episode03 どの世界にも当たり屋はいるよねって話
僕はまだ大通りを歩く。
なんか見つけた。
道の端っこで男性がうずくまっている。
なんか面倒ごとになる気がしたので僕はそれを無視して通り過ぎた。
この世界って現代世界と同じく曜日たるものが7つある。
それがなんだったかは忘れたが、今日は平日であることは覚えている。
しかし大通りの人通りが多い。
というかこの国経済良いんだね。
家族連れが多い、故に経済が良い。
これは結構理にかなった持論だと思う。
まぁだからこそ進むスピードが遅くてイライラし始めているんだけどさ。
もう能力で全部吹っ飛ばそうかなー。
なんて冗談を考えてると肩が誰かにぶつかった。
ぶつかってきた相手は筋骨隆々のおっさんで道に転げてる。
「いてぇいてぇよー!これは骨が折れちまったよー!」
コイツッ...!
当たり屋かよ。
僕は何かを閃いた。
そして駆け足で人混みを避けてその場から離れようとする。
すると後ろから人混みを突き飛ばしながら、
「オイコルァ!人とぶつかって骨が折れたつったら謝罪の気持ちとしてお金を払うのが誠意ってヤツじゃねぇのかよ!」
そんなに元気なら骨は折れてないと思うよ。
僕はおっさんを無視してただひたすら走る。
僕が人混みを避けて走る。
おっさんが人混みを力押しで突き飛ばして走る。
これって間接的に僕が人混みを突き飛ばしてるってことだよね?
うーん、キモチー!
走っているせいで余計暑くてイライラしてきた。
もう僕も人混み突き飛ばそうかな。
こんな大通りだと追いかけっこの騒ぎよりも商人たちの喧騒の方が大きくてどれだけ追いかけっこをしていても大通りの人混みは一切反応を示さない。
後方で呻き声や子供の泣き声が聞こえるが、まぁ気のせいでしょ。
ん?後ろの騒ぎが激しくなった?
僕は後ろをチラッてみるとおっさんが増えていた。
いや、増えるワカメとかそういうのじゃなくて多分突き飛ばされた被害者とかが切れておっさんを追いかけているのだと思う。
それにしても勇者の力ってスゲー!
ずっと全力で走ってるのに全然苦しくならない。
筋肉は悲鳴あげないし、熱風だけど風を感じるって清々しいね。熱風だけどね!
こうやってドタドタ走っていると現代世界の新年にやる福男を賭けてのレースを思い出すなぁー。
僕は持久力がないから参加せずに見る側だったけど今なら参加できる気がする。
お?
更にうるさくなったぞ?
なんか金属がガチャガチャしている気がするし怒声が増えている気がする。
後ろをチラッてみる。
うわぁ、衛兵も参加してるじゃん。
この城下町大通りレース当たり屋杯って飛び入り参加可能だからなぁー。
なんかこれ競馬並みに騒がしくなってきたなぁ。
馬の蹄が地面を蹴る音も幻聴だろうけど聞こえてくるなぁ。
後ろをチラッてみる。
馬に乗った騎士も参加していました。
馬に鎧が付いていて良い感じに遅いのはわかるんだけど、威圧感がすごいんだわ。
というか騎士達ってこれがなんの集団かわかって追っかけてる?
これって蓋を開けてみると当たり屋から逃げているだけなんだよねぇ、そろそろこの集団なんとかならないかなぁ。
というか勇者の僕ならわかるけど一般人のこの人達はなんで走り続けられるんですかねぇ。
あっよく見たらおっさんがこの事態の深刻さに気づいて青い顔になりながらも必死になって走ってる。
ほんと長いなーこの大通り。
あっ路地裏発見!
幽走発動!
逃げ込めー!
僕は進路を90度変えて勇者特有のフィジカルつよつよで路地裏に逃げ込む。
おっさんは僕を見失うも止まるわけにもいかずに走り続ける。
それに続くむさい奴ら。
いやー、平和だねー。
間接的に八つ当たりをする主人公君。
良かったね(?)