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ちょっぴり不幸な私の生活  作者: 飛鳥文化アタッカー
イロハニホヘト回遊譚
141/151

私にも出来ないことはあるというか、そもそも私って別に全知全能なんかじゃないからね?


ソフィアに大量のアイスを買ってやった日から5日後。私はここ最近、大量に購入した漫画を読み漁っていた。一応先に言っておくが、買ったのは単行本タイプであって電子タイプではない。電子タイプはそのアプリが配信終了したらそれでおしまいだが、単行本タイプは保存しとけば無限に使えるからな。不老不死たる私にとっては単行本タイプの方が向いているだろう。


いやまぁ、別に小説だろうが漫画だろうが電子タイプだろうが単行本タイプだろうが、私のスマホで文章や画像を読み込んで無制限にデータを保存しまくってるので、別に単行本を買う必要はそんなにないのだが、まぁそれはそれ。こういうのは現物が欲しくなるもんなのだ。でもよくある保存用うんたらみたいなのではないので、普通に一冊しか買ってない。複数も要らんよ私は。


ちなみに本題はここからなのだが、私はそうして普段あまり触れていないジャンルである漫画を読み漁ったことで、少しばかりインスピレーションを得ていたりする。だから忘れないうちに早速実験だ!と、意気込んでやり始めたのはいいものの。


「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」


これが辛い。辛いというか、キツイ。なんというか、無理矢理箱詰めされて更に押し潰されてるような気分なのだ。物理的に圧迫されてるとかそういう訳ではないが、感覚としてはそういう感覚を味わっているのである。


そんなキツイ状態になっている私が今やっているのは、普段私が何気なく利用している権能の展開範囲、その縮小である。私の権能は最低の射程距離が世界一つなので、それよりも更に拡大拡張するのは余裕なのだが、狭くするとなると途端に難易度が上がる。


マジで難しい。自分よりも明らかに小さな箱に無理矢理詰め込まれてる気分になる。しかしそうして窮屈で圧迫されてる感覚を味わっていても、結果的に縮小できたのはほんの数センチ。世界一つ分からたったそれだけ小さくなっただけでそんな感覚なのだから、惑星以下の規模にするのにどれだけの感覚を味わうのか………新手の拷問かな?


「………うぐぬぁあ!無理!これ無理ですわ!」


漫画で出てきた技の一つを再現してみたかったのだが、流石に権能でそれを再現のは無謀だったかもしれない。一応権能も自己の領域を展開して発生してる事象だから、なんかこう上手くいくかなぁと思ってたんだけどね………元ネタの展開範囲が今の権能とは比べてマジで小さいから頑張って権能の展開範囲も小さくしようとしてたんだけど………そんなに上手いこといかないねぇ。


まぁ、ぶっちゃけ権能を最低射程距離以下に縮小する事にメリットとか皆無だから、やる必要があるのかないのかだったら別に全然欠片も無いんだけど………こういうのはロマンじゃん?それに今は不必要でもいずれ何処かで使うことになったりするかもしれないし、権能についての知見を得る事自体は全く無駄じゃないし。


「むぅ………」


でもそれはそれとして成功しなかったのが悔しい。いつか解決したいけれど………余程の変人でない限り、権能の最低射程距離は変えられないからなぁ。やはり最低射程から少しずつ縮小するしかないのか?


うーん………最低射程距離って、私の中のイメージで例えると数字の0なんだよね。数学とかだとマイナスってのがあるから分かりづらいけど、現実でマイナスなんて現象起こらないから、私も0から減らしてくってのが出来ないんだと思うんだよ。


例えば、リンゴがマイナス1個とか見たことないでしょ?少なくとも私は見たことがない。だからイメージできなくて、だから権能の展開範囲をマイナスにできないんだと思う。もしかしたら理系の人ならできたりするのかな?でも私文系だからなぁ。


「マイナス………んー………」


現実で視覚的に理解可能なマイナスの現象って何かあるかな………うーん………あぁ、強いていうなら温度はマイナスになったりするか。それで行くと標高とかもマイナスになるし、緯度や経度もマイナスになる。ふむ、これらの共通事項としては、明確な基準が前提になってるモノ、というくらいか。


んー………ダメだ。そこが分かっても、私の方でそれをどう活用すれば良いのかが出てこない。あるよね、情報はある筈なのにインスピレーションとかアイデアがとかが出てこない時って。個人的には数学とかのテストの時とかによくある気がする。


