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異世界転生したので嫁といちゃラブします  作者: しじる
序章 異世界へようこそ
3/10

三話 情報収集します

 扉の向こうは広大な森林が広がっていて、どこまでも続いていそうなほど鬱蒼と生い茂っている。俺の記憶が確かならこの光景はおかしい。なんせ俺のマイダンジョン周辺は、アンデッドである俺達が住みやすいという設定のもと毒沼がある湿地帯のはず。

 だがどう見たって俺達の目の前にあるのは森林。とても目に良さそうな緑が青々と繁っている。これにはルーシィもどうしたのだといった驚きの表情で固まっている。

「ルーシィ?」

 彼女に声をかければ固まっていた状態から動き出す。これは一体どうしたものなのかという表情は変わらなかったが。

「見ての通りだ、俺達の知らない場所になってる。旅以前の問題だ」

「……みたいね」

 旅ができそうにない。そう理解したルーシィの表情が少し嬉しそうになったのを俺は見逃さなかった。やっぱりルーシィも俺と会えなくなるのが寂しくて辛かったのだと再度理解して、嬉しくもあり恥ずかしくもあった。

 それはそれとして、これで俺は確信した。俺達は何故か知らないが間違いなく異世界転移したのだと。でもそれは同時にサービス終了による永遠の別れから俺達を救うことにもなったので、仮にこれが神による異世界転移だとするなら俺はその神に全力で感謝を述べたい。ありがとうと。

「でもゼノ、どうして外が変わってるってわかったの?」

 ふとルーシィがそんなことを聞いてくる。俺は少し返答に困った。なぜならゲームであるはずの【人魔英雄物語オンライン】では実装されてない嗅覚や触覚があったり、NPCであるはずのルーシィが自分の判断で喋っていたり、ストレージが表示されないなどの多くの理由があったからと言えれば良いのだが、先程までNPCだったルーシィにそれを言っても伝わるか分からなかったからだ。

「朝起きたら、いつもと違う空気を感じてな」

 とりあえずそれっぽいことをいって納得してもらうことにした。ルーシィは少し考える素振りを見せたが、やがてこういった。

「まあいいわ。貴方って昔から不思議な所があったものね」

 納得してくれたのだろうか、少し不安が残るがまあよしとすることにした。

 さてこの現状どうしたものか。いきなりなんの前触れもなく異世界へと来てしまった。運が良いのかマイダンジョンと一緒にだったから、物資などに困ることは無いだろうけど。なんにしても周囲の探索は必要そうだ。そう思った俺は早速ルーシィと話し合った。今からどれだけの範囲を探索するのかを。まず見知らぬ土地だし単独行動は危険と判断して、二人で辺りを調べることにした。範囲も決めて、だいたいダンジョンから数キロ程度にした。

 こういうときドラゴンゾンビでよかったと思う。飛行を使えるため、空から楽に調べることができるからだ。やはり飛行できる種族は便利でいいなと改めて思った。人間体のままでも翼だけ生やして空を飛べるのもドラゴン系統の強みだ。もちろんドラゴンゾンビもドラゴン系統のためできる。そうして翼を生やして空を飛び、二人で辺りをゆっくりと見て回った。

 すると大体北西の辺りだろうか、そこから白い煙が上がっていて、人の居そうな感じを漂わせていた。勿論火事という落ちもあるが、その場合煙はもっとゴゥゴゥと巻き上がっているだろう。この煙はもっと落ち着いた、炊事の時に出てくるような静かな煙だった。きっとあそこには人がいるのだろう。

 思ったが吉日、俺とルーシィは早速その煙のもとへ向かってみることにした。勿論俺の顔は完全に怪物のそれなので、専用のアイテム【擬人化の玉】を使った。

 この【擬人化の玉】は有償服装ガチャの時の外れで、ルーシィのゴスロリを狙ったときに手に入れた副産物だ。使用中見た目が完全に人間になるもので、勿論怪物じみたドラゴンゾンビの人間体の頭でさえ人間の顔にしてくれる。俺はこの化け物じみた頭が気に入ってたので、使うことはないだろうと倉庫の肥やしになってたのだが。

「まさか使う日が来るとはなぁ……」

 しみじみと思いつつ使えば、そこには白髪で三白眼の赤い瞳をしたイケメンがいた。まあ擬人化という時点で何となくイケメンになるんじゃないかと思っていたが、これはやりすぎだろう。俺だったらこんなイケメンには絶対作らない。

 だけど白髪赤目という点はよかった。元々俺がアルビノ好きと言うのもあるが、ルーシィとお揃いみたいで少し嬉しかった。ルーシィは元の顔のほうが好きのようだったが。

 まあそれは置いとき、俺達は煙のもとにたどり着いた。一軒家程度だと思っていたがそこには村があった。大きさは大したことはなさそうだし、見た感じせいぜい人口50人ほどだろうか。村に二人で足を運べば、村人の一人が声をかけてきた。

