地下街迷宮 その04
四階層は説明した通り遠距離の修練場だ。
弓や投擲はもちろんのこと、最近では新たな武器が開拓されているらしい。
「銃術ねぇ……スキルが対応してたのか」
《正確には、充分に使いこなすためにはその上位スキルである機銃術を習得した方がよいとのことです》
「……こう、『機銃の開拓者』とかそういう称号があったらよかったのになぁ。それなら特典でスキルが貰えただろうに」
称号は時々思い出した時に確認している。
強力そうな職業に就ける……みたいな称号もあるのだが、【救■者】みたくエラー状態なので、まったく意味を成さないんだよな。
あとは何かの行動時に能力補正というものと、何かしらの種族との友好度が挙がっている場合が多い。
スキルの常時発動もそれなりにある。
「……そういう場合のスキルって、カウントされないんだよな」
《称号にはセットして発動するモノとせずとも機能するモノがございますが、旦那様の称号は大半が後者です。あくまで称号の効果がスキルと同じモノ、そう判断されるためスキルとは異なるカウントが行われます》
「じゃあ、『SEBAS』的にはどの称号がお勧めなんだ?」
《そうですね…………では、こちらをセットしてみましょう》
そういって『SEBAS』がカスタムしてくれたのは──『機兵の軍主』であった。
これはたしか、仙郷へ行った時に現れた軍勢に対処したら手に入った称号だな。
「効果は機械操作時の自由度向上か……たしかに、便利ではあるな」
《他にも『迷宮採掘者』や『覇運勝負師』なども選択肢にございましたが……両者共、必ずしもそういった状況に陥るとは限りませんでしたので》
「迷宮での異常行動可能と賭け事の成功率に補正がMAXで掛かる効果ねぇ……ああ、それなら『機兵の軍主』の方がいいな」
もしかしたら、迷宮での予想外の行動や奇跡のような運が必要になるかもしれない。
だが、そんな目に見えないモノよりも、執事である『SEBAS』を信じた方が成功率は高いだろう。
「称号をセットして、何か変化はあるか?」
《性能が向上するのではなく、あくまで自由度が向上しただけですので今のところはまだなんとも……ですが、旦那様を介さずとも実行できることが増えました》
「俺にはまったく変化を感じられないってのがよく分かったよ。それじゃあ、この階層にも展開しておこうか」
《畏まりました》
残るはあと一層……そこに目的地がある。
入った瞬間死ぬような横穴って、正直恐怖でしかないが──行くしかないよな。




