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異世界転生したので嫁といちゃラブします  作者: しじる
序章 異世界へようこそ
5/10

五話 山賊と戦います

 パチパチと木製のなにかが燃える音が聞こえる。

 鼻腔に嫌な煙のにおいがする。

 意識が微睡から無理やり引き起こされるような感覚がする。

 次第に声が聞こえてきた。

 あたりをつんざくような悲痛な悲鳴。

 なんだなんだと、俺はそれで目が完全に覚めた。するとさっきよりも鮮明に悲鳴が聞こえてくる。それは村人たちの声だった。

 何かに襲われているのか。突然のこの悲鳴や怒声に混乱していたがそれだけははっきりと分かった。なんにしても外に出なければ始まらない。

 自分の右側に視線を向ける。ルーシィはこの状況でも眠っていた。睡眠が好きな子だから仕方ないと言いたいがそんなことを言ってる場合ではない。

「ルーシィ起きろ! なにかやばいぞ!」

「んぁ……なに?」

 寝惚け眼が可愛らしいがそんな場合じゃない。

 ルーシィには悪いと思うが体を揺すって意識を早く覚醒してもらう。カクカクと何度か揺さぶられようやく意識がクリアになったようで、少し不満気だった表情はすぐに異常を理解したとばかりにキリッとしたものに変わる。

 すぐさま服を着替えて、俺たちは何が起こっているのか理解するために外へ飛び出した。

 外は酷いものだった。

 村の各所に火の手が上がり、小鬼のような存在が村人たちを追い回している。

 そこそこ大きいか?その小鬼は大体俺の腰くらいのサイズだろうか。

 たしか俺のアバターは2メートルくらいあったはずだから。

 なんにしても、松明を持ったそいつらが村に火を放っているのは間違いない。

「おお! 兄ちゃんに嬢ちゃん無事だったか!」

 声が聞こえ振り替える、村長だ。

 手に緑の液体が付いた斧を持ってた。

「何が起きてるんだ」

「山賊だ! 魔族の山賊が夜襲してきたんだよ! 兄ちゃんたちは急いで逃げな!」

 そういって村長は走って行った。

 魔族の山賊だって?

 そういえばそんな話があった気がする。

 ここで俺は考えた、今俺が持ってる力はなんだ?

 これだけの力があるのに逃げるのか?

 楽しく過ごさせてもらった村人たちを捨てて?

 そんなのはごめんだ!

 グッと握った拳に力が入る。

 もうここはゲームの世界ではない。

 ダメージを負えばきっと痛い。

 アンデッドの性質、【不滅者】があるとはいえ死ねる回数は戦闘毎に3回まで。

 仮にこの世界の魔族が強くて、3回以上死ぬことがあったら……

「本当に死ぬかもしれない」

 怖い、怖いさ

 だけど、ここで村人を見捨てて逃げるほうが怖い。

 何より、ルーシィに、顔向け出来ない!

 力があるのに恐れて逃げて、それを見たルーシィはどう思う?

 情けない、そう思われる。きっと思う。

 ルーシィに嫌われるんじゃないか?

 それだけは死んでもごめんだった。

「ゼノ?」

 ルーシィの瞳が俺の目と重なる。

 その綺麗な瞳は、優しかった。

 だけど、それが失望に変わるかもしれない。

 そう考えたらもう決意は決まっていた。

「守ろう、皆を」

「ゼノ……ええ」

 走り出した、二人で。

 村人たちを助けるため。

 魔族を倒すため。

 そうして走ればすぐに見つけたあの小鬼。

【人魔英雄物語オンライン】のモンスターと見た目はほぼ一緒だった。

 おそらくゴブリンだろう。

 ただ、俺の知ってるゴブリンよりも小さかったゆえに気づくのが遅れた。

 だが敵がどういう存在かは重要じゃない。

 倒せるかどうかだ。

 俺のゲームでの職は【ヴァンガード】。

 拳を主体とした回避盾。

 ルーシィは【プレデター】。

 大型斧で戦う近接火力職。

 どちらが先に攻撃を仕掛けるかは明白。

 ゴブリンの前に躍り出る。

 奴らの視線がこちらに向く。

 行動に出ようとする。

 その鼻っ柱をへし折る。

 拳をグッと握り込み、左手を前に出す。

 左手を開きそれを照準にしてゴブリンの顔面に狙いをつける。

 スキルを発動する。

 ヴァンガード基本スキル、その1!

