「は、はっ!…も、申し訳ありません その… もっと 訓練を… 強化します!」

ハイケルが顔を上げ隊員Bを見る 隊員Bが訓練をしている ハイケルが言う

「お前はいつも バイスン隊員と組んでいるだろう」

隊員Aが言う

「はっ!はい」

ハイケルが隊員Aを見て言う

「では、その彼から お前の訓練を見た感想などは 聞いているのか?」

隊員Aが呆気に取られて言う

「え?…い、いえ タイムは訊いていますが…」

ハイケルがタイムボードを向けて言う

「それは これを見れば分かる事だ 仲が良いのなら尚更 相手の訓練を見て学び 共に注意し教え合う事で 互いの能力を上げろ …期待している」

隊員Aが驚く ハイケルが立ち去る 隊員Aがハッとして 慌てて敬礼して言う

「は、はいっ!有難う御座います!」

隊員Aが放心状態で立っている 隊員Bがやって来て苦笑して言う

「にっひひ~ また失敗しちったー 今の無しで… ん?どうした?」

隊員Aがぎこちない動きで隊員Bへ向いて言う

「き… 期待してるって…」

隊員Bが疑問して言う

「はぁ?」

隊員Aが隊員Bの両肩へ両手を叩き付けて叫ぶ

「やるぞっ!バイちゃん!俺らは 少佐に 期待されてるんだぁああ!!」

隊員Bが呆気に取られて言う

「え?…えっと~?一体どうしたんだ?」

隊員Aがストップウォッチとタイム計測ボードを隊員Bへ押し付けて言う

「バイちゃん!俺のを良く見てろ!あの4番目の設備を超えるには しっかり ロープを握ってる事が重要なんだ!やって見せるから!」

隊員Bが呆気に取られたまま受け取って言う

「う、うん… 分かった 見てる…」

隊員Aが走って行く 隊員Bが呆気に取られて言う

「どうしちゃったんだ?いつもなら 休憩したいからって 俺が失敗したら もう一度やらせるのに…」


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】


隊員たちが驚いて叫ぶ

「「えぇえええーーっ!?」」

隊員Aが笑顔で言う

「どうだ!?すげーだろ!?5分02秒32だぜ!部隊トップ記録!」

隊員Cが言う

「す、すげぇ… 俺なんて まだ5分40秒なのに」

隊員Bが言う

「アッちゃんは ホントすっげーよ 今日一日で 29秒12も縮めたんだ」

隊員Aが喜んで言う

「いやぁ~ 食堂の寂れた夕食が こんなに美味いのは 初めてだなぁ~」

隊員Cが落ち込んで言う

「負けた…」

隊員Aが言う

「いやあ!バイちゃんのお陰だって!俺の不得意だった 5、6、7番目の 魔の施設を越えるコツを 教えてくれただろ!?あれで一気にタイムが縮まったんだ!」

隊員Bが苦笑して言う

「アッちゃんは 上る系の設備越えが得意な分 地面を這う系のは苦手だったもんね?今でも5,6,7番目のだけなら 俺の方が速いもんねー」

隊員Aが笑んで言う

「んじゃ 明日は バイちゃんは1から4までの設備強化で 俺は5,6,7の訓練をもっと練習しよう!」

隊員Cが驚いて言う

「え?お前ら 全部通してのタイム計測をやってるんじゃないのか?」

隊員Bが言う

「最初はそうだったんだけどー?」

隊員Aが言う

「お互いの様子を見てたらさ 相手の不得意な設備が見えてきたんだ だから、全体の訓練ばかりじゃなくて その不得意箇所を てってー的に練習する方が良いんじゃねーかって で、少佐にそうして良いか 訊いたら 良いって言われたから」

隊員たちが衝撃を受け言う

「えっ!?」「お、お前らっ!?」「いつの間に そんなに 少佐と親しくなってたんだよっ!?」

隊員Bが言う

「俺も アッちゃんから 少佐に言われた言葉を聞いたときには びっくりしたけど… けど、そう言ってくれるって事は 俺たちから質問とかしても 良いかなーってー?」

隊員Aが言う

「そうは言っても バイちゃん やっぱ勇気あるよな?俺はびくびくしてたのに 正面から”少佐 お伺いしても宜しいでしょうか!?”って」

隊員Bが言う

「でも、お願い内容を全部言ったのは やっぱり アッちゃんだったじゃない?」

隊員Aが言う

「ああ 俺前に少佐を探しに 行かされた事があっただろ?その時 俺、一度少佐に怒られて… あ、いや 怒ってる少佐を見てさ …それで 分かったんだ 普段の少佐は 別に 俺たちが頼りなくて機嫌が悪い って訳じゃないんだな~って ホントに怒ってる時の少佐は …まじで こえーから …ははっ」

隊員たちが呆気に取られる 隊員Bが微笑して言う

「そうなんだ… あーけど、俺も今日 アッちゃんから聞いて 分かったよ 軍曹だけじゃなくて 少佐も俺たちの事 ちゃんと自分の部下として 見てくれてるんだって …なにしろ!」

隊員AとBが声を合わせて言う

「「”期待している” だもんなー!?」」

隊員AとBが大喜びで笑う 隊員たちが呆気に取られる サイレンが鳴る 隊員たちが驚く スピーカーからアナウンスが流れる

『緊急指令 緊急指令 国防軍16部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ 繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍16部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』

隊員たちが言う

「俺たちじゃなくて 16部隊だ」

「緊急指令って… まじかよっ」

「何があったんだろ…?」

隊員たちが顔を見合わせる


【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】


バックスが言う

「18時40分 先ほど 政府警察から 我々国防軍へ応援要請がなされた 犯人グループは人質2人を取り 現在 警察へ要求し手に入れた車両を使い 国道22号をメルヘ地区から南下中 間もなく16部隊の管轄である ランドム地区へと到達する …レムス少佐」

レムスが言う

「はっ!」

バックスがレムスへ向いて言う

「犯人グループが ランドム地区の何処かへと逃げ込む可能性がある あの地区には 廃墟となっている建物が多い そちらへ到達後は 16部隊の総力を挙げ 人質の救出 共に 犯人グループの拘束を行え」

レムスが言う

「了解っ!既に我が16部隊は 駐屯地を出発しております 現在は 部隊の一班が国道22号へ向かい 残りは 犯人たちが逃げ込む可能性のあるランドム地区一帯への配備へと 向かわせています」

バックスが頷き言う

「よし、それでは レムス少佐 君もすぐに合流したまえ」

レムスが立ち上がり敬礼して言う

「はっ!了解!」

レムスが立ち去ろうとする バックスが視線を変えて言う

「情報部は 16部隊の援護と 引き続き 犯人グループの行動 警察の行動 その他の情報を集めて置くように 以上だ」

バックスが立ち去ろうとする マイクが立ち上がって言う

「お待ち下さい バックス中佐!」

バックスとレムスが立ち止まりマイクを見る バックスが言う

「何だ?」

マイクが言う

「17部隊 レギストへも 是非 出動要請を!」

バックスとレムスが驚き レムスがムッとする


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


隊員たちがTVの前に集まっていて言う

「これじゃねーか!?」

「場所も 16部隊の管轄 ランドム地区に近付いてる!これだ!」

TVからレポーターの声が聞える

『…尚 先ほど送られた 犯人グループからの要求は 依然変わりなく ”人質を返して欲しければ 先日の陛下のパレードの際に 陛下から国民へ向けて贈られる筈であった 陛下の御言葉を 頂戴しろ これが果たされない場合は 我々は更なる人質を取って 篭城する” との事です』

隊員たちが驚き顔を見合わせ言う

「…陛下の… 熱狂的なファン とか?」

隊員が殴って言う

「馬鹿っ んな訳ねーだろ!?」

殴られた隊員が頭を押さえて言う

「いってぇ~ じゃ なんだよ?」

隊員が困って言う

「え?…そんなの …分かる訳ねーだろ?」

隊員たちが顔を見合わせる


【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】


マイクが言う

「ランドム地区の廃墟は とても数が多く 過去に大富豪が多く居た地域でもあるので ひとつひとつの建物が大きい事が特徴です 犯人たちが複数の建物を使っているとしたら 16部隊だけで それらを補う事は不可能です ですから 隣の地区を担当する レギストに応援を!」

バックスが考えて言う

「うーん…」

レムスがバックスへ向いて言う

「その必要はありませんっ バックス中佐」

バックスとマイクがレムスへ向く レムスが言う

「ランドム地区は 我々16部隊の管轄です 自分たちの管轄する地域の事は 自分たちが一番良く知っています そこへ 不慣れな他の部隊が入り込む事は 我々の足を引っ張る事とも なり兼ねません どうか、16部隊に ご一任を!」

マイクが言う

「しかしっ」

バックスが言う

「マイク少佐」

マイクがバックスを見る バックスが言う

「レムス少佐の言う事は一理ある 君の意見にも頷ける所はあるが 今回は16部隊に任せる」

レムスが敬礼する バックスが頷き言う

「行きたまえ レムス少佐」

レムスが言う

「はっ!ご期待に沿います!」

バックスが頷く レムスが部屋を出て行く バックスがマイクへ向いて言う

「マイク少佐 16部隊への援護を」

マイクが言う

「…了解!」

マイクが敬礼して立ち去る


【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】


TVからレポーターの声がする

『犯人グループは 国道22号から ランドム地区へ向かった模様で… あ、今入った情報です 警察は今回の事件を 国防軍へ委託 以後の犯人グループとのやり取りは 国防軍が行うとの事です …これにより』

ハイケルがTVを横目に ノートPCを操作すると モニターがボクシングの試合から 地図に切り替わる


【 皇居 】


警察車両が引き上げると入れ替わり 国防軍13部隊の車両が入り 隊員たちが出ると 皇居周囲の警戒に就く そこへ高級車が到着して 執事がドアを開けると 軍曹が降り立ち皇居を見上げ 間を置いて入って行く 国防軍隊員たちが敬礼する


女帝の間


軍曹が入ると気付き言う

「ラミリツ攻長…」

ラミリツが軍曹へ向いて ムッとして言う

「…あのさ 好い加減 その呼び方やめてくんない?」

軍曹がラミリツの言葉に一瞬疑問して呆気に取られた後 気を取り直して御簾の前にひざまずいて言う

「到着が遅くなりまして 真に持って 申し訳ありませんでありますっ 陛下!しかしながら 陛下の御身は 国防軍と我ら 陛下の剣と盾が 必ずやお守りするであります!」

ラミリツが呆れてため息を吐いて顔を左右に振る 軍曹が立ち御簾の左側へ立つと 気を切り替え ラミリツへ向いて言う

「では~?自分は何と ラミリツ攻長を お呼びしたら良いのか?」

ラミリツが衝撃を受けてから 不満そうに言う

「…同じ名誉なんだから 攻長と防長で 良いだろ?」

軍曹が疑問して言う

「うむ~?そうであろうか?それでは何とも味気ないのだ そうは思わぬか?ラミリツ攻長?」

ラミリツが衝撃を受けて言う

「だ、だからっ 気安く呼ぶなって言ってんのっ!アンタ 知らないの?役命の前に フルネームじゃない名前の一部を付ける事は 親しい間柄か 自分より下位の者に対してだけなんだよっ?…それとも何? 僕が アンタより 下位だって言いたいのっ?」

