序章
「設定」1:この世界には神と悪魔がいたが、今はいない。
2:神から力を与えられた人は神陣営、悪魔から力を与えられた人は悪魔陣営。
3:アキナは、光という力が何故か使えない。
4:大空の騎士領は、神陣営の領域。 暗黒の使者領は悪魔陣営の領域。
それぞれ自陣営の騎士が警備している。
今のところはこの程度です。後々もう少し詳しく説明する時が来ます。その時はしっかりと説明します。
この物語<序章>は、語り屋(神話や事件などを語り聞かせる人)の話を、あなたが聞いている場面です。
なので三人称視点になっています。
次からはアキナの一人称視点にするつもりです。
それでは、読んでみてください。
昔、この世界には『神』と『悪魔』がいた。
対立していた2つの力は、長くに渡り戦いを続けていた。
そこで神と悪魔はこの世の全ての人間に自らの力を分け与え、兵士として戦わせていた。
神に力を与えられた人は光を、悪魔に力を与えられた人は闇を操った。
己の生を保つため人々は武器をとる。
それから1万年経つ。
長きによる大戦により神と悪魔は、絶滅した。
人間は、神陣営『大空の騎士(Central Knight)』、悪魔陣営『暗黒の使者(Dark Phantom)』に分かれ、今だ敵対を続けている。最近争いは起こっていない。いわば、冷戦化の状態にある。
今から話すのは冷戦化の世界で起きた出来事。ほんの少し長いプロローグ。
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《序章》
「学校にいる生徒は、速やかに下校してください。」
いつもと変わらない放送が聞こえる…教室に1人だけの僕は、淡々と荷物を片付ける。
僕の名前はアキナ(男)。11歳。多分クラスの誰とでも仲が良い。
今は『大空の騎士領・第三都市・カザンの街』に住んでいる。近くの学校に通っている。
学業も運動も普通。
首に謎の十字架マークが付いている。子供の時からある。何であるのかは分からない。
「アキナ〜〜!帰ろ〜〜!」
校庭からユウジ(男・友達・同級生)の馬鹿でかい声が聞こえる。ちなみにユウジの声は窓が割れるぐらいでかい。
明るい性格で、アキナと気が合う。いつも一緒に帰っている。
アキナは少し笑って校庭へ走っていった。
カザンの街は、木々が生い茂り、緑であふれている。光の力を利用して、一年中作物が育つ。
とても豊かな街だ。
『暗黒の使者領』に近い都市できしも多く住んでいる。
古の戦いの、始まりの場所であるとも言われている。
帰り道ユウジが、空を見上げて話す。
「アキナはさ、大人になったら何がしたい?」
アキナは唐突すぎる質問に少し戸惑った。
「俺はね……騎士になる!!」
ユウジは空に向かって話しかけるように言った。
「敵が来たらすぐ駆けつけてみんなを守る。そんで、『もう、大丈夫だ』って言えるようなカッコいい騎士になりたいんだ。」
騎士。『暗黒の使者』から、大空の騎士領全域をを守る役目。名誉ある仕事。
アキナの父も騎士をしている。
騎士は主に地元の騎士団か、王都の大空の騎士団に所属している。
立て続けにユウジが言う。
「アキナは何になりたいんだ?アキナの父さんって騎士だよな…やっぱり騎士か!」
アキナはすこし笑って話す。
「特になりたいものはないよ。僕は何をやっても普通までしか行かないから。きっと大人になったら、適当に過ごしてると思うよ。」
「でも…まぁ………」
『騎士だけにはなりたくないよ。』
「僕、光が全く使えないんだ。たまに発動するときはあるけど……
騎士になっても笑われるだけだよ。」
ユウジは少し表情を落とす。
「そっか。アキナ。やりたい事は見つけておいた方が良いぜ。アキナって心が空っぽに見える時があるんだよ……あっ、俺こっちだからまた明日な!」
「じゃぁな」
アキナも別れを告げる。
「ユウジは優しいな」
小声でアキナは呟いて、帰り道を走って帰った。家に帰る途中、やけに人が少なくてすこし胸騒ぎがした。
