白雷の話
我は四神の一柱である“白虎”
神に造られた存在だ。
そして、
「お、このアイテム良いねぇ」
我に凭れながら何やらニヤニヤしている者に仕えるダンジョンモンスターである。
【星海のダンジョン】のダンジョンマスターである
“椎名 星浬”という名のマスターに仕えている。
性別は雌。人間共に見惚れられるほど美しい見た目だ。性格は馬鹿なのか賢いのかよくわからぬ。
そんな主は変わった奴だ。
今はダンジョンマスターの為の世界大陸説明書なる物と、召喚ガチャや買い物をするためのマスター本を見ている
「白ちゃん見てー。コレね、ダンジョン内にいる間は何度死んでも数時間後には生き還る樹なんだよ!買っていい?てか買うねー」
『我に聞かずともお主のダンジョンだろう』
「ここは白ちゃんの家でもあるしー。あれだよ、あれ!長男には相談したりするでしょー?おかーさんって。たぶん。」
『我に親などおらん。』
「あ、そっかー。じゃあまぁそういう感じでやってこーよ、家は。」
この通り、自由で緩い。
我に凭れかかって埋もれながら早速印をつけた星浬は「これで安心!」などと言っている。
我らモンスターが死んだからとまた召喚すれば良いものを…。まぁ節約するなら丁度良いと思うが、星浬はそういう考えはしないと思う。
それが不思議でもあり、嬉しくもあった。
『主よ、人間共はどうするのだ。』
「んー、その内来るんじゃない?王様連れて黒騎士と…、あとなんか面倒くさそうな女連れてさー」
『何だ、それは…。』
「何となくだもん。」
そう言いながら楽しそうにマスター本を一通り見終わった主が我を撫でる。
主の撫で方はとても気持ち良い。こんな心地良さはそうそうないだろう
ついゴロゴロと喉が鳴りそうになる。
的確に良いところを当てる主は手を動かしながらどこか楽しそうに話す
「本当に運が良かったなぁ。ダンジョンの近くに王国があるなんて。おかげでダンジョンポイント貯まってるんだよ?」
『む…。…では、なにか、かうのか…』
「ユグドラシル…、さっき言ってた生き還る樹ねー?その樹とぉ…、このマスターの間を改造?」
『なぜだ…?』
「今日からここに住むのに石畳なんてやだし。ここにユグドラシル植えようと思ってるから、森の家みたいな感じにしよーかなぁ」
『よいと、おもうぞ…』
撫でられ続けてしっかりと話せない。が、その手から逃れようとは思えぬ。それに主も離そうとはしておらん。存分に撫でられよう。
「ダンジョン内に入ってくるには数ヶ月くらいかなー?渦潮にかなり苦戦してるし。…大丈夫かな…ちゃんできるかな…」
『もんだい、なかろう…。そのうちくる…』
「だと良いけどー」
変な方向に心配し始めた主は最後の仕上げとばかりに我の頬をクシュクシュと撫でたあと立ち上がる
我も立ち上がり主の後ろに囲うように立つ
先程の人間共を見ていた時もこの態勢だったが、広範囲を守れてかなり良い立ち位置だ。
「さて、白ちゃん。」
最初呼ばれた時はかなり度肝を抜かれたが、これもまぁ悪くはない。
『何だ?』
賢いくせに、緩くのんびりとした面倒臭がりの主だが、まぁそれも良い。
「我が家におっきな樹を生やすぞー!」
我が護れば良いのだからな。
『主、その前に場所の確認を…おい!待て!』
……なかなか、難しそうだが。