ラミリツが怒りの視線を軍曹へ向ける 軍曹が呆気に取られた後 笑んで言う

「自分とラミリツ攻長は 防長と攻長の間柄でなないか!それは 親しい間柄と言って 何も間違いは無い!ラミリツ攻長も遠慮なく 自分の事は ヴォール防長かアーヴァイン防長と呼んでくれ!…ああ!なんなら アーヴィンでも良いぞ!?あははははっ!」

軍曹が笑う ラミリツが衝撃を受け怒って言う

「誰がっ!アンタなんかとっ!」

役人がやって来て 軍曹に盾を渡す 軍曹が驚き言う

「これは…」

役人が言う

「盾です …今回は 作り物ではありません 防長閣下も こちらでしたら?」

軍曹が笑んで頷いて言う

「うむ!これで良い!これでこそ盾!盾とは こうでなくてはならんっ!」

軍曹が盾を持ち上げ 床へ着く 重い音が響く 役人が呆気に取られてから頭を下げて言う

「では 失礼致します」

軍曹が言う

「うむ!」

役人が下がり密かに言う

「あんなに重い盾を 軽々と…」

役人がもう1人の役人を見る もう1人の役人がラミリツへ剣を渡して言う

「こちらは 本物の刃物となります …どうか お取り扱いには 十分 お気を付け下さい」

ラミリツが剣を受け取って言う

「うるさいな 訓練なら受けてるよ 大きなお世話」

役人が頭を下げて下がる ラミリツが剣を確認してから軍曹を横目に見る 軍曹が満足そうに盾を眺めている ラミリツが不満そうに顔を背ける 軍曹が眺めていた盾を再び床に着ける 重い音が響く


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


情報部員が言う

「国防軍13部隊より伝達 防長閣下、攻長閣下のお二方が 皇居へご到着 13部隊は 陛下を含む3名を 引き続き 警護する との事です」

マイクがPCを操作してから 軽く息を吐いて言う

「16部隊への協力なんて言ってもなぁ~ それこそ 無線の調整程度だし …また ハイケル少佐のレギストと 任務をやりたいよなぁ…」

情報部員がマイクへ向いて言う

「あれ?少佐 この前のパレードで 物凄く緊張したから もう嫌だー って言ってませんでした?」

マイクが苦笑して言う

「うん~ まぁ 確かに あの時はそう思ったんだけど やっぱり あーやって 機動部隊と一緒に 任務に当たっていると 自分たちが必要とされているんだって 実感出来るからね?今にして思うと… 物凄く大変だけど 同じ位 やり甲斐があったよ」

情報部員が言う

「良いな~ 俺たちは あの時だって やっぱり 無線担当でしたから」

マイクが苦笑して言う

「もし、また ハイケル少佐から依頼を受けたら その時には君たちにも手伝ってもらうぞ?正直 私1人では 手に負えない パレードの警備でも 想像以上にやる事があったんだ 今回みたいな事件の時は きっと あれを遥かに越える 能力が要求されるはずだからね?」

情報部員たちが表情を明るめ顔を見合わせる マイクが言う

「さて、その時のためにも 今回の16部隊への協力で 練習しておこう!皆 ここからは 本番だと思って!」

情報部員が言う

「少佐~?今だって 本番ですよ?」

マイクが衝撃を受けて言う

「おっと そうだった よし!それじゃ 皆 気合を入れ直して行こう!」

情報部員たちが敬礼して言う

「はっ!」「了解!」


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


隊員たちがTVを見つめている TVからレポーターの声が届く

『現場上空からの中継です!犯人グループが逃げ込んだ ランドム地区のこの一帯は 廃墟が点在している地域であり 現在は 国防軍の指示により通行規制がなされている事もあり 日が落ちた今 辺り一面は暗闇に包まれています』

ハイケルが食堂に現れ コーヒーを用意し ふと気付いて休憩所へ目を向ける 隊員たちはTVに釘付けになっている 隊員が言う

「これだけ暗いと 犯人を見つけても 見えねーよな?」

「んじゃ 向こうだって こっちが分からないんじゃないか?」

「けど、向こうは 一応 国防軍が動いてるって知ってるんだろうし… 人質も居る以上 警戒してるだろうなぁ?」

「じゃ やっぱ 鉢合わせたら 戦闘になるだろうけど」

「相手が見えないんじゃ どうやって戦うんだ?」

「う~ん…」

隊員たちが悩む 隊員たちの後方で ハイケルが隊員たちを眺めコーヒーを飲む


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


情報部員が言う

「16部隊より通信 情報部へ対し 無線通信を要求」

マイクが言う

「16部隊 こちら 情報部 応答を」

レムスの声がスピーカーから聞える

『こちら16部隊レムス少佐だ 現在16部隊の使用出来る 無線周波数を教えてくれ』

マイクがPCを操作して言う

「そちらの区域で使用できる周波数は 18から21です 今それらの使用確認を」

レムスの声が届く

『では 18を使用する』

マイクが慌てて言う

「あ、待って下さい 今それらの使用確認をします!無線処理をしなと 盗聴される可能性もありますから!3分ほどで終わるので」

レムスの声が届く

『時間が無いっ 犯人グループの車両は 既に建物の前に到着した!犯人グループと人質と思われる人物らが 建物に入った事も確認している 隊員たちと連絡したい 全隊員へ周波数18を伝えろ』

マイクが言う

「しかしっ」

レムスが怒って言う

『早くしろ!現場は時間との戦いなんだっ』

マイクが表情を困らせて言う

「…了解 16部隊 無線周波数18を 各隊員へ通達!」

情報部員が言う

「はっ!無線周波数18を通達!」

情報部員たちがPCを操作し イヤホンマイクに言っている

「国防軍16部隊 無線周波数を18へセットせよ 国防軍16部隊 無線周波数を18へセットせよ 国防軍16部隊 無線周波数を18へセットせよ」


【 ランドム地区 】


犯人グループAが無線機を操作している チャンネルを変えているうちに 音声が聞える

『…防軍16部隊 無線周波数18確認 セット完了 これより作戦を開始する 犯人グループは ランドム地区 住所旧マイシュ通り 41K26の建物に逃げ込んだ 16部隊A班は建物の西へ B班は東へ回り 進入路を確保 C班は…』

犯人グループAが微笑し顔を向ける 顔を向けた先 仲間たちが頷き合い立ち上がる


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


隊員たちがTVの前に釘付けになっている ハイケルが後方に居るが皆気付かず言う

「ん?あの建物 今ちょっと光らなかったか?」

「え?どこどこ?」

「ほら、そこの画面右上の」

「あっ ホントだ 建物の周りにチカチカしてるな?」

「あれって… もしかして16部隊か?」

TVからレポーターの声が届く

『ん?…どうやら あの建物の様です!先ほどから 建物の周りに ちらちらと光が!どうやら 国防軍は あの建物に居るであろう 犯人グループへと 向かっている模様です』

ハイケルが顔を顰め 携帯を取り出しダイヤルする 隊員たちが心配そうに言う

「…なぁ?この映像ってさ?俺たち今 普通に見てるよな?」

「だよな?…それで 16部隊の様子が分かるって …やばくねぇ?」

ハイケルの携帯が着信し ハイケルが言う

「ハイケル少佐だ マイク少佐 何をしている?」

隊員たちが驚き 振り返って言う

「しょっ 少佐っ!?」「いつの間にっ!?」


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


マイクが驚いて言う

「え!?TV中継に 16部隊の状況が!?」

マイクが慌ててTVをつけ 呆気に取られる 携帯からハイケルの声が届く

『先にマスコミへ事件が知られている場合は 機動部隊が動く前に そちらへ手を回す事も情報部の仕事だ そんな事も知らないのか?』

マイクが表情を困らせて言う

「す、すみません…っ うちの情報部は 少し前にゴタゴタして そう言った詳細な引継ぎが行われないまま 現在に至っていまして…」

携帯からハイケルの声が届く

『言い訳は良い さっさとマスコミ各社へ連絡し 現場の映像を消させろ!』

マイクが慌てて言う

「は、はいっ!」


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


ハイケルが携帯を切る 隊員たちが呆気に取られた状態で顔を見合わせる TVの画像が切り替わり キャスターが言う

『では、ここからは 犯人グループが要求している 女帝陛下の御言葉 陛下の居られる皇居前からの中継です』

隊員たちがTVモニターへ向き直り言う

「あ、切り替わった…」

「もう現場の映像は 映らねーのかな?」

TVからレポーターの声が届く

『はい、こちらは 皇居前です 現在皇居とその周辺は 国防軍の部隊によって 厳重に警備がなされ…』

隊員たちが言う

「皇居前… 13部隊の連中か」

「犯人たちが陛下の 御言葉を聞きたがってるって事は 陛下の身も危険って事だもんな?」

「…なぁ?じゃぁ 陛下の盾である 軍曹も 今は あそこに居るのかな?」

隊員たちが密かに後方のハイケルを伺う ハイケルはTVモニターを見ながら考えている


【 皇居 女帝の間 】


ラミリツがあくびをする 軍曹が気付き不満そうに言う

「むっ?ラミリツ攻長っ?犯人たちがいつ陛下を狙って 来るやも知れぬ この様な時に あくびなどしていては 危険なのである!」

ラミリツが軍曹を見て言う

「あのさぁ?犯人も馬鹿だけど… アンタも相変わらず… だよ」

軍曹が衝撃を受け 不満そうに言う

「だ、だよ!?だよ とは 一体?」

ラミリツが呆れて言う

「はぁ… 兄上から言われてるから 仕方なく伏せてやってるのに…」

軍曹が疑問する ラミリツが言う

「考えても見ろよ?人質の1人や2人 捕まえたって あいつらの要求なんて 通る訳無いじゃん?犯人たちって 本気で 要求 通ると思ってるのかな?だとしたら 救いようの無い馬鹿だよ?」

