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ちょっぴり不幸な私の生活  作者: 飛鳥文化アタッカー
イロハニホヘト回遊譚
144/151

開拓って実際にやると大変なんだろうなぁって


魔法学校シリーズの建築物の構想を練り始めた日から2週間後。つい昨日、やあっと内装も謎解きも仕掛けも事前の要望した何もかもが完成したのをソフィアに教えたら、昨日からずっと大興奮で今も現在進行形で探索中である。


一応作ったので、NPCとの交流も深められるようにはしてあるし、原作に登場するキャラクターとの会話もできるようにはした。まぁソフィアは交流よりも謎解き仕掛けって感じなので、今の所NPCは眼中にないっぽいけど。


「権能………んー………」


今日の私は、更なる能力の向上を目指すべく、周囲に誰一人として存在しない場所で揺蕩っていた。具体的な場所はというと、イ型世界の宇宙空間、それも"超空洞"や"ヴォイド"と呼ばれている場所である。


超空洞がどれだけ空洞なのかと言えば、約二億光年に渡って銀河が全く存在していないレベルだ。実際に確認してもマジで何もない。惑星も何もない。これが虚無ってやつかぁってなるレベルには何もない。


しかし、本当に何もないというのは、思考のみに集中するにはうってつけであるという事だ。


「権能以外に………何か、あるかしら………?」


今の私が求めているのは、更なる力だ。権能は確かに、神の技術でああると思う。ではこれ以外何もないのかと問われれば、そんな事はないだろう。


例えば、権能は最上かもしれない。ではその反対となる最下は?そもそもこれには上と下しか存在していないのか?右や左、奥や手前といった別方向はどうだ?それから、権能は最上だと仮定しているが、権能以上のモノは無いと断言できるのか?


やっている事はこんな側から見たら馬鹿みたいに見えるかもしれない思考だが、これはとても大切なものだ。何せ、今が最上だと認識する奴はそこで停滞する。現状に満足するからだ。


しかし、今が経過途中であると認識する奴は更に上に行ける。今が最上ではなく途中であるなら停滞はせず、更なる進化や成長が為せるだろう。これが世間一般において“向上心"と呼ばれるモノである。現状に満足せず、更なる高みを目指すのだ。


「最下は何かしら………」


権能を"最上"と仮定するとして、ではその反対である"最下"は一体何だろう。恐らくは、自我の強さの発露みたいな権能とは違って、自我の弱さの発露みたいなチカラになると思われる。具体的な内容はどうしても推測が必要になる。一番簡単に見つけられそうなのは、権能の性質を反転させる方法だろうか。となると、ふむ。


"己の性質由来の世界を展開する術"が、権能と呼ばれる技術である。その内の大半を占めるのは、権能が文字通りに"世界を展開する術"である、という所だろう。であればその反対、"世界を縮小する術"こそが、権能を最上とした場合の最下だと言えるのではないだろうか。


しかし、世界を縮小とはどういう事だろうか。自我の強さではなく弱さの発露であるとも推測できるが………自我の強さは変わりがないとか?グラフでX軸を動かしてもY軸が変わらないように、反転しても変わらないモノだってあるだろうからな。何を反転させるのかが重要になるだろう。となれば、自我の弱さではなく他我の強さ?うーむ、分からん。


「まぁ………これで充分ですわね」


とりあえず、"最下"の定義は完了した。"世界を展開する術"である反対の"世界を縮小する術"こそが最も下にあるモノだ。少なくともそう判断した。


では次、左右や前後を考えてみよう。とは言っても難しい問題だ。最下は最上たる権能を反転させて考えてみればそこそこ容易かったが、左右や前後はそれでは分からない。これまでは同じY軸の反対を求めていたから良かったものの、左右となるとX軸、前後となればZ軸までもを考えなくてはならないからな。それぞれの軸に対応するのが何かから考えなくてはならない。


うーむ。"世界を展開する術"の反対が"世界を縮小する術"なのだとしたら………"自己を展開・縮小する術"が左右で、"世界を分割・収束する術"が前後………とか?左右の移動で世界と自己が反転し、前後の移動で展開・縮小が分割・収束に変わっただけではあるが………イメージとしてはこんなんだよな。


