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キミが消える未来(あした)から  作者: 秋桜
第一章『うんめーさん』
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泣いている女の子

 

 ……あの後、なんとか怒りを抑えた。

 だが、この日記の1ページを見る限り二人を邪魔する奴ら……つまり、親や教師、いじめていたクラスメイト。


 ()()()()()()()

 この臭いが物語っていると言える。

 ────でも、疑問が残る。

 殺せば終わるのに、何故()()が残っていたのか。

『天国』だというのならそのまま心中して終わればそれは、永遠とも言える。

 だが、もし……心中ではなく、()()()だったら。

 そんな憶測めいたことが頭を(よぎ)る。

 謎の解決を優先しよう……川岸さんのためにも。


「約束する。必ず終わらせるから、安らかに」


 手を合わせて川岸さんの前で約束する。

 当然、返事など返ってこない。

 だけど、そうしないといけない……罪悪感が心の中で勝っていた。

『第二学習室』を出てすぐの廊下にて、いきなりカバンの中にあるガラケーが鳴り出した。


 プルルルッ、プルルルッ!


 とりあえず、電話に出ることにした。


「もしもし……」


『……さがし、もの…………し……て……』


 プツッ……と言って、電話は切れた。

 探し物というのは、一体なんのこと?

 しかも、それをどうするのかわからないまま電話が切れてしまった。


 ────バックの中を一度整理しよう。


 日記のページが三枚、花柄の髪留め、鍵の束、安全ピン付きの名札、小包のチョコレート、懐中電灯に写真。

 粗塩、手袋……それ以外に目立ったものは拾っていない。


「おい、千乃。ゆっくり調べてる暇なさそうだぞ」


 樹に肩を叩かれたかと思えば、不意に目の前に()()()()()が立っていた。


『……ねェ……か、し……あ、ル……?』


 青白い身体で血走った瞳。床を猫背で歩く女の子の足には赤黒い何かで濡れていた。

 脳裏にフラッシュバックする、川岸さんの遺体。


「はぁ、はぁ……っ!」


 ……冷静に、冷静になるんだ。


『……ねェ、か、し……ア、ル……ッ?!』


「あるよ……でも」


 刹那、樹と目を合わせて一気に一階へと走った。


 ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ!


 物凄い音と共に後ろを走る女の子。

 否、もう呼んでしまっても構わない。

『うんめーさん』と。


『ォかシ、チョォォダ────いッ!!』


 今にも襲いかかって来そうな『うんめーさん』。

 僕は、バックから小包チョコレートを手掴み感覚で持つと背後に投げる。

 ……よし、視線が完全に逸れた。


「樹! 僕がこれからすることに合わせて投げて!」

「何か策があるんだな!? わかった!」


 小包のチョコレートをパクパクと口に放り込み、満足していないのかこちらに向かって再び走り出す。


「樹! 今!」

「おう!」


 そう言って『うんめーさん』に向かって……粗塩を振りかけた。

 最初は何をされたか不明だったけど、次第に何をされたか理解してもがき苦しみ出した。


『ウワアぁぁアァアアッ!! 痛ィ! 痛ィヨォォ!』


 効くかどうか賭けだったけど、どうやら当たりのようだ。

 『うんめーさん』が再び走り出した時、樹に渡していたのは家から持ってきた粗塩。

 粗塩は本来、清めの塩としてお葬式とかに渡されるものが多いけど……僕が持っていたのは昔、ある人に貰っていたから。

 しかも、それは穢れを払う厄除けの塩なためダメージは大きいはず。


『イヤダァ! イヤダァァァァッ!!』


 青白い身体がだんだんと歪な姿に変わっていく。

 先ほどまで細かった身体はさらに骨のようになっていき、髪の毛は白髪だらけの老婆のような色合いに。

 声からわかる通り、だいぶ弱ってきているように見える。


「どうする、このままかけるか?」


 このまま……そうだ、このままケガレを払ってしまえばいい。

 川岸さんの仇も、今まで居なくなっていた女子生徒の無念も、全部消せる。

 さぁ、やってしまおう。

 お前が生き残るにはその手段しか────!


『────女の子は泣かせちゃいけないの』


 頭の中で響いた、亡き姉の言葉。

 ────泣かせちゃいけないから、この時はこうするんだよね、お姉ちゃん。


『イヤダァ、イヤダァァァッ!!』


 僕は『うんめーさん』に近づくと、そっと頭を抱き寄せて優しく撫でる。


「ごめんなさい、痛かったよね。寂しかったよね」


 泣いていた声がゆっくりと、落ち着いた感じになっていく。

「大丈夫だから、泣き止んで」と言って頭を離すと名残り惜しそうな顔を浮かべるや否や、再び泣き始めてしまった。


『……ケ、ィカ……ゴメン、なサい……わたし、ナクした……!』


 探し物……もしかして。

 バックから『花柄の髪留め』を取り出すと、両手にしっかり握らせる。


『こ、レ……け、ぃか……の……』


「大切なもの、なんでしょう? 今度は無くさないようにね」


『────ありがとう!』


 真っ白な光に包まれて『うんめーさん』は消えた。

 最後に見た姿は、『うんめーさん』ではなく一人の少女の姿だった。

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