「ファースト……インパクト!!」

 拳がゴブリンにめり込む。

 音が遅れてやってくる。

 肉の潰れる感覚が気持ち悪い。

 それを我慢して殴り抜ける。

 ゴブリンの首が達磨落としのように吹き飛んだ。

 首が消えた体は鮮血の華を咲かした。

 それは緑で汚ならしい。

 ゴブリンのヘイトは俺に向く。

 回りにいるのは……10程か?

 1匹やったからあわせて11か。

 止まってる暇はない、ゴブリンが動き出す前に拳を動かす。

 今度はスキルなして殴り抜ける。

 右、抉るように、腰を捻り、遠心力をのせて。

 螺旋を描いて顔面に。

 また頭が宙を踊る。

 これで二つ。

 喧嘩なんかしたことなかったけど、体が補正してくれているのか?

 まるでずっと戦ってきたかのようにスッと技や拳が出る。

 裏拳、膝蹴り、前蹴り、肘打ち。

 リズムを奏でるように打ち込めば、面白いようにゴブリンが倒れていく。

 遊んだことはないが、無双ゲームとはこんな感じなのだろうか?

 最初にあった恐怖感は、戦ううちに消えた。

 不思議だ、むしろ昂揚感を感じる。

 俺の怒濤の攻めに怯みを覚えたか、ゴブリンが止まる。

「今だルーシィ!!」

 俺の声に反応してルーシィが飛び出す。

 その手にはまるでピザカッターのようで、チェーンソーのようでもある特殊な武器が握られていた。

【魔斧・グリモア】。

 愛称もピザカッター。

 金属が擦れ合う不快感を感じる音をたてて、グリモアが刃を高速回転させる。

 体を右回転させながらルーシィがグリモアを振るう。

 ゴブリンが複数体一瞬でミンチになる。

 流石愛しいルーシィ、一体一体潰してる俺と違ってまとめて仕留めてしまった。

 いや、そもそも盾と火力じゃそりゃ殲滅力に差が出るって言うのはわかってるが、どうしても贔屓目で見てしまう。

 そうそうグリモアには1つ弱点がある。

 それは煩い。

 振るわれる度にギャリギャリとした不快な金属音が鳴り響く。

 それも大音量で。

 そうすれば嫌でも注目を集めるわけで。

 ほらすぐ集まってきた。

 ゴブリンや村人たちがなんだなんだと。

 村人たちは物陰に隠れているが、ゴブリンは堂々出てくる。

 今度は10以上は間違いなくいる。

 ざっと見てもわからないほどだ。

 それでも村を救うにはやるしかない。

「行けるかルーシィ」

「軽いわ」

 俺の言葉にそう返す。

 ルーシィの表情は変わらない。

 ジト目で、だけど視線はゴブリンを捉えている。

「……一人で行けるかい?」

「もちろんよ」

 数が多い、別れたほうが得策、

 そう思った俺はあえてルーシィと別れることにした。

 俺が右、ルーシィが左。

 単純だがかなり有効なはずだ。

「いくぞ!」

 俺が声をあげて跳ぶ。

 ルーシィも跳び、視界から外れる。

 だが音でわかる。

 煩いグリモアが教えてくれる。

 こう言うときありがたいグリモアの騒音。

 そんなことを考えつつ拳を振るい出した。

 そうして拳を振るい続け、ルーシィのグリモアの騒音を聞き続けていると、ゴブリンはいつのまにか全滅していた。

 そこでようやく実感した、俺達は勝ったのだと。

 俺のはじめての戦闘は、こうして白星に終わった。

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