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2話 1-1 冒険者のお客さん

 明るく、暖かな日差しが差す昼下がり。『ロプソー武具屋』と書かれた看板が掲げられたお店で、1人の少女がカウンターに突っ伏しながら、小さく寝息を立てていた。

棚には剣が並び、壁には大小の盾が所狭しと並んでいた。



「ん~……ん?」



「1つ尋ねたい」


 

 無精髭を生やした男が1人、音もなくカウンターの前に立っていた。

古ぼけた靴、すり切れたマント、所々穴が空いた皮の防具。身につけた物は年季の入った物ばかりで、その男からはただならぬ佇まいであった。



「はっ……!」



 少女は口元から垂れた涎を拭うと、一瞬で笑顔を作る。



「ようこそ、ロプソー武具屋へ! アタシはここの店番をしているレミー・ロプソーです! 何がご入り用ですか?」



 レミーはカウンターを抜け、男の下へと蛇の様な下半身を巧みに動かしながら近づく。

赤い髪に赤い目、そして下半身は紅い鱗の蛇の様な脚部。そんなレミーのことを見ても、男は眉1つ動かさない。



「ふむ、いや”アグナの大胃袋”に入るのに一番良い剣が欲しくてね。何でも、100年に1度の大剣があるそうじゃないか、それを譲って欲しい」



 男は懐から中身がたくさん詰まった革袋をカウンターへと乗せる。

ちらりと見えた中身は、たくさんに詰め込まれた金貨。



「あ~、村の隣のダンジョンに行かれるんですね。分かりました、それなら少しだけ待っていてもらえませんか」



「……?」



 そう言うとレミーはカウンター奥の扉へと姿を消す。男は顎髭を触りながら、レミーが消えた方をじっと見つめるのだった。

少しして剣を抱えるようにして出てくるレミー。その剣をカウンターに乗せると、仰々しそうに汗を拭う。



「これがうちの一番良い剣です」



 その剣は男の腕ほどの長さで、その刃は白金に輝く。

さらに刃からは陽炎なようなものが立ち込めていた。



「おお、これは……。噂通りの。これとあと、あそこにある”オーガ狩りの剣”もくれ」



「あ、はい。お買い上げありがとうございますっ! ではこちらにお名前と年齢と種族を記帳をお願いします」



 スッとカウンターから分厚い本とペンを取り出すと、男の前に差し出す。

男は顎髭を擦りながら、少しだけ考えて名前を記帳する。



「『カノン』様ですね。年齢は47歳で人間族と……。お間違えないですね?」



「ああ、うむ。しかし、珍しいね。名前とかを記帳する武具屋なんて」



「あ~、前に少し色々ありまして……。 と、とりあえず商品をすぐにお渡ししますね」



 レミーはぺこりとお礼とともに頭を下げると、壁に掛かった”オーガ狩りの剣”に手を掛ける。

だがその剣はレミーの身長と同じくらい長く、普通の細剣と比べて5倍の重量はある。そのため、レミーは壁に掛かった剣に手を掛けた状態で動きを止める。



「あ、ぐぐ……」



「大丈夫かい?」



 カノンはひょいとオーガ狩りの剣を片手で持ち上げる。

レミーは突然軽くなったので驚いて目を丸くするが、すぐに笑顔になる。



「ありがとうございます!」



「一応、外で試し切りしたいのだが、どこかあいてるかい?」



「あ~、はい。店の裏に一応」



「この2つの剣の代金はそれで足りるかね?」



 カノンはカウンターに置いた金貨の袋を指さす。

レミーは袋から金貨を取り出すと、一枚ずつ数え始める。



「お会計は金貨21枚になります。こちらはお釣りです」



 銀貨を4枚、袋に入れてカノンへと返すレミー。

それを懐に入れるとカノンは背にオーガ狩り、右腰に陽炎立つ剣を携えると店内をきょろきょろと見渡す。



「それで、試し切りのところまで案内してくれるかね?」



「あっ、はい! 少し待っててください」



 レミーは急いで入り口に向かうと、扉に付いた『開店』の札を『閉店』へと裏返す。



「こちらになりますっ!」



 そう言うとレミーはカノンを連れて裏口の扉を開けるのだった。




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