軌跡
土星の輪を形成する美しい連なり
本当の時間…
生きていたい…
そこから外れることなく
ぶつかり合うことなく
永遠に隔てられた等間隔を保ちながら
軌道にのって回り続ける
自転周期0.444日の間に見る夢は
美しい1000本の輪
肉眼では見えない
天体望遠鏡をこらして
ようやくたどり着ける
ただ誰かに照らされている自覚などなく
切り立った陰影に魅入られている様が
月のように錯覚させた
無数の内のひとつなんだと
胸がしめつけられたのは
いつからだろう
生まれた記憶なんて無いのに
気づけば回っていた
ここから外れることなく
美しい連なりのひとつとして
価値も概念も善悪の分別もなく
1000本の輪を形成する衛星ともよべないひとつ
渦巻くのは
遥か彼方からやってきたという
途方も無い真実に
目が覚めた
記憶には無い
緻密な計算の上になりたつ
人工回路の演算の集積による
ウワズミによってのみ
ほんのわずかだけ
知ることの出来る
本当の時間…
いつからだろうか
軌道から外れはじめたのは
ほんの少しだけ
ゆらめいて
わずかに
傾いて
そこから地球に
向かいはじめる
暗闇を飛び出して
真空の摩擦抵抗に燃えつづける
命を
いつか
燃え尽きて
無くなってしまうことを省みず
遙かな大気圏をまとう惑星を目指す
それが
地球
憧れに吸い寄せられ
飛び交う
真っ赤な炎
青い尾を引いて
どこまでも
美しく
まぶしく
光る
燃える
せつないほど
未来へと進む
今日の小ささの中
黄昏れ時の間もない瞬間
はじめて暗闇におおわれた時
上空を仰ぎ見ながら
みつめるその姿を
いつも想う
あなたに重ねながら
闇に色付く
想い
願い
祈り
赤い炎あげて
突き進む
青色の煌めき残して
どこまでも続く
生まれたばかりの
-240℃
心の先端
太陽の引力に引っ張られ
割れはじめる
幾つもの流星
いつか消える
その最期まで
見送る冬の夜空に
夜明け前が広がってゆく




