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キミが消える未来(あした)から  作者: 秋桜
第四章『宵闇駅』
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夜見井屋駅

 

 突然の雨が降り、妬ましい雷鳴が鳴り響く。

 外は暗く、家の中は停電。ブレーカーの場所は知っていても雷への恐怖故に部屋の毛布に身を縮ませる。

 優しく抱きしめてくれるお姉ちゃんの手をぎゅっと掴んで怖くない、怖くないと念じる。

 当時から雷が苦手だった僕に明乃お姉ちゃんは大丈夫だよ、と優しく声をかけてくれる。


『怖いよ〜、お姉ちゃん!』

『大丈夫、私はここにいるから』


 お姉ちゃんの温もりに包まれながらも、外の雷は怖くて怖くて。

 そんな時、何故だかお姉ちゃんはよくわからないお話を話してくれた。


『ユキ。もし、探しているものやわからないものがあっても()()()()()()()()()ことがあるの。一つは約束。これは必ず守りなさい、絶対に。守れないことはしないこと。二つ目は……()()()()のお願い』

『ササカ様?』

『まだ、ユキにはわからなくていいかもね。でも、気をつけて。ササカ様にお願いをすると────』


 未だ鳴り響く雷、降り注ぐ豪雨。

 先の言葉の続きよりも、刹那に見えたお姉ちゃんの顔が少し怖かった。


 ♢


 翌日。同じ時間帯に起きて、替えのセーラー服とリュックサックを背負って階段をゆっくり降りていく。

 樹を探すのが当初の目的であったのだけども、予定変更。昨日の那月から言われた耳を疑いたくなるようなこと。


『三嶋優衣は昨日から家に帰っていない』


 あの時、文月さんから言われた言葉に対して動揺していた僕が掴んだあの手は────()()()()()

 なら、学校で会ってから電車に乗り樹を探してる途中に出会った文月さんも疑心暗鬼。

 僕が半ば強制的に引き込んでしまったが故になのか、それとも旧校舎のときからずっと?

 わからない、わからないわからない!!

 なのに、どうして僕の周りの親しい人間を巻き込んでいく? 結果的に僕が中心にいるんじゃないか。

 那月は……那月だけは、失いたくない。

 ゆっくり階段を降りていくとリビングから那月が待ってたかのように立ち塞がる。


「千乃、どこ行くの?」

「……那月には関係ないよ」


 真剣な眼差しでじっと見つめる那月に対して後ろめたさを感じる。

 これも那月を守るためなんだ、わかって。

 そんな内心とは裏腹に那月が僕の両肩を掴み、正面を向かされる。


「こんな朝早くから、どこに出かけるの?」

「那月には関係ないよ。放っておいてよ」

「嘘。ねぇ、千乃。本当のことを言って、昨日何があったか」


 真冬お姉ちゃんの件もあって、余計に僕が何かに首を突っ込んでないか心配なんだ。

 でも、ここで折れてたら那月のためにならない。

 わかってよ、那月。


「神崎君のこと? 三嶋さん?」

「離して、那月」

「お願い! 千乃にこれ以上、傷ついて欲しくない! だから、教えて。何があったの?」

「離してって言ってるの!」


 那月の手を強引に振り解いて玄関に向かう。

 何に焦っているかもわからなくなるくらいに今は話していたくない。

 それ以上に僕は────僕は那月を傷つけた。

 最低だ。最低な人間だな、僕は。


「千乃……っ」


 玄関を乱暴に開いてそのまま行く先も決めずに、ただ走った。

 ギュッと苦しめてくる胸の痛みに歯を食いしばる。

 ごめんなさい。ごめんなさい、那月。


「ごめんなさい、那月」


 家族、とは違う。僕が望んでいるものは違う。

 わからない。でも、きっとこの不信感の正体は僕自身の不甲斐なさからきてるもので那月は悪くない。

 なのに、なんでこんなにも苦しいの?

 那月は大切な人。だから、突き放す。

 巻き込まないために、失いたくないから。

 行き着いた先は無人駅。相変わらず人はいない。

 ホームの椅子に顔を埋めるように膝を抱える。


 プルルルッ プルルルッ!


 スカートのポケットから鳴り響く着信音。

 リュックサックはリビングに置いてきたため、手持ちにあるのはスマホだけ。

 着信相手は『那月』。


「今更、出られるわけないよ。那月に酷いこと言っちゃった」


 プルルルッ プルルルッ!


「那月、ごめんね」

「ごめんねって言うなら、ちゃんと返事してよ」

「え?」


 顔を上げた先に立っていたのは、那月だった。

 那月に合わせる顔なんてない。

 どんな顔をして話したらいいの?


「私は傷ついてないよ。私こそ言い過ぎた。ごめんなさい、千乃」

「ごめんね、ごめんなさい。那月、ごめんなさい!」

「大丈夫、大丈夫だよ」


 那月に抱きついてみっともなく泣いてしまう。

 失いたくないはずなのに、大切なはずなのに。


「帰ろう? 千乃」

「……うん」


 ♢


 次の日。優衣さんと訪れた『夜見井屋駅』に那月と一緒に来ていた。

 昨日会ったのが失踪する前の優衣さんだったなら、何かしらこの駅に手がかりが残っているはず。

 外灯が三つ並んでいて、時刻表もあの時とは違って日の光の影響かよく光って見える。

 ホームにある椅子にはさっきの学生手帳の他、アクセサリーなど薄汚れていることから忘れ去られているに違いない。

 さらにその下を覗き込むと、何やらノートを見つけた。

 失礼を承知で中身を見させてもらうことに。

 ページをめくっていくと国語の勉強ノートらしく古文や漢文、どうやらテスト勉強用か何か。

 最後のページだけ国語とは関係ない、日記のようなものが書いてあった。


『なんでもお願いを叶えてくれる『シホちゃん』に出会えたら白い手紙を貰える。その手紙には幻の駅への切符が入っていて、一度乗ると途中下車は認めない。ついたら最後────』


 と、最後の文字は黒く塗り潰したようで読めなかった。

『シホちゃん』。文月さんが言っていたあの町で生まれ、殺された悲惨な子供。

 願った代償に願ったもの、もしくは。

 これが本当なら白い手紙をもらった樹やその友達はきっと、その幻の駅にいる。

 勿論、危険はある。覚悟の上だ。

 もしも、『うんめーさん』同様に酷いことをされてこの世に恨みを残したならそれを晴らさないと。

 優衣さんも、もしかしたら────ううん、そんな暗いことは考えないでおこう。

 今は二人が無事であることを考える。

 他の場所を探し終えると、ちょうど無人駅に電車が到着する。

 平日とはいえ、人が乗っていないのも時にはある。

 こちらが乗らないとわかると電車は左方向へと動き出す。

 夏休みが終わるまであと五日。

 この期間内で樹と優衣さんを必ず助け出してみせる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 普段読まないジャンルであるため明確にここが良い!などとは言える立場ではありませんが、和風ホラーというまだ執筆者が少ないであろうジャンルでここまでの物語を書けているという点でまず評価出来ると…
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