「うーむ………むー………」


結局、この日は何時間も上下左右前後について考えていたが、結局しっくりするような理論は思いつかなかった。まぁまだ初日だしね………これからコツコツ考えていこう。









超空洞で考え事をしていた日から6日後。今日の私が居るのはニ型世界である。つい数日前にイモータルから、また配信を一緒にやらないかと誘われたので、素直に誘われたのだ。


「今日のゲストは魔法少女デーモンです」


「よろしくお願いしますわ」


本日やるのは、とある島でのスローライフを送るだけのほのぼのゲームの、視聴者参加型配信らしい。私もやっていたゲームなのでついでに遊び回ろうという事らしい。


「では早速、デーモンの島に遊びに行きましょうか」


「別に良いですけれど、そこまで整備とかしてませんわよ」


「おや、片付けが出来ないタイプでしたか?」


「そうではなくって………ほら、同じ媒体だと島が共有でしょう?(わたくし)の島は家族みんなでやってますから、色々とゴチャついてるんですの」


主にアリスの家近くが。


「何人かで共有ですから、島の中心に主要施設や住民の家を集めて、残った土地を四分割して使ってるんですのよ。(わたくし)の家は右上ですわ」


ちなみに、左上がアリス、右下がレイカ&フェイ、左下がマイマスター&妹様である。


様相としては、右上の私のスペースは完全に和風である。赤い橋に城みたいな家、家具や装飾の類も全て和風。何なら家の中まで和風尽くしだ。まぁ肝心の操作キャラは普段の私みたいな黒いゴスロリドレス+ガスマスクの不審者コーデだが。一応和服もある。


右下のレイカ&フェイのスペースは完全に都会の街だ。アスファルトや道路、車、電柱に自動販売機など、島の中に急に都会が現れるのである。しかし家の中は2人の好きな可愛いモノやらカッコいいモノやらが綺麗に整頓されてスタイリッシュに飾られている、完全趣味スペースだ。


左下のマスター&妹様のスペースは自然に溢れている。色とりどりの花が咲き誇る花壇に、全種類のフルーツの成る木々、広い畑などだ。時々生える雑草すらアクセントになっている。家の中は素朴な感じで、イメージはロ型世界の自室、つまり宿屋らしく、1階部分は食堂や宿屋のイメージだそうだ。2階の自室は2人の部屋そのままを再現している。


左上のアリスのスペースは、一応洋風なのだが、あちこちでモチーフがごっちゃになっている。局所的に同じモチーフが纏められているので入ることの出来ない構造である事もしばしば。しかしスチームパンクやSFは勿論、北欧や天空の島など、アリスのしたい飾り付けで溢れているのは分かる。それにしても狭いが。


家の中も部屋ごとにモチーフが違う。一階中央の部屋は海モチーフ家具の集まりなのに、奥の部屋は錬金術師でも住んでそうな部屋だし、右の部屋は雪国みたいな家具ばっかりだし、左の部屋は夏真っ盛りみたいな部屋だ。そして2階の部屋は宇宙やら星やらに関係する家具で溢れ、地下室は何故か地下鉄みたいになっている。モチーフが喧嘩してるんだよな。まぁモチーフ部屋だと思えばクオリティは凄い高いんだけど。


「デーモンの島はとても個性の出ている島ですね。どの区画がデーモンの場所なのですか?」


「右上の和風エリアですわ」


「おや、意外ですね。ゴスロリなんて着ているので、洋風なイメージだったんですが」


「まぁ和風も嫌いじゃないですし」


実際は、家具を集めていたら和風イメージの家具が多く出てきたからである。別に和風も嫌いじゃないのでそのままエリアのモチーフにしたまでだ。


「家の中まで和風尽くしですね。モチーフ統一、良いじゃありませんか。私も統一してますよ」


「貴女の島、完全ホラーなのですけれど………」


地面に血飛沫とか骸骨置いてある島怖いんだよな………しかもエリア毎に和風だったり洋風だったりホラー感が違うし。しかも巧妙なギミックも用意されてるからクオリティ凄いし。


「良いですよね、ホラー。私好きですよ」


「まぁ、貴女はアンデッドですしね」


軽く見積もっても不死身生物はアンデッドだし。なんて事を話したりしながら我が家の島を巡り切ると、イモータルは帰って行った。


「では、次は視聴者さんの島に行きましょうか」


ここからが視聴者参加型配信の醍醐味である。先に言っておくと、前座の私は視聴者達がゲームを起動する時間を稼ぐためのものだ。ゲリラで視聴者参加型してるからな。猶予がないと誰も来ないとか普通にあり得る。