「これはこれは、貴族様でしょうか?」

 貴族? 誰のことを言っているのだろうと思ったが、そうだ自分の服装。それで思いだし俺はすぐに違うといった。こういう世界の貴族は偏見だろうけど傲慢で酷い奴な印象がある。それと同じ扱いなのは少し嫌だった。

「なら旅のかたですか?」

 その言葉にそうだと答えた。その方が色々都合が良さそうだったからだ。遠い場所から来たといえば土地やこの辺りのことを知らなくても説明がつく。

「それなら歓迎します、村長はこちらに」

 そういって、最初にであった村人は村長の元へ俺達を連れていってくれた。そうして会った村長は体が大きく気前がいい人で、ガタイも良かった。細い俺の人間体とは大違いだ。文字通り筋肉もりもりと言った様子で、村長には皆からの投票でなったらしい。

「こんな小さな村だが、まあのんびりしていってくれ!」

 ガハハハと豪快に笑うのも特徴的だった。その言葉に甘えてのんびりと村を見ていると、俺達を歓迎するささやかな宴が急遽開かれることになった。なんでもこの村始まって久しぶりの客らしくて、どうしても歓迎の宴を開きたくてしかたがないらしい。それってようは騒ぐ理由がほしいだけではと思ったが口には出さなかった。

「ここの人たちは随分と祭り好きみたいね」

 とはルーシィ談だ。そうして宴が始まるまでずっと村を見て回っていた。良くあるファンタジーの田舎と言った風景で、畑を耕していたり、子供が元気よく遊んでいたりと、なんというか初めて来た場所にしては懐かしく感じる。これが田舎パワーかと訳のわからない納得をしつつ、この世界の通貨や土地、国のことも村人達に聞いてみることにした。

 なんでもこの世界は四つの国があって、北を【イーグル】東を【トキ】南を【クジャク】西を【コマドリ】がそれぞれ支配してる。そしてここは【コマドリ】と【イーグル】との国境沿いにある名前もない小さな村だという。

 通貨は【バード】で日本円と同じ感覚で使えるようだ。ファンタジー世界だと金貨銀貨銅貨のイメージがあったんだけど、どうやら紙幣が出回っているようだ。そこは少しイメージと違って以外だったな。

 それからそれぞれの国の特徴として、【イーグル】は軍事【トキ】は技術【クジャク】は商業【コマドリ】は伝統に力を入れているらしい。

 しかしイーグル、トキ、クジャクにコマドリ……まるで元の世界の国鳥だな。通貨も鳥という意味だし。

 そんなことを聞きながら考えている間に夜になり、村の宴が始まった。俺は酒があまり好きではないし、ルーシィは見た目の関係上飲めないと判断されて、俺達二人は酒を飲むことはなく、村人達がはしゃぎに笑ったり芸を披露したりしてくれた。とくに目を引いたのはファンタジーらしい魔法披露だった。

 戦いには使えないそうだが村人の一人が氷の魔法が得意らしく、それで少し雪を降らせたり、氷で花を作ったりしてくれた。俺もルーシィも魔法職ではなかったのでこういうことはできず、少し尊敬の眼差しを向けていたかもしれない。そうして思った以上に楽しかった宴はあっという間に過ぎていき、皆酔いつぶれるか家に帰るかになっていた。

 俺達は夜の道を出掛けるのは危ないという理由から、村人達の好意で家に泊めてもらうことになった。本当にこの村の人たちはいい人だ。出会ったばかりの俺たちにこんなにも良くしてくれた。

「いい人達ね」

 天井を見上げながらルーシィがそんなことをいった。その気持ちはよく分かったし、俺もそれにあぁと頷いた。さあ寝るか、思ったより遅い時刻になっているだろう。時計がないためわからないが、たぶん遅い時刻のはずだ。不思議と眠気がないがそこはあまり気にならなかった。そうして俺が瞼を閉じようとしたとき、ルーシィから声が。

「ゼノ……忘れてるわよ」

 何をだろう? そう思ってルーシィの方に顔を向けると、彼女の唇が俺の唇と重なった。軽いフレンチなキスだったが、不意打ちだったため俺の顔は多分真っ赤に染まってるだろう。こうしてルーシィからされるのは初めてだったし。

「ん……おやすみゼノ」

 そういって、今度こそルーシィは目を閉じて眠りについた。あぁ、俺もおやすみだよルーシィ。喜びで悶えそうになる心を押し付けて、俺も異世界で初めての眠りにつくことにした。明日はどうなるだろうか、願わくばこれが夢でないように。

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