軍曹が困って言う

「うむ!?…そうなのであるか?自分は 犯人たちは 本気で要求を通さんと やっていると思うのが 何故 1人や2人の人質では 本気に思われないのか?」

ラミリツが軍曹へ向いて言う

「だって?犯人たちの要求は 女帝陛下だよ?人質を取るとしたら もっともっと!それこそ1千人位の人質じゃないと 陛下には釣り合わないだろ?」

軍曹が衝撃を受け言う

「なんとっ!?…そ、そうであったのか 陛下に釣り合う人質の数は1千…」

ラミリツが呆れて言う

「…まじで言ってんの?」

軍曹が気を切り替えて言う

「いや!ともすれば 犯人たちはその事に気付き!1千の人質を取って 陛下を要求するかもしれん!やはり 自分たちは 気は引き締めて居るべきなのだっ!ラミリツ攻長!」

ラミリツが呆れて言う

「はぁ… もう良い… アンタ治らないや… やっぱ …だよ」

軍曹が衝撃を受けて言う

「やはり だよ であるのか!?…うむぅ… やはり 分からん…っ」

軍曹が考える ラミリツが呆れる 外が騒がしくなる 軍曹とラミリツが疑問し 軍曹が言う

「む?何やら 外が騒がしい様だが?」

軍曹とラミリツが出入り口へ視線を向け 軍曹が盾を握ると同時に扉が開かれ 軍曹とラミリツが身構える 沢山のフラッシュと共にTVカメラが向けられる 軍曹とラミリツが驚き呆気に取られる マスコミたちが軍曹とラミリツへカメラを向ける 沢山のフラッシュに 軍曹が眩しそうに目をそらす


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


TVモニターに 軍曹とラミリツの姿が映っている 隊員たちがTVを見ていて言う

「おおっ!軍曹だ!」 「軍曹ー!」

隊員たちがTVの映像に喜んで声を上げている ハイケルがTVの映像を見てから立ち去る 隊員たちが気付き ハイケルを目で追いながら言う

「少佐…」「何処行くんだろ?」

隊員たちが顔を見合わせる


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】



ハイケルがドアをノックしようとした手を止め その手でドアノブを回しドアを開ける 隊員たちが後方に負って来ていて その様子を見ていて顔を見合わせる


室内


ハイケルが入り周囲を見渡す マイクが情報部員へ言う

「レムス少佐の指示した場所を地図へ!」

情報部員が言う

「レムス少佐の指示した場所は 屋敷の見取り図には書かれていません」

情報部員が言う

「先ほど無線No43を使っていた隊員が 恐らく その位置だと思われる場所に 部屋があることを確認していました!」

マイクが言う

「え?え~と!それじゃぁ 見取り図に書き込みを!その位置から…」

スピーカーから声が聞える

『こちらB班!突入します!』

情報部員が言う

「B班が突入!」

マイクが言う

「よし!B班が突入した事を想定し マップに書き込みを!マップY21X11に居る予定の レムス少佐が突入と同時に… えっとぉ… 何するかなぁ?う~ん よし!それじゃ レムス少佐は B班の応援に向かう事を想定する!」

情報部員が言う

「了解 レムス少佐 B班の応援へ向かいます」

ハイケルがモニターに映っているマップを眺めて言う

「…私であれば B班の突入と同時に 人質の下へ向かう」

マイクが驚きハイケルへ向いて言う

「ハ、ハイケル少佐っ!?」

ハイケルがマイクへ向き言う

「ノックはしなくて良いと 言われた筈だが?」

マイクが苦笑して言う

「あ、はは そうでした!いえ、まだ 駐屯地にいらっしゃるとは 思っていなかったもので」

マイクが時計を見上げる 時刻は21時を過ぎている ハイケルが言う

「私の他にも 事件を気に掛け 未だ この駐屯地内に待機している隊員たちは居る」

マイクが呆気に取られて言う

「え?…そうだったんですか」

ハイケルが言う

「それで、このマップの様子は?…とても 16部隊の現状とは思えないが?」

マイクが衝撃を受け 苦笑して言う

「う…っ あ…ははっ やはり そう思います?」

ハイケルがマイクを見る マイクが表情を困らせて言う

「これでも 16部隊の無線を聞いて 私たちなりに 想像してみたんですがね?」

ハイケルが言う

「想像 とは?お前たちは今 16部隊の援護をしているのだろう?」

マイクが言う

「それはそうなんですが 最初の無線案内以来 全然… ハッキリって 我々は蚊帳の外です 元々16部隊の管轄である この地域の情報は 我々の下にはありませんでしたし 何とか 16部隊の無線にあった 住所を頼りに 過去のその屋敷の見取り図を探し出しては見たのですが… そこで展開されている 16部隊の班割り 作戦内容などが さっぱり分からないので 正直 お手上げです」

スピーカーからレムスの声が聞える

『こちらレムス少佐 B班に合流 C班!』

マイクが気付き言う

「お?あははっ レムス少佐は 私の想像通り B班に合流したみたいですね?」

ハイケルが不満そうに言う

「今しがた聞いたばかりで 現状は掴めないが… 人質の保護は最優先 隊長はよほどの理由が無い限り そちらへ向かうべきだ」

マイクが言う

「ほほー …では、今後の材料にさせて頂きます!」

ハイケルが苦笑する スピーカーからレムスの焦りの声が聞える 

『C班応答しろ!人質は保護はどうなったっ!?…C班!』

ハイケルとマイクが疑問し マイクが言う

「どうしたんでしょう?」

ハイケルが見取り図を見て言う

「この見取り図の この印の位置に 人質が居ると言うのは… これも想定か?」

マイクが見て言う

「いえ、確実とは言い切れませんが 無線を聞いていた限りでは 恐らく正しい位置になっていると思います 同時に 各班の突入箇所 正確な場所までは分かりませんが 方位に関しては間違いないので 人質に一番近い位置から入ったのは C班である事 これも 正しいと思います」

ハイケルが言う

「それなら B班と対面側から進入したレムス少佐が B班へ合流するよりずっと前に C班は人質の場所へと到達している C班から人質の確認を知らせる通信は無かったのか?」

マイクが真剣な表情で顔を左右に振って言う

「いえ…っ C班からの その連絡は」

情報部員がハッとして言う

「そう言えば… マイク少佐!」

マイクとハイケルが情報部員を見る 情報部員が言う

「C班からの通信は ずっと前に1度あったきり!他の班の通信は沢山あったのに 一番重要なC班からの通信が その1度きりというのは 可笑しくありませんかっ!?」

マイクがハッとして言う

「まさかっ!」

ハイケルが視線を強める マイクが慌てて通信マイクを使い言う

「レムス少佐!レムス少佐!こちら情報部マイク少佐!すぐに人質の確認をっ!同時に C班の現状を 直接 確認して下さいっ!」



隊員たちがドアに耳を付け中の様子を伺っている状態から 驚き 顔を見合わせ言う

「なんか… やばいらしい?」

隊員たちが神妙な表情で居る


【 皇居 女帝の間 】


朝日の柔らかな光が差し込む 御簾が照らされ やがて光が床で眠っているラミリツの顔に掛かる ラミリツが寝苦しそうに顔をゆがめてから 目を開き疑問して言う

「…れ?…えっと…?」

ラミリツが身を起こし周囲を見渡してからハッとして反対側を見る 軍曹が盾を頬杖状態にして居眠りしている ラミリツがそれを確認してから 軍曹の横へ行き 言う

「ねぇ… 起きれば?…ちょーダサいんだけど?その顔…」

軍曹は寝息を立てて寝ている ラミリツがムッとして言う

「僕に声掛けてもらいながら 無視?…このっ」

ラミリツが軍曹の盾を蹴る 軍曹がバランスを崩し後ろへ倒れる 盾がラミリツに寄り掛かり ラミリツが焦って言う

「うわっ ちょっ ちょっと…っ!重っ」

軍曹が起き上がり 苦笑笑顔で言う

「いやあ いかんいかん どうやら眠ってしまっていた… お?ラミリツ攻長?」

ラミリツが困り焦って言う

「は、早く 助け…っ」

軍曹が一瞬疑問した後 倒れ掛かっている盾を押さえて言う

「おおっ すまんすまんっ!盾を手放すとは!陛下の盾として 申し訳が立たん!」

軍曹が盾を引き寄せ一度持ち上げ 改めて床へ着く 重い音が響く ラミリツが溜息を吐いて言う

「…軽々と …まじ 信じられないんだけど …アンタ それでも ホントに怪我人なの?」

軍曹が気付き思い出した様に言う

「おお!そう言えば 声を張っても 痛みが走らんのだっ!どうやら すっかり 回復した様だ!よーし!これでレギストへ復帰出来るっ!いやあ!こんなに嬉しい事は無いっ!少佐ぁーっ!皆ーっ!自分はすぐに!戻るでありますーっ!わっはっはっはっはー!」

軍曹が嬉しそうに笑っている ラミリツが耳を塞いでうるさそうに言う

「ちょ うるさいなっ 陛下の御所だって事 忘れてんの!?」

軍曹がハッとして言う

「はっ!そうであった!陛下!早朝から騒ぎ立て致しましてっ 真に申し訳…っ!…うん?陛下は…?」

ラミリツが呆れて言う

「居る訳ないし… はぁー 事件 どうなったんだろ?TVも無くて状況も分かんないし 一体 いつになったら 屋敷に帰らせてもらえるんだよ?」

軍曹が困って言う

「うむぅ… 自分も 早速 レギストの早朝訓練に 向かいたいのだが…」

部屋の外が騒がしくなる 軍曹とラミリツが気付き 軍曹が言う

「む?…もしや また?」

ラミリツがムッとしてから 自分の持ち場に戻り剣をかざして立つ 軍曹がそれを見て 自分も盾をかざして身構える 一瞬の間の後 扉が勢い良く開かれ 無数のフラッシュとTVカメラが向けられる 警備の者たちが抑える中 記者たちが口々に言う

「防長閣下!防長閣下!」

軍曹が疑問する 記者たちが叫ぶ

「今回の国防軍の失態は どのようにお考えでしょうかっ!?」

「国防軍の失敗は 防長閣下も 既にご存知であられるかと!?それとも 防長閣下は 国防軍のそれら作戦には…!?」

「防長閣下!」「防長閣下!せめて一言だけでも ご感想を!」

軍曹が疑問して思う

(国防軍の失敗?一体…?)

記者たちが叫ぶ

「防長閣下!どうか ご感想を!人質2名と 国防軍の隊員8名 合わせて10名が犠牲となった 今回の任務は やはり 失敗であったと!?」

軍曹が内心驚いて思う

(なっ!?今のはっ!?どう言う事かっ!?国防軍の部隊員8名とは…っ!?それに 人質がっ!?)

