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キミが消える未来(あした)から  作者: 秋桜
第一章『うんめーさん』
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旧校舎の探索




 

 午後四時過ぎ。五月中旬とはいえ、暗くなるのが少しばかり早い気がする。

 部活動を始める生徒も多く、グラウンドや体育館の壁を越えて声が飛び交っている。

 僕と樹、三嶋さんは生徒玄関から徒歩二、三分の旧校舎前の中庭に来ている。

 樹はともかく、三嶋さんが同行するのは珍しいというか意外なんだけどなんでも確かめたいらしくて。


「……それで、千乃。なんか俺に言うことないか?」


 いつもならオカルト話に浮いている樹も今回ばかりは怒っている。

 理由は昨日の夜のこと。


「……ごめん」

「俺はオカルト好きである前に親友なんだよ。そりゃ……非がないってのは嘘になるが、もっと俺を頼ってくれ」

「うん……ありがとう、樹」

「……ってか、三嶋さん、だっけ? 電車なんだろ? 大丈夫なんか?」

「うん、ユキちゃんが心配だから」


 そう言って僕の左腕に抱きついてくる三嶋さん。

 その様子を見て樹は悔しがる様子を見せるものの、拳を握って前を歩いた。


 ♢


 あっさりと開いてしまった旧校舎の玄関。

 未だ残っている生徒もいるのかと思ったけど、樹曰くフラグ? とか言って樹は一つ提案した。


「まだ人がいる時間帯だ。だとすれば、慌てて助けを呼べるかもしれない。それに俺たち上級生が三人も一緒に旧校舎に来てるとさらに大騒ぎになる。誰か一人、ここにいないと」

「じゃあ、私が見張ってるね!」

「三嶋さん、本当に大丈夫? 今、なんとか急げば……」

「大丈夫、大丈夫! 私の親はほとんど無関心だからそんに厳しくないし……むしろ、放置だから」


 一瞬、三嶋さんの顔が暗くなったがいつも通りの笑顔を浮かべてニッコリと笑う。


「千乃、そろそろ……」

「うん。なんかあったら連絡してね」


 カバンからノートを適当に千切って、素早くペンで電話番号を書いて渡す。

 念のため通信アプリのほうも書いておいたから、どちらからでも連絡しやすくしておく。


「じゃあ、気をつけてね。ユキちゃん」


 三嶋さんにカバンを預けて旧校舎の奥へと足を進めていった。


 ♢


 旧校舎内は外の明るさと比べて薄暗く歩くに連れて足元が覚束ない(おぼつかない)


「おっとっと……」


 床の何かに躓いてしまい、咄嗟に樹の袖を掴んでしまう。多少、たじろいだだけで済んだけどこのままでは歩きにくい。


「ごめん、樹。袖、掴んじゃって」

「平気だよ! 一応、こんなこともあろうかと小型だけど……懐中電灯、持ってきたんだよ」


 オレンジ色で小型の懐中電灯をポケットから取り出すと、樹は歩いてきた廊下の地面をピカッと照らした。


「っ!? なに、これっ……!?」


 照らされた地面、もとい床にあったのは()()()だった。

 顎から下はなくて先ほど躓いた部分に小さな粉のようなものが散らばっていて、想像したくないものが頭の中に渦巻く。

 さらに視線を下へと逸らしていくと女子生徒の制服が綺麗に上下共に並んでいた。


 ────まるで、()()()()()()()()()()()()のように。


 その光景を目の当たりにした僕は右手の震えが止まらなくなった。

 なんとか左手で抑えると肝心の樹は、


「噂は本当だったんだな」

「い、樹、これって……ちょ、ちょっと……!」


 動じることなく樹は制服の周りを漁り出す。

 胸ポケットからブレザーの内部分、スカートのポケットまで漁り終えると右手に何かを握りしめている。


「何を拾ったの?」

「名札と……チョコ?」

「なんでチョコなんか」

「わからん」


 ビニールの小包に包まれたチョコが二つと安全ピン付きの名札。

 名札の名前の欄には二年生の女子生徒の名前が書かれている。

 こんな形で見つけてしまったことと、お詫びを兼ねて両手を合わせて黙祷(もくとう)


「この人も『うんめーさん』に……」

「気にすんな。解決すればこの頭蓋骨が誰なのかいずれわかる、そしたら線香しかあげられないが挨拶に行こう」


 そうだね、と絞り出した言葉で呟く。

 何も出来なかった無力感というよりも、次は自分じゃないかという恐怖が勝っている。


 ……もう少し奥を調べれば何かわかるかも。


 樹から懐中電灯を貸してもらうと辺りを見渡す。

 ……どうやら入ってきた入り口からそう遠くない場所で、教室二つ分離れている地点が現在地。

 壁には古くなってぼろぼろになったポスターと剥がされた後の切れ端、ここから先の床は所々古くなっているのか音を立てている。


 ────なるべく音を立てないように歩こう。


 何故だかふと言葉が頭を横切る。


「なぁ、千乃」

「どうしたの?」

「教室の中、調べないか? 調べようぜ!」


 新しいおもちゃを買ってもらった子どものようにはしゃぐ樹。

 さっきまでの暗い雰囲気から普段通りのテンションになる樹に対して、一気に呆れる。

 だけど、このオカルト好きな樹に度々助けられてる。

 本人は言わないけど。


「でも、教室って……この先の?」

「いや、来た道にある教室から探して行こうと思う。一年生の教室はこの三階にあるから、普段使ってないであろう教室を調べてもどうってことはない」


 来た道に戻るように教室を探索することに。

 二つある教室のうち一番近い『美術室』に入ることにした。

 扉はすんなりと開いたはいいけど、埃が室内を舞っていて長時間はいたくない。

 顔を合わせてお互いに室内を手分けして探し始める。


「落書きに誰かのノート、あと……モダンアートみたいでテキトーなイラストが何枚か出てきた」

「……あれ、何これ……?」


 教室の机の中身を適当に漁っていると、一枚の古びた写真が出てきた。

 二人の少女が並ぶようにその背後には旧校舎。

 制服も今とは違う制服ということは随分前に撮ったことになる。

 左の少女は笑っていて活気があるが、右の少女は逆に暗くて内気のように見える。

 正反対同士の友人とでも解釈(かいしゃく)すればいいのかな?


 ────他にないか、机などを漁ってみたがそれらしいめぼしいものはなかった。


「よし、次行く……」


『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』


 入り口のほうから聞こえてきた悲鳴。

 三嶋さんに何かあったんじゃないかと思い、慌てて駆け出した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 待って。まって。まって。 えっ!!?? まって!? えっ?? [気になる点] えーーーーっ!!次が気になる!! 気になる点は「次」がきになります!!!
[一言] こんばんは! 初めまして。秋真と申します。 拝読させて頂きましたがゾクッとしました。 続きが気になる終わり方でした。うんめーさん…… いきなりの書き込み失礼致しました!
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