アキナは家の前までついた。
「明かりがついてない?父さんも母さんもまだ帰ってきてないのかな?まぁ、今日の朝忙しそうにしてたしな。」
「パキンっ!!!!」
家の中から、ガラスの割れるような鋭い音がする。
アキナは少し不安になって家の扉をあけた。木製の扉が音を立てて開いた。
「ただいま〜〜〜〜!」
返事は無い。アキナはやっぱりいないのかなと思った。
「いないの〜〜?いるなら明かりはつけておいてよーー。」
そう言って暗闇の中、リビングの扉を開ける。
「うわ。真っ暗で何もみえないや。こんな時に光が使えたらな。とりあえず明かりをつけよう。」
そう言って明かりをつけに行く時、アキナは部屋が少し鉄臭いことに気がついた。
少し周りを見渡してみる。
「……………」
一瞬の静寂。暗闇に目が慣れたアキナは、その光景に唖然とする。
誰かに荒らされたリビング。
割れた窓ガラス。
壁一面についた血。
破り捨てられた家族の写真
そして、首を切られて今も血を流している両親
流れてくる赤い血に、アキナの思考が止まる。
アキナは全身の力が抜けた。耐えきれなくなり床に嘔吐した。
「誰が………こんなこと………」
絶望が襲ってくる。
DQN! DQN!DQN!
心臓の鼓動が速くなる………
「父さん!父さん!父さん!父さん!父さん!父さん!」
「母さん!母さん!母さん!母さん!母さん!母さん!」
どちらからも返事は無かった。アキナの中にある希望は今消えた。
現実は残酷だ。
親の死を子供にすら見届けさせてくれないらしい。
本当に現実は残酷だ。
ふと気づく。どこからか足音が聞こえる。すごく静かでゆったりとした音。
コツッ。コツッ。
歩く音が大きくなってくる。
誰かが、部屋の暗闇からアキナの所へやってくる。
「おっ。子供いんじゃ〜〜〜〜ん♪ねぇ、ちょっと首見してくんない?♪」
アキナは目を疑った。目の前に立っていたのは若い男だった。
でも爪が異様に鋭い。大きな耳が生えている。狼のような男。
そう……
狼男だ。
狼男はアキナの首元を執拗に見てくる。アキナはまだ動けない。
狼男は、愉快な声で言った。
「お前、首に十字架マーク付いてんじゃ〜〜〜〜ん♪
ラッキー。ターゲットはっけ〜〜〜〜ん♪」
『十字架マーク』アキナの首にはこのマークが子供の時からついている。
このマークの意味。アキナは子供の頃からこれを知るためにいろんな本を読んでいた。けど、分からなかった。アキナは心のどこかで知るのを諦めていた。
しかし、今、狼男は明らかに十字架マークを探していた。
アキナは狼男に恐怖していた。それでも、聞くなら今しかないと、そう思った。
「お前、十字架マークを知っているのか。それに、ターゲットって何の事だ!」
アキナは、強引に口を動かして、言葉を紡いだ。
狼男は少し面喰らった様な顔をしたが、すぐに、ニヤッと笑って、
「そんなこたぁどうだっていいんだよ! な〜〜?
早く俺に死ぬ顔を見せてくれよ!」
言い終わると同時に狼男は、鋭い爪を立てて襲いかかってきた。
狼男は想像以上に速かった。さっきまでとは段違いの殺気。
だが、アキナは迷わなかった。
この手の相手はどう対処するか、父さんから教わっている。
それは、父さんと武術の稽古をしているときだった。
「アキナ、お前もしスピードに自信のある奴が襲いかかってきたらどうする。」
父さんがアキナに問いかける。
アキナは黙っていた。そんなの分かる訳ない。
父さんが言う。
「答えはな、しゃがむことだ。スピードに自信のある奴はな、最初はだいたい、一直線にむかってくる。
それが最短で攻撃できるからだ。そしたら次は、首を狙ってくる。鎧の防御が薄いからだ。相手が首めがけて攻撃してきたら、身を低くしてかわすんだ。
狼男の動きは速かった。無駄がない。まさに狼だ。
しかし、アキナは、狼男の攻撃してくるタイミングで本能的に身を低くした。
(よし!かわした!)