軍曹は表情を変えず 正面を見据えているが人知れず汗が流れる ラミリツが横目に軍曹を見る


【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】


アルバート、ハイケル、マイク、レムスの前にバックスが立ち言う

「総司令官へ 敬礼!」

アルバート、ハイケル、マイク、レムスとバックスが敬礼する アースが言う

「まずは 昨日の部隊配備と作戦内容を 詳しく聞かせてもらおう」

バックスが敬礼して言う

「はっ!昨日の部隊配備と作戦内容を お知らせいたします!」

バックスが説明をしている ハイケルが正面を向いた状態で 横目にレムスを見る ハイケルとレムスの間に居るマイクが気付き 一度ハイケルを見てからレムスを見る レムスが表情を硬くしている マイクが僅かに表情を落としてハイケルへ視線を向ける ハイケルはマイクとは視線を合わせる事なく 再び正面を見据える マイクが視線を落とす


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


軍曹が驚き呆気に取られた後 表情を落として言う

「なんと… 酷い事が…」

隊員たちが表情を落として居る TVに映像が流れていて キャスターが言う

『…と、現場では 現在も 国防軍による現場検証が行われておりますが 依然 犯人の手掛かりになるような物は発見されておらず 今回人質の救助に向かい 犠牲となった国防軍の部隊 16部隊の1班8名と 人質であった2名の遺体の確認がなされた との情報以降は…』

軍曹がTVを見てから言う

「で、お前たちも少佐も 昨日からこの駐屯地で?」

隊員がぼそぼそと言う

「はい…」「何となく 帰る気になれなくて…」「俺らが居たって 出来る事も無いって 分かってるんですけどね」「はは… 何やってるんだろな?俺ら」

隊員たちが表情を落とす 軍曹が言う

「いや!何を言うっ!」

隊員たちが驚いて軍曹を見る 軍曹が言う

「お前たちは!例え別部隊であろうとも 16部隊の皆が任務に当たっている事を気に掛け この駐屯地に留まっておったのだ!お前たちのその思いは 真 レギストの!…いや!国防軍の仲間としての想い!自分は…っ 自分は その様な想いを持つ お前たちを 誇りに思うっ!」

隊員たちが呆気に取られた後顔を見合わせ 悔しそうに言う

「軍曹…」「軍曹ー!」

隊員たちが泣く 軍曹が言う

「えぇえい!泣くな!お前たちっ!16部隊の尊い犠牲はっ!必ずや 我ら国防軍が 晴らすのであるっ!」

軍曹が号泣する


【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】


アースが言う

「レムス少佐」

レムスが敬礼して言う

「はっ」

アースが言う

「16部隊の作戦 及び 部隊指揮は君が取っていたとの事だが バックス中佐は 情報部の力も利用するようにと命じていた 何故 君はそれを怠った?」

ハイケルとマイクがレムスへ視線を向ける レムスが言う

「はっ 情報部の力は 16部隊の無線周波数を 各隊員へ知らせるのに 利用させて頂きました」

アースが言う

「それだけか?」

レムスが言う

「はっ 以上であります」

アースが言う

「情報部の力は 無線管理だけではなく 地域の情報や 犯人たちの情報 更には 作戦過程においても あらゆる面に置いて 諸君の力となるものだ レムス少佐 君は16部隊を率いる者として その力を十分に 利用しなければならなかった」

マイクがハッとしてハイケルを見る ハイケルは正面を見据えている マイクが一度視線を落としてから レムスへ向く レムスが視線を落とした状態からアースへ向いて言う

「お言葉では御座いますが 総司令官 今回の事件の現場となった ランドム地区の情報は 我々16部隊が その全貌を把握しています 従って 地域の情報に関しては それらの情報を持たない 情報部より 我々の方が勝っています 自分はその事を既知であったが為 全貌を把握している 我々だけで行動を行いました!」

マイクが視線に悔しさを滲ませつつ視線を落とす アースが言う

「そのおごりが 16部隊C班の全滅を招いたのだっ その上 人質であった2名さえ 巻き込んでのものっ レムス少佐 現時刻を持って 君を16部隊隊長の任から除名する」

レムスが驚き 踏み出して言う

「お、お待ち下さいっ!総司令官!自分はっ 犠牲となった あいつらの仇を 取るまではっ!」

アースが言う

「共に 3ヶ月間の謹慎処分を言い渡す」

レムスが驚き呆気に取られ言う

「そんな…っ 犯人グループを追っている 今に…っ」

アースが言う

「アルバート中佐」

アルバートが敬礼して言う

「はっ!」

アースが言う

「16部隊の指揮権を しばらく君へ預ける」

アルバートが言う

「はっ!了解っ!総司令官!」

アースが視線を向けて言う

「ハイケル少佐」

ハイケルが一瞬驚き 敬礼して言う

「はっ」

アースが言う

「その顔色からして 昨夜からこの駐屯地にて 待機していたのだろう」

ハイケルが言う

「はっ 個人的な判断で 待機しておりました」

アースが言う

「それと、情報部へ連絡を行い メディアが事件現場の映像を 民法放送に流していたのを 止めさせたそうだな?」

ハイケルが横目にマイクを見る マイクがハイケルの視線に一瞬微笑してから視線を前へ戻す ハイケルが視線を戻して言う

「はっ …個人的な判断で 進言致しました 別部隊の作戦中に 独断を行い 申し訳ありません」

アースが言う

「いや、あれは正しい判断だった 私も メディアの映像を確認し 情報部のマイク少佐へ連絡を行った折 聞いた話だ 謝罪の必要は無い 良くやってくれた」

レムスが視線を怒らせる アースが視線を向けて言う

「バックス中佐」

バックスが敬礼して言う

「はっ」

アースが言う

「現在18部隊の行っている ランドム地区の後処理を 16部隊へ引継ぎ アルバート中佐の16部隊を用いて 18部隊処理の続きと 現場検証を行わせろ」

アルバートとバックスが敬礼する アースが言う

「犯人は今だ逃走中だ 同様の事件が起こる可能性も否定出来ない 事件の委託を返還した 政府警察への協力を惜しまず 警戒を続ける様に 以上だ」

バックスが言う

「総司令官へ敬礼っ!」

皆が敬礼する


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】


隊員たちが食事を取りつつ話している

「んじゃ 結局 駐屯地に泊まり込んでた その連中のお陰で 今日のレギストの訓練は休みになったって事か」

「ああ、いつも通り さっさと帰った俺たちの他の連中は 皆おねむだってさ」

「けど、訓練が終わったら帰るのは 普通だから 今日、元気に出隊した俺らって 別に悪く無いよな?素直に休みを共有しても 良いよな?」

「じゃ、午前の通常訓練も終わったし 昼飯食ったら 解散するか?」

「そうだな 少佐も軍曹も居ないんだ 俺らだけじゃ訓練所も使えねーし 帰るか!」

隊員たちが頷き合う


【 ハイケルの部屋 】


昼の高い光が部屋に差し込む ベッドの上でハイケルが寝息を立てている すぐ近くに携帯が置かれている


【 ハブロス家の屋敷 】


高級食にナイフとフォークが当てられる アースが言う

「高位富裕層 ハブロス家の者として 最下層の者である ハイケル少佐の事は 認めたくは無いが …国防軍総司令官として 私個人としては 彼を認めざるを得ない」

アースが高級食を食べる 向かい側 軍曹がムッとして言う

「兄貴 それはつまり どちらなのだ?俺は兄貴と共に ハブロス家を守りたいとは思っているが 兄貴がどうしても少佐を悪く言うとあれば 俺は…」

アースが言う

「ハブロス家を捨ててでも ハイケル少佐を擁護すると?」

軍曹が表情を困らせる アースが苦笑して言う

「…フフ 面白いな ハイケル少佐が 女性だとでも言うのなら お前の言葉も頷けはするが」

軍曹が言う

「そうではないっ 俺が言っているのは 兄貴や他の高位富裕層の者の様に 人を階級や何やらで 差別すると言う事が 気に入らんのだっ」

アースが料理に手を付けながら言う

「確かに 上流階級の者であれば 知識や能力もそれに付随すると言う考え方は もはや古い考えになりつつある しかし、現状は 未だに その考えが色濃くあると言う事も事実… これは私だけの意見ではない 分かってくれるだろう?アーヴィン」

軍曹が表情を落として言う

「う~む… では 兄貴はそれを俺に分からせて 何をしたいというのだ?」

アースが言う

「国防軍16部隊から17部隊レギストを含む18部隊までが 拠点とする 国防軍レギスト駐屯地だが… 元は国防軍大佐 サロス・アレクサー・レーベットが 総責任者を務めていた場所だ それがレーベット大佐が自害された事を機に 大規模な人員削減などが成され 総責任者が不在のまま 現在に至っている …そこで アーヴィン」

軍曹が疑問する アースが言う

「そのレーベット大佐が勤めていた 総責任者の地位に レギスト機動部隊 軍曹である方の お前を置いてみたいと 私は考えているんだ」

軍曹が驚いて言う

「なっ!?軍曹である自分が 総責任者!?」

アースが苦笑して言う

「もちろん、1駐屯地の総責任者となるからには 軍曹の軍階では有り得ない そちらのお前の軍階を 大佐 もしくは それ以上の軍階へ昇格した上での就任だ」

軍曹が表情を困らせる アースが食事に手を付けながら言う

「しかし、例えお前を ハイケル少佐の 直属の上官として置いたとしても お前はハイケル少佐に指示を出す事は無いのだろう?従って 何か事件が起こり 国防軍レギスト駐屯地が有する部隊を動かす事となった時には お前の命令の下で ハイケル少佐に総指揮を取らせる… これなら 実質 彼が全ての部隊の指揮を取る事となり 彼の持つ能力ならば 今回のような失態も 恐らくは無くなるだろう …どうだ?アーヴィン?」

軍曹が言う

「それならばっ わざわざ俺を 総責任者に仕立てる事などせず!少佐を 総責任者へ任命すれば 良いだけの話なのである!」

アースが言う

「ここまで言っても 分からないのか アーヴァイン?彼の階級では それが出来ないから 私は提案しているんだ この案は 言ってしまえば 彼のための提案だ」

軍曹が呆気にとらる アースが言う

「総責任者となった お前が 全ての指揮を ハイケル少佐へ委任すると言うのは 見る者が見さえすれば お前が無能であると言う事を示している それは 我らハブロス家の汚点とも なりかねない事だ しかし」

軍曹が考える アースが微笑して言う

「お前を陛下の盾に… 防長とする時も お前は分かってくれた アーヴィン お前は無垢ではあるが 愚かではない 私の言っている事の重大さを理解し 今回も…」

軍曹が顔を上げ 立ち上がって言う

「いや!俺は やはり 少佐の上に立つ事などは 出来んっ!」

アースがムッとして言う

「アーヴィン!私の言う事が聞けないのか?私は お前や ハイケル少佐の為にと」

軍曹が言う

「少佐の有能さは 俺は良く知っている!少佐ほど素晴らしい指揮官は 居られないのだっ!従って!きっと少佐は!御自分の力で 俺などより上へと上り詰める!俺や兄貴の画策など 少佐には 不要なのだっ!」

