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酢ィ酢ィレモン



 E3


 次のエリアに移動したわけだが……未だに森から抜け出せていない。

 そのため、ここに来るまでに何度か魔物と戦闘を……と、いうことでもなかった。


 ──狼を相手に使ったアイテムのお蔭(せい)で、魔物たちは俺に近づかなかったからな。


 その名は、『酢ィ酢ィレモン』。

 極限まで酸っぱさを求めたレモンを酢漬けにした物を、瓶に封じたアイテムだ。


 そのあまりの強烈な臭いに、魔物たちは俺から逃れるために全力で逃げた。

 そして、その先にいたプレイヤーたちが被害にあったのだが……このときの俺は、そのことを知らない。


「魔道具で臭いは落ちたから良いけど、あんまり使わないようにしておこう」


 狼の毛皮で実験してみたところ、消臭の魔道具は見事臭いに打ち勝ってくれた。

 これで再会した家族に臭い、なんて言われることも無いだろう……本当に助かったよ。


「まあ、魔物が来ないなら来ないで、別に構わないんだけどさ」


 体に浸み込ませた異臭の存在がそうして魔物避けとして機能しているのなら、使わない理由は無い。

 少しずつ東に向かって歩き……ようやく、次のエリアであるE3に着いたのだ。


 今までよりも深緑の香りが深まり、生息する魔物も少し強い気配が増えた。

 ここが森の深部……とまではいかないが、それでも先ほどよりも凶悪な魔物が居ると思われる。


「でも、それも結局『酢ィ酢ィレモン』の臭いには敵わなかったのだ……嗅覚の無い魔物だったら来たのか?」


 微妙にモノローグ調になっているのはさておき、実際魔物が現れない。

 強くなればなるほど、感覚も鋭敏になるはずなんだが……。


 そんな奴らには、『酢ィ酢ィレモン』はさぞ強烈に感じられるんだろうな。

 だからこそ、俺は何もすることなく森を歩いていられるのだ。




「……ん? 急に凄い気配が……って、こっちに来てるな」


 森の中央辺りに近づくと、どこからか魔物の反応が感じられる。

 臭いも気にせずただ真っ直ぐと、俺の方にやってきていた。


『──貴様か、森を荒らす侵略者は』



「えっと……どちら様で?」


『私はこの森の守り神、森に住まうすべての者たちの嘆きに応え参上した。貴様の行った悪行によってな』


「……えー」


 この場に現れたのは、体に風を纏った──ウサギだった。

 普通ここは、狼だと思うんだが……。


『貴様が撒いた毒、森の者たちはそれに苦しみ息絶える者までいるのだ。私が森の全域に風を送らなければ、今頃どうなっていたか』


「あっ、なんだかすみません。非力な私がこの森の地を超えるために、これは必要なことでしたので」


『……つまり、貴様の身勝手に振り回された結果。そう言いたいのだな?』


 発言を間違えたようで、ウサギから激しい風を伴なう怒りの波動が放たれた。


「え゛? その考えはちょっと強引す──」


『えぇい、問答無用! 森の盟約に従い、貴様には裁きを受けてもらうぞ!!』


「いや、ちょっと待っ──」


 毎度お馴染みの白い光が視界を奪い、俺はこの森から転位させられる。

 ……ワンパターンすぎませんか?



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