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キミが消える未来(あした)から  作者: 秋桜
第二章『紅の乙女椿』
20/59

椿

 

 家へ帰ると、当然というべきか怒られた。

 おんぶをされた状態ではまともに話せないため、片足からゆっくりと床に着く。


「千乃」

「真冬さん……その」

「聞かずもがな、わかる。那月、千乃の手当てを頼む、私は少し資料を取ってくる」

「ユキちゃん先輩、手伝うっす」

「ありがとう」


 湊さんに肩を担がれながら、リビングのソファーに腰掛ける。


「千乃、()()を見せて。あなたは冷蔵庫から氷を、救急箱はキッチンの戸棚の下にあるから」

「は、はいっす!」


 湊さんは言われた通り、慌てて救急箱と氷を取りに行く。那月はというと……、


「千乃、()()()

「え!? じ、自分で脱ぐから」

「ほら、早く」

「ちょ、ちょっと待っ……!?」


 スカートの下にあるストッキングを那月に、しかも女の子に脱がされるというのは恥ずかしい。

 というか、恥ずかしくて見れないため横に置いてあった毛布を足元に敷いて隠す。


「あ、あのさ、今からでも大丈夫だから」

「持ってきたっす!」

「あなたは氷で冷やしてて、私は包帯と湿布の準備をするから」

「はいっす!」


 手際がいいことで二人共、初対面なのに慣れていて最早目を閉じて早く終わって欲しいと願うのみ。

 ……終わったかな? どうかな?


「千乃、終わったよ」

「ほぅ……良かった」

「今度は足を上げて」

「な、那月、自分で履けるから、待っ……!」


 ……その後は顔が赤く染まっているのがわかるくらい、熱くなった。

 湊さんから氷をもらい、頬に当てても那月の顔を見るたびに顔が赤くて仕方ない。


「そろそろいいか?」

「はい、大丈夫です」

「……だ、大丈夫、です」

「大丈夫っすよ」

「あの近辺には噂や事件もあってだな……確か、この資料だと思ったんだが」


 茶色のファイルをテーブルの上に広げて、ページを捲っていると……ある切り抜かれた新聞記事が目に入った。


「これ……!」

「あぁ〜、これか。六月中旬の頃、()()()()という場所で女性が()()したらしい」

「自殺……!?」


 六月中旬。朝方、神主が普段通りに境内の枯れ葉を掃こうとして外へ出てみると、


 ────巫女装束の女性が倒れていた。


 病院に搬送されたけど、既に脈はなく争った痕跡はないため自殺と判明。死因は毒死。

 女性から検出された毒は椿油粕。

 強い魚毒性(ぎょどくせい)のある椿油粕は、水路や川などの魚介類の生態系を壊す恐れがある。

 それは勿論、人体にも影響はあると言える。

 動機や遺書、交友関係を調べたけど一切と言えるほど不明。

 巫女が自殺したという噂は瞬く間に広がっていき、やがて取り壊されたという。


「じゃあ、あの無人駅近くは……」

「そうだ。神社の跡地、もとい祠を立てることで神の逆鱗に触れぬように済んだ……()


『男性人気配信者 配信中に消える』


 当時、二十代の若者の間で人気だった配信者が取り壊されたという神社に無断で侵入。

 カメラの画面が突如、ノイズのように覆い尽くされ……終始聞こえてきたのは男性配信者の叫び声と()()()()()()

 直後、閲覧禁止とされ見ることはできないと新聞記事に書かれていた。


「ネット上のコメントでは、取り壊された神社を彷徨っているのではないか、と騒がれてる。噂ではその巫女には結婚を約束していた()がいたらしく、それを破棄されたから自殺したって話だ」


 だから、男を探していたのか。

 祠の場所が元々、神社の跡であの女性が自殺した巫女。

 ────でも、それがなんで木のツタと関係が?