「あぁもう、これは後回しにしましょう」


アイデアが詰まってる時にあんまり深く考えてると、マジで思考がループして終わらないからな。権能の展開範囲を縮小するお話は後回し。こういうのは、いつかの私がふと思い出した時に何かしらの素晴らしいアイデアを思い付いてるだろうから、いつかの私にお任せしよう。


それに、今試したい漫画由来のインスピレーションは権能展開範囲の縮小だけじゃない。忘れない内にどんどん行こう。


「設定通りに作ると面倒ですから………まぁ、程々にしましょうか」


次に私が試し始めたのは、新たな悪魔の創造である。具体的には何をするのかというと、私が読んだ漫画作品に出てきた"悪魔"と呼ばれる存在の創造だ。


ただし、漫画で出てきた姿形や能力そのまま、という事にはしない。何せ、どうあれ漫画の中の世界だろうと他人の世界は他人の世界だ。私の構築する権能の内側で正常に動く訳がない。絶対に無数のバグが発生する。むしろ正常に動いた方が怖い。


簡単に言うなら、砂上を走る事が前提の車は雪上で同じ能力を発揮できないのと同じである。別に雪上用でなくても車自体は走れるが、事前に想定されている状況が違うので、力を十全に発揮できないのだ。砂上想定の車が雪上でも普通に動いてたら怖いだろ?少なくとも私は怖い。


これは漫画などの作品を元にした悪魔も同じで、どうあれ他人が構築した世界観の中で生まれた存在を、私が十全に扱えるのかと言われたら、それは無理だろうとしか。まぁ無理矢理魔改造するならいけるかもしれないが、その場合必要なコストが増すのでやりたくないんだよな。


「まずは………機能だけを移してみましょう」


しかし、だからと言って魔改造するしかないのかと言われれば、やりようはある。例えば今の私がやっているように、漫画作品の中で扱われている悪魔の設定の一部だけを使ってみる、とか。


今回なら、『知的生命体に恐れられている悪魔は力を増す』という機能をうちの子に適用する感じだ。これは元々漫画の世界において存在する法則やルールのようなモノだが、しかし卵か鶏かはどうあれ悪魔に関係のあるモノである。ならば私が使えない道理などなかろうよ。


まぁ、そんな機能を付け足した所で使い道があるのかと言われたら、別にそんなにある訳じゃない。強いて言うなら知的生命体の住まう文化圏への侵略行為とかには有効かもしれないが、そんな事をする利点がないならそんな事しないし、仮にするならわざわざこんな無駄な機能付けずに素のうちの子を無限に創造した方が早い。私の権能は数の暴力が基本戦術だからな。


でも付けてみる。だってこれが付けられるなら、漫画作品に出てくる悪魔の能力なら、何でもうちの子に付け足せるって事だもの。その為にも自己認識を正確にしなければならないが………どうだろう?一度でも出来るのだと思い込めれば上手くいくと思うんだが。


「………んー?」


一応、これで機能としては付け足せた、とは思うのだが………付け足せてるのか?これ。今本当に付け足せたのかを確認する方法がない。どうしようかな。


具体的な機能としては、自己を認識している存在から発生している自己に対する負の感情エネルギーを吸収し魔力に変換する機能なので、誰かに負の感情を抱かれればその通りに動くのだけれど………私じゃ無理だな。うちの子に対して負の感情とか抱ける気がしない。


私の知り合いに見せるってのもな………別に私が悪魔使いなのは知られてるからなぁ………んー、仕方ないか。イ型世界の悪人とかで試そう。どうせやるなら逮捕済みの犯罪者じゃなくて逮捕されてない大悪党相手にしとこうかな。さーて、良いのは居ないかなぁ?


今回の機能を試すのに適してるのは個人よりも複数人だから、相手はできれば組織が良いんだけどなぁ。それも、組織の端から端までぜーんぶ悪党な所。一方的な虐殺をするつもりはないけれど、最低限の危害は加えないといけないから、仮に被害が出た場合その方が都合が良いし。だって、生命体における最上の恐怖とは"死の恐怖"だからな。それに繋がる怪我や病気に対する恐怖ってのは中々のもんだろう?