「なっ!!!!」
狼男は、そのままアキナの所へ突っ込んでくる。
アキナは握り拳を固めた。
「歯ぁ食いしばれぇ〜〜〜〜!!!!!!」
BAAAAAANNNNN!
アキナのカウンターは、狼男の溝にクリーンヒット!
狼男はかなり吹っ飛んだ。しばらくは動けないはずだ。
アキナは考えた。
(今のは上手くいったけど、次は上手くいかないはずだ。それに僕は光を使えないし。
相手の実力も僕より遥かに上だ。正直、勝つ確率は0%だ。なら………)
逃げるしかなかった。
両親を殺した敵を前にして逃げるしかなかった。
アキナは悔しかった。最悪の気分だった。
アキナは敵に背をむけて逃げた。
家が遠くなっていく……
家族が遠くなっていく……
アキナの目には、涙が出てきた。
アキナは、街の中心めがけて走った。ただ、ひたすらに。助けを求めて。
しかし、現実は残酷だった。
「何なんだよ……これ……」
街のあらゆる所に死体が転がっていた。
いつもの街は、見る影もない。活気のある市場も血で染まっている。
どこへ走っても、あったのは死体だけだった。
アキナは更に深い絶望を味わった。
「ねぇ〜〜〜〜♪きみ〜〜〜〜♪また遊ぼうぜ!」
後ろから狼男が追ってきていた。その目には明らかに殺気しかこもっていない。
(嘘だろ!どんな速さだよ!)
アキナは今度こそ死を覚悟した。
「ただじゃ殺さなねぇ。この闇の力で四肢を切り裂いてからころしてやんよ!」
狼男が構えたその時。
「そこで止まれ!!!!」
どこからか声が聞こえた。
アキナの後ろから鎧をつけた男が3人と軽装の女が1人やってきた。
中心にいる大男が堂々と話す。
「我は大空の騎士・S級序列5位 ギル・グラントだ!
そこの狼!お前いま『闇の力』といったな!『Dark Phantom』の奴がこの街の住人を殺したのか!』
男に怒気が宿っていく。
狼男は、すこし苦しそうな顔をする。
「ちっ。もう嗅ぎつけたか。流石に騎士4人となると厳しいな…それに序列5位か……」
「仕方ない。」
「いずれその餓鬼始末しにくるからな!それまで首洗ってまってろ!」
BAN!
狼男は煙幕を投げた。走る音がどんどん遠くなっていく。
少しの静寂。
ギル・グラントは、怒気をしずめて言った。
「逃したか。次は逃さん。」
アキナは何も考えることが出来なかった。
女の人がアキナに優しく話しかける。
「もう大丈夫よ。よく頑張ったね。」
アキナは全身の力が抜けて、目の前が真っ暗になった。
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騎士の調査により、カザンの街の住人は全員死んでいることが分かった。
もちろんユウジも死んだ。
カザンの緑は赤に染まり、作物を腐らせた。
カザンの街には何も無くなった。
人の笑顔も……心の温かささえも……
『暗黒の使者』によって、カザンの街は崩壊した。
この事件は後に『カザンの悲劇』として長く語り継がれることとなる。
ここから描くのは、カザンの悲劇を生き延びた、勇敢な少年の成長の物語である。
こんばんは。いや、こんにちはかな?とりあえず読んでくれてありがとうございます。
最近小説書いてみたいなぁと思い、初めて書いてみました。
まだまだ実力不足なので、ご指摘・感想ありましたらどんどんしてください。
「つまんない」などのコメントも参考になります。
投稿は不定期です。