 夜が遅いため、湊さんはお泊まりに。

 部屋が空いているには空いているのだけど、ほとんど物置。

 そのため那月の部屋に湊さん、僕の部屋に那月が入ってきて……、


「………………」


 なんとも言えない空気。

 普通にベッドの中に入ってきた那月。

 大胆というか、普通過ぎるというか。

 こ、こういう時こそ無心にならないと。


 ────やっと眠れた頃にはとっくに朝を迎えていた。


 ♢


 翌日の学校にて、樹と三嶋さんに怒られた。

 なぜそんな状況になるまでその場所にいたのか、樹は申し訳ない顔をして三嶋さんは泣きそうな顔で頰を抓ってきた。


「良かったよ〜。本当にユキちゃんが無事で」

「ごめん、三嶋さん」


 体育の授業では見学、移動する場合も那月や三嶋さんが肩を貸してくれたりなど不便さは感じなかった。



 ……あっという間に時間は過ぎて放課後。

 湊さんに連れられて『乙女神社』についての情報を探しに元オカルト研究会があった場所に来ていた。

 場所は『視聴覚室』の隣の『資料室』。

 資料室といっても普段の教室と同じで左右に机と椅子が片付けられている。

 昔使われていたらしいけど、つい最近も手入れされた感じがする。


「オカルト研究会は今は廃部、部員もいなくなってしまって……それで私がこっそり掃除して物を置かせていただいてるんすよ」

「だから、こんな綺麗に……ん?」


「『恐怖!? 無人駅に潜む殺人鬼』?」


 一番後ろにある小さなロッカーの上に置かれていたオカルト本雑誌。

 大きく見出しにも記載している通り、あの無人駅近くの祠について書かれていた。

 先月発売されたばかりで、月刊誌らしい。

 ページを何枚かめくっていくと『乙女神社』についての話題が掲載されていた。


『かつてこの場所には、神社があったが巫女の自殺がきっかけで取り壊されることになった。

 だが、それで終わりではない。その巫女はあろうことか厳重に保管されていた神楽鈴(かぐらすず)を見知らぬ男に渡してしまった!?

 当然、神様のお怒りを受けた巫女は天からの怒りから免れるため神楽鈴を盾にしてしまい大切な鈴を一つ無くしてしまったという────』


 天からの怒り……なんらかの自然現象か何かで神楽鈴を盾代わりにしてしまい鈴の一つを無くした、と。

 何故、巫女は男に神楽鈴なんて?


「おっ、その記事。私も見たっすよ。今となってはより真実味が増したというか信用性が高くなったっすから。それに、神楽鈴。一つでも無くしてしまうと意味ないんすよ」

「どういうこと?」

「元々、神楽鈴は巫女が……()()()使う前提なので男が鳴らすと効果はないって聞きますね〜。しかも、七五三の数だけ並んでるらしいっすから一つでも欠けてしまえば意味はなくなるっすよ」

「詳しいね、湊さん」

「そりゃ〜、事前に下調べは基本っすから」


 それに比べて、僕ときたら怯えてばかり。

 ただ考えているだけなら、誰でもできることなのに何もできていない。

 『旧校舎』のときのように、人を目の前で失いたくない。


「ユキちゃん先輩、また一人で思い詰めてます?」

「え?」

「気にしなくていいんすよ。先輩後輩なんて関係なく頼り頼られて、信頼が生まれてそこから友情に芽生えて……だから! ユキちゃん先輩は私を頼ってください! 私も頼りますから」

「……うん、ありがとう。じゃあ早速なんだけど一度整理してみたいんだ」


 互いに意見を出し合い、話をまとめていく。

 数十分後、大まかに三つに分けてみることができた。


 一、『乙女神社』が取り壊された原因。

 ──巫女が神楽鈴を持ち出して、神の怒りを受けて壊れてしまった。


 二、巫女が強い魚毒性のある椿油粕で毒死。

 ──男に見捨てられたため?


 三、『乙女椿』と何の関係があるのか?

 ──木のツタだった手が怪しい。


「大体、こんな感じっすかね?」

「そうだね、あとは……」


 バン! と『資料室』の扉が勢いよく開かれる。

 扉の先に立っていたのは、那月だった。


「那月?」

「帰ろう、千乃。もうすぐあの人もお腹を空かせてる時間だから」

「え、あっ、ちょっと……湊さん、また明日!」

「はい、またっす!」


 強引に手を引かれながらも僕は何故、那月が怒っているのかがわからなかった。

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