軍曹が立ち去る アースが間を置いて溜息を吐いて言う

「…上手くいかなかったか 今回もハイケル少佐をだしに使えば 軽く乗ると考えた私が 甘かったか…」

アースが気を切り替えて食事を進める アースの携帯が鳴る



軍曹がドアを出て立ち止まり 視線を落として言う

「…これで 良かったのだろうか?兄貴が折角少佐のためにと 考えて下さったのなら 俺が言った事は やはり間違えで…?」

軍曹が頭を掻いて悩み 気を取り直して歩き始めると 軍曹の携帯が鳴る


【 ハイケルの部屋 】


月明かりの差し込む部屋 ハイケルが寝返りを打つと 携帯が鳴る


【 ハブロス家 玄関前 】


高級車が止まる アースがエントランスから出てくると もう一台高級車がやって来て止まる 軍曹がエントランスから出て来る アースが最初の高級車のドア前に立ち 軍曹へ言う

「私は総指令本部へ向かう 陛下は頼んだぞ」

軍曹がもう一台の高級車のドアの前に立って言う

「陛下の御所には 外の様子を伺えるものが何も無いのだっ 役人たちは何やら隠している様子で信用ならん!兄貴」

アースが頷いて言う

「国防軍から人を送る お前にだけ情報を与えるようにと伝えておく 恐らく13部隊の者となるだろう」

軍曹が頷いて言う

「了解した!」

アースと軍曹が各々の車に乗り 車が屋敷を出て行く


【 夜道 】


ハイケルが歩きながら携帯の画面を見る 携帯の画面は受信メール画面 ハイケルが文章を見てから携帯をしまい 走り出す


【 国防軍レギスト駐屯地 正門 】


ハイケルが走ってやって来る 警備兵が敬礼して門を開ける ハイケルが警備兵たちを一瞥してから 再び走って中へ入る 警備兵が門を閉める


【 国防軍レギスト駐屯地 館内 】


ハイケルが通路を歩き 自分の執務室の鍵を開けようとしてふと気付き 通路の先へ顔を向けてから向かう


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】


隊員たちがTVに釘付けになっている ハイケルが食堂に現れ 隊員たちを見て微笑し向かう 隊員たちが話している

「う~ん 今回はまったく 現場からの映像は無しか」

「要求が同じって事は やっぱり同じ犯人だよな?」

「くぅ~ 気になって家を飛び出して来たは良いけど いくら国防軍の駐屯地だって TVは同じTVだよなぁ?」

「どうする?今回は ここの駐屯地の部隊でもないし… 俺らが徹夜して見てたって 明日はきっと通常訓練だ 寝不足で軍曹にしごかれたら 倒れるぜ?」

「とは言っても 家に帰ったって 気になって眠れねーよ 犯人は同じで また ”俺らの仲間が戦ってるんだ”」

隊員たちが神妙な面持ちになり言葉を止める ハイケルが言う

「そこまで言うのなら 付いて来い」

隊員たちが驚きハイケルへ向く ハイケルが歩き始める 隊員たちが顔を見合わせ頷き合いハイケルに続く 


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


通路


ハイケルが隊員たちを連れて 情報部のドアの前へ来て 振り返って言う

「ここで待っていろ」

隊員たちが敬礼する ハイケルがドアを開け入る


室内


マイクがPCモニターを見つめている ドアが開かれ ハイケルが入って来て言う

「マイク少佐」

マイクが驚き慌てて言う

「わっ!っとと ハ、ハイケル少佐?」

ハイケルがモニターを見て言う

「状況は?」

マイクが苦笑して言う

「今回は別駐屯地の任務ですからね こちらは 何とも…」

ハイケルが言う

「昨日と同じで良い 無線を傍受し そこから推測される情報を表示して欲しい」

マイクが頷いて言う

「ええ、一応 私もそのつもりで 彼らと共に待機中です」

マイクが言って情報部員たちへ視線を向ける ハイケルがその視線の先を見る 情報部員たちの殆どが待機している ハイケルが微笑し頷いて言う

「流石は レギストの情報部だ」

マイクが微笑して言う

「ええ!そうですとも!」

ハイケルが言う

「情報部がそうであるように 機動部隊の彼らも 集まっている」

マイクが驚いて言う

「えぇ!?別駐屯地の事件なのに?」

ハイケルが言う

「その彼らと私の為に 隣接するミーティングルームを開けて欲しい 共に情報の共有を」

マイクが微笑し言う

「了解!」

マイクが立ち上がり 引き出しから鍵を取り出すと 壁にある鍵穴に挿しスイッチを押す 壁がスライドして隣の部屋と繋がり マイクがハイケルへ向く ハイケル頷きドアへ向かう


特設ミーティングルーム


隊員たちが薄暗い部屋に入り 周囲を見渡す マイクがPCを操作すると 部屋の明かりがともり 同時に周囲に沢山のモニターが起動する 隊員たちが驚き呆気に取られて言う

「な…」「すげぇ~…」

隊員たちがハイケルを見る ハイケルがマイクの隣の席に座りモニターを眺めている 隊員たちが顔を見合わせた後 特設ミーティングルーム内に設置されている椅子へ向かい 各々腰を下ろす 情報部員が言う

「15部隊の通信を確認 レムル駐屯地情報部への着信を確認 …通信遮断されました」

マイクがPCを操作しながら言う

「う~ん…」

ハイケルが振り向いて言う

「どうした?」

マイクが苦笑して言う

「どうやら 無線傍受への対策を 取られてしまったみたいです」

ハイケルが言う

「レムル駐屯地が使用する周波数は 把握しているだろう?地域から特定して 同じ国防軍のコードを使用すれば 受信は問題ない筈だ」

マイクが言う

「そうは言われましても… レムル駐屯地は 国防軍の中において最も広い地域を担っているので 使用周波数の数は 一番多いんですよ 地域で区切ったとしても…」

マイクがPCを操作している ハイケルが間を置いてPCを操作して 通信マイクへ言う

「レムル駐屯地情報部 聞えるか こちら 国防軍レギスト駐屯地 17部隊隊長 ハイケル少佐だ」

一瞬の後 スピーカーから マックスの声が聞える

『こちら国防軍レムル駐屯地情報部主任 マックス大尉 ハイケル少佐 お久しぶりです』

隊員たちが呆気に取られ顔を見合わせる マイクが呆気に取られていると ハイケルが通信マイクへ言う

「任務支援中にすまない 今後の参考までに この事件の情報提供を願いたい 共に…」

スピーカーから マックスの声が聞える

『フフフ… マーガレット中佐が脱退されてしまったお陰で 我々の情報を盗み聞きする事が 出来なくなってしまったのですね?その様な堅苦しい言い回しは結構です ハイケル少佐』

ハイケルが顔を向ける スピーカーから マックスの声が聞える

『それに、もし私が断ったとしても 中佐のお力を得て どの道ご盗聴なさるおつもりでしょう?それでしたら 最初からしっかりとご覧に入れます 現国防軍において 最も優れているとされる 我らレムル駐屯地情報部の力を …とくとご覧あれ 現レギスト駐屯地 情報部のマイク少佐』

マイクが驚いて言う

「え!?何故… 私の事を」

スピーカーから マックスの声が聞える

『フフフ…』

マイクが表情を困らせる マイクの前のモニターに情報が転送され 次々に各モニターがハックされる 隊員たちとマイクが驚いて呆気に取られる スピーカーから マックスの声が聞える

『とは言え 余計な手出しをされては困りますので こちらの作業を全て見せる代わりに 貴方方の行動は止めさせてもらいます どうぞ ごゆっくりご鑑賞を』

ハイケルが視線を向けずに言う

「明日から情報部のセキュリティを強化させろ」

マイクが言う

「は、はい…」

モニターと共にスピーカーから 15部隊の状況とレムル駐屯地情報部の通信や情報が送られる 情報部員と隊員たちが呆気に取られる ハイケルが無表情に見聞きしている マイクが人知れず両手を握り締めモニターを見つめている ハイケルが気付き一度視線を向けてからモニターへ視線を戻す


【 皇居 女帝の間 】


ラミリツと軍曹が定位置で構えている 13部隊長が現れ敬礼してから軍曹の下へ行き耳打ちする ラミリツが横目に見て表情を顰める 軍曹が一瞬反応してから わずかに微笑し頷いて言う

「うむ!良くやったと伝えよ!」

13部隊長が敬礼して言う

「はっ!」

13部隊長が立ち去る ラミリツが言う

「…何?今の」

軍曹が微笑して言う

「うむ!良い知らせである!我が国防軍の15部隊が 事件を無事解決!人質を救助し 且つ 犯人グループを取り押さえたとの事なのだ!」

ラミリツが一瞬呆気に取られた後 視線をそらして言う

「ふーん…?けどそれって 普通 当たり前の事じゃない?その為の 国防ー軍だろ?」

軍曹が苦笑して言う

「まぁ そうとも言うが 実際には そんなに簡単な事ではないのである!自分はまだ 実戦の経験は無いが 話を聞いただけでも 大変な事なのだ!」

ラミリツが言う

「ふーん… まぁ良いや これで 屋敷に帰らせてもらえるんだろ?床で寝るなんて もう 二度と御免だね」

軍曹が苦笑して言う

「あれは 自分やラミリツ攻長が 居眠りをしてしまったのであって 本来は 警護の途中で寝ってしまっては いけないのである!」

ラミリツがムッとして顔をそらす 軍曹が苦笑する


【 皇居 前 】


高級車がやって来てエントランス前に止まり ドアマンがドアを開けて待つ 軍曹がエントランスに現れると 遠くからフラッシュが焚かれカメラが向く中レポーターが叫ぶ

「防長閣下!防長閣下!」「国防軍15部隊が 犯人たちを拘束したとの事ですが!」「防長閣下!一言!」

軍曹が一度マスコミに視線を向けるが 無言で車に乗り込み 車が発車する マスコミたちが追って取材をする中 高級車がやって来てエントランス前に止まる ラミリツがエントランスに現れると 遠くからフラッシュが焚かれカメラが向く中レポーターが叫ぶ

