罪の禊
『……反省、する暇も無かったな』
「すみません、虚弱体質なもので」
『いや、その言葉ですべてを済ませられると思うな。貴様のそれは、明らかに虚弱で済むレベルの弱さじゃない』
「あ、アハハハハ……」
さて、罪も禊ぎ終わった。
正直ウサギのオーラだけでも死ねるような俺には、ウサギの設定した贖いは向いていなかったのだろう。
大量にあった光の球だが、オーラが開放された途端に一気に破裂して消えていったよ。
そのときのウサギの顔ときたら……プッ。
『……仕方ない。もう一度、今度はオーラの演出は無しで行おう』
「え? まだやるんですか? それに、さっきのアレは演しゅ」
『──黙れ、貴様は何も知らなくて良い』
「……あ、はい」
今の威圧だけで、また用意した光球が破裂したのはご愛嬌だ。
◆ □ ◆ □ ◆
あれから、何度も何度も自分の罪を禊いでいった。
破裂する数にウサギがキレ、途中で定義を変更するという事態もあったのだが──
『……なぜだ。なぜ始まる前に終わるのだ』
「さ、さぁ……どうしてでしょうね」
『くっ、まさかこのような方法で罪から逃れるとは……これは、他のモノに伝える必要がありそうだ』
「えっ、何か言いましたか?」
後半は聞き取れなかったが、まるで望んで罪から逃れようとしている、との言い方は少し気になるな。
俺自身は罪を受け入れる気になったし、そのためにこうして待つこともしている。
ウサギのオーラが強過ぎるから俺は死ぬのであり、調整すればいいのだ。
その旨を伝えてみると──
『……すでに試している。新たに(手加減)などというスキルまで与えられたというのに、それでも貴様が弱すぎるからこうなるのだ』
「えぇー、そんな理不尽な」
『私としても、本当は手早く済ませたいのだが……森の制約に従い、ある程度本気の状態で行わなければ終われないのだ。だから、早く耐え抜いてくれ』
「無理ですって、何か別の方法は無いんですか? ……貴方を倒す以外で」
『……本来なら、そのようなことを言った者には罪が与えられるのだが。貴様には、こちらが嫌と言うほど罪を与えたからもう良い』
「ここでのんびりしている間に、もうやれることはやりましたので……どうします? 本当に方法が無いなら、強引な手段を試してみますけど」
転位装置を使いさえすれば、一応は脱出できるだろう。
なんせ、アップデートは何度もやっているからな……対『超越者』用の)。
ウサギはその言葉が真実と理解したのか、難色を示して少し悩み始めた。
『……正式な方法も幾つかある。罪を禊ぎ終えるか、私を倒すか──私のクエストを受けるかだ』
「何なんだ、この展開は?」
『罪を禊ぐのはダメ、私を倒すのも止めてもらいたい。ならば、残された方法は一つだけだろう?』
……うん、結局この展開か。
ため息を一つ吐いてから、ウサギの提示したクエストを引き受けるのであった。