という事で次の島は………おぉー。凄い。めっちゃ魔法少女風衣装が並んでる博物館みたいな島だ。


「これは………歴代魔法少女の衣装ですね。同期の衣装とかもあります」


貴女の同期って何十年も前なんですけど。え、そんな昔の人のやつもあるの?マジかよすげぇな。むしろこんなによく揃えたな………


「このゲームでは魔法少女の衣装を売ってくれる魔法少女グッズ専門家さんが居るのですが、彼女は定期的に島を訪れるのです。しかも売られているグッズの種類は頭、胴体、足、手などの装備部位毎に幾つかをランダムで売っているので、そう簡単に揃うとは思えないのですが………よくこれだけ揃えましたね。今ゲーム内に現存する魔法少女衣装全部あるんじゃないでしょうか?」


「あら、これイモータルではなくて?」


「おや、本当ですね。しかし………私のは衣装とは呼べない私服同然なので、他の子の中に混ざると凄い違和感がありますね………」


まぁ日曜朝の魔法少女アニメのキャラが着てるみたいな衣装の中に一つだけ明らかに普通の服だもんね。違和感が凄い。


「それにしても………本当に多いですね。あくまでも有名な魔法少女だけがこうしてグッズになるとはいえ、数十年もの積み重ねがこうなるとは………」


イモータルが感慨深そうに島内を巡っていると、この島のプレイヤーの家までやって来たので中に入る。どんな家なのだろうかと中を見れば、こちらはこちらで魔法少女だらけだ。


しかしこちらは魔法少女のフィギュアの博物館らしい。外は衣装でこちらはフィギュアと、本当に魔法少女が好きなのだろう。


そうして魔法尽くしの島を堪能したのち、掲示板に私達2人がやって来た証としてラクガキして次の島へ。そうして色々な島を巡っていき、配信時間が3時間を経過した辺りで、イモータルからそろそろ終わりにしようと提案された。特に断る理由もないので終わることにした。


「という事なので、そろそろ終わりますね。ふふ、かなり楽しめました。こういうの、またやりたいですね」


「やるとするなら事前予告しなさいな。今回みたいに繋ぎ要因として誰か連れてくるのはやめておきなさい」


「もう、言っちゃダメですって」


「いやバレてますわよそれくらい」


何ならコメント欄で書かれてたでしょうが。


「こういうのは様式美なんです。次回も似たように誰か連れて来ますよ。ほら、私以外の魔法少女も居てくれた方が視聴者さんは喜ぶでしょう?」


「まぁそうかもしれませんけれど、許可は貰いなさいな」


「それくらい分かってますよ。許可さえ貰えれば連れて来ます」


うわぁ、なんかもう言い方が怖い。すまない未来の被害者候補たる魔法少女達よ………私の番はもう終わったからどうもしないぜ………!


「ではさようなら、またいつか」


「おつかれですわー」


そうして、本日の配信は終了した。しかし、配信終了後もイモータルの部屋でダラダラとゲームをするのが最近の日課である。いやぁこの世界のゲームも中々に楽しくてね………


「デーモンも中々配信慣れしてきましたね。今度は単独でやってみませんか?」


「遠慮しておきますわ」


配信はト型世界だけでお腹いっぱいなのでぇ………ちょっと………嫌かなぁって。というか、この世界の人間に対して興味とか欠片もないのに誰かを楽しませるようなエンターテイメント出来ないよ私。


「むぅ、では今後も私と一緒なら良いですか?」


「それならまぁ、良いですわよ」


自分で用意するでもなく、エンターテイメントをするでもない………このポジションが一番美味しいだろうなっていうのもあるからな………実際楽だし。


「ではデーモン、格ゲーしましょうか」


「あら、ボコボコにして差し上げてよ」


「大丈夫です。100時間くらい追加練習してきましたから」


「随分本気ですわね………」


「私、負けず嫌いなので」


その後、イモータルと格ゲーした。ちなみに勝率は私が9割だった。こいつマジで私対策完璧にしてきやがる………普段の私から崩さないと勝てなかった………くそぅ。私も100時間くらい練習するかぁ………


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