プロローグ
あなたのことが好きです。
私に笑いかけてくれるその目が、スッと通ったその鼻が、よく喋るその口が大好きです。
その声が好きです。柔らかく甘いその声が、私の耳に入る度に胸がふわふわするのです、鼓動がどくどくと全身を巡り、熱くなるのです。
あなたのことが嫌いです。
私を冷たく見据えたその目が、私を笑うその鼻が、どろどろと黒煙を吐くその口が大嫌いです。
何故?如何して?どうして?どーして?
何故そんなに、私に執着するのですか?何故、そんなにあなたの味方はたくさんいるのに。
私にはもう、何も無いのに。何故私だけを除け者に。
嗚呼、仕様が無い、仕様が無い。
全てあなたが悪いから、仕様が無い。
あなたのことが好きだから、嫌いだから。私はこうするしか無いのです。
嗚呼、あなたは馬鹿だから、何も気づきはしないのでしょう。あなたが始めたことならば、終わりにするのは私にしてあげましょう。本当に本当に、頭が悪いのね。私が近付いても逃げすらしないのね、抵抗すらしないのね。
「どうかした?✕✕✕」
あなたはまるで、私は悪くないと何もしていないと、嘲るように笑った……。その顔が恐怖に染まった瞬間──そう、暗がりに浮かぶ怯えきったその顔、飛び散る鮮血、断末魔。動画にして永遠にのこしておけば良かったと後悔しています。許さない、許さない。私にしたこと何もかも、償ってもらうまで。私は今、最高な笑顔でしょう。
嗚呼、私の嫌いなその目その鼻その口の、全てが悪い、憎い、ニクい。……けれど。
けれど、あなたのその髪の色……本当にそんな色だったかしら?
✳
なぁ、知ってるか?奇害天命番、617の噂。
きがいてんめい…?なあに、ソレ。
それがさ、最近ネットに出回っているものなんだけど…
ネットに?私、そういうの信じないのよ。
まあまあ、聞くだけ聞けって。高校生になったばかりの人を中心に、他の空間に飛ばされるっていう…
うわあ、ホントにありきたり。話すなら、もう少しマシなのにしてよね。
待ってくれよ、まだ続きがあるんだ。高校生って言ってもな、ただの高校生じゃなくて、"何かの事件の関係者"らしいんだよ。
ふーん?
だからさ、俺ら来年高校生だろ?ちょっと興味あるんだよな。
つまり、どういうこと?
行ってみないか、その空間。
そういうと思った。絶対イヤよ、まずそんなものあるわけないじゃないの。
うーん、確かにそうか。
誰かが面白半分で流したに決まってるでしょ。
でも、兄貴の友達にいるって言うんだよ。
いるって、何が。
奇害天命番に行って、帰ってきたってやつが。
え…それってつまり───