「攻長閣下!攻長閣下!」「国防軍から護送された 犯人グループは現在政府警察にて 取調べを受けているとの事ですが」「攻長閣下!この度の国防軍の働きへ 一言!」

ラミリツがムッとして言う

「…当然の事でしょ」

執事がドアを開け ラミリツが車に乗り込む マスコミたちが追って取材する中 車が発進する


【 国防軍総本部 総司令官室 】


アースがTVを見ていて 苦笑して言う

「当然の事…か ふふ… 子供が 生意気を言ってくれる」

電話が鳴る アースが受話器を取り言う

「…ああ、何か分かり次第 こちらにも情報を伝えて貰えるよう 政府警察へ… いや、政府長官へ 私の名を使って送って置いてくれ 今回の事件では 人質2名と共に 我が国防軍の尊い犠牲があった そちらの言葉も 添えるように」

アースが受話器を置き 気分を切り替えて言う

「さて… これで 国防軍レギスト駐屯地の問題も 一時休止か… 良い切欠になると思ったのだがな…?」

アースがノートPCを終了させる モニターに表示されていた ハイケルのプロフィールが消える


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】


軍曹が叫ぶ

「少佐へ敬礼っ!」

軍曹と隊員たちが敬礼し 軍曹が言い掛ける

「おはようござ」

隊員たちが軍曹の声を掻き消す大声で叫ぶ

「お早う御座いますっ!少佐ぁっ!」

軍曹が呆気に取られる ハイケルが敬礼を返して言う

「お早う」

軍曹が衝撃を受けハイケルを見る ハイケルが言う

「昨夜 この駐屯地に駆け付けた隊員たち ご苦労だった」

軍曹が驚く 隊員たちの一部(1班)が敬礼する 敬礼していない隊員たち(2班)が驚いて 1班を見る ハイケルが言う

「まずは全員で通常訓練を行え」

1班が敬礼して叫ぶ

「はっ!」

ハイケルが言う

「軍曹」

軍曹がハッとして敬礼して言う

「はっ!少佐ぁ!」

ハイケルが言う

「具合はどうだ?」

軍曹が一瞬呆気に取られた後気を引き締めて言う

「はっ!ご心配をお掛けしました!もう完全に大丈夫でありますっ!」

ハイケルが言う

「そうか では 彼らと共に訓練を行い 終了次第 私へ知らせろ」

軍曹が敬礼して言う

「はっ!了解いたしましたぁー!少佐ぁー!」

ハイケルが言う

「訓練を開始しろ」

軍曹が敬礼したまま言おうとする

「は」

1班が軍曹の声を掻き消し 敬礼して叫ぶ

「はっ!了解っ!」「通常訓練の1 開始ーっ!」

1班が気合の入った腕立てを開始する 2班と軍曹が呆気に取られる ハイケルが立ち去る 軍曹がハイケルの背を見ながら言う

「な… 何があったのだ?自分が居らない間に…」

軍曹が呆気に取られたまま1班を見て 再びハイケルの後姿を見てから 笑んで言う

「うおぉおおっ!自分もーっ!負けては居れんのだぁああっ!」

軍曹が1班を越える腕立てを開始する 2班が呆気に取られて言う

「す…」「すげぇ…」「流石 軍曹…」「で、あいつらの方は?」

2班が1班の面子を見る 1班のメンバーが軍曹を見て更に気合を入れて腕立てをする


軍曹が立ち上がり叫ぶ

「どうしたーっ!お前たちっ!まだまだぁーっ!」

2班が腕立てをしている 軍曹の後ろに1班が立っていて叫ぶ

「まだまだぁーっ!」

軍曹が衝撃を受け驚いて振り返る 1班の面子が気合の入った表情で言う

「軍曹っ!自分らも終了しましたっ!」

「軍曹っ!通常訓練の2が開始されるまでの間 自分らへご指示をっ!」

軍曹が呆気に取られた後 強く笑んで言う

「よぉおし!お前たち!通常訓練の2に先んじて 駐屯地周回 40週を与える!自分に続けー!」

1班が敬礼して叫ぶ

「はっ!有難う御座います!軍曹っ!」「軍曹に続けーっ!」

軍曹と1班が走り去る 2班が腕立てを止めて言う

「軍曹が…」「増殖した…」

2班が呆れの汗をかく


【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】


入り口のドアを開き ハイケルが入って来る ハイケルが周囲を見渡す しんとした室内 真剣な表情の情報部員たちがひたすらタイピングを行っている ハイケルがそれを見渡してから 視線を向けた先 マイクが真剣にタイピングを行っている ハイケルがマイクの横の席に腰を下ろし PCを起動させる


PC本体に付けられているメモリースティックが抜かれる ハイケルがそれを確認してから PCを終了させ視線を隣へ向ける マイクが真剣に考えつつタイピングを行っている


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】


2班が倒れている 軍曹が叫ぶ

「えぇえいっ!お前たちっ!お前たちはそれでもっ!」

1班が言う

「軍曹っ!通常訓練は全て終了しましたっ!」

軍曹が衝撃を受け1班へ振り返る 1班が言う

「軍曹!少佐へ 終了のご連絡をっ!」

軍曹が一瞬反応してから表情を困らせて言う

「う、うむぅ~ しかし…」

軍曹が2班を見る ハイケルがやって来て言う

「終了したか」

軍曹がハッとする 1班が敬礼して言う

「終了しましたっ!少佐ぁっ!」

ハイケルが言う

「よし、では」

軍曹が言う

「少佐っ!」

ハイケルが軍曹へ向いて言う

「どうした 軍曹」

軍曹が敬礼して言う

「はっ!お言葉の途中で 申し訳ありませんっ!しかしながらっ こいつらは」

ハイケルが1班と2班を見てから 軍曹へメモリースティックを渡す 軍曹が疑問しつつ受け取りながら言う

「こ…これは?」

ハイケルが言う

「昨夜の事件を記録したものだ 君を含め 昨夜駐屯地に居なかった隊員たちと共に そちらを確認しろ ミーティングルームの使用許可は得てある」

軍曹が敬礼して言う

「はっ!了解っ!」

ハイケルが1班を見る 1班のメンバーがハイケルへ強い意志を向けている ハイケルが言う

「その外の者は 第2訓練所にて 設備を使った訓練を行う 直ちに向かい 各自訓練を開始しろ」

1班が敬礼して言う

「はっ!了解っ!」

1班が走って向かう 軍曹が1班の後姿を見送る ハイケルが立ち去る 軍曹がハイケルの後姿を見送ると 2班が立ち上がり軍曹のそばへ行く 軍曹が言う

「一体 どうなっておるのだ?」

2班が言う

「さぁ…?」

軍曹がメモリースティックを見て疑問する 


【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】


1班メンバーが必死に訓練をしている ハイケルがそれを見ている


【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】


PCにメモリースティックがセットされている 軍曹と2班がそれを確認する メンバーの1人がPCを操作し 映像が流れる レムル駐屯地情報部が的確な指示を出す 15部隊がキビキビと任務を遂行している

 

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】


隊員Aが安定して着地する 隊員Bがストップウォッチを切り タイムを見て驚く 隊員Aが隊員Bの下へ来るとハッとして敬礼する 隊員Bが疑問すると 隣に居たハイケルが言う

「上出来だ」

隊員Bが振り向き驚く 隊員Aが一瞬呆気に取られた後 喜んで言う

「はっ!有難う御座いますっ!少佐!」

ハイケルが立ち去る 隊員Bが呆気に取られている 隊員Aが大喜びで言う

「バイちゃん!タイムは!?タイム~~!少佐に褒められちゃった~!」

隊員Bが苦笑しながら見せて言う

「う、うん…」

隊員Aが衝撃を受けて言う

「…え?」

隊員Bが苦笑して言う

「5分12秒32… この前より… 10秒 遅いんだけどなぁ?」

隊員Aが衝撃を受け言う

「え~~っ!?そ、そんなぁ…」

隊員Aが落ち込んでいる 隊員Bが苦笑して言う

「まぁまぁ、5分02秒32も 5分12秒32も 四捨五入すれば 同じ5分じゃない?落ち込むなよ?」

ハイケルの前に1班が集まる 1班のメンバーが呼ぶ

「おーい お前らー 集合だー!」

隊員Aと隊員Bが慌てて集合に加わる ハイケルが言う

「お前たちは 全員合格だ 今は居ない隊員たちとは異なり 午後からは特別訓練を行う 休憩が終わり次第 車両保管所へ集合しろ 以上だ」

1班が敬礼して言う

「はっ!了解しましたっ!少佐っ!」

1班がバラける ハイケルが立ち去ろうとすると 隊員Aが言う

「あ、あのっ!少佐!」

隊員Bが驚く ハイケルが気付き 向き直って言う

「何だ」

隊員Aが言う

「じ、自分は!休憩時間を返上し もうしばらく この場所の訓練を続けても 宜しいでしょうかっ!?」

ハイケルが言う

「…それは構わないが 私から見て お前にこれ以上 この施設を使った訓練は 必要ない」

隊員Aが言う

「自分は以前 先程よりも10秒以上早いタイムを出せていました 今日のタイムが遅いと言う事は 何か失敗があったのだと… 自分は!それを確認し修正したいと思います」

隊員Bが隊員Aを見つめる ハイケルが隊員Bを見て言う

「バイスン隊員」

隊員Bがハッとして言う

「は、はいっ!?」

ハイケルが言う

「先ほどの アラン隊員の訓練について 感想を言え」

隊員Aが驚き疑問する 隊員Bが一瞬焦った後 思い出すように言う

「は、はっ!了解… えっと… 自分が思いますに 先ほどのアラン隊員の訓練は 全体的に安定していて …無駄な力を 一切使っていなかった様に 思います」

隊員Aが驚く ハイケルが言う

「その通りだ」

隊員Aがハイケルを見る ハイケルが言う

「機動部隊の訓練は 競技ではない 必要なのはタイムより 各施設を越えるのに必要とされる知識 それを基にした安定性だ スピードを重視するあまり 体力を浪費するのでは意味が無い」

隊員Aがハッとして 以前の自分の姿を思い出す ハイケルが微笑して言う

「分かったか?」

隊員Aが敬礼して言う

「はっ!分かりました!ご指導を有難う御座います!少佐!」

ハイケルが言う

「礼なら バイスン隊員へ言え …それと 午後の訓練はハードなものになる 休憩は得ておくべきだろう」

ハイケルが立ち去る 隊員Aが敬礼して言う

「はっ!了解いたしましたっ!少佐っ!」

隊員Bが呆気に取られている 隊員Aが喜んで叫ぶ

「うおぉおお!聞いたかーっ!?バイちゃん!?」

隊員Bが呆気に取られたまま言う

「う、うん…」

隊員Aが隊員Bへ向いて言う

「バイちゃん!…ありがとお~~っ!!」

隊員Aが隊員Bへ抱き付く 隊員Bが衝撃を受け 嫌がって叫ぶ

「ぎゃーっ 何すんだっ!気持ち悪いっ!離れろっ!離れろってー!」

隊員Aと隊員Bが絡んでいる


【 マイルズ地区 郊外 】


1班が建物内 訓練を行っている 隊員Aが銃を持ち 壁を背に 先を伺いながら警戒し進む 部屋の中に隊員Bが隠れていて 外を確認し飛び出した瞬間 隊員Aと隊員Bが鉢合せになる 隊員Aが思わず言う

