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白氷 中篇



「うー……」


「そろそろ落ち着かれましたか?」


「うー……引っ掛かったな!」


「おや?」


 しばらく放置していたのだが、『白氷』は雲の縄を固めて拘束から抜け出した。

 そして俺を水や氷、蒸気ごとに封じた密閉空間へ閉じ込める。


「はぁ、はぁ……これでどう?」


「──いやー、驚きましたよ。幾重にも異なる性質の結界を形成することで、脱出を困難にするのですか……いやはや興味深い」


「だから、どうしてそこを出てるのよ!?」


「先ほども申した通り、私は『生者』でございます。そして……それは『超越者』としての力も意味しているのです」


 そりゃあ『騎士王』とか『闘仙』とかいかにもな名前ならともかく、『生者』だしな。

 ただ『私は生きている者です』と言われても、反応に困ってしまうわけか。


「『生者』? うーん、聞き覚えがあるよなないようなー。まあ、いっか。あんた、いったいどうやって抜け出しているのよ?」


「企業秘密です。その方法を伝えてしまったら、『白氷』様に完全に凍らされてしまうかもしれませんので」


「……チッ」


 舌打ちされても、答えはしない。

 種族と職業と称号、彼女は三つが完全に噛み合った能力の持ち主。


 相応の力を持っている相手に、ペラペラと自分から情報を流すのは不味い。

 すべての強者が『騎士王』のように、甘くは接してくれないからな。


「ところで『白氷』様、どうして眠っていたのか……覚えておいででしょうか?」


「えっ? うーん……なんでだっけ?」


「私の仮説では、この地へ降り立ち『侵雪』の排除を行ったがゆえに、死徒様に目を付けられたと……そう考えております」


「そう、だったかな……? まあ、なんとなく状況も理解できてきた。要するにあんたはあの死徒を倒したってこと?」


 とりあえずコクリと頷いておく。

 だが『白氷』はジト目で、何かを疑っているようだ。


「全然そうは視えないな……」


「……妖精眼、ですか?」


「そう。あんたは魔力だけ突出している、けどそれ以外はこれといったものがあるわけでもなし。なのに、死徒は倒せるみたいだし、こっちの攻撃も全部無効化する……何かの能力特化?」


「そうですね。生き残ることに関しては、あの『騎士王』様よりも優れていると言っておきましょうか」


 あっちは純粋な戦闘力で生き残るが、こちらは死んでも蘇ってやり直せる。

 しかも、渡れる世界は一つではない……そういう意味では、俺の方が生存能力が上だ。


「できるなれば、詳細を教えていただきたいのです……お願いできないでしょうか?」


「うーん、どうしよっかなー?」


「報酬はこちらの甘い蜜を──」


「しょうがないなー!」


 俺が取りだしたビンをふんだくり、中身を掬って頬張る『白氷』。

 うん、前に訊いた情報通り甘い物に目がないようだな。



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