特殊警察部隊ワールド・アース・メシア W・E・M (番外編)
今回の犯人はゼクトではなく、凶悪誘拐犯だった。
しかし、エキスパートポリスによりすでに犯人は逮捕され、ジェイク達は人質がいるとされている倉庫にいた。
手分けして辺りを探していると、レナが声を上げた。
「皆、こっちに来て!」
ジェイク達がレナの元へと駆け寄る。
レナがライトで照らした先を見ると、そこには両手を縛られ、口に猿轡をされていた女の子がいた。
すぐにレナがロープを解き、猿轡を外してあげた。
女の子は目に涙を浮かべており、激しく震えていた。
するとジェイクが人質を無事、保護したと連絡を入れる。
「もう大丈夫よ、安心して。」
レナが優しく声をかける。
女の子はただ怯えるだけだった。
その後、女の子は本部の病院へと移送された。
命に別状はないとの事だが、ショックのせいか誰が話しかけても答えてくれないという。
そこで様子を見に行こうとレナは病院へ向かった。
看護師に案内される途中、女の子の両親、そして姉は犯人に襲われ先程、死亡が確認されたという。
「そんな……!!」
看護師はどうか決っしてショックを与えるような事は言わないようにと告げられた。
ドアをノックし、部屋に入る。
中にはベッドの上に腰かけている女の子がいた。
女の子はただ、レナを見つめるだけだった。
「こんにちは。」
と、レナが優しく微笑む。
女の子は一言も口を開かなかった。
レナは椅子に座り、女の子に優しく声をかけた。
「私はレナ。
あなたのお名前、教えてくれる?」
すると女の子はゆっくりと口を開いた。
「......リナ。」
それだけ女の子は言った。
「リナ、リナちゃんね。
怖い思いしたけどもう大丈夫!
安心していいからね。」
レナはリナに笑顔を向ける。
それから会話を続ける事、10分。
レナはリナにまた来るからね。と、伝え病院を後にした。
後日、レナは再び、病院を訪れた。
話によると、リナは保護施設で預かられる事になったという。
これが最後の面会になるだろう。
そう思いながら、レナは病室へ足を向けた。
しかし、看護師から思いがけぬ話を聞かされた。
「リナちゃんが!?」
「はい、朝からどこを探してもいなくて......!」
それを聞いたレナは病室へ真っ先に向かった。
扉を開けると、ベッドにリナの姿はいなかった。
「そんな......!一体どこに......!」
その時、レナにある一枚の絵が入った。
恐らくリナが描いたものだろう。
どこかの公園なのか、大きな池が描かれており、4人の家族の絵が笑顔で描かれていた。
レナはこの絵に見覚えがあった。
この病院の近くにある公園。
もしかしたらと、レナはすぐさまこの公園に向かった。
外はすでに暗くなっていた。
病院から走ってきたレナは、ようやく公園に辿り着いた。
辺りを見回すレナ。
と、そこへレナの視界に一人の女の子が入った。
「リナちゃん!!」
レナの目の前には大きな池をただ見つめるリナの姿があった。
リナの元へ駆け付けるレナ。
声をかけられたリナはただ、池を見つめているだけだった。
「良かった、無事で......。」
ホッと胸を撫で下ろすレナ。
するとリナが口を開いた。
「この公園、皆んなと一緒に遊びに来てたの。」
「え?」
リナは続ける。
「ボール遊びしたり、追いかけっこしたり、お弁当食べたり、とても楽しかった。」
そしてレナの方を向くリナ。
目には涙が浮かんでいた。
「皆んな......、どこにいったの。」
それを聞いたレナはそっと、リナを抱きしめた。
その後、レナとリナは二人で夕飯を食べた。
黙々と食事をするリナにレナは優しく声をかけた。
「リナちゃん。」
名前を呼ばれ、顔を上げるリナ。
レナは優しく微笑みながら言った。
「代わりになるかどうかは分からないけど......、リナちゃんさえ良かったら、私があなたのお姉さんになってあげる。」
その言葉にハッとするリナ。
「本当......?」
「うん!」
にこりと頷くレナ。
リナの心の中で何かが動いた。
深夜
深い眠りについていたレナはある物音で目が覚めた。
目を開けると、隣の部屋で寝ていたリナが部屋に入ってくる所だった。