「うわぁああっ!び、びっくりしたぁ」

隊員Bが尻餅をついて言う

「お、俺も…っ」

隊員Aが苦笑し隊員Bへ手を差し伸べる 隊員Bが苦笑してその手を取って立ち上がると言う

「訓練でも こんなに驚くって言うのに… 15部隊の連中… すごいよなぁ?」

隊員Aが言う

「ああ… 俺なんて 実戦だったら ここに来るまでに 3回は撃たれてる」

隊員Bが言う

「あー それじゃ 後1回は大丈夫なんじゃない?」

隊員Aが苦笑して言う

「俺は軍曹じゃないんだから 1回で無理だって」

隊員Aと隊員Bが笑い 隊員Bが言う

「ねぇ?ここからは 2マンセルでも良い?俺、正直 1人じゃもう神経持たないんだ 頼むよー」

隊員Aが微笑して言う

「ああ、俺もその方が良い 点数下がるけどな?」

隊員Bが言う

「うん 2マンセルで半分だけど 2人で倍倒せば 同じ!」

隊員Aが言う

「ああ!そうしようぜ!」

隊員Bが言う

「よし!後ろは任せろ!」

隊員Aが苦笑して言う

「…って 後ろかよ?まぁ良いか よし!後ろは任せた!行くぜ?」

隊員Bが頷き2人で向かう


【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】


ノートPCにメモリースティックが付けられていて ハイケルがモニターを見ている 軍曹が居て ハイケルが言う

「君に任せた方の隊員たちは どうだった?」

軍曹が敬礼して言う

「はっ!…その 彼らは…」

ハイケルが軍曹を一瞥してから モニターへ視線を戻して言う

「思わしくなかったか」

軍曹が衝撃を受け慌てて言う

「うっ あ、い、いえ…っ」

ハイケルが言う

「君の反応を見れば分かる」

軍曹が一度視線を落としてから 改めて言う

「いえっ!彼らは 15部隊の… そちらの映像を見た事よりも …少佐が」

ハイケルが軍曹へ視線を向ける 軍曹が視線をそらす ハイケルが言う

「私が何だ?」

軍曹が困ってから改めて言う

「いえっ!自分はっ!レギストへ復帰しましたがっ!少佐や 少佐と共に別訓練を行った連中と!共に 訓練が出来ずっ 少々 …残念に!思いましたでありますっ!」

ハイケルが軍曹を見る 軍曹がハイケルを見続ける ハイケルが言う

「分かった」

軍曹が疑問する ハイケルが言う

「明日は 全員で同じ訓練を行う」

ハイケルが席を立つ 軍曹が言う

「少佐っ」

ハイケルが立ち止まる 軍曹がハイケルへ向いて言う

「何故 隊員たちを 2班に振り分けるのでありますか!?」

ハイケルが言う

「…私が振り分けた訳ではない 彼らが」

ハイケルが軍曹へ向いて言う

「自ら戦いの意志を示した 私はその彼らと共に 戦う事を選ぶ」

軍曹が驚く ハイケルが言う

「もちろん 他の隊員たちも 同じレギストの仲間だ 共に戦いはするだろう だが 先行隊員となるか それ以外の者になるかは大きな問題だ それを見極める」

ハイケルが立ち去る 軍曹が間を置いて視線を落とす


【 マイルズ地区 郊外 】


ハイケルが言う

「これより 訓練用蛍光弾を使用した 実戦模擬訓練を行う 昨日この施設を確認した班は 犯人グループの役を行え 他の者は この施設へ逃げ込んだ 犯人グループを拘束する事を目的とする 但し 犯人グループとの戦闘になった際は 他の隊員との無線を使用し 残りの犯人グループの人数を確認 必要最低限の犯人数が確保される場合は その他犯人グループの射殺もいとわない」

隊員たちが驚く ハイケルが言う

「これは 実戦においても言える事だ 訓練用蛍光弾を身に受けた者は その場で倒れ 仲間の救護を待て 仲間の救護を行うか 犯人グループの拘束を優先するか それは 君たちへ任せる 以上だ …訓練を開始しろ」

1班が敬礼して言う

「はっ!」

2班が遅れて敬礼し 隊員たちが施設へ向かう 軍曹がハイケルへ向いて言う

「少佐 自分は…?」

ハイケルが言う

「加わるのなら 後攻部隊へ加われ だが…」

ハイケルが横目に軍曹を見る 軍曹が疑問する ハイケルが言う

「君は攻撃出来るのか?」

軍曹が呆気に取られる ハイケルが言う

「実戦において 私は 君を投入する事はしない」

軍曹が驚いて言う

「なっ!?」

ハイケルが苦笑する

「何を驚く 防長閣下?」

軍曹が一瞬間を置いてから気合を入れて言う

「いえっ!自分はっ アーヴァイン軍曹でありますっ!従いまして!後攻部隊と共に 訓練に励むでありますっ!」

軍曹が敬礼してから走って向かう ハイケルが間を置いて向かう


施設内


隊員Aが表情を怒らせて言う

「このーっ!」

隊員Aが銃を放つ 隊員が蛍光弾を受け倒れる 隊員Aがニヤリと笑んで言う

「へっへーん 少佐に一目置かれている このアラン様をなめたら…」

隊員Aの胸に蛍光弾が当たる 隊員Aが呆気に取られる 隊員Bが衝撃を受け叫ぶ

「ぎゃーっ!アッちゃんがやられたー!?」

隊員Aが呆気に取られて視線を向ける 隊員Cがニヤリと笑んで言う

「やりぃ!」

隊員Aが言いながら倒れる

「やーらーれーたー…」

隊員Aが倒れる 隊員Bが慌てて呼びながら駆け寄る

「アッちゃんっ」

隊員Aが言う

「馬鹿っ!来るな!お前までっ」

隊員Bが隊員Aへ向かうと 隊員たちが銃を撃ちまくる 隊員Bが怒って言う

「よくもアッちゃんをー!」

隊員Bが銃を乱射する 隊員たちが驚いて言う

「ま…まじかよ…?」

隊員たちが自分の受けている蛍光弾を確認して倒れる 隊員Bが蛍光弾を受けていない自分の体を見てから驚いて言う

「見たか!アッちゃん!仇は打ったぞー!」

隊員Aが怒って言う

「お前っ 俺の死体を盾にしただろーっ!」

隊員Aが蛍光弾だらけになっている 隊員Bが笑って言う

「にひひっ バレた?」


別場所


軍曹が銃を持って言う

「よし!では 自分が先行するっ!お前たちは 自分の無事を確かめたら 付いて来るのだっ!」

軍曹の後方に居る隊員たちが頷く 軍曹が言って駆け出す

「行くぞーっ!」

軍曹が通路の先へ出て銃を構える 1班の隊員が居て ハッとして軍曹へ銃を向ける 軍曹がハッとして銃を撃とうとするが指が動かない 軍曹が驚いて思う

(指がっ… 動かんっ!?)

軍曹の後方に居た隊員Xが飛び出して来て叫ぶ

「軍曹ーっ!」

飛び出した隊員Xが銃を撃つのと同時に 1班の隊員が銃を撃ち 2人が相撃ちになる 軍曹が焦って言う

「なぁっ!?な、何故飛び出して来たっ!?自分はっ!自分の無事を 確かめてから来いとーっ!」

隊員Xが 軍曹を見上げて言う

「す、すみません軍曹 自分は… つい 軍曹を助けたいと…」

隊員Xが倒れる 軍曹が泣きながら叫ぶ

「うおぉおおーーっ!何と上官思いなぁあ!死ぬなぁっ!必ず助けるーっ!待っておれーっ!」

軍曹が隊員Xを担いで走って行く 残された隊員と1班の隊員が呆れて言う

「す… 凄い まるで 実戦の様だ…」 「ああ… 訓練に見えない」

軍曹が走り去った場所を ハイケルが腕組みをして見ている


【 政府警察 拘留所 】


シェイムが見下ろして言う

「国防軍の部隊など 取るに足らないのではなかったのか?」

拘束された犯人たちが顔を上げる リーダーが言う

「くっ… 先日の国防軍16部隊が 余りにも余裕だったから …油断したんだっ」

シェイムが言う

「言い訳なら もっとマシなものを用意したまえ …君たちに残された道は2つだ このまま ここで国防軍16部隊の8名と人質2名 合わせて10名の命を奪った殺人犯として 実刑を受けるか もしくは…」

リーダーが言う

「依頼は必ずやり遂げるっ」

シェイムが言う

「分かっているのなら結構 次の策を用意した …言って置くが 今度こそ 失敗は許されない」

犯人たちが焦りの表情を見せる シェイムが苦笑して言う

「だが 安心しろ 今までとは違い 人質も篭城も不要 …簡単なお芝居だ」

犯人たちが疑問し顔を見合わせる


【 マスターの店 】


マスターが作業をしながら言う

「へぇ~ 遂に実戦模擬訓練に突入か 懐かしいね~?」

ハイケルが言う

「明日からは 以前良く使用していた マイルズ郊外にある あの屋敷跡を使う だが今度は レギスト機動隊員60名を使っての大掛かりなものだ 俺とお前… いや、実際には俺1人であった あのバーチャル模擬訓練とは 違う」

マスターが苦笑して言う

「しょうがねーだろ?あの頃は 俺とお前の2人しか居なくて いつも部隊訓練が終わった後に こっそり行ってやってたんだ 見回りの管理人じーさんに ヒヤヒヤしながらな?プククッ」

ハイケルが衝撃を受けて言う

「ヒヤヒヤしていたのは その現場に居た俺だけだろう?おまけに お前の撤退ナビゲートの間違で見つかった俺は 思いきり頭を殴られたんだぞっ」

マスターが笑って言う

「こんな時間に 子供が戦争ごっこなんて やってるんじゃない!ってなー!?プククククッ!」

ハイケルが不満そうにマスターを見る ハイケルの携帯が鳴る ハイケルとマスターが気付き マスターが言う

「この音… 別部隊の出動通知メールかっ」

ハイケルが携帯を取り出しメールを確認して言う

「国防軍13部隊の緊急出動…」

ハイケルとマスターが顔を見合わせ マスターがTVを付ける TVの映像が切り替わり キャスターが言う

『たった今入ったニュースです 先ほど 午後6時40分 警察と皇居へ 脅迫犯行声明が出されたとの事です 内容は 先日国防軍15部隊が拘束した 犯人グループの釈放 それが行われない場合は 彼らが果たせなかった 女帝陛下のお言葉を 直接、頂きに参上する との事です 警察は この事件を国防軍へ委託 その委託を受け 現在国防軍13部隊が緊急配備』

