7話 3-1 拾いハリネコ
「ふんふふ~ん、あれ?」
手には剪定ハサミと大ナタを持ち、畑仕事を終えて1度自宅へと帰ろうとしたレミー。
そのレミーの視線はあぜ道の端へと釘付けになっていた。
「ふしゅっ……ふっ……しゅ」
「ハリネコの赤ちゃん……? あれ、親はどこかに居ないの?」
レミーは眼鏡の縁を持って、辺りの様子を見るが何も気配はない。
その小さな赤ん坊の獣は全身の小さな針を立てて、力なく鳴き続けていた。
「うう~ん」
レミーはそのまま赤ん坊の元を離れて、遠くで腕を組んで考える。
手の平大しかない小さな赤ん坊。短い四肢と体を震わせて、親を呼ぶように鳴き続けるその子を、助けて良いものかと。
(野生の赤ん坊って下手に触っちゃうと臭いが付いて、親が見捨てちゃうって聞いたことあるし。少し、親が来るまで見てようかな)
できる限り身を屈めて、ハリネコの様子を見るレミー。
ふしゅふしゅと力なく鳴き続けるハリネコの赤ん坊を、見守ること数分。
「あっ!?」
その赤ん坊の元にトリが舞い降りる。その大きさはレミーが手に持つ大ナタと同程度であった。
鋭い爪の付いた四肢と大鷲に似た風貌を持つグリフォン。そのグリフォンがハリネコの赤ん坊を補食しようと、鋭い爪を伸ばした。
「こら~!!!」
レミーは咄嗟に大ナタを振り回し、大声で威嚇する。
威嚇しつつ、その蛇足で素早く移動とすると、ハリネコを胸に抱きかかえる。
「ぎゃっぎゃっぎゃぁ!!!!!」
「おらおらおら~!!!」
レミーはぶんぶんと大ナタを振り回し、グリフォンを威嚇仕返す。
恨めしそうに近くを舞うグリフォンであったが、しばらくすると諦めたのか大空へと消え去っていく。
「さて、と」
レミーは抱えたハリネコの赤ん坊を抱えたまま考える。
「この子、どうしよう」
「ふしゅっ……ふっ……しゅ!」
レミーの腕の中で威嚇するように激しく鳴くハリネコの赤ん坊を抱えたまま、レミーは途方に暮れるのだった。