間引き
平穏が帰ってきた。
ブリタンニアでの戦いが後を引き摺っているのか、どうにもこの気分が抜けないな。
鏡の魔物、巨大な猫、そして……。
あの国で俺は、さまざまな経験を積むことができた。
──そして、その経験以上に死んだのだ。
俺が本当の意味で普通にこのゲームをやっていられるのは『アイプスル』に居る時だけであり、それ以外の場所だと必ずと言っていいほどに死が訪れる。
……本当、死ぬなんて経験は無い方が良いのにな。どうしてこうも死んでいるんだ?
「まっ、別にいっか。『SEBAS』、世界の方はどんな感じだ?」
《生命の進化は加速し、混沌に満ちた世界になりかけましたね》
「えっ? ……ああ、そういうことか」
俺は『SEBAS』に星の管理を求めた。
自分ではできないから、代わりに頼むと。
しかし、こうも加えて言っていた。
人間以外が住む安住の場所を──生命の楽園を、とも。
だからこその結果なのだろう。
《こちらとしても、多様な進化のデータだけでは足りない部分を掴む必要がありましたので──間引きを行いました》
「間引き、か」
それはつまり、俺は知ることのできなかった生命が居たということか。
俺の指示が、そうした結果を生みだしてしまった……のか。
《申し訳ありませんが、そのままでは星が喰い潰されていました。旦那様のお力で少し多めにSPがありましたが、それでも当時の生命すべてに行き渡らせるほどございませんでしたので》
「……これは、俺のミスだな。早急に対策を提示してくれ」
《はい。すでに間引かれた生命を使い、魂の観測に成功しました。『龍王』の結界技術をそこに用い、誕生する生命の数を制御──これが第一案となります》
「魂の観測、か……。制御って言葉はともかく、そうすれば同じ事態は無くなるのか?」
《想定通りに、事が進むならば》
魂、さっきの間引きと言い……なんだか俺だけ違うゲームじゃないかって気がするな。
だけど、それもこれも俺が最初に願ったことから始まったんだ──『SEBAS』に罪はない。
ただ、俺の指令を忠実に聴き入れてくれただけなのだから。
覚悟を、決めるしかないのか。
「……うん、ならやることにしよう。あ、後その間引かれた生き物はどうなったんだ?」
《全て冷凍保存して仕舞ってあります。こういった事態は初めてですので、旦那様に確認するべきかと思いまして》
「ああ、それが正解だ」
仏教のやり方にはなるが、弔いをするのが良いかもな。
こうやるのは最初で最後、俺の責任だと言うことを深く刻む必要がある。
あっ、でもあっちの方法もあるな。
人間は嫌だが……別の種族はOKだ。