そうだなぁ。目の前でさっきまで話し合ってた人間が血塗れの足首だけを残して消えたりとか、急に胴体に大きな穴が開いて倒れる人とか、人間では捉えられないスピードで潰されて壁のシミになる様子とか、とにかく恐怖させる方法なら幾らでもあるからね。それっぽく見せるだけならそういう幻覚を見せるだけでもいい。


いや………今回は幻覚の方が都合が良いか?殺すとその分知的生命体の総数が減るから、どうせなら襲う組織の全員を恐怖のドン底に陥れたが強化率も伸びるだろう。うん、そうだね、そっちの方が良さそうだ。


となれば、折角やるなら心を折るどころか廃人にさせるような幻覚を作りたいというのが人間でして。それか私が単に凝り性なだけか。兎に角、視覚聴覚嗅覚味覚触覚だけでなく第六感などのあらゆる感覚で恐怖を煽って煽って煽って、その後でほんのちょっとの一押しだけで心が崩壊するような、完璧な恐怖ってやつを味わわせたいよね。


良いじゃん良いじゃん。じんわり心を蝕むような粘着質な恐怖も、多彩なジャンプスケアによる唐突な恐怖も、沢山使って的確に人間の心を壊してやろうじゃん。こりゃあ面白くなってきたぜぇ。


そうなれば、まずは場所を吟味しないと。ホラーにおいてマップ構造の把握は最重要事項だからな。私が仕掛ける側だとしても、マップ構造は正確に把握しておかないと。しかしその為にはまず襲撃する悪党どもの住処を探さないと………うぅむ、どれにしようかなぁ?


「………あら、こことか良いのでは?」


そうして最低でも数十分はどこが良いのか吟味していた私が最終的に決定したのは、『ノーブル』というギャング集団である。トップから末端まで全員が悪人で、誰一人として潔白な存在は居ない、後ろ暗さの極致みたいなところである。ちなみに、こんな名前だが日本発祥の集団であるらしく、本部は立派な日本邸宅であるようだ。


主な収入元は麻薬密売。世界各地に支部があり、その支部を経由して世界各国の治安が悪い地域で麻薬を売って稼いでいるらしい。また、中東の山奥に大規模な麻薬畑と麻薬の製造工場が複数あるようで、そこが今メインで活動しているようである。


また、麻薬由来の莫大な資金源によって各国の政界にも手を出しているらしく、なんかもうやりたい放題なやべー集団であるようだ。


一番厄介なのは、所属人数があまりにも多過ぎる事だろうな。どんな浮浪児であっても願えば所属可能で、所属後はある程度の教育と生活の補助を受けられるのだから、そりゃあ所属人数も増える訳である。しかも組織側がそうやって恩を売りまくっているから抜け出したいと思う輩も少なく、例え抜け出したとしてもこれまでの環境以外でそう簡単に生活出来ないから結局戻ってしまうと言う、マジで悪辣な罠だ。


あまりにも大きな組織である為なのか各国の警察も容易に手出し出来ず、例え手出ししたとて逮捕されるのは末端のみ。組織の上は決して捕まらないという、存在自体が悪みたいな奴らである。


「あらあらあら………ふふっ、楽しめそうではありませんの」


けれど、私に目を付けられたのが運の尽きだったな。私が手を出し始めた瞬間にもう"終わる"んだから、それまでの人生を存分に楽しんでおくと良いよ。どうせ終わった後にそんな事を考えられる精神状態になる訳がないし。


だってTRPGで言うなら、SAN値ゼロを通り越してPOWゼロを目指す予定だからね。正気度じゃなくて精神そのものを削り切ってやらぁ。まぁそれはそれとして正気度もできる限り削っていく予定ではあるんだけれど。


「何処から削っていきましょうか………工場?それとも末端から………?くふ、くふふ、くふふふふふ………」


これから訪れるであろう多くの愉悦を幻視し、私は嗤う。ふふふ………こういうの事をやったりしてるから、ソフィアとかに生粋のサディストじゃん………とかって若干引かれるんだろうな。でも本当だから言い返せない。ぐぅ。


まぁいい。どんな恐怖の世界を創り上げるか………それが決まった日が、彼ら彼女らの最後だからな。それまで存分に笑うといい。私はその様子を見て嗤おうじゃないか。


ちなみに、どうやって恐怖を味わせようかと考えている最中の私を見たソフィアが、お主ってなんだかんだ言って悪魔じゃよな………って引いてたらしいのだが、マジでいつの話?私そんなに集中してた?私言い逃れできないくらいのサディストじゃん。やばぁ。


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