「リナちゃん......、どうしたの?」
するとリナは少し恥ずかしがりながらも、一言こう言った。
「......お姉ちゃんと一緒に寝たい。」
それを聞いたレナはただおいで。と、優しく声をかけた。
レナの隣に横になるリナ。
レナはリナの背中を優しくさすりながら言った。
「本当のお姉ちゃんだと思って、甘えていいからね。」
とレナはリナに優しく微笑む。
リナは小さく頷いた。
その後、二人は色々な話をした。
「そうだ。」
とレナは言った。
「明日、二人でどこか一緒に遊びに行こうか?」
「本当?」
すると、リナは目を輝かせた。
「うん!どこに行きたい?」
するとリナは少し考えた後、こう言った。
「リナ、遊園地に行きたい!」
翌日、レナとリナは遊園地にいた。
様々な乗り物に乗り、二人は遊園地を楽しんでいた。
観覧車から降りた所で、レナはリナの様子がおかしい事に気付いた。
「どうしたの?リナちゃん。」
するとリナは
「リナ、このままお姉ちゃんと一緒にいたい......。」
と、寂しげに呟いた。
それを聞いたレナはリナの手を優しく握り、
「あっちで、クレープでも食べよっか。」
とリナに微笑んだ。
その時、近くで銃声が鳴り響いた。
「!?」
見ると、逃げ惑う人々の姿があった。
そきてレナの前には
「ゼクト!?」
現れたのはハンターゼクト。
狩りを得意とするゼクトだ。
「さあ!俺様が人間どもを狩ってやるぜ!」
「お姉ちゃん......!」
とっさにレナはリナを守るように前に立った。
「リナちゃん下がってて!!」
言われるがままにリナはその場から離れた。
「チェンジ イグニッション!!」
ブレスにカードをスキャンさせ、レナはスーツを装着した。
「ほう、貴様がエキスパートポリスか?」
「そこまでよ!人々に手は出させない!」
「ならば、お前から狩ってやるぜ!」
襲いかかるハンターゼクト。
レナはデルタガンとブレードで立ち向かう。
戦いはレナが有利だった。
攻撃を交わしながら、次々とダメージを与えていく。
「く!こんなはずでは!?」
「これでトドメよ!」
レナはレーザーライフルを構えた。
と、ハンターゼクトの目にリナの姿が映った。
何かを閃いたハンターゼクトは素早くリナに接近し、何とリナを人質に取った。
「リナちゃん!?」
「お姉ちゃん......!!」
恐怖に怯えるリナ。
「そこを一歩でも動いてみろ!
このガキを八つ裂きにするぞ!」
「くっ.......!」
そのままレーザーライフルを下げるレナ。
「喰らえっ!」
一気に不利になったレナにハンターゼクトの容赦ない攻撃が襲いかかる。
「きゃあああ、っ!!」
そのままレナは膝をついてしまう。
「ふん!これでトドメだ!」
と、その時リナがゼクトの腕を振り払い、レナの元へと駆け寄った。
「何!?」
そしてリナは両手を広げ、レナに背を向けた。
まるでレナを庇うかのように。
「リナちゃん.....逃げて....!!」
意識が朦朧としながらもリナに逃げてと伝えるレナ。
「ならば、お前から狩ってやる!」
放たれたレーザーがリナめがけて飛んでくる。
が、そのレーザーは3人によって弾かれた。
現れたのは、ジェイク、セレン、ディンの三人だった。
「無事か!レナ!」
「遅くなってごめん!」
「一人でよくやったな。」
「皆んな.....!」
「相手は弱っている、一気に行くぞ!!」
「了解!!」
そして、三人の必殺技が同時に決まった。
爆発するハンターゼクト。
間一髪、レナのピンチは去ったのだ。
後日、怪我も治ったレナ皆と保護施設の前にいた。
リナはこの施設で引き取られる事になったのだ。
寂しそうに俯いているリナにレナはある物を渡した。
「これは......?」
見るとそれは小さな丸いペンダントだった。
蓋を開けると、中には以前、遊園地に遊びに行った時に撮った二人の写真が入っていた。
「リナちゃん、忘れないでね。
私はいつでもリナちゃんのお姉ちゃんだから!」
涙を堪えながら、頷くリナ。
するとレナはリナをぎゅっと抱きしめた。
レナの部屋に飾られている写真。
そこにはレナとリナが満面の笑顔で映っていた。
それはまるで、本当の姉妹のように。