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帰国祭り その06



 一人、また一人と客が増えていく。

 初めは余裕を持って対処していたが、やはり人の力というモノは偉大だ。


 一人が二人に、二人が四人に、四人が八人にと少しずつ数が増えていった結果──今では行列のできる出店となっていた。


「──これはこれで、予想外な気がするな」


 ナンバーワンではなく、オンリーワンを目指した『タコ焼き』にここまで客が来ているのは異常だろう。


 それこそ、『SEBAS』の演算を超える干渉力を持つ存在の介入による結果だ。


《我々の想定以上に、求心力が高かったということでしょう。どうなされますか?》


「仕方ない、アレを使おう……頼めるか?」


《承知しました──転送致します》


 指示を行うと、屋台の後方辺りから複数体の人形が現れる。

 術式によって認識阻害が施されており、分からない者には店員に見えているだろう。


「操作を頼む。俺は作るのに専念するから、そっちで残りの全部をやってくれ」


《畏まりました》


 そんな無茶な注文だろうと、万能AIである『SEBAS』であれば可能だ。

 人形たちはそれぞれメニュー表を客たちに差しだして、接客を行っていった。


《旦那様、リストを投影します》


「あいよっ、なんでもこいや! ああ、これならすぐにどうにかできる」


 あくまで:DIY:は使わず、これまでに開発した便利な魔道具だけで乗り切っていく。

 それも料理の待ち時間を省略するだけで、あとはすべて俺の技量に委ねられる。


「ノーマル二十、ネギマヨ十、明太子五、テリタマ三……チャレンジャーが割と居る気もするけど。まあ、これも宣伝効果か」


 お土産セットには複数の味を入れておいたので、その違いにも気づいたのだろう。

 場所ごとに味やトッピングに変化を加え、香りを辺りにバラ撒いてより客を呼ぶ。


 感覚に訴えかける宣伝というものがある。

 動きで魅せつけ、匂いで惹き付け、音で呼びかけ、味覚や触覚にはタコ焼きそのもので刺激を与えて満足させるのだ。


 ──そうして人形も加えて処理をし続けた結果、予定していた以上の在庫を売り尽くすことに成功した。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「しかしまあ、だいぶ売れたな」


 ラッシュ時には数百を超える客が一気に来たモノの、人形軍団というチートな増員を行うことで見事対処する。


 時間帯は夕暮れ時、どうやら王城で第二王女が挨拶をするらしくそこから離れた場所に位置する『タコ焼き』屋には、客などまったくいない……つまり元通りなわけだ。


「それで、あなたはどうしてこちらへ?」


 そんな屋台にやって来たのは、少々ラフな格好をしたイケメン。

 かつては鎧姿で会ったことのある、とあるお偉い様に忠誠を誓う騎士である。


「久しぶりだな、『生者』」


「ええ、ロイスさん。王女様──第一王女であるセーリア様はお元気でしょうか?」


「ああ、相変わらずピンピンしているよ。居なくなる前に会っていくか?」


「さすがにそれは遠慮しておきますよ。せっかくの妹様のご帰還、姉妹水入らずでゆっくりと歓談をするべきです」


 通常時でも会いたいとは思わないが、わざわざ訪ねてくるからには裏があるのだろう。

 だからこそ、相手を立ててしっかり拒否の意を示した。


「そうかい。まっ、強引に招くのは止めておけとの命令だ。それならそれで、別に構いはしないがな」


「そうですか……では、一つ伝言を頼んでもよろしいでしょうか?」


「ああ、構わないぞ」


「ありがとうございます。では、お二方(・・・)にお願いします──」


 それを伝えると、ロイスは了承してここから去っていく──用意しておいた、お土産用のタコ焼きを持っていき。



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