ハイケルが立ち上がる


【 皇居 】


13部隊員たちが警備に付いている ぞくぞくと国防軍の車両が集まり増員されて行く 外にマスコミが押し寄せている 高級車が入って来て 玄関の前で止まる 軍曹が降り立つ


【 皇居 女帝の間 】


ラミリツが剣を着いて立っていて考える


【 回想 】


ラミリツが驚いて言う

『兄上…っ それじゃ あの2つの事件は どちらも兄上がっ!?』

シェイムが微笑して言う

『次なる奴らは陛下を狙って御所へ押し入る だが 奴らは決してお前を傷付けはしない 全て演技だ そして、その奴らには 斬り付けられれば 本物と見間違うほど巧妙な血飛沫が舞う 加工を施した上着を渡した …と 奴らは本気で思っているだろう だが』

ラミリツが疑問する シェイムが苦笑して言う

『例え一般の者なら誤魔化せようが その様な紛い物 本物を知る者には見破られる筈だ 従って 奴らに渡した上着に その様な加工などは 一切施されてはいない』

ラミリツが呆気に取られて言う

『それじゃ…?』

シェイムが微笑して言う

『エーメレス 私と取引をした 奴らを 全員始末しろ』

ラミリツが驚き目を見開く シェイムが言う

『剣術の稽古は済んでいるだろう?切れ味の良い 本物の剣で行えば 人を殺める事など簡単だそうだ』

ラミリツが怯えて言う

『そ、そんな… 僕は…っ』

シェイムが言う

『これが失敗すれば 私もお前も… いや、メイリス家は お終いだ …やれっ!』


【 回想終了 】


ラミリツの手が震える ラミリツがハッとして手を押さえ僅かに視線を上げる 視線の先 監視カメラが起動している ラミリツが視線を正面へ戻して 冷や汗と共に唾を飲み込む ドアが開かれ ラミリツが慌てて一瞬構える 軍曹が現れラミリツの様子に疑問して顔を向ける ラミリツが肩の力を抜いて 浮かない表情で一度視線を落としてから正面を見据える 軍曹が疑問しつつも 女帝の御簾の前に跪き言う

「陛下!陛下の御身は 必ずや!自分とラミリツ攻長が お守りするでありますっ!」

女帝は沈黙する ラミリツが横目に軍曹を見てから 視線を戻し表情を困らせる 軍曹が定位置に着き 盾を床に着く 重い音が響く ラミリツが剣を握り締める 


【 国防軍レギスト駐屯地 正門前 】


車が到着する 運転席に居る隊員Aが衛兵にIDを見せる 衛兵が敬礼して合図を送ると もう1人の衛兵が門を開ける 隊員Aが敬礼を返してから言う

「あ、そうだ 少佐はー …あ、いや ハイケル少佐が居るかどうかって 分かるか?」

衛兵が言う

「ハイケル少佐なら 13部隊の緊急出動の前に 駐屯地を出ていたが 事件を知って 戻ってくるかもな?お前の他にも レギストの連中が戻って来てるぜ お疲れ!」

隊員Aが一瞬驚いた後微笑して言う

「そうか 分かった お疲れさん!」

隊員Aが敬礼して車を発車させる


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


隊員Aがやって来る TVの前に1班たちが集まって居て 隊員Aの姿に気付き言う

「おせーぞー?」

隊員たちが笑う 隊員Aが苦笑して言う

「悪ぃ悪ぃ 風呂入っててさ?これでも車 飛ばして来たんだぜ?」

隊員Bが後方を見渡して言う

「少佐は… 今日は来ないのかな?」

隊員Aが言う

「まだ駐屯地に戻ってきてねーって さっき 正門の警備の奴に聞いたよ」

隊員が言う

「そっか じゃぁ 情報部のあのミーティングルームには 入れないな」

隊員が言う

「けどよ、今回は…」

隊員たちがTVを見る TVに女帝の間の映像が映っていて レポーターが言う

『この様に 陛下の御所の様子は しっかりと監視がなされ 我々を含む大勢の目に 見守られているとも取られます この状態であるなら 犯人たちによる 陛下の誘拐なども無いかと思われ』

隊員たちが疑問して言う

「確かにこれなら 陛下を誘拐するって事は 難しいだろうな?」

「けどよ?なんかこれ… 可笑しくねーか?」

「うーん まぁ良いだろ?これなら 軍曹の姿も見れるしよ?」

隊員たちが微笑して言う

「そうだな!何かあれば 軍曹が陛下をお守りしてくれるさ!」「軍曹ー!」「軍曹ー!がんばれー!」

隊員たちが笑う ハイケルが食堂に現れ 隊員たちの笑い声に疑問する


【 皇居 外 】


13部隊の隊員たちが警戒している


【 皇居 女帝の間 】


ラミリツが緊張して剣を握り締める 軍曹が気付き言う

「ラミリツ攻長」

ラミリツがハッとして慌てて言う

「な、何っ?」

軍曹が一瞬呆気に取られる ラミリツがハッとして視線をそらす 軍曹が苦笑して言う

「そんなに心配しなくても 大丈夫なのだっ!皇居の周りは 国防軍13部隊がしっかりと守りを固めている!犯人たちが入り込む隙などは無いのだ!」

ラミリツがムッとして言う

「…アンタこそ 少しは緊張した方が良いんじゃない?この前のパレードの時なんかは そっちの方が ヒヤヒヤしてたくせにっ」

軍曹が一瞬呆気に取られた後笑って言う

「ああ!あれは 自分に与えられる使命と 陛下をお守りする術が無い事に ヒヤヒヤしていたのだ!今の自分には この盾がある!」

軍曹が一度盾を持ち上げ嬉しそうに床に下ろす 重い音が響く 軍曹が言う

「これだけ頑丈なものならば もはや、銃弾の4発5発など 恐れるに足らんのだ!陛下の御身は しっかと自分が死守するのである!」

ラミリツが言う

「いくら丈夫な盾があったって ずっと敵の攻撃を防いでいるつもり?どーせまた 武器は回収されたんだろ?」

軍曹が言う

「いや!そうではないっ!武器は 回収されると分かっておったから 最初から持って来なかった!」

ラミリツが衝撃を受け怒って言う

「アンタ 本当に馬鹿だよっ!こんな時にっ!」

軍曹が驚き呆気に取られる ラミリツがハッとして視線をそらし 正面に向き直る 軍曹が呆気に取られたまま言う

「ラミリツ攻長…?」


【 皇居 前 】


1台のトラックがやって来る 13部隊員たちが顔を見合わせ 隊員が運転手の下へ行く


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


1班隊員たちとハイケルがTVを見ている TVに女帝の間の映像が映っている キャスターが言う

『尚、警察は 犯人の要求を断固拒否 現在警察省長に拘留されている 犯人グループの釈放には応じないとの事です これにより 陛下の御身に危険が及ぶのではないかとの意見がある中 陛下と共にある 皇室関係者に話を伺った所 犯人たちの凶悪且つ独創的な考えには 共感出来ないとの事 それを受け政府警察は国防軍と連携を取り 今後も犯人たちとは 徹底抗戦の構えを見せています』

隊員たちが言う

「…なぁ これってひょっとして すっげー長期戦になったりするんじゃねーかな?」

「そうかもしれないな?人質も取られてないし 犯人からは特に 時間の指定とかもない訳だし」

「けど、警察が釈放しないって言ったからには 答えが出た訳だから 犯人たちも動くかもしれねーぜ?」

「なるほど それもあり得るな?」

隊員たちが後方を見る ハイケルが考えている TVの映像が切り替わりレポーターが言う

『たった今っ 皇居玄関前に 一台のトラックが入りました!警察とも国防軍とも異なる 無印のトラックです 一体あのトラックはっ!?』

隊員たちとハイケルが反応してTVへ向く TVの画像が慌しくなる


【 皇居 女帝の間 】


ラミリツが視線を強める


【 回想 】


シェイムが言う

『当日は長期戦が予想される事を前提とし 陛下のお気持ちを和らげる為 手段をこうじる だが、それこそが…』


【 回想終了 】


ラミリツが表情を困らせつつ思う

(何が来るかは分からない けど… そいつらは 僕を傷付けはしないんだ… だからっ 僕は痛くなんかないっ 怖くなんか…っ)

ラミリツの手が震える ラミリツがその手を押さえる 軍曹が見つめている


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】


TVからキャスターの声がする

『…尚 陛下の心身を気遣い 皇居へは オーケストラの一団が入るとの連絡が 先ほど警察への確認で分かりました このオーケストラの身柄は 政府警察並びに 国防軍が正式に確認を取っているとの事で』

隊員たちが肩の力を抜いて言う

「なんだ… そうなのかぁ」

「びっくりしたぜ~」

ハイケルが視線を強める


【 皇居 前 】


13部隊員が書面を確認してから 運転手へ書面を返し言う

「では、一応 オーケストラの団員と 楽器の方を確認させて頂きたい」

運転手が言う

「ああ、オーケストラの楽器は丁重に扱ってもらわねば困る 事前に連絡はしてあるが 隊長さんが直々に確認してくれるって」

13部隊員が呆気に取られて言う

「え?…そうなのか?」

運転手が言う

「ああ、ちゃんと連絡してあるよ?えっと… ああ、そうそう マーレー少佐さんだ」

13部隊員が呆気に取られて言う

「う、うむ… では 今 連絡を…」

13部隊員がイヤホンを押さえ言葉を発そうとすると マーレーがやって来て言う

「ああ、到着したか よし、私が確認をする 荷台を開けてくれ」

運転手が降りながら言う

「はい、分かりました…」

マーレーと運転手が目配せをして 荷台へ向かう


【 皇居 女帝の間 】


役人が現れて言う

「陛下 申し上げます これより陛下へのご負担を少しでも和らげられればと ささやかながら このメイス地区を代表する 小オーケストラ楽団による演奏会が」

軍曹が衝撃を受けて言う

「なっ!?ペジテの姫が 竪琴を奏でる夜に その姫の前で 演奏会だとっ!?」


【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】


ハイケルが言う

「おかしいな…」

1班隊員たちが驚き振り返る ハイケルが言う

「ペジテの姫である陛下は 毎夜竪琴を奏でる事が役目だ 例え 事件が起きていようとも その陛下の前で 音を立てるとは… 気に入らん」

隊員たちが言う

「ペジテの姫… アールスローン戦記?」


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