六話 西に旅に出ます
あれから数日。魔族の山賊に襲われた村は復興のため男たちが精を出していた。森の木を切り家を建て直そうとするもの、踏み荒らされた畑を直すもの色々いた。
そんな中俺達もまたそれを手伝っていた。俺は木々を運び、ルーシィは料理を作る。彼女の料理の腕はかなり上手いと断言できる。なんせ料理スキルが高いから、よくバフつきの料理を作って貰った記憶もある。
その記憶に間違いはなく、ルーシィの料理は大変評価された。本当に俺には勿体ない嫁だ。ただ掃除や洗濯のスキルは【人魔英雄物語オンライン】にはなかったから、そっちは全く分からないけど。まあできなかったら俺が頑張ればいいさ。一人暮らしだから掃除洗濯はそこそこ出来る方だと思うし。
そうして復興を手伝っていたんだけど、ある程度進んだときにもういいと言われた。なんでも恩人にこれ以上働かせるのはいけないと言うことらしい。俺は気にしなくて良いって言ったけど、村長曰くこういうことはしっかりとしないと、何時までも世話になってしまうからと言うことらしい。
ハッキリと断られたので、こちらとしても無理してまで続けるのはおかしいと思い、手伝うのはやめた。そうして復興を続ける村に手伝う訳でもないのに居続けるのは迷惑じゃないかと考えた。そうして俺とルーシィはこの村から出ていくことを考えた。
そのことを村の皆に伝えると、全員別れを惜しんでくれた。元々旅人と話を伝えてたからか、あまり引き留める人はいなかった。子供たちはかなり引き留めようとしたけど。沢山遊んであげたから懐かれたらしい。それでも俺達は出ていくことにした。
元々出ていくつもりだったし、今回の件で尚更固まった。ルーシィと一緒にこの世界を見てみようという意思が。俺が知っている魔物かいたりしたし、他の国も気になる。俺が昔から旅行好きだったというのもあるが。
なんにしても出ていくことが決まり、復活途中というのにお別れの宴会が開かれた。結局いつものようなどんちゃん騒ぎになり、若干苦笑いになりつつ宴会を楽しんだ。
そうして別れの時。村人全員が俺たちを送ってくれた。村長から子供たちまで全員。それが少し嬉しかった。
「また来いよ! それじゃあ達者でな!!」
村長にそう見送られ、俺達は村を出ていった。
「ゼノ、まずどの国にいくのかしら」
ルーシィの言葉に耳を傾け、そうだなと考える。そして頭に浮かぶのはここから近い国【イーグル】と【コマドリ】のどちらか。
「そうだな。いきなり軍事国というのはアレだし、まずは伝統のコマドリに向かってみようか」
村を離れてある程度したところで擬人化を解除し、歩幅を合わせて進む。この先に待つ異世界の国、知らぬ文化や伝統に心踊らせて、俺達は旅立つのであった。