episode01 召喚って聞こえはいいけど、それって結局拉致と何も変わらないよねって話
好き勝手に書いてストーリー性を無視したとにかく続けることに焦点を当てたハイファンタジー開幕ッ!
もう...戻れないのか...?
暖かい我が家にも...友人たちの元へも...。
なんなんだよ。
なんで自分なんだ。
勇者召喚なんて創作上のものでしか許されないだろう。
世界の厄災に立ち向かうためではなく、他国侵略の駒としてだと...!?
そんなどうでもいい事に自分の人生を台無しにされたのか...。
他の世界の人を召喚(拉致)しておいて駒になれなんてふざけている。
信じたく無い現実だがこのファンタジーめいた王の間を視界に収めた瞬間、戦い方や能力の見方と言った知識が頭に流し込まれた事によってこれが現実なのだと思い知らされる。
そしてこの召喚が片道切符で帰還不可能だという事が自分を苛立たせる最もたる原因である。
『能力開示』
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シンヤ・オオサキ lv1
男 人間
MP400/400
攻撃50
魔法攻撃50
スキル:無敵、MP練成
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ゲームみたいなウインドウ。
HPや防御が無いのが気がかりだが、無敵というスキルが1番気になる。
なんだろうか。
───
無敵
攻撃やあらゆる状態異常を無効化する。
対象を弾き飛ばすことができる。
───
この説明が本当だとすればこれは文字通り無敵という事なのだろうか。
とりあえずここから出よう。
僕は立ち上がって踵を返すように王の間から出ようとする。
「なっ!?貴様!王の前から無断で立ち去ろうなどと無礼だぞ!」
王ののそばに仕えている爺が言う。
果たして無礼とはこの場合そちら側では無いかね?
まぁ、人を拉致して戦争の駒に加えようとすりサイコ集団だ。
何をいっても無駄だとは思うがね。
「おい!貴様聞いているのか!」
「...聞こえている。うるさい」
「勇者だからといって図に乗りおって!」
「図に乗っているのはそっち。とにかく耳に悪いから黙って」
....。僕の声ってこんな可愛らしかったかな?物静かな少女の声だ。
もしかするとこれも召喚のせいで整体に不具合でも出ているのだろうか。
「貴様!いい加減頭を下げんか!王の御前だぞ!全く、これだから子供はっ」
「え、子供.....?どこが?」
ここで初めて自分の体を見下ろす。
灰色の長い髪に華奢な身体つき。
近くの鏡によってみると、顔が整った色白美少女が立っていた。
僕は24のれっきとした成人男性だったはず。
服装は変わらずスーツだが、サイズがこの体ように調節されてコスプレみたいな事になっている。
相棒の感覚もある。
ガワだけTSしたのだろうか。
「いつまでボーッとしている!さっさと頭を下げんか!」
「もうよいぞ、大臣」
「畏まりました、王様」
「で、勇者よ。わしが直々に頼む。この国の領土を広げるために共に戦ってくれんか?」
共に...だと...?
コイツらは勇者召喚を過去に何回もやって使い潰してきたはずだ。
共にやったことなんて一つもないじゃ無いか。
少しでも話を聞こうと思った僕が馬鹿だった。
ここを出よう。
再び歩き始める。
「ふむ、交渉決裂か。兵よ、あの者を捉えて調教室へ送れ」
「「はっ!仰せのままに」」
この王ロリコンか?
命令を受けた兵がこちらにジリジリと詰め寄ってくる。
『この間にいる兵全員を選択、弾け飛べ』
そう念じた途端に兵が全員壁に向かって吹き飛んだ。そして大きな物音を立てて壁にぶつかり、気絶して動かなくなった。
続いて物陰から吹き矢が飛んできたが、僕に当たらず、軌道がずらされたように明後日の方向に飛んで行った。
...ここまでのことがあったのに代償は特になしか。
ぶっ壊れスキルだな。
「ふぬっ...!ふぬぬぬぬッ!!」
僕は広間の扉を開け...開け...て....。
なんかこの扉重くない?
開かないよこれ。
「フハハハハ!貴様のひ弱な腕で間の扉が開けるとでも思ったか!馬鹿め!」
いや、君達はそのひ弱な腕を他国侵攻に使おうとしてたんだからそっちも馬鹿でしょ。
...。
この扉もスキルで吹き飛ばせるかな。
『対象は前方の王の間の扉。吹っ飛べ』
金具が派手に飛び散りながら扉が外れ、所々ヒビが割れて広間の外へ吹っ飛んで行った。
足元に扉の装飾品である宝石がいくつか落ちていたので迷わず拾った。
「おいッ!貴様ッ!その扉はこの城が出来てから一度も壊れたことのない扉なのだぞ!それをやすやすと壊すな!戯けが!」
「....壊さないと、出れない」
「出るなと言っているのだ!ハァハァ...貴様を相手にしていると疲れるな...!」
「...発情期?」
「違ぁう!つ・か・れ・たと言うのが聞こえなかったか!?えぇ!?」
「...そんな怒鳴ってると喉に悪いよ?」
「それは貴様がッ!」
「大臣よ、静かにせよ」
「はっ、失礼しました」
「....やーいおこられてやんのー」
「ッ!.....。」
大臣をおもちゃにして揶揄うのはもういいか。
「王」
「何かね?」
「この宝石貰っていくね」
「好きにせい」
「...やった♪」
宝石を手に入れた僕はそのまま王城を後にして城下町へ向かった。
一方王の間では...
王「アレは敵にしてはいけないタイプな気がするな」
大臣「しかし、あの扉が壊れるとは...」
王「歴代最強と言われる初代勇者が王家を守るために作ったと言われる『超扉』があの小娘に破られるのは見ておったじゃろう」
大臣「攻撃も近づくことすら許されない..ですか。これは...」
王「そうじゃな...」
王・大臣「「打つ手なしだ」」
王女「あれ?お父様、この惨状は如何されたらこうなるんですか?」
王「おぉ、我が娘よ。少し魔道具が暴走してしまっての。騒がしくてすまないな」
王女「そうだったんですのね。それでは私もお手伝いしますから早く片付けてしまいましょう」
王「え?」
王女「ほら、お父様もやるんですよ。代表者たる者臣下より率先して動かないと示しがつきませんわ」
大臣「王様、王女様は本当にたくましく育たれましたな」
王「そう...じゃな」
今日も王城は平和です。
復讐モノ描こうとしてたけど憎しみを文章にして表すの苦手だからやめます。