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ドッキリを撮ろうとしたはずなのに…。

作者: 神名代洸

仕事で番組を作ることになった私はまず何から手をつけようかを悩んでいた。

ありきたりでは視聴率が取れない。

やるからには欲しいと思うのは当たり前だろう。

そこで思いついたのはドッキリ。ただのドッキリでは面白くない。その為、撮影場所も探した。

見つかったのは某場所だ。

そこに画材を搬入し、組み立て、設置した。後はそう…騙す側と騙される側だ。

用意したのは今時の人気アイドル。

どちらも男性だ。

女性も少しは用意したのだが、圧倒的に男の方が多かった。人気者につきものの受け狙いだ。


それぞれが数人のグループになってある場所に置いてあるものを撮ってくると言う簡単なもの。ただし、途中では、恐怖を煽る為のセットも用意されている。


司会者はベテランのアナウンサーだ。

要領良く話を進めて司会を進行していく。

そしてようやくゲームスタートとなった。

一人一人に懐中電灯は渡してある。

いざとなったらみんなで灯りを灯せば場所はわかる様になっている。地図も用意されていた。コレはグループにつき一枚のみとなっている。

なくしたら大変だ。



はじめにやってきたのはお笑いタレントの女子と、男性アイドルグループの3人だ。

どうやらここは廃墟らしい。

入り口から雰囲気が出ていた。

あちこちの壁が剥がれている。

窓ガラスも割れていて危なそうだ。でもそう言うのはスタッフがチェックしてくれてるから大丈夫か。


中に入ると廊下らしき場所に出た。

人一人が通るのがやっとと言うところか?


暗い…。


とても…。


静かだ…。


そこに突然パリン!という何が割れる音が聞こえた。

びっくりして驚く面々。思わず叫ぶ者もいた。

スタッフはついて行っていない為、出演者に小型カメラを持たせている。その様子は離れたモニター越しに写っていた。



「なぁ、こっち写すなよ。かっこわりーだろ?」

「そんな事よりか手が震えてるぞ?怖いんだろ?」

「こ、怖くなんかないさ。こんなんでビビってたらまだ始まったばかりなのに持たないじゃんか。」

「だよな〜。じゃあ先に進もうか。」

女子は半ベソを描きながらも男子の後をついていく。


通路を曲がり、広い場所に出た。

広いと言っても普通くらい。畳8畳分くらいか。

物が散乱しており、何かの台らしき場所だとわかる。

大きな電球が固まって円になっているからここは何かの手術室だったのか…。

あたりから何か匂いがした気がした。…そう、それは血の匂いだ。

鉄臭い匂いが漂ってきた。

グループ内のみんなは怯えていた。

だが誰もここから逃げたいとは言わない。ここで目に止まれば他の番組でも使ってもらえる可能性があるためだ。





カタッ。





小さな音がした。





ズズーッ。




今度は何かを引きずる音だ。




皆その場で固まっていた。

最悪の場合はここから出ればいいだけなのだが、音がしたのが出口側だった気がしたのだ。だから動けなかった。


恐る恐る音がした方へ皆それぞれの服を掴みながら歩いていく…。こんなの予定と違うんじゃないかと思ったが、誰も何も言えなかった。ただもっと人がいる場所に行きたかった。ただそれだけだ。


建物から少し顔を出すが、そこには誰もいなかった…。本当なら誰ぞかんぞいるはずなんだが。これもドッキリのひとつか?とも思ったが、足元には逃げ惑うような足跡が残されており、皆震え上がった。


「おい、これ、ドッキリ?」

「まさか…、そんな話聞いてないよ?」

「私も聞いてない…。いったいここで何があったの?」

「と、とにかく人を探そう!バラバラだと何かあったらやばいからみんな固まって行こうぜ!」

「そ、そうだな。その方が何かあった時に対処できる。」

「でも何処へ行けばいいの?分かんないよ〜。」

とりあえず小型カメラは回したまま動いた。

もらった地図を手にウロウロとしていたら、目の前をさっと何かが通り過ぎた。恐怖で叫びながらも懐中電灯を当てると黒猫の姿が見えた。

暗いから気づきにくいのだ。


それから5分ほど歩いただろうか、建物の影に何かを見た気がした一人が懐中電灯の明かりを当てた。するとそこにはスタッフが2人縮こまって座り込んでいた。



「よかったぁ〜。いたよ。あとの人は何処?」

「……分かんない。分かんないよ〜。突然黒い塊がやってきて暴れ出したから皆散り散りに逃げたんだもの。」

「またまたぁ〜、これ、ドッキリでしょ?」

「そうだったはずなのに、……そう言う風に聞いてきたのに、ここ…ヤバイよ。さっき携帯でここのことざっと調べたらヤバイ場所だったんだよ?監督、知っててここ選んだんだ…。やだよ〜。帰りたいよ〜。」

スタッフの2人は泣き出していた。

でもその場にはいられないのでみんなで固まって歩く事に。そんな調子で1人、また2人とスタッフが見つかるが、監督と助監督の姿が無かった。

まだみてない場所はまだあるが、全員で20人もなる大所帯が一緒に移動は大変だった。


目の前に片足の靴が転がっていた。その近くに黒い点々が…。そこを懐中電灯で照らすと赤い血だった。

「ヒー!」「まっ、まさか。まさかな。違うよな?おい、ここのはセットか何かか?」

「いえ、ここには何も触ってません。」

「じゃあ、誰の血?」



「うわぁ〜〜〜!」


遠くで声が聞こえた。誰かの叫ぶ声だ。

地図を確認して皆で向かう。

そこには誰かが倒れていた。



「…助監督!大丈夫ですか?助監督!」


体を揺すられ少し意識を取り戻したようだ。皆持っている懐中電灯の明かりを助監督の体中に照らし怪我とかしていないかを確認した。額を少し切っているくらいで目立った外傷はなさそうだ。後は監督が見当たらない。


「監督ーーー!監督!何処ですか?」


返事はなかった。


意識を取り戻した助監督に聞いてみた。すると助監督はブルブルと震えだしてこう言った。


「ここはきちゃダメなところだったんだ。オカルトマニアでは有名な場所だったんだよ。監督は、監督は知っててここへ。そしてアレは監督を。」

「アレってなんですか?」

「アレは霊だ。この地に取り憑いてる霊に違いない。だって突然現れては消えて、消えては現れてを繰り返して…。」

ガタガタと震え出した助監督にこれ以上聞くのは今は得策ではないと皆で話し合い、監督を探したが結局見つからなかった。携帯を鳴らしても【留守番電話に切り替わります。】としかならなかった。

仕方がないのですぐに警察に捜索願いを出したが、家族ではない為受理されなかった。

監督は一人暮らし。家族である両親はすでに他界。兄妹がいたので直ぐに捜索願いを出してもらうようお願いした。



それから番組の方はと言うと、お蔵入りとなった。

監督が行方不明になっている為、何ともならなかったのだ。





それから1週間後、監督は近くの川で水死体で発見された。死因は溺死。

謎だったのはその川、大人の腰くらいの深さしかないのに溺れた事だ。

何があったのか、誰もわかるものはいなかった。



そのニュースは関係していた者達を震え上がらせた。

あの番組は呪われてるんだ。

あの場所は行っちゃいけない。

噂はあっという間に各局内に伝わり、今では知らないものはいない。




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