episode 05 異世界の生物は同じ種類でもスペックはまるで別物だよねって話
あー...遠い..遠いよ...。
あの後追加の騎馬隊がおっさん達を取り押さえた。
騒動は静まり、再び大通りが渋滞し始める。
「もう、どうすれば良いのか...」
ボーッとしながら歩き続ける。
これ徒歩だと外まで一日掛けても出られない気がしてきた。
「おわぁぁぁ!!誰かその馬車を止めてくれぇぇ!!」
そんな叫びが後ろから聞こえる。
その叫びに目を向けると、無人の馬車が見事に暴走している。
なんか馬の目さ、血走っているように見えるよ。
はい、注目。
馬の進行方向と僕の進行方向は同じ。
つまり、これに乗れば結構な距離が短縮できると見た。
止めるふりして馬車にしがみつけば運んでいってもらえるという算段だ。
いやー、今日は頭が冴えてるなぁ。(逆に暑さでダメになってるだけ)
後ろから人を突き飛ばしている暴走馬車にタイミングを合わせてしがみ付く。
3、2、1、今ッ!
よし!成功!
「うおぉぉぉぉ!!!止まれえぇぇぇぇ!!!!」
自分止めようとしてますよーという意思表示で、ロボアニメのような叫びを上げる。
さあ暴走馬車よ、僕を町の外門まで運ぶのだ!
ん?この聞き覚えのある音は?
「若者が止めようとしていて我らがじっとして居られるか!総員、我に続けぇ!!」
「「「「「オオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」
騎馬隊来てるー!?
さっきより速さが上がってるし士気が高いって。
というか動員数増やしたのか!
不味い不味いよ。
どんどん距離を詰められてるよ。
あっそうだ。
『対象は後方にいる騎馬隊18名、少し吹っ飛べ!』
「「「「「うわあぁぁぁ!!!!」」」」」
18名がバランスを崩して落馬する。
「なっ!?どうしたお前ら!」
隊長らしき人物は馬を止めて落馬した隊員達の元へ走る。
ごめんよ騎馬隊。
でもこれは仕方がないんだ。
この町が広すぎるのが悪いんだ。
恨むのなら初代王を恨め。
結果として馬車はそのあと全力で2時間ほど走り続け、馬が過労で倒れたところで止まった。
「やっと..止まった...!」
一応疲れたぜみたいな空気を出しておく。
とはいえ異世界の馬って化物だな。
一頭で馬車を引いて2時間も30km/hを維持するなんて。
現実世界の馬だとここまでスピード出ないし、数分で持久力が尽きるのにね。
さて、外門は...あった!
...でもなんかお腹空いたな。
やっぱり宝石を換金するか。
近くに手頃なお店は...あれギルドっぽくね?
剣が交差している紋章は間違いなくギルドであることを示すモノだ。
この世界はギルド組織が存在していて、
・冒険者ギルド
・商業ギルド
・金融ギルド
の主に三つが存在する。
他にもあるにはあるが重要性は低く、設置されていない町もあるので省く。
まずはポピュラーな冒険者ギルド。
これはその名の如く、冒険者を統括するギルドで魔物の討伐、アイテムの納品を主な任務として扱っている。
一般人から公的機関までお金を出せば依頼を出せる。
次に商業ギルド。
商材の取引や出店の認可などを行なっている場所で、一般人は商業ギルド内にある沢山の店を利用できるのでショッピングモールのような役割を担っている。
最後に金融ギルド。
こちらは借金や、大型商会の取引で使う小切手の換金、あとは個人の預金・引き出しを行う銀行のような役割を担っている。
ただ、紛らわしいのは全てのギルドが剣が交差している紋章を使用していることだ。
今回はなんだろうな。金融でなければ別に問題はない。
扉を開く。
まず視界に入ったのは泥酔して床に寝ている筋肉ゴリラ。
どうやらここは冒険者ギルドのようだ。
冒険者ギルドは酒場と宿屋が併設されており、偶に宿屋に戻る前に酔いつぶれてしまう冒険者がいるそうだ。
えっと、先ずは素材買い取りの一般窓口は...あれか。
素材買い取りには一般窓口と関係者窓口がある。
一般窓口は一つ。
関係者窓口は四つ設置されている。
二つの違いは売却額の違いだ。
例えば1000ゴードの物を関係者窓口で売るとすると、900ゴードが冒険者に入って手数料として100ゴードがギルドに徴収される。
簡単に言ってしまえば一割の徴収だ。
しかし一般人窓口だと1000ゴードの内、700ゴードが一般人に入り、300ゴードが徴収される。3割だ。
冒険者は命を懸けて仕事を行なっているわけだから手数料が安く済む。
その分一般人は...という事だ。
別に言わなくてもわかるだろう?
今回は一般窓口を使う。
冒険者登録をした方が良いのではないかと思うだろうが、冒険者登録をするには入団テストを受けなくてはならない。
監督官と模擬戦を行なって一定の戦力を保有していることを示せば合格だ。
しかし今の僕は相手を弾き飛ばすしか能のない人間だ。
こんなの戦力とはいえないクソ雑魚君である。
笑い者にしかされない未来が見えるので今回は苦肉の策として一般窓口を使う。
でも3割は大きいんだよなぁ...。
主人公君は順調にささやかな八つ当たりをしているようです。
平和的で良いよねー()